2025年1月19日 東京都所沢総合病院
「やぁ、アスナ。また来たよ……ははっ、この台詞を言うのは、何度目だろうな」
最上階の病室、ベッドに横たわる一人の少女を前に、和人が呼び掛ける。彼女は二年間のデスゲームで、和人が愛した最愛の人であり相棒である
未だに目を覚まさない彼女の病室を訪れるのは、何度目だろう。呼び掛けていれば、何時ものように、元気な笑顔で微笑んでくれるのではないか、と思いながら、色々と話しかけるが彼女からの返答が返ってくることは無い
「おお、来ていたのか。桐ヶ谷君」
病室の扉が開き、男性の声が耳に届く。振り向くと、病室に二人の男性が入って来る
一人はアスナ…結城明日奈の父である結城彰三、総合電子機器メーカー《レクト》のCEOである実業家だ
「お邪魔してます。結城さん」
「いやいや、いつでも来てもらって構わんよ。この子も喜ぶ」
そう言うと、彰三は軽く微笑んだ後、アスナの枕元に近寄り、アスナの髪を触る。
「彼とは初めてだな。うちの研究所で主任をしている須郷君だ」
そう言い、彰三は背後に佇むダークグレーのスーツに身を包んだ、眼鏡の男性を紹介する
「よろしく、須郷伸之です。……そうか、君があのキリト君か」
須郷と名乗った男性は和人の事を知っていたらしく、友好的な態度ではあるが、まるで品定めをするように彼を見る
「……桐ヶ谷和人です。よろしく」
初対面ながらも、嫌悪感剥き出しの状態で、顔を顰める。それだけ、須郷は和人の眼に胡散臭く映った。その瞳の奥に秘められた闇、まるで誰かを思い出すような、その瞳を和人は唯只管に見詰めるしかない
「いや、すまん。SAOサーバー内部での事は口外禁止だったな。あまりにもドラマティックな話なのでつい喋ってしまった。彼は私の腹心の部下でね。昔から家族同然の付き合いで、息子同然なんだ」
「ああ、社長、その事なんですが……。来月にでも、正式にお話を決めさせて頂きたいと思います」
「………いいのかね?君はまだ若い。新しい人生だって」
「僕の心は昔から決まってます。それに、明日奈さんが今の美しい姿でいる間に、ドレスを着せてあげたいのです」
「……そうだな。そろそろ覚悟を決める時期かもしれないな」
暫しの沈黙が辺りを支配し、彰三はアスナの髪から手を離す
「それでは、私は失礼するよ。桐ヶ谷君、また会おう」
頷いてから、彰三は病室を出ていった。病室に残されたのは和人と須郷の二人、ゆっくりとアスナに近付いた須郷は、髪をひと房摘まみ上げる
「キリト君、君はあのゲームの中で、明日奈と暮らしてたんだって?」
「……ええ」
「そうか……それなら、僕と君の関係は少々複雑な関係と言うことになるかな?さっきの話はねぇ……僕と明日奈が結婚すると言う話だよ」
その言葉に、和人は絶句する。嫌悪感剥き出しの表情を浮かべ、須郷に冷たい視線を浴びせるが、彼は気に留めようともしない
その時だ、扉が開き、何かが入ってきた
「喰らいやがれっ!!挨拶代わりのしめ鯖っ!」
「ぐもっ!?な、なんだ!」
口にしめ鯖を押し込まれた須郷が、睨み付けるように前方へ視線を向ける。其処には、しめ鯖を手にした純平が立っていた
「……ゴリラだとっ!?此処はいつから、動物病院になったんだ!?」
「ゴリラ?何をワケわかんねぇことを言ってやがる、俺はバナナの伝道師だ。そして、今しがたお前に喰らわせたのは、ハジケ奥義・出会い頭しめ鯖舞踊だ」
「出会い頭しめ鯖舞踊っ!?」
「そして、貴方にレインボーっ!」
「ごばっ!?今度はなんだ!?」
純平の行動に須郷が驚いていると、謎の掛け声と共に菊丸が顔面に城の模型を投げ付けた
「これぞ、アトランティスに古来より伝わる歓迎の儀式マハトマ城投げです」
「なんだそれはっ!!!ん?あれ?僕の眼鏡がない…って!なにやってんだぁ!!!」
菊丸の理解不能な儀式に突っ込みを入れていた須郷は、自分の身に付けていた眼鏡が無い事に気付き、辺りを見回すと眼鏡をフライヤーに浸す彩葉が視界に映る
「メガネフライだけど?」
「メガネフライっ!?」
「なんだそれっ!はっ……ドラゴンフライの親戚か!!!」
「其れはトンボです、純平さん」
「なにっ!トンボにもフライが!?てことは、アレだな!バタフライに通ずるものがあるぜ!」
「バタフライは泳ぎ方ですよ?全く、これだからゴリラは」
騒がしい一匹を、菊丸が咎めるのを、見ながら、未だに出会った事がない特殊馬鹿達に須郷は絶句していた
すると、彼の肩を誰かが叩く。背後を向くと、其処にはアスナにも負けない一人の美少女が佇んでいた
「貴方が須郷ね?アスナから聞いてるわ、これは歓迎と挨拶を込めた私なりの気持ちよ、土鍋ボンバー!!!」
「ぐほっぉ!?」
『以上、作戦完了しました。桐ヶ谷将軍』
「貴様の仕業かぁ!!!」
「いやいや!知らん!勝手にやったんだよ!」
「許さんぞ、貴様。今後は、ここに来ないで貰おう。結城家との接触も一切禁止だ!お前たちもだ!」
(すげぇ怒ってらっしゃるぅぅぅぅ!!!どうしよう……あっ!あんな所にバーカウンターが!)
怒る須郷に慌てる和人の眼に飛び込んで来たのは、簡素なバーカウンター。カウンター越しにシェイカーを振るのは、眼鏡の少年だ
駆け込むように、座席に滑り込む
「マスター!あの人にお酒を!」
「かしこまりました……カズさんからの戦線布告です!この卑劣眼鏡!」
「オラオラ、和人さんの酒が飲めねぇのか?あぁん?」
「焼き鳥食え、このヤロー」
「追い討ちのテキーラマグナムよ、火傷しろ」
「ぎゃぁぁぁぁ!何してんだぁぁぁぁ!!!このバカどもっ!」
矢継ぎ早に須郷へと降り掛かる暴走の嵐、和人が驚愕しつつ突っ込むが彼等は手を止めようとしない
「すいません、ホント!後で言って聞かせますんで!」
『パパー』
「パパじゃねぇわ!!!」
須郷の顔をハンカチで拭いながらも、側を走り回る四人の馬鹿を見過ごせない和人。ツッコミ故の、悲しい性から、側にあったパイプ椅子で須郷を殴り付けた
(いやぁぁぁぁ!やっちまったぁぁぁぁ!!!)
「桐ヶ谷和人君、君も式に来てくれたまえ。その時は君専用のこの特等席を使ってくれて構わないからね」
去っていく須郷は、床を指差しながら、和人へと悪態を吐き捨てるが内心では、腹を立てていた
(桐ヶ谷和人……いや、キリトとその仲間のムシケラどもめ。貴様らには屈辱を味わせてやる、僕のとっておきの切り札でなぁ!)
同刻 神奈川県横浜市繁華街
「君は覚悟があるのか?この金とスキャンダルの渦巻く世界で、自分を見失わない覚悟が」
とある芸能事務所、その一室で一人の男性が向き合うのは、小柄で愛くるしい見た目の年端もいかない一人の少女である
「はい、あたしはデスゲームに囚われていた二年間でアイドルの素晴らしさを知りました。ですから、あたしを一流のアイドルに……チーズケーキガールにしてください、お願いします!プロレスさん!」
「シンデレラガールね、あとプロデューサーだよ。いいだろう、君の熱意に私のヴィンテージが芳醇の時を迎えた。採用だ、共にアイドルの頂点を目指して、アイカツだ!」
「はい!綾野圭子、粉骨砕身の覚悟でアイドル目指します!とりあえず、当たって砕けろをモットーに崖登りしてきますねっ!」
「えっ……?」
「いってきまーす!!!」
勢いよく飛び出す圭子、これは彼女がアイドルの頂点となる為にアイカツを頑張る……という話ではない
「カムバッーーーーーク!!!圭子ぉぉぉぉ!!!」
妖精の国、囚われの姫君、そして、最強のバカ達。その三つが交じり合う時、新たな冒険の道が開かれる
NEXTヒント ハジケライフ
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気