2024年11月2日 第22層南西エリア南岸 ログハウス(キリト&アスナ宅)
「鍋しか、ありませんけど。良かったら、ニシダさんも召し上がりませんか?今日はアスナが、研究に研究を重ねた醤油ベースの鍋で、自信作なんです」
「なんと!醤油ですかっ!御言葉に甘えて、御相伴に預からせていただきます」
「なんだ、ニシダさん。おめぇさんも食うんか?」
御約束というか、恒例である鍋を囲む面子。その中に、湖から、釣り道具一式を片手に戻ったソウテンが、ニシダの姿を見つけ、問う
「ミトさんが御誘いしてくれましてな」
「なんだ、そうなんか」
「テン。何か釣れた?」
「ああ、釣れた。ほら、見ろよ」
ミトからの問いに、ソウテンは釣り上げてきた成果を見せびらかすように、掲げた
「プ〜ン」
⦅なんだ、これっ!!!⦆
謎の鳴き声を上げ、ソウテンの手の中で、左右に揺れる珍妙な生物。白い体に、丸い頭、そして、螺旋状の鼻が特徴的な謎めいた生物に、誰もが目を見開き、固まる
「なっ?変わった魚だろ、しゃぶ太郎って言うんだ」
『魚じゃねぇよっ!!!というか、ネーミングセンス無さすぎっ!!!』
「テン、その子は魚じゃないわよ」
生物に変な名前を付けるソウテンに、キリト達が突っ込む中、一人だけ冷静なミトは、その生物を抱き上げ、見定めるように視姦する
「犬よ」
「なるほど、犬か。確かに魚は鳴き声とか無いもんなぁ」
「でしょう?だから、この子は犬よ。ねっ?しゃぶ太郎」
「プ〜ンププ〜ン」
「なるほど、お前はしゃぶ太郎じゃなくて、プルーって言うんか」
「ププ〜ンププ〜ンプ〜」
「なるほどね。仲間と逸れて、湖に流れ着いたのを、テンが釣り上げちゃったのね」
「プ〜ン」
「落ち込みなさんな、今日からは俺たちが一緒だ。一緒に楽しくやろうぜ、プルー」
「ププ〜ン」
プルーという生物と意気投合するソウテンとミトであるが、残されたキリト達にはある疑問が過ぎる
⦅何で、言葉が分かるんだよっ!!!⦆
2024年11月5日 第22層南西エリア南岸
「まっ、今日は気楽に行けばいいから、仮面は無しにしとくか」
「久しぶりね、明るい所で素顔を見るのは。でも、私は何方のテンも大好きだから、安心してね」
「おっ……おう、ありがとよ」
「プ〜ン」
トレードマークの仮面を取り、ラフな格好のソウテンに対し、ミトが妖艶な笑みと共に愛を囁く
その唐突な出来事に、流石のソウテンも顔を赤らめ、外方を向いた。彼の肩には数日前に、釣り上げたプルーがしがみ付いており、小刻みに震えている
「おお!ソウテンさんに、ミトさん!」
「んむ……ああ!ニシダさんか、今日は河童の格好じゃねぇんだな」
「ええ、私も本来は普通の釣り師ですらかなぁ。そういう、貴方も今日は河童ではないようですな」
「俺は元からそんな格好してねぇんだけどっ!?」
ニシダの突拍子もない発言に、ソウテンの突っ込みが飛ぶ。すると、湖の湖畔付近に設けられた仮設舞台上に、見覚えのある少女がマイクを片手に姿を見せる
「レディ〜〜〜〜ス!ア〜〜〜ンド!ジェントルメ〜〜〜〜ン!!!忘れた頃にやって来るっ!其れがイベント!どんな時も、楽しんだ者が勝者っ!!!さぁ、野郎どもっ!釣り竿を構えなっ!ヌシ釣り大会のスタートだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
軽快なステップと卓越したマイクパフォーマンスを披露するシリカ。その御決まりの姿に、ソウテン達は苦笑を浮かべる
『L・O・V・E!シリカ!がんばれ、がんばれ!シリカ!!』
「はーい!司会進行はこのあたしっ!三大トップギルド《
『シリカちゃーーーーーん!!!』
「今回の大会の優勝者には、主催者のニシダさんより、河童の衣装が贈呈されます。尚、準優勝者は《
『準優勝者の景品の方が豪華じゃねぇかっ!!!』
落差の激しい賞品に対し、観客から抗議の声が上がるも、主催者のニシダは気にせずに壇上へと上がっていく
その肩には、長さをさる事ながら、かなりの大きさを誇る釣り竿が担がれている
「………ねぇ?ミト。あれって……エサよね?」
「そうみたいね……でも、なんか……ぬめぬめしてるわね……」
「プーン」
「あら、プルー。駄目よ?そんなのを食べたら、お腹を壊すから、こっちにしなさい」
釣り針の先に吊るされた巨大トカゲに興味を持つプルーを引き離し、ミトはストレージから棒付きのキャンディーを取り出し、プルーに手渡す
「ププーン」
「良かったわ、気に入ってくれたみたい。また作るわね」
「えっ……作ったの?このキャンディー」
「そうよ。なんなら、レシピ教えましょうか?」
「う〜ん……じゃあ、お願いしようかな?」
「オッケー。アスナには色々とお世話になってるから、お菓子作りは私が教えるわ」
「ありがと、ミト」
「いえいえ、どういたしまして」
ミト、アスナは他愛もない話題で盛り上がる。そして、時はやって来た。湖に向き直った、ニシダが綺麗なフォームで、竿を振ると、釣り針の先に吊るされた巨大トカゲが放物線を描くように、水面に水飛沫を上げ、勢いよく着水した
「おっ!来たんじゃねぇか!?河童のオッさん!」
「なんのっ!まだまだ!!」
「ニシダさん、落ちいてください。いいですか?先ずは、手に人という字を3回書いてですね」
「ヴェルデ?其れは、緊張しない呪いだぞ」
「そうだよ。釣り竿を上げる時にセイヤーッ!!!って言うのが真の釣り師だよ」
「いやいや、釣りに作法なんかねぇさ。必要なんは、根気と気合いだよ」
「テン。其れはどっちも同じ意味じゃないか?」
「えっ、そなの?ベルさん」
相変わらずの惚けたやり取りを繰り広げるソウテン達を他所に、ニシダは細かく振動する竿の先端を見据える。刹那、竿の穂先が引き込まれるように、大きな振動を見せる
「いまだっ!!!皆さん!!!お願いしますっ!」
「あいよ……、派手に行くぜっ!野朗どもっ!」
『了解!リーダー!!』
決まり文句とかした号令を機に、ニシダから竿を受け取った《
「グリスっ!!!思いっきり引けェェェ!!!」
「あいよっ!!!どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
最後尾のグリスがありったけの力を込め、竿を引っ張り上げる。その時だった、水面から、何かが顔を出す
「リーダー!なんか見えたっ!!」
「こ、これは……!」
「でっかっ!?」
「…………美味そうだな」
『いや、その反応は可笑しいだろっ!!!』
水面に姿を見せたのは、巨大な魚。呆気に取られるキリト達を尻目に、約1名、ソウテンだけは意味不明な一言を放ち、その場にいた全員から、突っ込みが飛ぶ
「さて……逃げるか」
「だな」
「それじゃ、グリスさん。後はお願いします」
「頑張って」
「健闘を祈るぞ」
「は……?って!待てコラァァァァァ!!!」
迫り来る、巨大魚を前に、観客達と共に走り去るソウテン達の背に、グリスの叫び声が木霊するも、巨大魚は陸に上がり、地面を走り出した
『ぎゃぁぁぁぁぁ!!!』
「全く、だらしないわね。うちのバカたちは」
「ですね、あたしたちでやりましょうか。ミトさん」
「そうね。アスナも手伝ってくれる?」
「勿論だよ」
「ちょっ!?早く逃げんと!!」
巨大魚を前に並び立つ三人の美少女達にニシダが叫ぶ。しかしながら、彼女達はアイテムウィンドウを操作し、其々の得物を装備する
「
「だな。アスナにしてみたら、あんなの前座にもならないくらいにイージーだぜ」
「シリカにはちょっと、簡単すぎるかな?あのくらい」
「何を悠長に!早よせんと、三人が!!」
「「「まあ、そう言わずに。見てなって」」」
慌てふためくニシダに、ソウテン、キリト、ヒイロが声を揃え、彼を咎める。そして、勢いよく走り出した三人娘は正面から、巨大魚に突っ込み、其々のソードスキルを叩き込み、ポリゴンに変える
「な、なんと……」
「思い出した……ニシダさん、あの人たち!攻略組トップギルドの《
「《
「ああ、仮面をしていないから、分からなかったが……あの癖毛の男、《蒼の道化師》だ。間違いない」
「《
そう呟くように笑うニシダの見据え先には、この世界を全力で楽しむ《
「いやぁ、それにしてもデケェ。ピーナッツバター掛けたら、美味そうだ」
『それは無い』
「全員一致かよっ!?」
第76層に繋がるダンジョンの発見、その報せは《
NEXTヒント 嵐の前の静けさ
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気