2025年1月20日
「そういや、ロトはこの世界ではどういう扱いになってんだ?」
「おろ?僕の役割とな?ん〜と……ちょいと待ってね」
ソウテンの唐突な問いに、ロトは再び眼を閉じるとALOでの自らの役割に関する検索を始める。元々、彼は凍結されていたメンタルヘルスケアプログラムのプロトタイプ、通称《Prototype-MHCP000》にソウテンの内に秘められていた闇と呼ぶべき《黒い衝動》が、融合するかの様に意識を同調させ、形を成した存在である。故に、当時は自分を否定したソウテンと刃を交えたこともあるが、其れは今となっては昔の話だ
「えっと…この世界だと、僕みたいな《AI》はプレイヤーサポート用の疑似人格プログラム、《ナビゲーション・ピクシー》ってヤツに分類されるみたいだねぇ」
刹那、ロトの体が発光し、その姿を変化させていく。やがて、光の中から、体長10㎝ぐらいの体に、背中から半透明の翅を二枚生やした青紫色の衣服を纏い、姿を見せる
「どう?カッコいいでしょー」
「カッコいいというよりも可愛いの方が、今のロトには的確ね」
「えぇ〜……とーさんにはどう見える?」
ミトからの指摘に、不服そうに頬を膨らませた後、ソウテンへ問いかける
「良いと思うぞ?ちっさくて、潰しちまいそうな気もするけど」
「なにそれっ!殺人予告っ!?」
「はいはい、一家団欒はここまでにしましょう。私たちが目指すべきは世界樹!テン、ロト!準備はいいわね?行くわよっ!!」
目的地を示し、意志を高らかに宣言するミト。その背後で、呆れにも似た溜め息をソウテンも、ロトも吐くが、直ぐに彼女の意志を察し、深々と御辞儀する
「「
同刻
「ふむふむ……なるほど。これは迷いましたね、完全に」
森の中を彷徨う一つの影、整えられた金色の髪に緑色の瞳が特徴的な彼は、自らが選んだ筈の種族である
辺りを見回すも、土地勘がない彼にとっては、行けども行けども、広がるのは見知らぬ景色ばかりだ
「アイテムの文字化けに含め、スキルの異常さ……どうやら、この状況は初心者にしては明らかにチートのようですね。ふむ……此れは、久しぶりに心が躍りますね」
彼、ヴェルデは仮想世界で剣を振るっていた頃を懐かしみながら、微笑する。世界が違えば、当然ながら仕様も違う訳だが、彼の役割に変わりはない
「さてさて、我が家族もこの世界に来ている頃でしょう。此処は、直ぐにでも合流し……ん?」
ALOに居る筈の仲間たちを探そうと一歩を踏み出そうとした時だ。近場から、妙な違和感を感じ取る
近場と言っても、反対方向であるが索敵スキルが高いヴェルデにとっては、気にする事ではない。
「はぁはぁ…」
「悪いがこっちも任務だからな。 金とアイテムを置いていけば、見逃す」
「なんだよ、殺そうぜ!! オンナ相手超ひさびさじゃん」
《殺す》、その言葉が聞こえた瞬間だった。ヴェルデの最大限まで高まっていた
「な、なんだ!?」
「えっ……
「はんっ、仲間か?まあどっちでもいい、見たところ、
ヴェルデの突然の登場に首を傾げる金髪ポニーテール少女とは違い、
「はぁ…これも定めか、性分か。弾けた兄貴分を二人も持ってしまうと、その影響を受けてしまうのは……弟分の哀しき
「お嬢さん?あっ、もしかして……あたし?」
「ええ、そうです。先程、貴女は僕に誰かと問い掛けましたね?」
「う、うん…言ったけど…」
「よろしい、これで僕と貴女には縁が出来ました。喜びなさい、この出会いは間違いなく良縁です!故に、今この時をもって、僕は貴女の味方となりましょう!」
その言葉と共に一陣の風が吹き、ヴェルデの髪を揺らす。鼻まで、ずり落ちた眼鏡を上げる仕草をした後、アイテム欄から一冊の本を取り出す
「本?はっはっはっはっ、まさか其れが武器か?」
「ええ、本来は剣の方が得意なんですが……此処はファンタジー溢れる魔法世界です。故に、僕は剣士をサポートする賢者となるべきかと……あの人が道化師を演じ、剣士と共に肩を並べるというのなら、その背中を守護するが、我が役目。僕の名はヴェルデ、世界を彩りし道化師の仲間です」
「長々と説明をご苦労さまだな。だが、ツミだぜっ!!!」
「何を笑っているんだっ!」
「生意気だぞっ!!
役割を説明する間に、四方を重装備の五人組に包囲されたにも関わらず、ヴェルデは微妙を浮かべていた。その笑みは、彼等を小馬鹿にしている訳ではない、この状況を楽しんでいるが故の笑みである
「ノーコンティニューでクリアして、差し上げましょう」
その高らかな叫びと共に、彼の手にしていた本が光を放ち、周囲に光の剣を出現させた。ヴェルデが手を振ると、
「ぐあああああ!?」
「汚い花火ですね」
「うわぁ……優しそうに見えて、鬼だ……って、何してんのっ!?」
消えゆく
「見てわかりませんか?」
「分からないわよ、というか分かりたくもないわ。何処の世界に、敵を倒した矢先に鍋を始めるバカがいるのよ」
「鍋ではありません、カレーです。ちなみに具材はその辺の野草なので味はヘルシー仕立てになっています」
「ロクなものが入ってない……!!!」
「うん、美味いな。ヒイロもそう思うだろ?」
「キリトさん。リーダーは?あとミトさん」
「質問に質問で返すんじゃない。ユイはどうだ?美味いか?」
「はい!パパ!ヴェルデさんはカレー屋さんなんですか?」
「いえ、賢者をしています」
「いやいやっ!!!その前に誰っ!?」
カレーを食べながら、自然に会話に参加していた黒髪の少年と、赤い髪の少年、小さな妖精の少女を前に金髪少女が突っ込みを放つ
「俺か?俺はキリトだ、見ての通りのパスタ好きな剣士だ」
「俺はヒイロ。焼き鳥を愛するブーメラン使いだよ」
「わたしはユイです。好きなものはママとクッキー、其れにパパ、あとは迷子と鍋女です」
「迷子に鍋女ってなにっ!?」
少女の役割が突っ込みに落ち着いた頃、キリト達の正体に気付いたヴェルデが口を開く
「やはり、キリトさんとヒイロくんでしたか。其れにユイさんも」
「久しぶりだな、ヴェルデ」
「久しぶりではありませんよ。二時間ほど前にも会いました」
「そうだったな」
「ヴェルデ。おはよう」
「今は夜ですよ、ヒイロくん」
「わたしは久しぶりです!」
「ええ、あの時は初対面以降の関わりはありませんでしたからね。改めまして、ヴェルデです。以後をお見知り置きを」
「ユイです、よろしくお願いします」
丁寧な自己紹介を返すユイの律儀さに、ヴェルデは感動したように涙を拭う
「それはそうと……誰ですか?貴女は」
「あたし?あたしはリーファよ、助けてくれてありがとう。ヴェルデくん」
「お安い御用だ、困った時は頼りにしてくれ」
「いや君に助けられた記憶はないんだけど?」
「変わりませんね、キリトさんのぼっちさは」
「パスタ馬鹿」
「パパの役立たず」
「アスナぁぁぁぁ!!!弟分達と娘が反抗期だぁぁぁぁ!!!」
真顔のユイに悪口を言われ、遠く離れた場所に居るであろうアスナに呼び掛けるかのように騒ぎ始めるキリト。その姿に取り残された三人はというと
「あの人……バカなの?」
「ええ、筋金入りの」
「リーダーに似たのね、きっと」
「パパはお友だちもおバカさんなんですよ」
同刻
「まさか、わたしを狙う物好きな
「お前、アレだろ?最近噂の
「ふぅん?わたしを知ってるんだ、さてはファンとかだったりする?サインあげるわよ」
少女、フィリアは不敵な笑みを浮かべながら問う。彼女はフィールドを駆け回り宝を手にする《トレジャーハンター》を生業にしており、プレイヤーと対面する事はフレンド以外で滅多に無い。しかしながら、今宵の彼女は“ある理由”から、気が緩んでいた。故に、
「光栄だな、其れは。だが俺の目的はお前の持つアイテムだけだ。あるんだろ?レアアイテムが」
「あるけど、あげない。わたしはトレジャーハンターよ。お金にならない取り引きはしないの」
「そうか……なら、狩ってから奪うまでだぜっ!!!」
「上等だよ……やってみなさいっ!!」
互いに得物を抜き、駆け出そうとした時だった
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なにっ!?」
「なんだっ!?」
響き渡る絶叫に動きを止め、上空を見上げる。すると、その声の主は、盛大な音を立て、更に土煙を上げた後、地面に突き刺さった
「「なんか刺さったーーーっ!!」」
「いででで……ちきしょぉ……フライトなんたらってのもアテになんねぇな。墜落しちまった………どわっ!なんだ、お前らっ!!」
「「コッチの台詞だっ!!!」」
起き上がり、フィリアと男性プレイヤーを見た灰色の髪が特徴的な少年が目を見開き、驚愕したように叫ぶ
「「って……ゴリラが喋ったぁぁぁぁ!!!」」
「誰がだっ!!どう見ても人間だろうがっ!!!」
この日、妖精の国に彼等は降り立った。世界を彩りし道化師一味、その名は、《
フィリアの前に現れた一人の少年、彼は一体…!そして助けたリーファに連れられて訪れた首都で、ヴェルデ達の前に謎の少年が姿を現す!
NEXTヒント 但し、君はダメです
もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…
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ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
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キリトとアスナが司会の正規の雰囲気