『よし…じゃあ、行くか。ミト』
そう言って、彼が手を差しだてくれた日を今でも鮮明に覚えている。あの日、彼が目の前に現れたのは偶然だった。友達と孤立し、一人で泣いていた、私の前に彼は現れた
見た目は不良なのに、表情をころころ変える彼を見ていると自然に笑顔が浮かんできた
彼と過ごす毎日は楽しい事の連続で、笑いが絶えなかった。私が知らない世界を見せてくれる彼を好きになるのに時間は掛からなかった
気付くと当たり前のように彼が側に居て、皆と笑い合うことが日常になっていた。私が中学に通うようになってからも、その日常は変わらなかった
放課後に彼の待つゲームセンターに足を運ぶと、決まって彼は格闘ゲームの前に座っていた
『ゲームやるか?ミト』
私にそう言って、笑いかける姿は年相応で、負けまいと必死に足掻く姿は無邪気だった
別に付き合っていると言う感覚はなかった。互いに意識はしていたし、一緒に居ることが当たり前だったし、彼の側に居る時が楽だと感じれることが出来た
其れでも学校に行くと疎外感を感じた。ゲームとは無縁の生活に気が遠くなりそうになったりもした。そんな時だ、アスナに出会ったのは。彼女の存在で、私は彼と居る時と同じくらいに自分らしく過ごせるようになった
放課後に他愛もない話をして、笑い合う。初めての同性の友人に私は胸が踊った
故に毎日のように通っていた場所への足は次第に遠退き始めた。其れでも週末に足を運ぶと、彼は何時ものように笑いかけてくれた
だからかもしれない……私が彼を知ろうとしなかったのは。勝手に彼は自由だ、と決めつけ、その闇に気付いてあげることも出来なかったのは
「テン………」
ミトside out
黒い衝動。其れを自覚したのは何時だっただろうか?気付くと、決まって、目の前には顰め面で鎮座する警官の姿があった
暴れていると、決まって、黒い衝動は語りかけた。『全てを壊せ』と。その通りに怒りを打つけた、気持ちは晴れないが、それ以外のやり方を知らなかった
自由を求め、夜の街を彷徨い、暴れた。何かを主張したかった訳でもなかった、只管に黒い衝動が語りかけるままに、暴れて、暴れて、暴れた。まるで荒れ狂う獣のように
そんな日々が続いた時だ。彼女に出会ったのは、ゲーム機を片手に寂しさを押し殺そうとする彼女を見ていると、何故かは分からないが、手を差し伸べられずにはいられなかった
声を掛けると、彼女は警戒心を抱きながらも、顔を上げた。濃紫ががった黒色の長髪に緑の瞳、何よりもその美しい顔立ちに目を奪われた
気付くと、彼女に手を差し出していた。不思議だった。彼女と居る時だけは黒い衝動が聞こえなかった。次第に当たり前のように彼女が側に居て、皆と笑い合うことが日常になっていた
だが、この仮想世界で過ごし始めた時から、黒い衝動はまた語りかけるようになった
あの頃よりも鮮明に聞こえる声は、俺を映しとったような姿で、目の前に現れるようになった。全てを見透かしたような凶悪な笑み、怒りを具現化した“アイツ”を隠すように、顔にも、心にも、偽りの仮面を冠った
「…………誰か、俺を……闇から……引き摺り出してくれよ……。助けてくれよ……」
ソウテンside out
「これから回廊結晶を使い、笑う棺桶が根城にしている洞窟前に移動する」
作戦開始時間となり、幹部の一人が目的地の洞窟へと向かう為に回廊結晶を掲げる。その間、ソウテンの周りに誰も近付く気配は無かった
其れは
其処に彼等が慕い、信じ、憧れた背中は無い。有るのは ひしひしと伝わる躊躇いの無い殺気。かつて、差し伸べられた筈の手は、冷たくなっていた
「職人。もしもの場合に備えて、《ダークリパルサー》の調整を頼みたい」
「良いだろう。但し……無理はするな」
「ああ…分かってる」
草叢に身を潜めつつ、キリトはアマツに《ダークリパルサー》を渡す。目の前には洞窟に通ずる坑道があり、確認する限りは人の出入り自体は見受けられない
「よし、行くぞ」
聖竜連合幹部の号令と共に討伐隊は洞窟に続く坑道を通り、笑う棺桶が居ると思われる、大部屋へと突入する。だが、其処には人の気配すら無ければ、影一つ無い
「妙です…気配が無い」
「………っ!ヴェルデ!!後ろ!」
周辺を見回すヴェルデの背後に刃が迫る。逸早く、気付いたヒイロがブーメランを投げ、弾き飛ばす
次々と襲い掛かる
(情報が…漏れていたのか…!何故だ…何故!一体、何処から!!)
休み暇なく、代わる代わる向かってくるプレイヤーにキリトは剣を振るう。殺さないように最低限のダメージを与え、相手が止まるように仕向ける
だが、その手は止まらない。殺さずに生かす、この作戦の趣旨故に留めを指すことはあってはならない
「邪魔だ」
「なっ……!」
突如、キリトの目の前で男の体がポリゴンを四散させた。目を見開き、槍が飛来した方向に視線を向ける
「吐け……PoHは何処だ」
男の胸ぐらを掴み上げ、ソウテンは尋問するように問いかける
「こ、此処には居ない…」
「そうか。なら、消えろ」
胸に槍を突き刺し、次々と
全てを壊す為だけに生まれたように彼は其処に佇む。身を翻し、逃亡を図るプレイヤーが居ようものならば、槍を投擲し、その体をポリゴンへと変える
「がっ……!!た、頼む…!助けて…!」
「………お前はそう言った奴等を助けたんか?」
質問の答えが返るよりも前に槍を突き立て、その命を奪う姿に
「逃げましょう!あたしたちなら、今まで通りに二人でやれ--がっ!!」
「グウェン!!」
洞窟の外に居た二人組の少女は異変に気付き、逃げようとするが小柄な少女《グウェン》の背に槍が突き刺さる
髪の長い少女《ルクス》が彼女に駆け寄ろうとする。しかし、洞窟の中から姿を見せた仮面の青年に足が竦み、動きたくても、動けない
「オレンジにグリーン……どういう関係かは知らんが、此処に居る以上は見過ごせん」
「グウェ…」
「ルクスに触るなっ!!」
「まだ動けるんか……なら、処分するまでだ」
グウェンに槍が突き立てられる瞬間、ルクスは恐怖で目を閉じる
「テン!!やめろ!全部終わったんだ!この子達は関係ない!!あったとしても、殺す必要は無い筈だっ!!」
彼の槍を受け止めるように二本の剣を交差させ、少女達を守るようにキリトは立っていた
「………まだ、終わってねぇ」
「言っても分からないみたいだな……。なら、力尽くで止めてみせる。
「邪魔をするなら……お前でも容姿せん。
討伐作戦は三十名以上の死者を出す形で幕を下ろした。しかし、すれ違い、信じる事を忘れた彼に、声は届かない。故に、《
「「この……分からず屋っ!!!」」
その言葉を放つと同時に彼等は地を蹴り、金属音を響かせた
ぶつかり合う二つの色、互いに想いを刃に乗せ、一人は全てを壊す為に、一人は全てを守る為に
そして……紫の少女は、彼を止める為に
NEXTヒント 涙
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気