切っ掛けは単純だった、彼に必要とされたかった。認められない寂しさを煩わせるように、語り掛け、彼が怒りに任せ、暴れ回る度に、満たされ、満足していた
しかし、彼は出会ってしまった。人を愛することを知ってしまった
その日を境に語り掛けても、声が届くことはなかった。その日々が続いたある日のことだ
現実とは異なる、もう一つの現実とも言える仮想世界に彼は囚われた。その時、今までは心の闇でしかなかった自分も体を得た
最初は彼をまた暴れさせることが目的だった。其れでも愛を知った彼は、自分を拒み、突き放し、只管に拒絶した
やがて、感情が芽生えた。憎しみという激しい憎悪、その感情は、黒く全てを塗り潰し、何もかもを壊すという最悪の結論に行き着き、全てを壊す為に、その身に破滅をもたらそうと、彼を蝕もうとした
「
怒りを打つけるかのように槍を突き出し、絶え間のない攻撃の雨を浴びせる
「どうして……!どうして、元は同じなのに!!
本音を攻撃に乗せ、叫ぶ。全てを否定された、あの日を忘れない
自分と決別するように愛を選んだソウテンをロトは許さない、否、許せない。感情のままに叫ぶ、その姿はNPCではない、一人の人間と変わらない
「
全ての攻撃を受けながら、ロトの声を聞くソウテンの表情は穏やかだった。まるで子を慈しむ父のように、只管に、耳を傾ける
「反撃しろよっ!!そして、全てを壊せよっ!!!お願いだよ……お願いだからっ!!!
涙が溢れる、流れることもない筈の涙が。溢れ、止まらない。零れ、その頬を伝い、地面に落ちる
「見てるさ、だって……お前は此処に、俺の目の前にいるじゃねぇか。そうだろ?ロト」
「………えぐっ…えぐっ……うわぁぁぁぁぁぁん!!!」
頭に触れる優しい温もりに、溢れた涙が一気に噴き出した。手に握られた槍は離れ、行き場を失った手にはもう一つの温もりが触れる
「そうよ、貴方が何処の誰かなんて、関係ないわ。私とテンにとって、掛け替えのないたった一人の
「ああ、前にも増して、馬鹿騒ぎするのが楽しくなった。ロトがいて、アイツらがいて、明日は何をしようかって思う度にこの世界で生きる喜びを実感できた。だからよ、これからも楽しい事は、全力で首を突っ込もう。その方がきっと、昨日より、今日よりも、楽しい毎日を彩り、作っていけるからさ」
「うん……そうだね。とーさん、かーさん、ありがとう……二人の声、しっかりと届いたよ……でもね」
涙を拭い、笑いかけるロトの体に異変が生じる。体を光が包み、その身を淡く彩る
「お別れみたいだ、ごめんね」
「嘘……ロト!行かないでっ!私、まだ貴方に何もしてあげられてないっ!!」
突然の別れ。分かり合えた筈の
「そんなことないよ。かーさんがいたから、とーさんは愛を知れた、そして、僕も本当の僕を知ることが出来た。充分すぎるくらいに貰ったよ」
「其れでも……私は!!貴方ともっと一緒に居たかった!!もっともっと話したかった!!本当の親子みたいに口喧嘩をしてみたかった!!!たくさん、笑い合いたかった!!!なのに……お別れなんて……言わないで……行かないでよぉ……ロトぉ…」
消えゆく
「泣かないで、かーさん。僕の大好きなかーさんはとーさんの馬鹿みたいな行動に笑う笑顔のかーさんなんだ、この世で一番かーさんに似合うのは笑顔だよ。だからさ?笑ってよ。それに、とーさん。素敵な名前をありがとう、僕は《Prototype-MHCP000》って形式的な名前はあるけど、他のメンタルヘルスケアプログラミングAIみたいな固有名は持ってなかった…、でもね、とーさんがくれた名前は僕のお気に入りだよ、この名前は唯のプログラムの一環にしか過ぎなかった僕を、とーさんとかーさんの息子にしてくれた、僕に愛する喜びを、誰かを愛する気持ちを、教えてくれたよ。だから、ありがとう」
笑いかけるロトに対し、仮面で涙を隠し、ソウテンは僅かに頬を緩ませる
「お礼を言うのは俺の方だ。お前と向き合ったから、俺は愛を知れた。お前が居たから、《
「えへへー、嬉しいな。其処まで言ってもらえて……もう、そろそろみたいだ。またね、父さん、母さん」
「ああ、またな。きっとまた巡り合うその日まで、
「約束するわ……きっと…きっと……また…三人一緒に……」
「うん、きっとだよ」
溢れる光に包まれ、にこりと笑うロト。其れと同時に光が飛び散り、跡形もなく、彼は姿を消した
「「鍋を囲もう」」
約束を胸に、空を見上げた後、ソウテンは地面に落ちた槍を拾い上げる
「………テン。これ見て、ほら」
「んむ……おやまあ、コイツはたまげた」
共有化されていたストレージを開くミトの声に、視線を動かすと見慣れないアイテム名が表記されていた。《Prototype-MHCP000》、今まではなかったアイテム、しかし、ミトは知っている。これが何であるかを知っていた
「きっと……あの子の……ロトの心よね?これは」
《ロトの心》、そうに違いない。彼女は確信し、ストレージに触れ、そのアイテムを取り出した
刹那、一粒の雫が結晶化したような指輪が出現し、彼女の手の中に、ゆっくりと、落ちる
「かもなぁ、どうだ?付けてみるか?ミト」
煮え切らない返事ではあるが彼も確信があったのか、何時もの不敵な笑みで問う
「じゃあ、お願いできる?テン」
彼女が笑いかけると、ソウテンはその手から指輪を受け取る
「これからもずっと一緒だ、家族三人でもっともっと冒険しよう」
「はい、喜んで」
目を覚ました少女、彼女はまさかの記憶喪失……!?しかし、お節介なバカ達は今日も今日とて、騒がしく賑やかに少女と新しい日常を作り出す!
NEXTヒント 辛そうで辛くない辣油
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気