2025年1月19日 千葉県館山市海岸
「波が畝り、風が鳴き、花が笑う。バームクーヘンを作れと俺を呼ぶっ!さぁ…始めよう。バームクーヘン作りの始まりだ!」
海が一望できる一軒家、その庭先に手作りされた釜戸でバームクーヘン作りに勤しむは一人の青年。彼の名は
「あれからもう……二ヶ月。皆は元気にしてるだろうか」
かつて、彼は二年間に渡るデスゲームに囚われていた。《ディアベル》の名で、攻略組の指揮を執り、デスゲームを終わらせようとしていた。しかし、彼はその終わりが見えない世界で、ある一人の少年に出会った
『ディアベル。おめぇさんの力を貸してくれねぇか?俺は、このゲームをクリアしたい。でも、其れをやり遂げるには、俺一人の力じゃあ足りねぇんよ。だから、おめぇさんの持つ力を貸してほしいんだ』
その差し伸べられた手は、仮想世界であった筈なのに、暖かったのを今でも覚えている。その言葉をくれた彼が誰であったかは、思い出せない。顔に靄が掛かり、声にはエコーが掛かっている
「君は……誰なんだ」
しかしながら、其れが自分にとっての大切な友である事を阿来は、僅かに感じていた
同刻 沖縄県名護市バナナ農場
「バナナとはフルーツであってフルーツに成らず!そう日本の主食はバナナであるっ!!!」
南国、常夏、楽園、偉大なる航路、呼び方は人其れであるこの沖縄では今世紀大ブームのフルーツが栽培されている
その全ての元凶は、ある一人の男性によって、引き起こされた
「アインクラッドバナナやアルゲードバナナには敵わんが……このバナナも中々だな」
男性の名は
「時とは、知らぬ間に過ぎていくものだな…。彼等はどうしているだろうか…」
あの浮遊城で、生き抜く為に戦い続けた日々。その終わりの見えない世界で、高良はある出会いをした
『コーバッツさん。今日からはおめぇさんも、俺たちの仲間だ。一緒に、ゲームクリアを目指して、最後まで面白おかしく世界を彩ってこうぜ』
その不敵に笑う口元と共に、差し伸べられた手。其れは、彼の人生を変えるきっかけとなった。あの時、そう言ったのが誰であったかは、思い出せないが自分にとって、その誰かは何よりも大切だった
脳裏に浮かぶ姿は霞掛かり、ぼやけているが其れだけは、その人物が大切な存在であった事だけは覚えていた
「……誰なのだ、貴殿は」
同刻 東京都多摩市天野組
「ふんっ……現実の体はどうも硬くていかんな」
天野組。多摩市最大の極道一家である、そして、縁側で首を左右に捻りながら、悪態にも似た皮肉を吐く少年が一人。彼の名は
「嘘みたいだが……本当に帰ってきたんだな。そういえば、リズベットのヤツに本名を聞くのを忘れていたな……」
『若頭!おはようさんですっ!!!』
「ああ…おはよ。若頭か……職人と呼んでくれる奴等はもう居ないんだな、俺の側には」
職人。其れは、此処とは異なる世界での茉人の呼び名である。《アマツ》という名で、鍛冶屋を生業にしていた彼には、数多くの顧客が居た。中でも、専属職人を務めていたとあるギルドのメンバー達は、茉人の人生を大きく変えた
『アンタがアマツか?すげぇ腕の持ち主なんだってな。俺たちの武器を作ってほしいんだ、先ずは俺専用の槍を頼んでいいか?ドロップアイテムはどうも肌にあわねぇんよ』
そう言って、槍を見せびらかしながら、不敵な笑みを浮かべる誰か。親友であった筈の彼を、退屈な日常に彩りを加えてくれた筈の彼を、茉人は思い出せない
顔には靄が、声にはエコーが掛かっている。其れでも、その誰かが自分にとって、大切な存在であった事だけは理解していた
「お前は一体……そして、何処にいるんだ」
2025年1月20日 東京都所沢市兎沢家
『よぉ、ミト。ゲームやるか?ここはやっぱ、格ゲーだよなー。あっ、ピーナッツバターサンドあるけど、食う?』
『またピーナッツバター?ホントに好きねぇ…。全くもう…でもありがと、いただくわね』
寂れたゲームセンター、その中心にある格闘ゲーム機の前で、深澄にピーナッツバターサンドを分け与えながら、笑う一人の少年。その顔には靄が、声にはエコーが掛かり、鮮明に思い出すことは出来ないが、深澄は知っていた
彼が自分にとって、家族と同じくらいに大切な人である事を、其れだけは忘れていなかった
「んっ……夢か。それにしても……あの人は…」
目を覚まし、ベッドから起き上がる。スマホを手に取り、リビングに降りると朝食が用意されていた
共働きである両親は基本的に朝早くに出勤する為、朝食は一人で取る事が多い
「えっと……トーストに何を塗ろう…。あっ、ピーナッツバター」
視界に入ったのはピーナッツバター。夢に出てきた誰かが嬉しそうに食べていたお気に入りの調味料だ
『ピーナッツバターはな、何にでも合うんだ。ピーナッツバターを馬鹿にすんなよ』
「………ピーナッツバター……そうだ、私……誰かの為にピーナッツバターを作ったんだ。でも…誰の為に…?」
靄が掛かっていた脳内に、ピーナッツバターという言葉が何度も何度も繰り返される。その手には、何時もピーナッツバターが、その顔には常に仮面が、そして何よりも、代名詞と呼べる不敵な笑みが浮かんでいた
「そうよ……そうだわっ!!!テン!!!どうして、忘れてたんだろう…!テンが居ない!直ぐに探さないと!あれ?でも、何処を……」
トーストを口にリスのように頰ぼりながら、思い出した
「きっと、彼処ね。あのゲームセンターにテンは居る。待ってなさい、テン。私がちょっと御説教してあげるわ」
天哉を思い出した深澄は、寝間着から私服に着替え、家を飛び出す。そして、思い出の場所であるゲームセンターへと向かう
「あれ?ミトさん。こんなトコで何してるの、暇なの?」
埼玉県入間市に到着した深澄が、目的地に向かっていると道端を歩いていた彩葉が彼女を呼び止めた
「彩葉っ!丁度いいとこに!今から、テンに会うから、彩葉も一緒に来なさいっ!」
「テン……天ぷらの話?だったら、焼き鳥の天ぷらが良いなぁ」
「天ぷらじゃないわよ!テンよ、テン!!私の恋人で、貴方達のリーダーの蒼井天哉よっ!」
「蒼井天哉……まさか、あの時の!」
何かを思い出したように、彩葉の脳裏に回想が浮かぶ。あれはまだ、深澄達と出会う少し前の話、彼は渋谷センター街の路地で売り子をしていた
『買ってください……お願いです。この……曲がったスプーン、買ってください』
「いやなにっ!?この変な回想!!!というか、曲がったスプーンっ!?」
『ほう、曲がったスプーンか。用途はなんだね?』
一人の仮面男が、興味を示し、話しかけて来た
『金魚掬いの掬うヤツに最適です』
「いやいや!其れだと掬えないからっ!!!」
『其れは良い物だ、一つ頂こう。幾らかね?』
『消費税込みで、200000000です』
スプーン売りの少年、完。次回から焼き鳥大学しめ鯖舞踊部が始まる
「高いわっ!!!というか作品名変わり過ぎでしょ!!!焼き鳥大学しめ鯖舞踊部って、なによっ!?」
「とまぁ、あの時の仮面の人が多分はそのテンとかいう人だったんじゃないかなと俺は思ってる」
「冷静に話を進めないでくれるっ!?って、突っ込んでる場合じゃないわ。とにかく、彩葉も一緒に来なさい。大丈夫、会えばきっと思い出すわ」
「分かった」
彩葉を連れ、ゲームセンターへと深澄は足を運ぶ。通い慣れたその道のりの先に、相変わらずの寂れた佇まいで、そのゲームセンター《ファミリア》はあった
「やっと会える……久しぶりっ!テン!」
勢いよく扉を開け、深澄はその先に待つ彼を思い浮かべる。きっと、何食わぬ顔で、「ゲームやるか?」と問い掛けてくれるであろう彼の無邪気な姿を
「おらー!!ピーマン食えやっーーー!!!」
「よくも人の記憶に細工しやがったなっ!この迷子ピーナッツ!!!てめぇはピーマンの刑だコラァァ!!!」
「お食べなさい、そして更にお食べなさい」
「むごっ!?むごごっ!!!」
正に地獄絵図、天井から吊るされた天哉を取り囲むように三人の馬鹿が彼の口にピーマンを押し込んでいた
「何してんのぉぉぉぉ!?」
「ずずっ……地獄絵図だ」
突っ込む深澄を他所に彩葉は湯呑みを片手に、空を見上げるのであった
遂に記憶を取り戻した深澄達、そして、彼女たちの前に現れた天哉と謎の少女・琴音!果たして彼女の正体は!
NEXTヒント 囚われの姫君
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気