蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

55 / 206
今回はギャグ!そうギャグですよ!この作品に於ける大半を占めるメイン回!えっ?テンミトがメインじゃないのかって?たしかにそれもメインですよ。ですが!この作品の趣旨はギャグ8割とシリアス1割、恋愛1割のギャグ作品!故にメインはギャグです!それではギャグ回をどうぞ!


第二十五幕 真夜中の少年

第50層主街区アルゲード 彩りの道化(カラーズ・クラウン)ギルドホーム

 

 

討伐作戦から一週間。互いの気持ちを再確認し、以前よりもミトとの仲を深めたソウテンは悩んでいた

 

「…………金が足りん」

 

「なんだ?藪から棒にお前が貧乏なのは今に始まったことじゃないだろ」

 

「だな。テンの財布の中は常にすっからかんだからな」

 

「頭がすっからかんなバカどもは黙ってろ」

 

「「んだとコラァ!!」」

 

騒ぐキリトとグリスを無視し、ソウテンはストレージ内の《コル》を見る。金欠という訳ではないが、ある事を行う為には資金が圧倒的に足りない

 

「………やっぱ。三ヶ月分はねぇといかんよな」

 

「三ヶ月分……?何の話だ」

 

「家賃じゃないか?」

 

三ヶ月分、その言葉の意味を理解出来ないグリスとキリトは首を傾げる

 

「三ヶ月分………ああ、なるほど」

 

キッチンでコーヒー片手にその様子を見守るヒイロは頭の中で、言葉を反芻させた後、何かを理解したように手を叩いた

 

「おや?ヒイロくんはお分かりになるんですか?リーダーがお金を欲しがる理由を」

 

「多分だけど。ミトさん絡みだよ」

 

「ミトさん絡み……なるほど!理解しました、そういうことですか。いやぁ……あのリーダーも遂にですか。よく決心しましたね、僕は嬉しいです」

 

「立派になったね。最初は迷子でバカでピーナッツバターしか食べない変人としか、思ってなかったけど、遂にリーダーにも春が来たんだね」

 

「おめぇさんらは俺の親か」

 

ハンカチ片手に涙を流すような芝居をするヴェルデ、ヒイロに突っ込む。すると、肩を叩かれる

背後を振り向くと何時ぞやの暖かい目をしたキリトが立っていた

 

「なるほどな……テン。夜は静かにな」

 

「うっせぇよ、ぼっち」

 

「なんだと!?人の気遣いを無碍する気かっ!!」

 

「いらんわっ!!そんな気遣い!!」

 

キリトからの指摘にソウテンは突っ込みを入れ、未だにヒイロとヴェルデは感慨深いものがあるのか頷いている

 

「………はっ!三ヶ月分ってのはアレか!ミトにプロポーズする為の資金か!」

 

「………グリス。今更、気付いたんか?」

 

「仕方ないだろ。所詮はグリスだ、人間の風習を知らないんだよ」

 

「そだな。すまん、ゴリラに期待した俺がバカだった」

 

「そう言えば、ゴリラはどういうプロポーズするの?」

 

「やはり、バナナを贈り合うのではないでしょうか?ですよね?グリスさん」

 

「知らんわっ!というか流れるような罵倒で人をゴリラ扱いしてんじゃねぇよ!俺は人間だ!」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「真顔で驚いてんじゃねぇっ!!」

 

真顔で驚愕するソウテン達にグリスの突っ込みが飛んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第50層主街区アルゲード ダイシー・カフェ

 

 

「ちょいと入り用でな。と言う訳で、また雇ってくれんか?エギル」

 

「駄目だ」

 

「……何故だ?」

 

例によって、エギルの店にやって来たソウテンだったが食い気味で却下され、首を傾げる

 

「お前、三ヶ月前に雇ってやった時にキリトと何をしたのか…忘れたとは言わせんぞ」

 

「キリト。覚えてるか?」

 

「あれじゃないか?昼間に買い取りに来た客の前でパスタ食ったこと」

 

「ああー、あったな。他にも客が頼んだミルクティーを勝手に呑んだりとか」

 

「うんうん、あったな」

 

「おいコラ、今さっきの二つは初耳だぞ。其れに俺が言ってるのはバータイムの時の話だ」

 

「「バータイム………ああ、あれか。何か問題が?」」

 

「寧ろ、無いと思ってるずぶどい神経を疑いたい」

 

忘却の彼方に自分達の行った所業を思い出したようだが真顔で首を傾げるソウテンとキリト。エギルは顳顬(こめかみ)をヒクヒクさせ、怒りを抑えている

 

「だいたい、金がいる用事ってのはなんだ?ギルドホームは賃貸じゃないだろ」

 

「うーん……誰にも言わんか?」

 

「そいつは任せろ。俺は客のプライバシーは守るぞ」

 

「………ミトにプロポーズする為の資金が欲しいんよ」

 

「そう言うことか……そういうのは確かに大事だな。よし、雇おう」

 

「マジでかっ!エギル、俺は今まで、おめぇさんをぼったくることしか脳がない巨漢のオッサンだと思ってたが、意外に話の分かるヤツだったんだな」

 

「………話は無かったことにしよう」

 

「すいません、雇ってください。何でもするんで」

 

余計な一言でエギルの機嫌を損ねかけるが、全力で頼み込む熱意を買われ、バータイムの時間にキリトとのコンビで雇用された

 

「何で……俺も」

 

「だって、おめぇさん以外に一緒にやるヤツ居らんし。アレに出来ると思うか?」

 

そう言って、ソウテンが指差す先にはグリスの姿があった

 

「………無理だな」

 

「だろ?て訳だ、一緒にやろう」

 

「分かったよ…」

 

この店のバータイムは夜の六時半から閉店までの八時間勤務で、ピークタイムは夜中の十二時頃。基本的には客を相手にバーテンらしく、対応するソウテンとキリト。その間、何の問題も起こらず、エギルも満足そうにグリス達と談笑している

やがて、時間は流れ、ピークタイムに差し掛かる

 

「エギルー。来たわよー」

 

「こんばんはです」

 

「相変わらず、不景気ねー」

 

「もうっ、リズ?失礼よ」

 

ミトを筆頭に女性陣が店内に入ってくる。するとカウンターでグラスを片手に談笑していたアマツが口を開く

 

「女が三人そろえば、姦しいというが四人だと喧しいな。特にリズが」

 

「アマツ。アンタ、張っ倒すわよ」

 

「リズのヤツ…すげぇな」

 

「ええ…職人を相手に物怖じもしないとは…」

 

「きっとデリカシーがないからだよ」

 

「ヒイロ、失礼だよ。リズさんは鍛冶することしか脳がないだけだよ」

 

「シリカ……フォローしてくれてるつもりだろうけど、アンタがいっちばん失礼よ」

 

「……えへ?そ、そう言えば!あたし、バーテンと言えばですけど。憧れてるシチュエーションがあるんですよ」

 

話題転換を図ったシリカは自分が抱く理想のバーテンダーのイメージがあるらしく、その様子を思い浮かべる

 

「へぇ?例えば、どういうのよ」

 

「えっとですね。先ずは俺からの奢りだと言って、お酒を手渡したりとか」

 

「なるほど……俺からの奢りだ」

 

シリカの説明を聞き、ソウテンに酒をスライドさせる。しかし、キャッチ出来なかったソウテンの顔面に中身が掛かった

 

「………つ、次はですね。シェイカーを振って、お酒を作ったりとか」

 

「よし、わかった」

 

シェイカーを振り出すキリト。しかし、蓋を閉めずに口を抑える部分が無い為に中身がソウテンの顔面にぶちまけられる

 

「最後はやっぱり、アレですかね。君の瞳に乾杯って言うヤツ」

 

「お安い御用だ。君の瞳で乾杯」

 

そう言って、ソウテンはグラスの中身をキリトの眼に注ぐ

 

「ああああーっ!目がぁぁぁぁ!!何してくれてんだ!このバカテン!!」

 

「やかましい!お前こそ!人に散々、酒をぶちまけただろうが!!!」

 

「あたしが思ってたイメージと全然違うんですけどっ!?」

 

「静かにしなさい!バカどもっ!!」

 

「「ぐもっ!?」」

 

騒ぐバカコンビの頭にミトの御約束が命中し、その様子を見ていたアスナが思い出したように口を開いた

 

「私も一つ、憧れって訳じゃないけど…見てみたいのがあるのよね」

 

「へぇ?どんなの?」

 

「ほら、彼方のお客様からですってヤツよ」

 

「確かに……憧れるわね。ちょっと、アマツ。アンタがやってみなさいよ、あのバカ二人だとロクなことになりそうにないし」

 

「………分かった。グリス、手伝え」

 

「おうとも!」

 

リズベットに促され、渋々ではあるが従ったアマツがエギルに何かを注文し、数秒もするとグリスの前に皿が置かれた

 

「お客様。こちら、彼方のお客様からです」

 

「おっ!サンキュー………って!バナナじゃねぇか!!!」

 

皿の上に乗っているのは一房のバナナ、バーでは先ずあり得ない出来事にグリスは突っ込んだ

 

「む……バナナでは不服か?好きだったろう?お前」

 

「好きだよ!好きだけど!こういう場合は普通は違うだろうが!」

 

「小さい事を気にするな。バナナも酒も大して変わらん」

 

「変わるわっ!液体と固体だろうがっ!」

 

「おや、驚きですね。ゴリラであるグリスさんが液体と固体を知っているとは」

 

「知識が付いたんだよ、きっと。ほら、今はゴリラにも分かる参考書とかあるし」

 

「なるほど。良かったですね、グリスさん。これでゴリラ呼ばわりされなくなりますよ」

 

「ゴリラじゃねぇわっ!!チビども!」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「真顔で驚いてんじゃねぇっ!!」

 

真顔で驚愕するソウテン達にグリスの突っ込みが飛んだ。やはり、身内ばかりの夜は相変わらずの光景で更けていく。その中でエギルは思った

 

(何があっても……こいつらを雇うのは、やめよう。絶対に)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜……おろ?」

 

勤務時間も終わり、帰路に着こうとしたソウテンが店を出ると壁にもたれかかるようにミトが佇んでいた

 

「お疲れさま。テン」

 

「待っててくれたんか。ミト」

 

「そりゃあ、待つわよ。だって……貴方の恋人よ?私」

 

「そだな」

 

手を重ね合わせ、ゆっくりと大通りを歩く。歩幅に差はあるが、ミトの歩幅を感じながら、其れに合わせるようにソウテンは歩く

 

「ねぇ、テン。私ね…今、とっても幸せ」

 

「俺もだ。ミトが居て、アイツらと馬鹿騒ぎしてる時が一番の幸せを感じられる。勿論、今こうやって、ミトと二人で居る時間はもっと幸せだけどな」

 

「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ」

 

顔を見合わせ、笑い合うソウテンとミト。二人の間に言葉は不要だった

極自然にソウテンが顔を近づけると、応えるようにゆっくりとミトが目を閉じる

 

「大好きよ、テン」

 

「俺もだ、ミト」

 

背に手を回し、口と口が触れ合う……

 

「とーさん!」

 

「………………おろ?」

 

「……なんて?」

 

唇が重なり合い掛けた瞬間、二人の耳に飛び込んできた聞き慣れない言葉。同時に周辺を見回し、声の主を探す

 

「とーさん!かーさん!」

 

再び聞こえた声を頼りに、下へ、下へ、ゆっくりと首を動かす。其処に立っていたのはその声の主であろう一人の少年、見た目は白いTシャツにハーフパンツを着用した黒髪癖毛の少年。しかしながら、ソウテンとミトは彼に見覚えが無い

 

「ボク?誰かと間違えてない?」

 

「うんうん、俺は少年みたいなちびっ子の親になった覚えはねぇぞ」

 

「間違ってないよ?二人がボクのとーさんとかーさん!」

 

屈託の無い笑顔で答える少年に対し、ソウテンとミトは顔を見合わせる

 

「「……………ええっーーーーー!!!」」」

 

そして、二人の叫びが主街区に木霊した

 




突然、現れた少年。彼はソウテンを「とーさん」、ミトを「かーさん」と呼ぶ。果たして彼は何者なのか!

NEXTヒント 息子

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。