2024年10月18日 第50層主街区アルゲード
「何か食わしてくれー」
アルゲードの路地裏。雑踏の多い、街中とは正反対に物静かで、人気の無さが目立つ。しかしながら、此処には主街区とは違った趣きの店が立ち並ぶ
「賑やかな声が聞こえると思ったら……やっぱり、テンちゃんだったのね」
中でも殺風景な佇まいの店の暖簾を掻き分け、中に入ると女性が苦笑気味に出迎える
「久しぶりね。メイリンさん」
メイリン、そう呼ばれた女性はミトに挨拶され、笑顔を浮かべる
「ええ、ミトちゃん。お久しぶり」
「メイリンさん。俺、いつもの。焼き鳥を大量に入れて」
「僕もいつものをお願いします。らっきょうましましのやつを」
「俺もバナナましましで頼む」
「分かったわ。テンちゃんも何時ものヤツよね?」
「もちろん。ピーナッツバターたっぷりで頼む」
「ミトちゃんはどうする?」
「じゃ、私はいつも通りにメイリンさんのオススメをお願い」
「かしこまりました」
軽く会釈をすると、厨房に向かうメイリン。その姿に彼女を知らないシリカは首を傾げ、隣に座るミトに問いかける
「ミトさん。ここの店長さんとお知り合いなんですか?」
「そうね。リアルを含めると六年くらいは付き合いがあるわ」
「えっ!リアルでも!?明らかに普通の人が来るような店じゃない気がするんですけど……だって、普通に考えて、中華料理店ではありえない言葉が何個か飛び交ってましたし」
「ああ、確かに。普通はあり得ないわよね。でも、此れがメイリンさんの方針なのよ。お客様の要望には何があっても応えるって言うね。試しにシリカちゃんも注文してみたら?」
「そ、それなら……あの!」
「はいはい……あら?新顔さん?」
「あっ、はい!あたし、つい最近、ギルドに入ったシリカです!」
「シリカちゃんね。覚えたわ」
「ありがとうございます。あの、注文構いませんか?」
「ええ、どうぞ」
真剣な面持ちのシリカを見ながら、メイリンは片手で鍋を振るい、もう一方の手で湯切りをし、笑顔を浮かべ、彼女の注文に耳を傾ける
「チーズケーキを一つ」
「チーズケーキ……分かったわ、少し待っててね」
「えっ……!中華料理店なのに、あるんだ…」
「シリカ。そりゃあ間違いだ、ここは中華料理店じゃねぇんよ」
「ん?どういうことですか?リーダーさん」
「看板を見てみ」
ソウテンに促され、店の外に掲げられた看板をシリカが確認すると、其処にはポルトガル語で《何でもあり》を意味する《Vale tudo》の文字が刻まれていた
「………名前がすごい」
「そういうこと。だから、何でもあるって訳なんよ」
「ロトは何を食べたい?」
「えっと、えっと……とーさんとおんなじの!」
「うんうん。流石は俺の息子」
「はぁ…息子が
ソウテンの影響で、確実にピーナッツバターの味に魅力されつつあるロトの味覚をミトは嘆いていた
「お待ち!ピーナッツバターそば!バナナうどん!焼き鳥炒飯!カレーパスタ!チーズケーキ!そしてオススメのパイナップルご飯!」
「あたしのチーズケーキ以外にマトモなのが一つもないんですけど……!?」
「うんうん、やっぱり蕎麦にはピーナッツバターだな」
「聞いたことありませんよっ!?そんな蕎麦!」
「かっー!うどんにはやっば!バナナが一番だな!いつ来ても、この店は最高だぜ!バナナうどんが食えるのはここしかねぇからな!」
「ゴリラですもんね」
「誰がゴリラだ!?チーズケーキ女っ!」
「なっ!チーズケーキをバカにしないでください!チーズケーキはすごいんですよ!いいですか!チーズケーキはですね!」
「焼き鳥と炒飯…これぞ、最強のコラボレーション」
「ヒイロくんは焼き鳥がホントに大好きですね。まぁ、僕のカレーパスタには劣りますが」
「ほら、ロト。パイナップルご飯よ」
「パイナップル?おいしいの?かーさん」
「美味しいわよ」
料理に舌鼓を打ち、何時ものやり取りを繰り広げる面々。すると、扉が開き、珍しい組み合わせの三人が来店する
「いらっしゃーい!……って、あら?貴方は確か…」
「く、クラインです!メイリンさん!」
アマツ、ディアベルの二人を引き連れたクラインは笑顔のメイリンを相手に興奮気味に答える
「そうそう、クラインさん。何時もので良いかしら?」
「はい!いつものパイナップルご飯定食を!」
「承りましたっと……それで?アマツくんとディアベルさんは何にする?」
「俺はにぎり寿司をもらおう」
「じゃあ、俺は蕎麦にしようかな。あっ、ピーナッツバターは無しで」
「かしこまりました」
カウンターに座り、料理を作るメイリンの後ろ姿を眺めるクライン。その姿にソウテン達の第六感が発動した
「メイリンさん。そーいや、メイリンさんの男の好みって、どーいうんだった?」
(なにっ!?め、メイリンさんの好み!?ナイス質問だぜ!テン!)
「そうねぇ…私の料理を美味しく食べてくれるなら、どんな人でも良いわ」
「ほう…それではクラインさんはいかがですか?彼は攻略組ギルドの一つである《風林火山》を率いるトッププレイヤーですよ」
「あら、そんなにすごい方だったの?クラインさんは」
「ええまあ…」
「そうねぇ…じゃあ、今度一緒にお食事でもする?良いお酒を出すお店があるのよ」
「そ、それは……テン達も一緒だったり?」
「ううん、二人でよ」
その言葉と笑みに、クラインは口から心臓が飛び出そうな勢いで席を立ち上がり、食い気味に彼女に詰め寄る
「いかせていただきます!」
「うんうん。良かったな、クライン」
「でかした!クライン!バナナやるよ」
「む…盛り上がっているところ、あれだが…キリの字はどうした?姿が見えんな」
クラインに祝福を送る中、アマツが違和感に気付き、問いかける。辺りを見回せば、ソウテン達と騒ぐ見慣れた黒の剣士が居なかったからだ
「ああ、キリトはアスナの家で手料理をご馳走になってるわ」
「なにぃ〜!キリトのヤロー!羨ましいことしやがって!」
「これはアレだな……焼き討ちに行くか」
「ヤツの居場所を知る者は?」
「お任せください。抜かりなく」
「血祭り」
「転移結晶を準備しておいた。使ってくれ」
「さすがはディアベル。用意が良いな」
「やめなさいっ!!バカどもっ!」
『ごぶっ!』
ソウテン達の頭上に
「全く……」
「いつも通りですね…」
「賑やかね」
「にぎやかー」
2024年10月19日 第74層主街区カームデット
「さぁ、アスナ様!ギルド本部に戻りましょう!」
「嫌よ!今日は活動日じゃない筈よっ!!!」
現在、転移門広場で口論を繰り広げるのは血盟騎士団が誇る副団長のアスナと、彼女の護衛であるクラディール。その間に挟まれるように立つキリトは疲れ切った表情をしている
「おろ?キリト。辛気臭い面がいつにも増して、辛気臭いがどしたんよ?」
「ああ……テンか。それがな、聞いてくれよ」
「おーい、おめぇさんたちー。見てみろよー、キリトが死にかけのフレンジーボアみてぇな顔してんぞー」
「ってコラァ!聞けよ!そもそも!誰が死にかけのフレンジーボアだ!」
「死にかけのゴリラならよく見ます」
「いるね、俺の隣に」
「バナナ食べますか?ゴリ……グリスさん」
「おいコラ、誰がゴリラだ。チビども」
そのやり取りの間も、アスナとクラディールの会話は続き、見守っていたミトの表情が変化を始めた
「ふぅ……クラディールとか言ったわね?私の親友に付き纏うんなら、容赦はしないわよ…。言っとくけど、私も《ビーター》よ?貴方が嫌いなね」
「ふんっ。それが何だ?そもそもだ、そこに居る仮面の奴は討伐作戦で多くの命を奪ったらしいじゃないか?
全てを言い切る前に、ミトの鎌がクラディールの眼前を横切った。犯罪防止コードに阻まれ、直撃は免れた
「何も知らないくせに…テンを悪く言わないで。彼への侮辱は私への侮辱よ、それにアスナは私の親友よ。決して、貴方には渡さないわ」
「ミト…」
「大丈夫よ、アスナ。今度は絶対に貴方を助けるわ。だって、守るって…約束したから」
そう言って、メニューウィンドウを操作し、ミトはデュエル申請をクラディールに送り付けた
「キリトくん、テンくん。ミトは大丈夫よね?」
「ああ、もちろん。ミトは負けないよ」
「キリトの言う通り。守るべきもんの為なら、ミトは何処までも強くなれる……俺が惚れたのはそういう、カッコいい女だ」
今、親友の自由を取り戻す為に、《紫の死喰い》は鎌を携え、不敵に微笑む。その
「貴方の
ミトvsクラディール、彼女は果たして、親友の自由を取り戻せるのか!
NEXTヒント ピクニック
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気