蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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第十六幕 第二の事件

「シュミットに話を聞くか」

 

「それはいいけど、連絡取れるのか?テン」

 

「ベルさんに頼めばいいだろ」

 

「そうね、ベルさんなら知ってる筈よ」

 

“ベルさん“、聞き慣れない名にヨルコは首を傾げる。その一方で、ソウテンは慣れた手付きでシステムウインドを呼び出し、その中のフレンドリストからある人物の名を触り、簡潔に説明を交えた文章を送る

 

「すまない!遅れた!待ったか?」

 

「いいや、時間通りだ。さすがはベルさんだ」

 

メッセージを送ってから数十分後、青い髪が特徴的な金属防具に身を包んだ青年が姿を見せた。そう、彩りの道化(カラーズ・クラウン)専属仲介人のディアベルだ

 

「それでシュミットを紹介してほしいって話だけど……詳しく聞かせてもらえるか?何があったんだ」

 

「そうだな。先ず、事の始まりはベルさんがヴェルデに依頼した指輪探しだ」

 

「指輪……ああ!グリムロックさんからの依頼か。しかし、指輪探しとシュミットにどういう関係が?繋がりは無さそうに見えるが」

 

「その指輪が問題なのよ」

 

「というと?」

 

「指輪を巡って、黄金林檎では意見の対立が起きたらしいんだ。結果は売却反対に三人、賛成に七人、その結果、指輪は売却することに決まった……だが、事件は起きた。指輪を売却に行く筈だったリーダーのグリセルダさんは何者かに殺されていた」

 

「なるほど…。その指輪を探す為にグリムロックさんは俺を頼りに彩りの道化(カラーズ・クラウン)へのパイプを繋げようとした訳か。それじゃあ、シュミットはその反対派の一人ってことか」

 

「ええ、このヨルコさんもそうよ。でも……残りの一人は…」

 

アスナの表情に曇りが見え、ディアベルはソウテン達の顔色を確認しようと辺りを見回す。彼等にも僅かに陰りが見え、状況を把握したように頷いた後、ディアベルは口を開く

 

「深くは聞かないでおく。シュミットの件は任せてくれ、後でヨルコさんの宿屋に連れて行く」

 

「助かる」

 

「お安い御用さ……でもな、テン。無茶はするなよ?」

 

ディアベルからの忠告にソウテンは返事を返す代わりに左手を軽く挙げる。何時もとは異なった彼の態度に違和感を感じるが、あの様子には見覚えがあった。かつて、二年前に第一層攻略で初対面した時に見せた自分よりも他者の命を優先するソウテンだ、あれ以降は見ることもなかったが今の彼にはあの時と通じる面が見える

しかし、同時に危なくも見えた。故にディアベルは友としての忠告を送ったのだ

 

「テン。本当の君は何処にいるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディアベルと別れた後、ヨルコが借りている宿屋で待機していると数時間後にシュミットが姿を見せた。ディアベルに事情を聞かされていたようで彼は部屋に入るや否、ソファーに腰掛けたが落ち着かない様子で貧乏揺すりを始める

 

「グリムロックの武器でカインズが殺された。ディアベルがそう言っていたが本当か?」

 

「本当よ……」

 

刹那、シュミットが目を見開く。かつての仲間が売った武器で仲間が殺害された、驚くなという方に無理がある

 

「なんで……なんで!今更!カインズが殺されるんだ!?まさか!あいつが……あいつが指輪を奪ったのか!?つまり、グリムロックは売却に反対した三人を全員殺そうとしているんじゃないのか…!? じゃあ、オレやお前もターゲットにされているのか…!?」

 

「彼に槍を造って貰った他のメンバーかもしれないし。もしかしたら、グリセルダさん自身の復讐なのかもしれない……だって、圏内で人を殺すなんて幽霊じゃなきゃ不可能だもの……」

 

その言葉を聞いたシュミットは絶句した。

部屋の隅で二人を見守っていたキリト達も顔を見合わせるがソウテンは仮面越しに沈黙を貫く

 

「私……昨日寝ないで考えた。結局のところグリセルダさんを殺したのはメンバー全員でもあるのよ!!!あの指輪がドロップした時、投票なんかしないでグリセルダさんの指示に従えばよかったんだわ!!!!」

 

発狂する様にヨルコは叫び、窓際付近に歩いていく

 

「あの時、グリムロックさんだけは……グリセルダさんに任せると言ったわ。だからグリムロックさんには私たち全員を殺して、グリセルダさんの仇を討つ権利があるのよ……」

 

ゆっくり、ゆっくりと窓際へ。不自然な行動にソウテンは違和感を感じるがキリト達は彼女の迫力に圧倒され、その違和感に気付かない

 

「……なんで今更…半年も経ってから、何を今更……お前はそれでいいのかよ!? こんな、わけも解らない方法で殺されていいのか!?」

 

シュミットが言葉を発し、ヨルコが反論を返そうとした、正にその時だった

彼女の体が大きく揺れ、その背中に突き立てられた一振りの投げ短剣(スローイングダガー)が目に入った。体制を崩した彼女は窓の外へ落下し、地面に落ちると同時にポリゴンとなり、消滅した

 

「くっ!アスナ!ミト!後を頼む!俺はあっちを!」

 

「待ちなさい!キリトくん!」

 

「キリト!」

 

アスナ、ミトの制止を聞かずに飛び出そうとするキリトの横を一つの影が横切る。仮面越しに見えた瞳は静かな怒りを燃やし、口を開く

 

「キリトとアスナは待機、ミトはベルさんに報告。ローブの方は俺が追う」

 

冷静ではあるが違和感を感じさせる表情から、的確な指示で場を纏め直したソウテンは窓から跳躍。隣の建物に飛び移り、目の前のローブのプレイヤーと向き合うが彼を見た途端にそのプレイヤーは走り出す

 

「舐められたもんだ。逃がす訳ねぇだろうが」

 

追随し、左手でコートの内側に装備していた三本のピックを投剣スキル《シングルシュート》を発動させ、投擲した。しかし、三本のピックは暗殺者の寸前で紫色のシステム障壁に阻まれてしまった

刹那、大きな鐘の音が耳に入る。音と合わせ、転移する街のコマンドを唱え、プレイヤーは姿を消した

 

「……転移結晶、それにダガー…。なるほどな、そういうことか。やれやれ……どうやら、騙すのが専売特許のこの道化師(クラウン)が騙されたみたいだ。策士だねぇ…あの二人」

 

殺伐とした雰囲気から何時もの不敵な笑みを携えた態度に戻り、ソウテンはヨルコの借りていた部屋に戻る

扉の先には鎌を片手に綺麗な笑顔のミトが立っていた

 

「テン…何か言い残すことはある?」

 

「………じゃ、俺は英会話のレッスンがあるんで」

 

「逃がすかぁっ!」

 

何食わぬ顔で扉を閉め直し、立ち去ろうとするソウテンの頭上に御約束が振り下ろされる

 

「ごぼっ!?何すんだコラァ!ミト!口から頭の中身が飛び出たら、どうすんだ!?責任取れんのか!」

 

「大丈夫よ、テンの頭には何も入ってないから。飛び出す心配なんかないわ」

 

「そうか、なら心配ないな……って!誰の頭の中が空だ!」

 

ミトと何時ものやり取りを始めるソウテンの姿、この光景をキリトを知っている。仲間たちとのやり取りの中で見る親友(ソウテン)の姿だ

 

「で、空っぽ(テン)。ローブのヤツが何者なのか分かったか?」

 

「残念ながら、性別と声すらも判別不可能だねぇ。確認する前に逃げられちまった。あと、誰が空っぽだ」

 

「そうか……使えない迷子だ」

 

「おいコラ、聞こえてるぞ。ぼっち」

 

キリトの呟きにソウテンが反応を示す横で、シュミットが恐怖で震えていた。その顔は青ざめ、幽霊でも見たような反応だ

 

「あ、あれは……。 グリセルダが着ていたローブだ……。 オレたちに復讐に来たんだ。あれはリーダーの幽霊だ」

 

「幽霊!?」

 

「アスナはこの手の話、苦手よねぇ…」

 

「平然としてるミトがおかしいのよ!普通は怖いじゃない!だって幽霊よ!?幽霊!」

 

「慣れると意外に平気だったするわよ?こういうのって」

 

「おい、キリト。ミトのヤツがまた頭のおかしいことを言ってんぞ」

 

「きっと、昨日の夜に食べた鍋が良くなかったんだ。何せグリスが作ったバナナ鍋だったからな…あれは酷かった」

 

「あれか……仕方ない、ゴリラに料理を任せた俺たちにも非がある。だから、今は暖かい目でミトを見守ろう」

 

「暖かい目…そうだな、そうしてやろう」

 

ミトの方に視線を向け、暖かい目でアスナを落ち着かせる彼女を見守る

すると、その視線に気付いたミトが彼等の方に視線を動かす

 

「…………何してるの?」

 

「見ての通りだ」

 

「暖かい目でミトを見守ってる」

 

「やめてくれる?なんていうか、すごく気持ち悪い。というか二人がセットでその顔をするだけで寒気がしてくる」

 

「待て。気持ち悪いとは何だ、仮にも俺はおめぇさんの彼氏だぞ。気持ち悪いのはこの妖怪真っ黒ぼっちだけだ」

 

「誰が妖怪真っ黒ぼっちだ!この傍迷惑万年迷子!」

 

「迷子じゃない!俺は地図を読めないだけだ!」

 

「致命的だろ!?それ!迷子がよくやるミスだろ!」

 

「だから迷子じゃない!」

 

「やかましい!!」

 

「「ぐぼっ!」」

 

物理的に二人のバカ(ソウテンとキリト)を黙らせ、シュミットを送り届ける為に聖竜連合本部へミトとアスナは向かう

彼女達が居なくなるのを確認し、キリトは起き上がるとソウテンの体を揺する

 

「テン。起きろ、ていうか起きてるだろ」

 

「まあな。んで?なにかね?キリト」

 

「お前。この事件の真相に気付いてるだろ」

 

「ふむ…どうして、そう思う?」

 

「あのローブのプレイヤーを追う前と今のお前は明らかに雰囲気が違う。追う前はこの世界に来る前のお前だ。でも今はこの世界に来てからの……いや、子どもの頃みたいだ。俺が知る、何時ものテンだから、そうなんじゃないかって思ってな」

 

キリトの指摘に、ソウテンの仮面の奥で瞳が笑う。不敵で謎を連想させる笑みが黄昏の街に浮かぶ

 

「なるほど…。なら、真相を話そうか。そう……見ているようで、実は何も見ていなかった姿無き鎮魂歌(レクイエム)の真相を」




シリアス難しい……故にソウテンにはギャグキャラへと戻ってもらいます!この方がテンらしいよね!おかえり!迷子(テン)
次回は解決編です!その後はちょっとしたギャグ回をやりたいなと思ってます

NEXTヒント 棺桶

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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