2024年7月12日 第50層主街区アルゲード
「こ、これは……!」
「嘘だろっ!?実在してたのかよ…!」
「俺の運は最高ステータスだからな」
ソウテンとグリスの視線の先には一匹の兎型モンスターを自慢気に持つキリトの姿があった。このモンスターの名は《ラグーラビット》、SAOに於ける食材となるモンスターの中でも高級レア食材に位置付けられる
「これは正真正銘の《ラグーラビット》に間違いありません。市場に出回る事がない為に実物を見るのは初めてですが、その味は絶品だと聞きます」
「……じゅるり。其れって、焼き鳥よりも美味しい?」
「当然です。焼き鳥はおろかパスタやピーナッツバター、バナナをも凌ぐ旨味を持つとされています」
「なにっ…!ピーナッツバターよりも美味いだと…!!」
「ということはだ。パスタと一緒にしたら、絶品料理になること間違い無しだな」
「焼き兎…悪くない」
「バナナにも合うよな?ぜってぇ」
「「「「それは違う」」」」
「全員一致かよっ!?」
現在、この場にはソウテン達以外に居ない。ミトはシリカを連れ、親友のアスナとリズベットからの誘いで、女子会に出掛けている。故に男性陣だけの状態だ
「そんで…誰がこれを調理すんだ?言っとくが、俺は出来ねぇよ?」
「俺も料理スキルは上げてないな」
「俺もだぜ」
「大丈夫だ。ゴリラには最初から期待してない」
「誰がゴリラだっ!ぼっち!!」
「ぼっちじゃない!ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ!!!」
「てめっ!学名で呼ぶんじゃねぇ!!!」
「喧嘩は良くねぇよ、仲良くしな。おめぇさんたち」
「「迷子は黙ってろ」」
「……表に出ろや!ぼっちにゴリラ!!!」
騒ぐソウテン達を他所にヴェルデは本を読み、ヒイロは焼き鳥を頬張る
慣れが生む余裕、長い付き合いであるからこその行動。此れがシリカであれば、多少は取り乱したかもしれないが二人は気にも留めようとしない
「せっかくですから、ディアベルさん達を呼びましょうか。ヒイロくん」
「良い考え。さすがはヴェルデ」
そう言うとヒイロはフレンドリストの中から、交流の多い友人達宛にメッセージを送る。数分もすると直ぐに返信が届く
「ベルさんとエギル、クラインから『オッケー』って返事が来た」
「それはそれは楽しくなりますね」
数時間もすると、ギルドホームにアマツとディアベルが姿を見せる。その背後にはエギルとクライン、そしてクラインの率いるギルド《風林火山》のメンバーの姿が見受けられる
「よっ!久しぶりだなぁ!」
「おおっ!生きてたか!クライン!」
「そりゃあ!こっちの台詞だぜ!おめぇらみたいなコント集団がまだ生きてたとはな!」
「誰がコント集団だ。張っ倒すよ?ヒゲ」
「んだと!迷子!リア充のくせして、調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
ソウテンがクラインと喧嘩を始める隣でキリト達は鍋を囲む。メイン食材は当然ながら、《ラグーラビット》、その他にもディアベル達が持ち寄った様々な食材が並ぶ
「それにしてもキリト。《ラグーラビット》なんて、良く捕まえられたな」
「別に運が良かっただけだよ。ギルドに帰る途中で見つけた時は俺もさすがに夢かと思った」
「なんなら、俺が買ってやろうか?言い値で買うぞ」
「やだよ。お前、直ぐにぼったくるし」
「そ、そんな事はない…!よし!5000出そう!」
「却下だ」
「ふむ…《ラグーラビット》か。丁度いい、新作の斬れ味を確かめようと思っていたところだ。俺が調理を担当しよう」
アマツが包丁片手にそう告げ、キッチンスペースに歩いていく
その姿に多少の不安は否めないが、彼に意見可能な人物は存在しない。特に刃物を手にした彼に意見するのは、死に直結する行動である
「ところで、職人って料理出来たんか?」
「出来るんじゃないか?一応は一人暮らしな訳だからな」
「でもよ……職人だぜ?」
「うーむ…不安しかないんは確かだ。でも、職人以外に料理スキルがあるヤツがいる訳でもねぇしなぁ…」
「文句があるか?」
「「「滅相もありません」」」
包丁を手にぎろりと目を光らせるアマツにソウテン、キリト、グリスが全力で否定する。その手は止まらず、的確に捌きで、料理を仕上げていく
「手際が良いな。アマツ」
「無論だ。こう見えても、料理は得意分野だ」
「意外だな。テンが料理した時とは大違いだ」
「ベルさんは張っ倒されたいんか?」
同時刻。第35層主街区ミーシェ
「最近……テンが分からないのよ」
レストランでスイーツを囲み、和気藹々としていた女性陣にミトが切り出す
その瞳は寂しげで儚さを感じさせる。普段の彼女からは、かけ離れた姿だ
「分からないって…どういうことよ?ミト」
「偶に…テンが怖いの」
「怖い…それって、危なかっしいとかの怖いですか?」
シリカの問いにミトは首を振る。但し、この場合は否定の意味だ
「手を伸ばそうとしても…届かないの。まるで、私の声が聞こえてないみたいに……。おかしいわよね……何時も一緒なのに…。でもね…信じようとすれば、する程に…分からなくなるの…」
「ミト…」
「ミトさん…」
顔を俯かせ、拳を握り締める信じたいのに信じられない、普段とは違う別の側面に最近では恐怖を感じる。現実世界では感じなかった気持ち、本当に自分は彼を愛しているのだろうか…と考えることもある。涙がこぼれ、服の裾を濡らす
「ああもうっ!じれったいわねっ!直接、ソウテンのヤツに確かめればいいじゃない!そんなの!」
「出来たら、苦労しないわよっ!!でも……でも……信じたいのよ…」
「そうよね……。声が聞こえないのは、辛いわよね。私は理解出来るわ…ミトの気持ち」
「アスナ…」
アスナも似た経験があるのか、苦笑を浮かべ、ミトの背中を優しく摩る
シリカはあたふたしながらも、運ばれてきたチーズケーキを差し出す
「ミトさん!これ食べてください!美味しいんですよ!」
「ありがとう。シリカちゃん」
「あ、あたしの食べなさいよ!美味しかったわよ!これ!」
「リズ?お皿に何もないんだけど…」
負け時と皿を差し出すが、其処には何も無い。厳密には食べかすしか乗っていない
「あっ…ごめん。食べちゃったあとだったわ…」
「もぉー!リズったらー!仕方ないわねー」
他愛もない時間、僅かに安らいだ心がミトの背中を押す
(帰ったら…テンと話そう…。私の気持ちを……伝えよう…)
「…………」
ギルドホームの庭。ソウテンは一人、夜風に当たるように佇んでいた
水溜りが創り出した鏡のような水面に映るのは仮面の無い自分の姿。その顔は凶悪な笑みを浮かべている
『俺はお前だ』
「ああ…」
語りかける、仮面で隠したもう一人の自分が。まるで囁くように
『もういいだろ?あとは俺に任せろよ。全てを壊そう…。そうすりゃあ、自由じゃねぇか』
「俺の望む自由とお前の語る自由は違う」
『ククッ……本当にそうか?少なくとも、お前自身も思ってんだろ?じゃなきゃ、俺が居るはずねぇだろ。お前は逃れられねぇんだよ!俺って闇からな!!!』
「うるさい……黙れっ!!!」
闇、誰にでも必ずある其れは、確実にソウテンの心を蝕んでいた。黒く塗り潰すように、全てを呑み込みながら、彼の心を支配しようとしている
『お前が全てを俺に委ねた時、
声が聞こえなくなり、静寂の世界にソウテンは佇む。抑えきれない黒い衝動、そして、行き場の無い怒り……
「…………ごめんな。ミト……」
愛する者の名を呼び、彼は奥歯をぎりっ、と噛み締めた
黒い衝動、その行方は一体……
NEXTヒント 黒い衝動
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気