2024年10月19日 第74層迷宮区
「うーむ……醤油ベースなのに味が悪いな。何故だ?」
「やっぱ、バナナが足りてねぇんじゃねぇか?」
「其れは無いかと。しかし、迷宮区に来てまで、鍋を囲むことになるとは……世も末ですね」
「どうだ?ヒイロ。味の方は」
「グリスさんの鼻の穴みたいな味がする」
「おやまぁ、最悪じゃねぇの」
鍋を囲み、代わり映えしない会話をするソウテン達。その様子を見ていた、ミトとアスナは、ため息を吐いている
「はぁ…ホントに……毎回毎回……結局はこうなるのよね……」
「えっと……どんまい?」
「下手に慰めなくてもいいわ…。でも、ありがと。アスナ」
アスナの気遣いにミトが礼を述べていると、下層側の入り口からプレイヤーの一団が鎧を鳴らしながら、進行してくるのが視界に入った
「おお、コント集団!昨日の夜中振りだな!また鍋してんのか?好きなだなぁ、おめぇらも」
「おー…………………クライン。久しぶりだな」
「おいコラ、妙なタイムラグが無かったか?今。一瞬、俺を忘れてたよな?明らかに」
「そ、そんな訳ないじゃ無いですか」
「嘘吐けェ!敬語になってんじゃねぇか!!………ん?ミト、おめぇの後ろに居る人………は……ま、まさか…」
「ん?ああ、彼女のこと?紹介しておくわ。彼女は私の親友であり《血盟騎士団》副団長のアスナよ。アスナ、この人は」
「初めまして、俺はギルド---」
「烏合の衆のリーダーで」
「野武士面が特徴的なことで有名な」
「赤いバンダナの変なオッサンと呼ばれる」
「髭面の」
「クラインさんです」
「ってコラァ!ヴェルデ以外のバカどもっ!マトモな紹介をしやがれ!ていうか、誰のギルドが烏合の衆だ!ウチは《風林火山》だ!!」
矢継ぎ早のように罵倒の嵐を繰り出すヴェルデ以外の面子にクラインが突っ込みを入れる。刹那、彼の肩を誰かが叩いた
「気にするんじゃ無い。侍風の御仁よ、気晴らしに私が作ったバナナを剥きたまえ。良い気晴らしになるぞ」
そう言って、バナナを差し出してきたのは金属鎧を装備した一人の男。見慣れない風貌の彼に誰もが首を傾げる
「おう、こいつはすま---って!誰だよ!アンタは!!何で知らない奴が持参したバナナを食わなきゃいけねぇんだよ!?」
「バカモノ!誰が食べていいと言った!剥くだけだ」
「どういう儀式だよ!?」
「ああ、すまん。もう食っちまった」
「「早っ!?」」
「ん?あれ?どっかで見たと、思ったら……バナナのオッさんじゃねぇか?久しぶりだなーっ!」
グリスが驚いたように眼を見開き、男に声を掛けると彼も気付き、近寄っていく
「君は確か何時ぞやのバナナ好きな少年じゃないか」
「おう!元気そうだなー!オッさん!」
「当然だろう。何せ私は、バナナ農家だからな。バナナの為ならば、何時も元気フルパワーだ」
「だよなー!」
「グリス。おめぇさんの知り合いか?」
「おう!俺が贔屓にしてるバナナ農家のオッさんだ」
「よろしく。ところで君たちは此処で何を?私は仲間と遠征に来たのだが……む?私の部下が居らんな」
「隊長ぉ!勝手にいかないでください!」
男性が背後を振り返ると、鎧を着たプレイヤー達が走ってきた。戦闘を走る男が呼ぶと男性はしかめ面を浮かべる
「何おうっ!?遅れておいて、私のせいにするとは何事だ。全くけしからんな」
「いやいや、隊長が先々行くからじゃないですか!」
「バナナの芳しい匂いがしたものでな」
「バナナ好きも大概にしてください、バナナオヤジ」
「貴様ぁ!バナナをぐろうするつもりか!」
「バナナ舐めんなっ!」
「いや!誰キミ!」
「むっ、彼は私のバナナフレンドだ。えっと……名前を何と言ったかな?」
「グリスだ。で、オッさんは何者なんだ?ただのバナナ農家じゃねぇみてぇだけど」
「私か?私はコーバッツだ。見ての通り、バナナ農家だ」
「いや、違うでしょ。アインクラッド解放軍の中佐ですよ、アンタは」
「というか……どれだけ、互いを知らないんですか?御二方は」
「バカだろ、バカなんだろ。お前ら」
「さすがはゴリラ。類友ってヤツだな、こりゃ」
コーバッツ、そう呼ばれた男性はグリスと互いのストレージから取り出したバナナを交換し、固い握手を交わす
「ところで……見たところ、其方の青い服の御仁は
「ああ、そうだけど。それがどうした?」
「貴殿の噂はキバオウさんから聞いている。何でも大変、頭の切れる人だと」
「いやぁ、そんな頭が切れるなんて大袈裟に言ってるだけだって。キバオウの旦那が思ってる何倍も俺は頭良くねぇよ」
「迷子の達人だけどな」
「ピーナッツバターバカだけどな」
「足臭い」
「ミトさんの尻に敷かれていますがね」
「シバくぞ?おめぇさんたち」
飛び交う悪口の嵐に、ソウテンは顳顬をヒクつかせる
「君たちはこの先のボス部屋を見たのか?」
「見た、ぶっつけ本番でどうにかなる相手じゃねぇ。次いでに言うが、データを提供しろって言うのは無しだ。こっちにも事情があるんでな」
「その点は心配無用だ。私とて、マッピングの苦労は理解している。しかしだ、我々にも果たさねばならない義務がある。故に頼みたい、力を貸してもらえないだろうか?
「…………分かった」
「ほ、本当か!?」
「キバオウの旦那には第一層での恩があるからな」
「ありがとう!」
仮面越しに微笑するソウテンにコーバッツは何度も頭を下げる
「良かったな!オッさん!」
「ああ!君にも期待しているぞ!グリスくん!」
「おうよ!寝かせとけ!」
「任しとけだろ。寝てどうすんだよ」
「相変わらず、言葉を知らんなぁ。おめぇさんは」
「うっせぇっわ!!!ぼっちに迷子が!!!」
「「んだとコラァ!!ゴリラ!」」
「やんのか!」
「やめなさいっ!!バカトリオっ!」
『ごぶっ!』
三人の馬鹿の頭にミトが鎌を叩き込む。その様子を笑いながら見守るアスナ達の横ではコーバッツが苦笑を浮かべる
「うーむ……頼る相手を間違えたか…?」
同刻 第74層ボス部屋
「えー、そんじゃあ。簡単な作戦会議を始めます。先ずは対策としては」
「クリフト使うなでいいんじゃないか?」
「クリフトって誰よ!?」
「クリフトはあの有名なゲームで魔王を相手に回復魔法を掛けてしまううっかり屋さんです。つまりはリーダーのようなアホですね」
「誰がクリフトだ」
「なら、クリフトにガンガン行こうぜを軸にやって行こう」
「おいコラ、なんでクリフトにガンガン行くんだ。邪魔者扱いすんじゃねぇよ。いいか?俺とビアンカの息子はな、天空の勇者に---ぎゃぁぁぁぁ!」
熱弁するソウテンの眼前を鎌が通り過ぎる。一瞬の出来事であったが、瞬時に飛び退き、冷汗を掻きつつ、その鎌の柄を握る人物に視線を向ける
「ごめんねー、ちょっと素振りをしてたら、手元が狂っちゃったわ」
「いやいや!的確に俺を狙ってたろ!」
「そんな事ないわよ?別にゲームのヒロインとは言え、ビアンカにヤキモチを焼いたから、貴方にお仕置きしようなんて微塵も思ってないわ。ソウテンくん」
「嘘吐けェ!明らかに距離を置いてんじゃねぇか!」
「別に距離なんか、置いてませんよ。道化師さん」
「敬語になってんよな!?すいません!俺が悪かった!何でもするから!」
「何でも………?ふぅん、何でもかぁ。何をしてもらおっかなー」
「………しまった」
夫婦漫才を繰り広げるソウテンとミト。彼等を他所にキリト達は意を決し、ボス部屋の扉を開く
「行くぞ!」
『了解!』
中に足を踏み入れると、≪ザ・グリーム・アイズ≫がその眼を光らせ、右手に持った両手用の大型剣を振り上げる
「ゴアアアァァァァ!!」
「コーバッツ達はタンクを頼む。タゲ取りはグリスとヒイロな」
「任せろってんだ!行くぜ!ヒイロ!」
「分かった」
「ヴェルデは後方で情報集めをしながら、タイミングを見極めてくれ。そのタイミングが来たら、俺とキリトが
「お任せください」
ソウテンの指示に従い、其々が得物を構える。第75層ボス攻略が幕を上げる、本来とはかけ離れた小規模のレイドパーティという形で。
「派手に行くぜっ!野郎ども!」
『了解!リーダー!!』
ボスに挑むソウテン率いる小規模レイドパーティ!しかし、その強さに翻弄される!その時、不敵な笑みと共に、道化師は…?
NEXTヒント 雨
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気