「コイツを鑑定してくれねぇか」
「
「ええ。さっき、59層のダナクでこの
「死んだ……?圏内でHPがゼロになったということはデュエルでは無いんですか?睡眠PKの可能性も視野に入れましたよね?無論」
ミトの言葉にヴェルデは耳を疑った。圏内でHPがゼロになる等、聞いたこともない
しかしながら、長い付き合い故に分かる。ミトは下手な嘘を吐くような人物ではない。故にこの話は事実なのだと
「当たり前じゃねぇか。だがな…ウィナー表示が表示されてなかったんだよ。おかしいと思わねぇか?俺たちが現場に駆け付けるまでの時間は数秒もなかった。にも関わらずだ、ウィナー表示を見たヤツは誰もいない」
「それにカインズは直前までヨルコさんって人と一緒だったわ。睡眠PKの線も有り得ないわ」
「で、コイツが関わってくる訳だ。ロープはNPCショップで売ってる汎用品だ、同じヤツを現場近くの露店で見つけた」
「なるほど……拝見します」
スピアを受け取り、鑑定スキルを発動させたヴェルデは表情を歪ませる
「PCメイドです」
「やっぱりな。どうりで、槍には詳しい俺に見覚えがねぇ訳だ。で?製作者は」
「《グリムロック》という方ですね。ん?待ってください!グリムロック!?僕に依頼してきた方ですよ!?」
「黄金林檎ってギルドの人ね。確か、指輪探しを頼まれたのよね」
「はい。奥さんが亡くなり、ギルドは解散してしまったらしいのですが……その際にレアアイテムの指輪が紛失してしまったらしいのです。更にです、僕の推理によると奥さんはPKされた可能性が高いんです」
「つまり指輪は犯人が持ち去った……そういうことか?」
「はい、あくまでも推理なので結論ではありませんが」
「そのスピアの名称はわかる?ヴェルデ」
「《ギルティーソーン》、 罪のイバラとでも呼びましょうか」
固有名を聞き、スピアを受け取ったソウテンは何かを思い付いたように表情を変えた
刹那、自らの手を目掛け、スピアを振り下ろそうとした
「テン!何してるのよ!!!」
「何を怒ってんだよ」
「怒って当たり前じゃない!今、自分が何しようとしたか分かってるのっ!?」
「切れ味を試さねぇことにはどういう仕掛けになっんのか、分からねぇじゃねぇか」
「だからって、自分の手で試さなくてもいいじゃない!もっと自分を大切にして……お願いだから…」
「………分かった、分かった。アイテムストレージに収納しとく、其れで良いだろ?」
「うん」
アイテムストレージにスピアを仕舞い、部屋から出ようと扉に手を掛ける
「リーダー」
ヴェルデに呼び止められ、振り返ると心配そうに見詰めていた
「無茶だけはしないでください。貴方は僕たちにとって、リーダーであり仲間であると同時に家族です」
「分かってる。だから、そんな顔すんな」
乱暴にヴェルデの頭を撫で、何時もの不敵な笑みを見せるソウテン。だが、ミトの表情は曇っていた
この数時間の間に彼女の知らない彼が何度も姿を見せた。知りたい気持ちもあるが同時に知りたくないという気持ちもある
知ってしまえば、今までのソウテンが姿を消してしまう様な気がしてならない。故にミトはその気持ちを確かめようとはしなかった
「テン…」
「………」
その夜。ギルドホームのバルコニーでソウテンは黄昏れていた
手に持ったグラスを口に運び、頭の中に過ぎるのは広場での出来事。この世界での死を見たのは初見ではないが今回のような事例を目撃した事は一度も無かった
「テン」
「ん…キリトか」
声を掛けられ、振り向くとキリトが立っていた。彼の手には二つの包み紙が握られており、片方をソウテンに差し出した
「やるよ。露店で売ってたハンバーガーだ」
「ありがとよ」
「ミトから聞いたぞ。あのスピアを自分の手に刺そうとしたんだってな」
「アイツ……余計なことを」
「なんでそんな事をしたんだ?お前らしくないだろ」
ハンバーガーを口に運びながら、キリトが問う。すると同じようにハンバーガーを食べながら、ソウテンは数秒ほど黙っていたが口を開く
「真実を見つける為に必要だったからだ。それ以外に理由なんかねぇ」
「まだ引きずってるんだな。あの日のこと」
「……っ!」
刹那、ソウテンの表情が歪む。仮面を身に付けてないが故に何時もよりも分かり易く、その変化が感じ取れる
「あの時……俺がお前からファミコンのカセットを借りて、返さなかった日の喧嘩を」
「それじゃねぇ」
「違うのか?なら、アレか。お前の部屋で勝手に焼肉パーティーした時のことか」
「それでもねぇよ。態と話を逸らすんなら、普通に話せ」
「ああ…分かってるよ。お前のおふくろさんが亡くなった日だろ?今日は。そして、夜の街に怒りを打つけるようになった日だ。忘れる訳ない」
六年前の4月11日、その日が蒼井天哉の人生を変えた。代々、警察関係者を輩出するエリート家系に生まれた彼は生まれながらに将来を約束され、期待され、敷かれたレールの上を歩くのが当たり前だと思っていた
しかし、現実は残酷だった。犯人追跡中だった刑事の車が歩道に突っ込み、天哉と妹を庇った母は病院に搬送されたが間に合わず、息を引き取った
『ふんっ…子を助ける為に命を投げ出すとはな。バカな女だ』
だが、父の蒼井天満はその刑事を解雇せず、逆に自分の妻である筈の母を貶した。父の言葉に天哉は怒りを打つけたが彼にその声は届かなかった。冷たい瞳には何の感情も宿っていなかった。故に天哉は全てを拒絶し、夜の街に逃げた
行き場の無い怒りをひたすらに打つけ、荒れた心には治らない黒い衝動が生まれ、思い付く限りの犯罪を繰り返し、満たされない欲を満たす為に、がむしゃらに、怒りをぶつけた
『私の息子でありながら補導されるというとはどういう了見だ?この恥晒しが』
やがて、補導され、父と再会したが彼は目の前の息子を見ようとはしなかった。自らの世間体を優先し、あの時と変わらぬ冷たい眼差しで、天哉を見下ろしていた
『恥…はんっ、そいつを知るべきなのはアンタだろ。いいか?言っといてやる、こいつは俺のアンタへの復讐だ。母さんの命よりも部下を優先するエリート刑事さん、今後は俺を息子だと思わなくていいぜ?その代わりに後悔しろ。俺を手放したことをな』
其の会話を最後に天哉の世界から、父という存在そのものが消えた。妹は親戚に引き取られ、幸せに暮らし、表舞台を歩き始めた。しかし、天哉はゲームセンターを寝床に、裏舞台で、今も暗い闇の中を彷徨い続けている
「なぁ、お前が正義を嫌うのは分かってるけどさ。一人で背負い過ぎるなよ?俺たちは仲間なんだ、偶には頼ってくれよ」
「ああ…どうしてもって時は頼るよ、必ず。ありがとな…キリト」
翌日。昨日のレストランにソウテン達はヨルコから話を聞く為に足を運んでいた
「ヨルコさん。鍛冶職人の《グリムロック》と槍使いの《シュミット》って名前に聞き覚えあるわよね?貴女」
ミトの言葉に俯いていたヨルコの顔が、ぴくっと反応し、数秒後に彼女は頷いた
「……はい、知っています。昔、私とカインズが所属していたギルドのメンバーです」
「昨日、犯行に使われたスピアを鑑定してもらった。作成者が《グリムロック》だってことを突き止めた。話してもらえるか?」
長い沈黙の後、彼女は意を決したように口を開いた
「……はい……昨日、お話しできなくて、すみませんでした……。私たちのギルドはある“出来事”……そのせいで、消滅したんです」
「指輪だな」
「どうして……それを?」
「俺たちの仲間が依頼を受けたんだよ、指輪を探して欲しいって。その依頼人がグリムロックさんで奥さんの死の真相に関しても調査してるんだ」
「あの指輪はグリセルダさんが亡くなった日から誰も行方を知らないんです。私が……私と…カインズとシュミットが売却に反対しなかったら……グリセルダさんは…死なずにすんだ…そう思えて…仕方がないんです…」
涙を流し、自分を責めるヨルコの背をアスナが優しく摩る。指輪の売却、その単語にソウテンは顎に手を当てながら思考を巡らせる
「グリムロックはどういう立ち位置だった?黄金林檎で」
「サブリーダーでした。 同時に、グリセルダの“旦那”でもありました。と言ってもこのゲームの中ではですが…」
「グリセルダさんはどういう人だったの?」
「とっても強い人でした。あくまで中層レベルでの話ですけど……。 強い片手剣士で、美人で、頭もよくて……憧れていました。 だから……、今でも信じられないんです。 あのグリセルダさんが、睡眠PKなんて粗雑な手段で殺されちゃうなんて……」
「じゃあ、グリムロックさんも相当ショックだったわよね」
ミトの言葉に、ヨルコの身体が僅かに震わせた
「はい。 それまでは、いつもニコニコしている優しい鍛冶屋さんだったんですけど……事件直後からは、とっても荒んだ感じになっちゃって……。 ギルド解散後は誰とも連絡取らなくなって、今はどこにいるかも判らないです」
「最後に一つだけ。昨日の事件……、カインズを殺したのがグリムロック、という可能性はあるか?」
ソウテンの問いにヨルコは僅かに考え、直ぐに口を開いた
「その可能性があるとしたら、あの人は指輪売却に反対した3人、つまりカインズとシュミット、それに私を全員殺すつもりなのかもしれません……」
さてさて次回も引き続き圏内事件の様子をお送りします。果たして、ソウテン達は事件を解決へ導くことが出来るのか!次回もお楽しみに
NEXTヒント 短剣
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気