蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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前回の続きです、前半は割とシリアス!ですが後半はギャグ満載になっております


第二十九幕 プライド

2024年10月19日 第74層主街区カームデット

 

 

「貴方の(プライド)、へし折ってあげるわ」

 

決め台詞を放つと同時に地を蹴り、クラディールへと迫る。手に持つ鎌は《クリスタライト・インゴット》を素材にリズベットが鍛えた最高級の鎌、その名を《ソウルスピリット》、ソウテンの《竜槍ナーガラージャ》にも並ぶ魔剣クラスの武器である

 

「御覧ください!アスナ様!私以外に護衛の務まる者がいない事を証明しますぞ!」

 

「やれやれ…分かってねぇみたいだな。おめぇさん」

 

「なに?貴様、誰にものを言っている!私は血盟騎士団のメンバーだぞ!貴様風情が馴れ馴れしく話し掛けて良い存在ではないっ!」

 

「おっと、そいつは失礼。だがよ?おめぇさんの相手は俺じゃねぇ……余所見はしねぇことだ」

 

「は?なに--ぐっ!?」

 

仮面越しに不敵に笑うソウテンの方に視線を向けていたクラディールの眼前を鎌が横切った。僅かに反応が遅れるも、回避に成功し、剣を中段やや担ぎ気味に構えた前傾姿勢に構える

 

「ごめんなさいね?余所見をしてたから、デュエルのカウントが始まる前に不意打ちしそうになったわ」

 

「卑怯者め…」

 

「そうね、私は卑怯者かもしれない……でも」

 

カウントがゼロになり、同時に地を蹴り、ソードスキルを発動させる。システムアシストにより、加速された体に同調するように引き伸ばされる時間感覚の甲斐もあり、迫るクラディールの、勝利を信じて疑わない表情がミトの目に焼き付くように映る

 

「だったら、その卑怯者に負ける貴方は……一体、何者なのかしらね」

 

剣の中央に両手鎌上位ソードスキル《レヴェレーション》を叩き込む。刹那、甲高い金属音が響き、折れた剣が地に刺さり、ポリゴンに姿を変える

 

「ば、バカな……認めない……認めない!私は負けてない!!!がああぁぁ!」」

 

「っ!」

 

想定していなかったクラディールの突進に、反応が遅れる。彼の手にはダガーが握られ、向かう先はミトの心臓、流石に不味いと感じ、飛び退こうとした彼女の前に、その青いマフラーは棚引いた

 

「敗北を認めるも、認めないもおめぇさんの自由だ。だから、勝敗に関しては、何も言うつもりはねぇ。けどな……いいか?俺は自分を貶されようが、馬鹿にされようが、大抵のことは笑って許してやる。その方が楽で良いからな……でもな、仲間たちを傷付けるのだけは許さねぇ。其れが分かったなら、俺の気が変わらん間に失せろ」

 

「ひっ!!」

 

「クラディール。本日、現時刻をもって護衛役を解任。以後、別命あるまでギルド本部にて待機。以上です」

 

「くっ…!転移……グランザム」

 

ソウテンの脅しにも似た発言、アスナからの冷たい響きの言葉に彼は血盟騎士団本部があるグランザムに転移し、決着が着いた

 

「ちょいちょい、ベルさん」

 

その去り際に感じた殺意が宿る眼を見逃さなかったソウテンはディアベルに手招きする

 

「どうした?テン」

 

「あのクラディールってヤツについての詳しい情報が欲しいんよ。調べてもらえるか?」

 

「別に構わないが……何かあるのか?ヤツは」

 

「アルゴの話では、ラフコフに情報を流してたのはアイツらしいんよ」

 

「なるほど……分かった、調べてみるよ」

 

ディアベルはそう言い残し、ギルドホームがある第50層に転移した。あの街は情報が集まりやすく、ありとあらゆる人が集う場所。故に情報収集には打って付けである

 

「さてさて、さくっと迷宮区に行くとするか」

 

「迷宮区で迷子になるなよ。ただでさえ、迷子なんだからな」

 

「迷子じゃない」

 

「迷子だろ」

 

「迷子ですね」

 

「迷子」

 

「迷子ね」

 

「迷子よね」

 

「迷子じゃない!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第74層迷宮区

 

 

「あらよっと」

 

現在、迷宮区を進むソウテン率いる彩りの道化(カラーズ・クラウン)の面々とアスナは広い回廊を進んでいた

次々に現れるモンスターを相変わらずのコンビネーションで倒し、着実に前に進む

 

「にしてもミトがあんなに怒るなんてな」

 

「ああ?ミトは普段からあんなだろ」

 

「グリス。脳天かち割るわよ」

 

「まあまあ、落ち着きな。ミトが怒るのも無理ねぇさ、大事な親友にあんなのが付き纏ってんだ。そりゃあ、怒るだろうよ」

 

「私が怒った理由は其れだけじゃないわ。アイツ、テンを侮辱したのよ」

 

「ソイツに関しては気にしてねぇな。侮辱はいつもされてるし」

 

そう言いながら、ソウテンは背後のキリト達を横目で見る。暫く経つと迷宮区の最上階に辿り着き、目の前に扉が現れる

 

「………完全にそうだよな?これ」

 

「間違いなく……そうだと思う」

 

「ボス部屋ね。ここはしっかりと対策を考えるべきだわ」

 

「いっちょ、入ってみるか。そいじゃ」

 

『って!なにやっとんじゃあっ!!このバカリーダーっ!!!』

 

重苦しい雰囲気に包まれるミト達とは裏腹に、相変わらずのソウテンは普通にボス部屋へ足を踏み入れる。全員から突っ込みが飛ぶも、部屋の中に青い炎が灯った

すると、連鎖するように、手前から奥へ向かって次々と大きな燭台に炎が灯っていき、青い炎に照らし出された巨躯が、部屋の中央に鎮座しているのが視界に入る

 

「グルルゥゥ……」

 

「あ……あれは…………巨大なヤギっ!?」

 

『ボスだろっ!!!どう見ても!!!』

 

「ゴアアアァァァァ!!」

 

右手に持った両手用の大型剣を振り上げ、ボスが向かって来る

 

「て、撤退!てったあぁぁい!!」

 

「敵前逃亡か。俺的には好ましくねぇ転回だな」

 

「非常時にバカなことを言わないの!さっさと逃げるわよ!」

 

「ズラかるぜ!」

 

「トンズラしましょう」

 

「あの肉…美味そう」

 

「ヒイロくん!?食べ物より命を優先しなきゃダメよ!」

 

ボス部屋から撤退し、安全エリアまで退避したのを確認した後、誰もが一息を吐くように軽く息を吐いた

 

「ふぅ……死ぬかと思った」

 

『お前のせいだろっ!!バカリーダー!』

 

「へぶっ!?」

 

キリト達の鉄拳がソウテンに飛んだ。その様子にミトは苦笑し、アスナもため息を吐く

 

「それにしても、あれは苦労しそうだね。ミト」

 

「ええ、見た感じは大型剣一つの武装だけど……特殊攻撃はあると踏んでいいわ」

 

「しっかりと見たわけではありませんが、尻尾に蛇が見えたような気もします」

 

「ということは背後からの攻撃も油断しない方がいいね」

 

「その通りです。ヒイロくん」

 

「盾装備の奴が十人以上……最低でも二パーティーくらいは必要になるな」

 

「驚きました。ゴリラなのに計算が出来たとは」

 

「ビックリした」

 

「ゴリラじゃねぇ!」

 

「「えっ」」

 

「真顔で驚いてんじゃねぇっ!!」

 

真顔で驚愕するヴェルデとヒイロにグリスの突っ込みが飛ぶ中、ミトがじろり、とソウテンに視線を向ける

 

「盾装備といえば…私、気になることがあるのよ」

 

「ん?なに?」

 

「テンの槍って両手槍じゃないわよね?最近、片手で槍を使ってるし」

 

「うっ……あははー、気のせいじゃねぇかな?それは」

 

「ホントに?私の眼を見て、同じ事を言える?」

 

「まあ、時が来りゃあ……教えるよ」

 

「そっ、なら良いわ。ここでご飯にでもしましょう」

 

煮えきらないソウテンに軽くウィンクした後、ミトは手際良くストレージを操作すると得意の鍋に使う食材を取り出す

 

「ミト。約束してたモノ、持ってきてるよ」

 

「ありがと、アスナ。喜びなさい?今日は醤油ベースよ」

 

「なにっ!醤油ベース!よし、俺はパスタ開発の過程で生み出したこの辛そうで辛くないが実は辛すぎて辛さも超越して味の判別が出来ない辣油を入れよう」

 

「んじゃ、俺も限り無くピーナッツに近いが実はバターの風味の方が強いピーナッツバターを入れよう」

 

「なら、俺は最近、知り合ったバナナ農家のおっさんに貰った新種のアインクラッドバナナを入れるぜ」

 

「では僕はカレー粉に限り無く似ているよく分からない粉末を入れましょう」

 

「焼き鳥のねぎまのネギの部分を入れる」

 

「やめなさいっ!!バカどもっ!」

 

『ごぶっ!』

 

「結局、いつもと同じで一つもマシな食材が入ってないじゃない!!」

 

ソウテン達の頭上に鎌が振り下ろされ、アスナは苦笑を浮かべる

 

「ミト……。えっと…ご苦労さま」

 

「はぁ…全くもう……」




次回はみんな大好きコーバッツさん登場!な、なんと!彼とグリスには意外な繋がりが……!

NEXTヒント ユニークスキル

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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