「……ここで全部。終わらせる」
「させないっ…!させるワケがない…!俺がお前を止める!!!」
槍と剣がぶつかり合い、金属音を響かせる。黒い衝動はソウテンを呑み込み、その闇を増幅させ、只管に語りかける
『全てを壊せばいい。邪魔をするヤツは処分しろ、お前はそういうやり方しか知らねぇんだから』
『そうだ……壊せばいい。邪魔する奴は、斬ればいい……この世界では、其れが全て、正当化される…』
彼に差し出しされる手は無い。全てを拒絶し、仲間たちと袂を別ってしまったのは自分だ
止まらない、止めようにも。溢れ出した闇は、塗り潰すかのように、黒く、心を蝕む
「バカだな、お前は。」
「バカでもいい…お前を止められるなら、俺は何にだって、なってやる!例え、其れが、バカに見えようが!道化に見えようが!関係ないっ!!!俺の知るお前は、俺たちに手を差し出してくれたソウテンは!リーダーは!そういうヤツだ!!!」
「其れがバカだって言うんだ……お前は何時もそうだ。勝手に人の間合いに土足で踏み込んで、心を掻き乱す……頼むよ。もう…俺を楽にさせてくれ」
キリトの言葉に応えるようにソウテンはそう告げる。本心であるかも分からない、その言葉に奥歯をぎりっ、と噛み締める
「うるせぇぇぇぇ!!一人で勝手に背負いこむな!!俺たちは仲間だろ!!お前は俺たちに居場所をくれた!!だから、今度は俺たちがお前を助ける!お前が何度、手を振り払っても!その度に俺たちは手を差し出す!だから!一度くらい、素直になりやがれ!!
二本の刃がソウテンの槍の前で交差し、怒涛の剣撃が叩き込まれる。その姿に洞窟から出てきたミト達は歩みを止める
「キリトのヤツ……テンと戦ってんのか?まさか」
「二刀流……ユニークスキルだよ。あれ」
「無茶はするな、と言ったんだがな」
「しかし……何故、テンとキリトが?しかもデュエルという訳でもなさそうだ」
「テンを……止める為よ」
ディアベルの疑問にミトが答える。彼女は鎌を握り締め、口を噤みながらも、槍と剣の鍔迫り合いを見据えている
目を逸らさずに、変わり果てた想い人の姿を追う
「あんなリーダー……見たくない」
「僕もです……まるでリーダーではないみたいです…」
「………目ェ、逸らしてんじゃねぇぞ。ガキども」
「グリスさん…」
「さすがにバカな俺にだって分かる。キリトが一番辛ェに決まってる。アイツは俺たちが出会うよりも前からずっと、テンの野郎と一緒に居んだよ……そのアイツが辛くねぇわけねぇだろ」
「グリスの言う通りだ。人には誰しも闇がある、テンの場合はその闇が誰よりも深い。故にヤツは誰にも助けを求められずにいた」
「その気持ちを汲み取ったキリトが全力を出すのは当然だと俺も思う。生半可な覚悟では、仲間に……ましてや、親友に刃を向けることは出来ないよ」
「アマツさん…ディアベルさん…。そうですね…ヒイロくん、我々も見届けましょう。この行く末を」
「うん」
刹那、不思議な現象が起きた。金属音が響く度に何かが周辺に弾け、まるで雪の様に降り注ぐ
「んだ……これ?…!」
自分の肩に触れた、其れをグリスが掬い上げる
『お前、強いんだってな』
『なんだ……てめぇは』
『俺か?俺はテンだ。よろしくな!』
『うせろ』
『やだ、俺はお前が気に入った。だから、今日からは俺とお前は仲間だ』
『変な理屈コネんなっ!泣かすぞ!!』
脳裏に浮かぶのは出会いの日。唐突に現れた彼が手を差し出し、“楽“になれる居場所をくれた日、彼は、自分を友と呼び、誰かと笑い合うことの楽しさを教えてくれた
「なんだ……今の…」
「グリスさん?どうし……!」
グリスの雰囲気に違和感を感じ、ヒイロが声を掛けようとする。自分の鼻に白い雪のようなモノが触れた
『お前か?最近、噂になってる強いチビってのは』
『チビじゃない。ていうかさ、アンタ誰?』
『俺か?俺はテン、お前は?』
『彩葉……』
『彩葉か、良い名前だな。よし来い!焼き鳥奢ってやるよ!あっ、ピーナッツバター掛けのヤツで良いよな?』
『焼き鳥はもらう。でも変な味はいらない』
『ピーナッツバターをバカにすんじゃねぇよ!』
認められたかった、自分以外の誰かに。その悩みを理解するように、彼は現れた。時には兄として、またある時には友として、彼は前を歩き続けていた。その背中を見るのが、好きだった。近付きたくて、手を伸ばすと、必ず、手を差し出してくれた
「これって……」
「ヒイロくんも、グリスさんもどうされたんです?全く……目を逸らすなど…!」
眼鏡を上げ、呆れたように言うヴェルデの頬に、しんしん、と降り注ぐ、其れ、が触れる
『緑川菊丸と申します。以後お見知り置きを』
『お見知り…?どういう意見だ?』
『見て知ってください的な意味だと思う』
『菊丸は堅いなぁ…相変わらず』
『そうでしょうか?僕は普通にしているつもりですが…』
『堅くてもいいじゃん。ウチは基本的に柔らかい頭のヤツしかいないから、菊丸みたいな堅いヤツが居た方が面白ェよ』
『『『一番柔らかいくせに』』』
『んだとコラァ!』
彼は、「ありのままの自分」を受け入れ、仲間という繋がりをくれた。他の誰でもない自分を必要だと言ってくれた
「………もしや、これは…」
「リーダーの記憶…」
「いや、違う……想い出だ」
「第1層……懐かしいなぁ。テンがいたから、生きてるんだよな…俺」
「全く……最初からバカなヤツだった。いきなり、槍を作れと言ったかと思えば、破壊する度にやって来ては、また同じのを作れと無理難題を押し付けるんだからな」
ディアベルとアマツの脳裏にも出会いの日が浮かぶ。思えば、自分達の知るソウテンは誰かの為に手を差し出し、居場所をくれる人間だった
時には笑い合い、時には喧嘩し、時には共に戦った。其れでも最後は決まって、鍋を囲んだ
理由等、要らない。楽しい時間を過ごすのが当たり前だから、その中心で笑うソウテンを、嫌いな者など居る筈がない
「おいコラ!テン!何時までも一人で背負ってんじゃねぇ!頭にハンマー叩き込むぞ!!!」
「ホントだよ。キリトさんみたいなぼっちに押されるとかありえない、それでもリーダー?」
「ヒイロくんの仰る通りです。これだから、ピーナッツバター馬鹿は」
「俺が作った槍を折ってみろ……タダではすまさんからな」
「ま、まあ、落ち着けよ…皆。でも、皆の言う通りだ。テン!俺たちは何があっても、仲間だ!苦しいなら、その苦しみを俺たちにも背負わせてくれ!君がかつて、俺にしてくれたように!」
その声にキリトの手が止まる。視線を動かすと、グリス達が居た
他の討伐隊は其々の場所に帰還したが、彼等は居た
「アイツら……がっ!?」
「余所見してんなよ」
キリトに鏃が迫る。レッドまで低下したHPを容赦なく、狩り立てる。道化よりも死神のような姿に誰もが息を呑む
「あの野郎!我慢できねぇ!!今度は俺が!」
「いや待て!俺が!」
「退いて!」
グリスとディアベルの間を一つの影が横切る。薄紫のポニーテールを靡かせ、キリトを手に掛けようとするソウテンの懐に飛び込む
「……離せ」
「いや…」
「離せ」
「いやったら、いや!」
「離せって言ってんだろ!!」
「いや!絶対に離さない!!こんなの間違ってる!キリトとテンが戦って、何の意味があるのよ!二人は仲間でしょ!!お願いよ……お願いだから……私に…声を…聞かせてよ…天哉…」
振り解こうにも振り解けない、胸の中で涙を流す彼女は。世界で一番、愛しい人。愛を知らない自分に人を愛する意味を教えてくれた人。手を差し伸べてくれた人。共に笑い合った人。そうだ……そうだった……自分が見たかった彼女の顔は、泣き顔じゃない。だから、あの時、手を差し出した、笑ってほしくて、その綺麗な笑顔を見たくて、手を差し出した
「すまんかったな…ミト……。許してくれとは言わねぇし……言うつもりない……でも、これだけは知っててほしい……愛してる。この世界中の誰よりも、お前を愛してる。だから、泣かんでくれねぇか?
「私も……私も愛してるわ。何度、貴方が手を振り払っても、私はその度にまた手を伸ばす。だから、これからも私の側に居て…。
「「んっ……ちゅっ……んっ…」」
重なり合い、触れ合うのは互いの唇。思わず、背中に手を回し、何度も何度も重ね合い、思いを確かめ合う
「………俺らが居るの?忘れてねぇか?」
「さて、リズのヤツに《クリスタライト・インゴット》でも売り付けに行くとするか」
「あっ、シリカにチーズケーキ買って返る約束だった」
「おお、そう言えば、ヴェルデに鑑定してもらいたいアイテムがあるんだ」
「拝見しましょう」
「テン。今日は何が食べたい?好きもの、何でも作るわよ?」
「マジでかっ!よし、ピーナッツバター鍋にしよう」
「其れは却下」
其々の居場所へと帰路に着くソウテン達。その顔は晴れやかだった。黒い衝動は完全では無いが形を潜め、また何時もの日常が訪れる
地に伏せる一人を残して
「あれ……俺は!?なぁ!みんな!ちょっと待って!!置いていかないで!お願いだから!誰か、助けてくださーーーーい!」
互いの気持ちを再確認したソウテンとミト。しかし、彼らの騒がしい日常は更にその騒がしさを加速していく
NEXTヒント 少年
シリアスよ、さらば。そして、コメディが始まる
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気