蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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キリトとアスナ、二人の結婚生活に彼等の魔の手が忍び寄る
はいはい、またしてもギャグ回!
残念ながら、ユイちゃんの登場はまだ少しだけ先になります……しかし!ギャグに力を入れたいが故のオリジナル回!後もう少しだけ、お付き合いください!


第三十七幕 結婚生活

2024年10月27日 第22層南西エリア南岸

 

 

「ん〜っ!風が気持ちぃ〜!ほーら!キリトくんもやってみなよ。良い目覚ましになるよ」

 

「………おお!アスナの言う通り、悪くないな。やっぱり、この場所に家を買って、正解だった」

 

「そうだね」

 

青く澄み渡る空に宝石のように、きらきら、と光る水面が特徴的な湖が広がる静かな湖畔地帯。其処に佇む一軒のログハウスにキリトはいた

アスナと結婚した彼は、二人で住む為の新しい住居を求め、このログハウスを三日前に購入。そして、自分のギルドホームの部屋にあった家具や小物などの引っ越しを終え、昨日の夜に本格的に住み始め、今は新たな家で迎える最初の朝だ

 

「にっしても、朝からあのバカ達の顔を見ないのは新鮮だ。何時もはアスナの顔を見る前、確実にあいつらの顔を見てたからな」

 

「の割には、寂しそうだけど?」

 

「そう見えるか?」

 

「見える、見える。でも、それだけ……キリトくんの中で《彩りの道化(みんな)》の存在が大きいって事なんじゃないかな?其れは」

 

「かもな。テンとは距離を置いてた時期もあったりしたけど、なんだかんだで子供の頃からの付き合いだからな。今でも、思い出すよ。あいつが俺を外に連れ出そうと手を差し出してくれた日を」

 

懐かしい記憶。其れは自分の出生の真実を知り、妹を避け、家族を含む交友関係全てと距離を置き始めた自分の前に彼は現れた

何の前触れもなく、今と変わらぬ、不敵な笑みを携えて

 

『よぉ、相変わらずのぼっちだな。カズ』

 

『何しに来た……テン』

 

『んなの聞かんでも分かるだろ?楽しいことをする為に、お前を誘いに来たんよ』

 

『帰れ。俺はもう、誰とも関わりたくない……。このまま、部屋に居たいんだ…』

 

関わりたくない、故に彼を拒否し、殻の中に閉じこもろうとした。其れでも彼は諦めずに、手を差し出す

 

『却下、お前の答えは聞いてない。俺は俺のやりたいようにやる。だから、お前を連れて行く」

 

『どうして……どうしてだよ…。どうして、お前は俺なんかに手を差し出すんだよっ!』

 

『だって一人だと、つまんねぇし。でも……お前と二人なら、ぜってぇに楽しい毎日が送れるって、俺は思ってるんよ。だからさ、行こうぜっ!カズ!』

 

『ホント……敵わないよ。お前には』

 

彼の手を取り、二人で夜の街に飛び出した。気付くと、仲間たちと過ごす時間が当たり前になっていた。其れは今も変わってない、この世界に来てから、共通の“ゲームクリア(目標)”を掲げ、共に歩き続けてきた

しかし、僅かな休息を得る為、一時的に離れた。其処から生まれたのは、久しぶりの寂しさだった。アスナの存在で和らぎはしているが、キリトの日常に彼等の存在が無いのは、珍しい光景である

 

「初めてだね、君が自分のことを話してくれるのは」

 

「そうだっけ?前にも話さなかったか?」

 

「全然、聞いたことないよ」

 

「そうか。だったら、今話した」

 

「ふふっ…もうっ、キリトくんってば」

 

「「んっ……ちゅっ……んっ…」」

 

笑い合い、肩を寄せ、そっと口が触れ合い、朝の日差しに照らされながら、キリトとアスナは幸せを満喫する

 

「ずずっ……あ〜、紅茶が美味えな。ミトさんや?此れは何処の紅茶かにゃ?」

 

「此れはメイリンさんが独自に育てた茶葉から作った紅茶よ、テン。何処にも売ってないの、言わば非売品ね」

 

「「って!なに!人の家で普通に寛いでんだっ!!」」

 

突如、聞こえた声に振り返る。その先では、見覚えのある仮面の道化師と、これまた見覚えのある薄紫色のポニーテール少女が、バルコニーに椅子とテーブルを出し、ティーカップを片手に優雅なティータイムに洒落込んでいた

 

「おう、邪魔してるぞ。キリト」

 

「朝からイチャつくのも構わないけど、節度は弁えないと駄目よ?アスナ」

 

「いやいや!普通に挨拶返されても、反応に困るんだけどっ!?いつの間に来たのよっ!?だいたい!鍵はどうしたの!?」

 

「鍵?ああ、鍵は俺が極めたハイディングスキルを応用したシステム外スキルのピッキングで開けた」

 

「テンってば、見事な手際だったのよ。ホントに泥棒かと思うくらいに」

 

「褒めてんのか?それは」

 

「そうか、そうか。せっかく来てくれたんだ、二人とも。お茶のおかわりはどうだ?」

 

「なんだ、キリト。淹れてくれるんか?」

 

「なら、アールグレイをお願い。私はこう見えても鍋と紅茶にはうるさいのよ。あっ、紅茶鍋とかどう?オススメよ」

 

「…………」

 

同意を求めるミト、その隣でピーナッツバターサンドにかぶりつくソウテンの頭上にキリトが無言で紅茶を注ぐ

 

「あつっ!!ちょっ!ホントにあつい!!」

 

「せめて、少しはぬるめにしてくれんとリアクションが取りづらい!!」

 

「大丈夫だ、割としっかりしたリアクションが取れてるから」

 

「ホントに楽しそうね……毎日が」

 

紅茶を頭から被り、床を転げ回るミトとソウテン、更に二人を見ながら、冷静に対応するキリトにアスナは苦笑で応える

 

「ヒイロ!大変だよ!この家、部屋が大量に余ってる!」

 

「其れは大変。よし、引っ越そうか?シリカ」

 

「そうだね!あっ、お土産のチーズケーキです。引っ越し祝いにどうぞ」

 

「ありがとう、シリカちゃ………って!!なんで普通にいるのよっ!?」

 

「え?今日は確か、引っ越しパーリィでしたよね?」

 

「どんなパーリィよ!?」

 

何の前触れもなく、姿を見せたシリカとヒイロ。引っ越し祝いにチーズケーキを差し出し、笑いかけるシリカにアスナは突っ込むが彼女は意味が分からないと言わんばかりに首を傾げる

 

「申し訳ありませんが、キリトさん。此方の本は何処へ置けば?」

 

「おいコラ、何をしようとしてるんだ?お前は」

 

「見て分かりませんか?引っ越しの荷解きです」

 

「其れは見ればわかる。俺が言いたいのは、何で人の家で荷解きをしてるのかってことだ」

 

「何か問題が?」

 

「あるわっ!!ここは俺とアスナの家だっ!!」

 

真顔で問うヴェルデにキリトが突っ込んでいると、誰かが肩に手を置く

 

「落ち着け、キリト。今はルームシェアも珍しい時代じゃないだろう?ほら、バームクーヘンを食べろ」

 

「アンタは、何を人の家でナチュラルにバームクーヘンを焼いてんだよっ!?ベルさん!」

 

「新作だ、コーバッツさん作のアインクラッドバナナを使ったバナナバームクーヘンだ」

 

「うむ、私のバナナとディアベルくんのバームクーヘンが合わさり完成した思考の一品だ。是非とも食べてくれ給え、キリト少年」

 

「…………はぁ。ん?そう言えば、アマツとグリス、ロトはどうした?姿が見えないけど…」

 

「アマツならキッチンだ、ロトも一緒だと思う。あと、グリスは知らん」

 

ソウテンの答えを聞き、キリトとアスナはキッチンに向かう。其処にはテーブルの上に並べられた刃物と其れを見るロトの姿があった

 

「はものいっぱーい」

 

「よぉ、ロト。何を見てるんだ?」

 

「きぃとにあぅなだー。あのねー、しょくにんがつくったはものみてるのー」

 

「そうなんだ。其れでアマツくんは何処に?」

 

「あそこー」

 

アスナの問いに応えるようにロトがキッチンスペースを指差す。其処にはアマツが居り、砥石で何かを研いでいる

 

「………ふむ、上出来だ」

 

「職人……お前は何をしてるんだよ」

 

「見ての通りだ、包丁を研いでいる」

 

「包丁……あの!アマツくん!その包丁なんだけど、わたしに売ってくれないかな?」

 

「元より、そのつもりだ。此処に並べているものは全て、アスナに譲るようにリズに言われている」

 

「ホントにっ!?ありがとぉー!助かるよっ!」

 

包丁を受け取り、喜ぶアスナ。その彼女を他所にキリトは辺りを見回しているとアマツが声を掛ける

 

「どうかしたか?キリの字」

 

「グリスを知らないか?あのバカ騒ぎにアイツが居ないのは不自然だと思ってな」

 

「グリの字ならば、風呂だ」

 

「風呂?何処の?」

 

「無論、この家の風呂に決まっているだろう」

 

「……アマツ。アスナを暫く頼む」

 

「構わんが、お前はどうするんだ?」

 

アマツが問うと、キリトは良い笑顔を浮かべ、愛用の《エリュシュデータ》をストレージから取り出す

 

「ゴリラ狩りに行ってくる」

 

「そうか、気をつけてな」

 

風呂場に向かい、湯船に浸かる一匹を発見し、《エリュシュデータ》を振り被る

 

「こんのゴリスゥゥゥゥゥゥ!!」

 

「なんだっ!?カチコミかっ!!それとも、新手の通り魔かっ!?なっ!キリト!てめぇ!風呂場で何してんだっ!?」

 

「其れはお前だっ!!このゴリラ!!!」

 

「あぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

静かな湖畔沿いのログハウスに悲鳴が木霊するのであった

 

「わたしが想い描いていた結婚生活と……全然違う……」




アインクラッドに季節外れの雪が降り、一面を銀世界に彩る。そして、プレイヤー達による雪祭りが幕を開ける

NEXTヒント 完成度たっけぇな、オイ

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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