蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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こ、今回は頑張りました……疲れた。ちなみに今回はテンがキレます、それはもうかなりキレます


第十七幕 笑う棺桶

第50層主街区アルゲード 彩りの道化(カラーズ・クラウン)ギルドホーム

 

シュミットを送り届けたミト、アスナと合流したソウテンとキリトは状況整理を行う為にギルドホームへと戻って来ていた

 

「で、どういうことなんだ?見ているようで、実は何も見ていなかったって言うのは」

 

「無論、言葉通りの意味だよ。俺たちは見える偽りに騙され、見えない真実を見落としていた訳なんよ」

 

「ん…つまり?」

 

「どういうことなの?テンくん」

 

「うーむ…つまりだな」

 

状況を把握出来ないキリトとアスナが首を傾げる横で考え込んでいたミトが何かに気付き、顔を上げた

 

「そうか……そういうことね!」

 

「おっ、ミトは気付いたみたいだねぇ」

 

「ええ。確かに圏内ではプレイヤーのHPは減少しない、其れでも私たちの目の前で確かにカインズとヨルコさんは死んだ。でも其れは用意された偽りの死だった。そうよね?テン」

 

eres correcto(正解)!さすがはミト!」

 

「偽り……そうか!減ったのはHPじゃなくて、耐久値だ!損傷ダメージなら圏内でも継続される。其れを利用して、鎧に貫通継続ダメージが発生する槍を刺して損傷させてから、鎧が破壊される寸前に教会の二階の窓から飛び降りた……って推理で合ってるよな」

 

「これまたeres correcto(正解)!キリトも意外に推理力あるねぇ、ぼっちだけど」

 

「ぼっちじゃない。俺は効率重視型なだけで、決してぼっちじゃない」

 

「でも、テンくん。其れだとカインズさんが消えた説明がつかないわ。落下したカインズさんが消えるのを私たちはこの眼で確認したのよ?あとキリトくん、うるさい」

 

アスナの意見も尤もだ。確かに教会の二回から、落下したカインズの姿を確認した

更に言えば、其れを最も近距離で目撃したのはロープを切ろうとしたソウテンに他ならない。だが、彼はアスナの意見に対し、不敵な笑みを崩さない

 

「言ったろ?見える偽りと見えない真実って。そのアスナの意見こそが二つ目の見えない真実に関係してるんよ」

 

「見えない真実……あっ!転移結晶ね!転移結晶のテレポートと死亡エフェクトは似てるから、其処を狙った!そうよね!テンくん!」

 

「おっ、アスナもeres correcto(正解)!やるじゃん、副団長の肩書きは伊達じゃないねぇ」

 

「ヨルコさんは最初から背中にダガーを刺して、私たちと話しながら服の耐久値が切れる寸前に窓から飛び降り、耐久値が無くなった服がポリゴンを四散すると同時に転移結晶を使ったのね」

 

「そっ。ヨルコさんは多分、どっかの街でカインズと合流してんじゃないかな。ローブのプレイヤーはカインズだったと思うし」

 

「なるほど。なら、これで事件は解決だな」

 

「だねぇ」

 

事件後の処理は本人達が対処する筈、故にソウテン達は安堵し、圏内事件は幕を閉じたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第19層 十字の丘

 

薄暗い丘の上、この場所にはある人物が眠っている。その名はグリセルダ、黄金林檎のリーダーを務めた女性プレイヤーだ

しかし、彼女の墓前には一人の男、シュミットが横たわっていた。彼の直ぐ側に立つヨルコ、カインズは震えが止まらない

 

その視線の先にはフードを目深に被り、赤黒い刃を持つ肉厚の大型ダガーを携えた男を筆頭に同様にフードを被った二人の男。ヨルコ達は彼等を知っている

 

否、この世界で彼等を知らぬ者は存在しない

 

右手に見える棺桶と髑髏の刺青(タトゥー)

 

彩りの道化(カラーズ・クラウン)が仲間を守るが故に道化を演じる者の集まりであるならば、彼等は殺戮を好むが故に道化を演じる者たち

 

その名は

 

「さ、殺人ギルド……笑う棺桶(ラフィン・コフィン)……!」

 

犯罪者ギルドの中でも最悪と呼ばれる彼等の思想は奪えるものは奪えばいい、殺せるのなら殺せばいい。正に犯罪者達の為に作られた最悪の居場所だ

そして、この場に立つのは幹部の中でも有名な三人。毒ナイフ使いの黒いマスクが特徴的な『ジョニー・ブラック』、赤い髪と赤い瞳が特徴的な針剣使い(エストック)『赤目のザザ』の二名

 

そして、彼等の背後で妖しく佇む人物。目深に被ったフードの下には得体の知れない空気が溢れ、艶消しのポンチョは体をすっぽりと覆っている。男の名は『PoH(プー)』、犯罪者ギルド笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の頂点にして、殺戮者の集まりを束ねるリーダーである

 

「さぁて、どう料理したもんかねぇ……」

 

「あれ!あれやろうよヘッド!『殺し合わせて、生き残った奴だけ助けてやるぜ』ゲェーム!」

 

「ンなこと言って、お前こないだ結局残った奴も殺したろうが」

 

「あっあーっ!今それ言っちゃゲームにならないっすよ、ヘッドォ!」

 

緊張感の無いやり取りだが、ソウテン達のやり取りとは明らかに異なっていた。内容からは物騒で悍ましく、恐ろしさしか伝わらない

 

「さて、取りかかるとするか」

 

PoHがシュミットに歩み寄り、握っている大型短剣『友切り包丁(メイトチョッパー)』を大きく振り上げた。体に力が入らず、恐怖で震えが止まらない。シュミットは目を閉じ、死を覚悟した

 

「ショウタイムという割には道化師(クラウン)が居ないようじゃないの。PoH」

 

突如、放たれた声にPoHの手が止まる。振り返った先には仮面越しに不敵な笑みを携え、風に青いコートとマフラーを靡かせた一人の道化の姿。彼を知っている、いや知らぬ者が居る筈ない、その道化は少数であるが精鋭ギルドを束ねるリーダーである

 

「フン。誰かと思えば……てめぇか、《蒼の道化師》。それよか、状況わかってるか?恰好よく助けに来たつもりだろうが、お前一人で俺達三人を相手に出来んのか?」

 

「難しいだろうねぇ……まあ、一人ならの話だけど」

 

「なに…?」

 

「つまりはこういうことよ」

 

「……《紫の死喰い》。てめぇも一緒か……其れに」

 

首筋に突き付けられる鎌の先に立つのは薄紫のポニーテールを靡かせる少女の姿、彼女もまた名の知れたプレイヤーである

ヨルコにエストックを突き付けていたザザの側には黒い装備の少年が佇む

 

「退くことをオススメするよ。今の俺たちは対毒POT(ポーション)を飲んでるし、結晶(クリスタル)もありったけ持ってきた。これで最高でも20分は稼げる」

 

「それだけあれば援軍が駆け付けるには充分よ。貴方達、三人だけで攻略組と彩りの道化(私たち)、総勢で三十八名を相手に戦える?今日はキリトの言うように退散した方がいいわよ」

 

「ちっ……」

 

黒の少年《キリト》、紫の少女《ミト》の言葉を聞き、PoHは小さく舌打ちする

沈黙した睨み合いが続いた後、PoHが指を鳴らす。その瞬間、残りの二人は構えを解き、突き付けられたエストックが離れ、ヨルコは膝をつく

 

彩りの道化(お前たち)は絶対に殺してやる……特に《蒼の道化師》、《黒の剣士》は必ず、命を刈り取ってやるよ。期待してな……大事なもんが根こそぎ奪われる恐怖を抱きながら」

 

「………やってみろよ。言っとくがな、俺は仲間(ミトたち)を傷付けるヤツを許さない……その時は逆にお前たちを世界そのものから、強制退場(ログアウト)させてやる」

 

道化ではないもう一人のソウテンが仮面越しに殺意を覗かせる。その姿にPoHは僅かに表情を歪めた後、ジョニー・ブラックと赤目のザザと共に夜の闇の中に消えた

 

「解毒ポーションだ」

 

「ああっ……、悪いな」

 

「ヨルコさん、また会えたねぇ 。そいで?初めましてかと言うべきかい?カインズさんには」

 

シュミットにキリトが解毒ポーションを渡す横でソウテンがヨルコ、カインズに声を掛ける。その不敵な笑みに僅かに表情を緩ませ、カインズが口を開く

 

「いえ、正確には二度目です。あの瞬間、僅かにでしたが目が合いました。予感はしてたんです……仮面越しでしたが、貴方には全てを見抜かれている…そんな予感が」

 

「買い被りすぎじゃねぇか?そいつは。俺は騙された側だよ」

 

「そうよ、この人は道化師(クラウン)を名乗ってるのに騙された迷子(バカ)よ」

 

「ああ、全くだ。《蒼の道化師》とか呼ばれてるくせに逆に騙されるなんて、困ったヤツだよ…この傍迷惑迷子野郎(バカテン)は」

 

「……おめぇさんたち、悪口に混じって迷子って言ってない?」

 

「「気のせい、気のせい。テン(迷子)」」

 

「そっか、気のせいか……って!言ってんじゃねぇの!やっぱ!」

 

「「ちっ…気付いたか」」

 

殺伐とした雰囲気を上塗りするように馬鹿騒ぎを始めるソウテン達。その様子をヨルコ、カインズは呆然と見ているがシュミットは違った

麻痺から回復した後、口を開く

 

「ソウテン!助けてくれた礼は言うが、どうしてわかったんだ?あの3人がここで襲ってくるって……」

 

「うーん……まあ、勘かな?グリムロックが武器を作成した背景を俺の仲間が調べててさ。そいつを踏まえた状態で、グリセルダさんの事件を改めて推理してみたんよ。その結果、こういう結論に行き着いた」

 

暫くの沈黙が訪れ、ヨルコ達は息を呑んだ。仮面越しに不敵な笑みを崩さない彼はやがて、口を開く

 

「犯人はお前だ、グリムロック」

 

その言葉と共にソウテンが指差した小高い丘の上に一人の男が姿を見せる、黒いハット帽に丸サングラスを身に付けた男の名はグリムロック。渦中の人物にして、今回の事件の裏で糸を引いていた存在だ

 

「………なるほど。頭の切れる人だ、さすがは道化師(クラウン)と呼ばれるだけはある」

 

彼は微笑し、丘の上からグリセルダの墓前まで、ゆっくりと歩いて来る

 

「グリムロック……さん……貴方は、本当に私達を……?それに……グリセルダさんを…?なんでなの!グリムロック!なんでグリセルダさんを?!奥さんを殺してまで指輪をお金にする必要があったの!?」

 

涙を流し、叫ぶヨルコ。その姿に誰もが理解した彼女の瞳に宿る憎しみを、しかしながら、彼は、グリムロックは違った

 

「金の為じゃない、私はどうしても彼女を殺さなければならなかった……彼女がまだ私の妻である間に……」

 

「どういうことよ。それ」

 

「彼女は現実でも私の妻だった。一切の不満のない妻だった。可愛らしく従順で、ただの一度も夫婦喧嘩もした事はなかった……しかし、共にこの世界に囚われた後、彼女は変わってしまった……強要されたデスゲームに怯え、竦んだのは私だけだった。彼女は現実に居た時よりも、遥かに生き生きとして充実した様子だった……ギルドを作ると言った時も、私は反対した……! しかし、彼女は聞かなかった! 私は悟ってしまったのだ、私の愛した彼女は、《ユウコ》は消えてしまったのだと……」

 

「そんな理由で……アンタは人の命を何だと思ってるんだ!」

 

「理由としては充分すぎる。君にもいずれわか----ぐっ!?」

 

キリトが怒り、剣を鞘から抜こうとした時だった。グリムロックの眼前を何かが掠めた、その先に立つのは槍を手に佇む仮面の道化師。瞳は笑みを失い、代わりに怒りが見える

 

「お前が愛情を語るんじゃねぇ!いいか!?そいつはな!単なる欲だ!あさましい支配欲!其れに人を人だとも思わねぇ所有欲だ!次にその(ツラ)を俺の前に晒してみろ、今度は掠めるだけじゃすまさねぇ!!覚えとけ!」

 

そう告げたソウテンの言葉はグリムロックではない他の誰かに向けられている様な気がミトには思えた

この数日で垣間見た自分の知らない想い人(ソウテン)の一面、其れが気になるが彼女はこう思った

 

(今は信じよう、私が信じたテンを。仲間たち(キリトたち)が信じるリーダーを……きっといつかは話してくれるわよね?天哉(テン))

 

ヨルコ達と話すソウテンの背に僅かに笑みを浮かべ、ミトは笑いかける

次第に空は明るくなり、白い霧が辺りを包む

 

「いやぁ、さすがだな。見事な推理だったぞ!テン!」

 

「いやぁ、それほどでも」

 

「あっはっはっはっ」

 

「ふっふっふっふっ」

 

「あっはっはっはっ」

 

「ふっふっふっふっ」

 

「あっはっはっはっ」

 

「……って!バシバシすんな!イテェんだよ!このぼっち!」

 

「なんだと!?人が褒めたのになんだ!その態度は!この迷子!」

 

暫くの間、笑い合っていたかと思えば、喧嘩を始めるソウテンとキリト。互いの武器をぶつけ、騒ぐ彼等にミトが歩み寄る

 

「やかましいわっ!バカどもっ!!」

 

その声と共に鎌が振り下ろされ、ソウテンの槍とキリトの剣の間に命中。そして、耐久値が尽きた槍と剣がポリゴンとなり、消えた

 

「「…………ぎゃぁぁぁぁ!!」」

 

「あっ……ごめん」

 

「「ごめんですむかっ!!!」」

 

槍と剣、二つの尊い戦力を犠牲に事件は幕を閉じた。唯一の相棒を失い、失意の底に叩き込まれたキリトは早々に転移結晶でギルドホームに戻るがソウテンは違った

ミトが彼の視線の先を見ると、其処に、彼女は立っていた

 

「あ、あれって……ねぇ!テン!アレ!」

 

「グリセルダさん。依頼は完遂だ、我々はこれにて幕引きとさせていただきます」

 

その言葉を聞き、墓の横に立つグリセルダが微笑んだように見えた。其れはまるで、朝陽の光に照らされ、深々と頭を下げる道化師に送られた賛美の笑みであった




さーて!次回はミトが破壊した武器の代わりを作ってもらう為にアルバイトをすることになったテンとキリト……だが店も客も問題だらけ!一体どうなる!?

NEXTヒント 刀匠

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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