蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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今回はグリスメイン!人間がメインではない話は初め……あっ!グリスって人間だっ!!!


第七奥義 猿妖精とトレジャーハンター、ときどきおバカたち

2025年1月20日風妖精(シルフ)領 首都スイルベーン付近森林

 

 

「んで?どういう状況だ、コイツは。見た感じ……お前が襲われてんのか?妖精女」

 

「妖精女って、まさかわたし!?だいたいキミも妖精じゃないっ!しかもよく見たら、最近のアップデートで導入された猿妖精(エイプ)だしっ!」

 

灰色の髪を夜風に靡かせ、少年が背後のフィリアに質問混じりに問い掛けると、彼女は矢継ぎ早のように突っ込みを入れ始める

 

「あん?猿妖精(エイプ)で何が悪ぃんだよ」

 

「だって、猿妖精(エイプ)って新種族の割に人気ないよ。影妖精(スプリガン)よりも」

 

「マジでっ!?」

 

「うん、パワー重視だから普通の人は選ばないんだよ。選ぶとしたら、キミみたいに体格の良い人くらいかな」

 

「ほーん」

 

フィリアの言葉に適当な相槌を返し、少年は首を数回ほど左右に捻る。彼の装備は初心者向けであるが、その佇まいに、謎の安心感を覚える

 

「コラァ!!!無視すんなっ!さもないと、コイツがどうなってもしらねぇぞ!」

 

「なっ!お前には人の心がねぇのかっ!!!卑怯だぞっ!!!」

 

「えっ、まさか人質っ!?」

 

火妖精(サラマンダー)の男性が人質を取る姿に、少年が驚いたように目を見開き、騒ぎ始める。其れに釣られ、フィリアは視線を動かす

 

「まさか……バナナを人質に取る非道な輩がいるなんてっ!」

 

「バナナかよっ!!!」

 

「ふっ、驚くのはこれだけじゃない、なんと……コイツは国産だ」

 

「なにっ!?」

 

「いや驚くべきポイントおかしくないっ!?」

 

目の前で繰り広げられる謎の状況に、フィリアは突っ込みながらも、不安そうな表情を浮かべる

 

「まあ先制ハジケはこのくらいにしておいてやろう。次はお前がハジケを見せてみろよ、ハジケリストなんだろ?」

 

「ハジケリストだったのか、道理で強い訳だぜ」

 

「ハジケリストっ!?」

 

「ふっ……なら見せてやる、俺のハジケをっ!」

 

少年はそう宣言すると、語り出す。自らが秘めたハジケを、そうあれは何時かのクリスマスのことだった

 

『バナナいかがっスか〜、あの有名なしめ鯖バナナ〜』

 

バナナ片手に、大阪の新世界を練り歩く一人の少年。彼がまだ六歳の頃の話だ

 

『おかしいな……クリスマスなのにバナナが売れない……うぅ…これじゃあ家に帰っても……』

 

悲しみに暮れ、その場にへたり込む少年。彼の脳裏に浮かぶのは

 

『寒かったろ?鍋があるから食いな』

 

『パスタもあるわよ。さぁ、手を洗ってきなさい』

 

仮面の男性と黒髪の女性の姿

 

『暖かく迎えられちゃう……!!!』

 

「いや普通じゃない!?それっ!!!」

 

これが後に大阪を恐怖に陥れたとされる、しめ鯖バナナ事件の前日譚である事は余り知られていない

 

「どうだ、俺のハジケっぷりは」

 

「くっ……見事なハジケだ…だが俺のハジケはこんなものでは----ぐわぁぁぁぁっ!!!」

 

「「なんだっ!?」」

 

火妖精(サラマンダー)の男性が更なるハジケを披露しようとした時、唐突な悲鳴に彼は小さな炎に姿を変えた。その展開に少年とフィリアは驚愕しながらも、叫んだ

 

「何だかんだと聞かれたら、」

 

「答えないのが普通だけど……」

 

「「特別に答えてあげちゃおうじゃねぇの!」」

 

「仮面に隠したその美学」

 

「仲間に誓うその目的」

 

「自由と愛の彩りを求める」

 

「ハードでビターな道化師」

 

「ソウテン!」

 

「ミト!」

 

「ロトだよ」

 

「プ〜ン」

 

「「《彩りの道化(カラーズ・クラウン)》、颯爽登場っ!!!」」

 

「よろしくね〜」

 

「ププ〜ン」

 

突如、名乗りを上げた仮面少年率いる謎の一行。いきなりの現状にフィリアは驚きを隠せない

 

「なんか出たっ!!!」

 

「テンにミトじゃねぇか。あとロトにプルー」

 

「知り合いなのっ!?」

 

まさかの発言に少年の方を見ると、彼を見ながら仮面少年基ソウテン達が固まっていた

 

「「「えっ………喋るゴリラっ!?」」」

 

「誰がだっ!!俺はグリスだっ!!!」

 

「なんだ、グリスか。猿みたいだから、ゴリラかと思ったじゃねぇの」

 

「紛らわしいわね。恥を知りなさい、恥を」

 

「なんで逆ギレしてんだっ!?」

 

「バナナあげるから、落ち着きなよ。グリス」

 

「おう、すまねぇな。ロト…………って、ロトォォォォォォ!?」

 

「やっほー」

 

「何でいるんだっ!?」

 

「成り行き」

 

「成り行きっ!?おい、テンにミト!どうなってんだっ!!!」

 

少年基グリスはロトとの思わぬ再会の理由を問おうと、ソウテンとミトに呼び掛けながら、背後を振り向く

 

「うちのゴリラが御世話になりまして、良かったらこのピーナッツバターをどうぞ。嫁の手製なんよ」

 

「どうも、御紹介に預かりました嫁です。こちらの落花生も差し上げます」

 

「ピーナッツバターに落花生っ!?わぁ!好物なの!ありがとう!テンちゃんにあげたら、きっと喜ぶだろうなぁ…。あっ、でも……テンちゃんは、このALOはやってないから、あげれないかぁ…」

 

そう呟きながら、眉を顰めるフィリア。すると手の中にあるピーナッツバターを舐めるソウテンが彼女に視線を向けた

 

「おろ?なして、俺のあだ名を知ってるんよ?お嬢さん」

 

「えっ?これは、わたしの双子の兄さんの名前だよ?」

 

「「……………………」」

 

ソウテンとフィリアの間に、暫くの沈黙が訪れる。気まずい雰囲気が流れ、数時間にも感じられる数秒の沈黙を破ったのは、

 

「………琴音?」

 

ソウテンだった。まさかとは思いながらも、双子の妹の名を呼ぶ

 

「えっと………天哉…?」

 

すると、彼女もソウテンの本名を呼ぶ

 

「なーんだ、琴音だったんか」

 

「もぉ〜、それならそうと言ってよ〜。天哉ってばー」

 

「いやぁ悪ぃ、悪ぃ。あっ、呼ぶ時はテンで良いからな?ソウテンだし」

 

「分かった。わたしはフィリアって呼んでね」

 

「フィーって呼ぶわ、じゃあ」

 

「フィー……悪くないね!」

 

愛称を気に入ったのか、フィリアは嬉しそうに兄を彷彿とさせる不敵な笑みを見せる

 

「改めて、よろしくね。私はミトよ、リアルだと貴女の友人になるわ」

 

「あっ……なるほど!よろしくね!ミト!」

 

「僕はロトだよ。よろしく、おばちゃん」

 

「おばちゃん!?」

 

「うん、だってとーさんの妹さんなんでしょ?だったら、僕のおばちゃんだよね」

 

「とーさん……?」

 

「息子なんよ、ロトは」

 

「息子っ!?」

 

「どーも、息子です」

 

「へ……へぇ……わたしの事はフィリア、もしくはお姉ちゃんって呼んでね?おばちゃんは流石にキツい…」

 

「分かった。じゃあ、ねーさん」

 

「うん!それなら良しっ!で………残りかすの貴方は?やっぱり、ゴリラなの?」

 

「あぁん?てめぇ、テンの妹かなんかしらねぇがな。人を残りかす呼ばわりすんじゃねぇよ、いいか?俺はな、カスはカスでもカシスオレンジだ!」

 

残りかす呼ばわりされたグリスは、睨みを効かせ、フィリアに詰め寄る。意味不明な言い分にソウテンとミトは引き気味の表情を見せる

 

「ご……ごめんなさい……(ワイルドな人…ああ、でも駄目よ…わたしには純平さんが………でも、今度、落花生を贈ってあげたい…)」

 

「フィーっ!?許さんからなっ!こんなゴリラが交際相手なんてっ!」

 

グリスの野生的な一面に想い人の姿を重ね、頬を赤らめるフィリアの隣でソウテンが騒ぎ出す

 

「おう、ミト。スイカバーンって街はどっちだ?」

 

「こっちが聞きたいわよ。スイカバーンって何処よ、そんな街聞いたこともないわよ」

 

「スイルベーンの間違いだよ。かーさん」

 

しかし、その一方でミト達は冷静であったのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025年1月20日風妖精(シルフ)領 首都スイルベーン

 

 

 

「そ、そんなバカなあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

《スイルベーン》の中央に位置する塔に激突したキリトは、地面に落下し、冷たい感触を味わっていた

 

「やれやれ。リーダーやグリスさんではないのですから、もう少し勉強したら如何です?キリトさん」

 

「それは無理じゃないかな、だってキリトさんはリーダーの親友なんだよ?」

 

「パパ!もう一回やりましょう!わたし、知ってます!あれがジェットコースターですよね!」

 

「やらんわっ!!!」

 

「ユイちゃん、アレはねジェットコースターじゃないのよ。貴方のパパがバカなだけなの」

 

「リーファさんっ!?」

 

出会って数十分のリーファにさえも、不憫な扱いを受けるキリトであったが、彼女がお詫びに回復魔法を掛け始めたので、満足そうに頷く

 

「おお、凄い、これが魔法か………」

 

「では、僕も」

 

「おっ、ヴェルデも回復魔法か?」

 

「いえ、カレーの精を呼び出す魔法ですね」

 

「なんだっ!?そのピンポイントで変な魔法はっ!!!」

 

本片手に変な魔法を試そうとするヴェルデにキリトは突っ込みが飛ばしながら、リーファ行きつけの酒場に向かっていた

 

「リーファちゃーん!」

 

刹那、誰かに呼びかけられ、リーファが振り返る

 

「ああ、レコン」

 

「無事だったんだ。流石はリーファちゃん!」

 

レコン、そう呼ばれた少年はリーファの友人のようだ

 

「そうでしょう、そうでしょう。君は感謝をしなくてはいけませんよ、この素晴らしい出会いに。さぁ、このカレーをお食べなさい」

 

「うん、ありが……って、誰ぇぇぇぇ!?うわぁ!影妖精(スプリガン)火妖精(サラマンダー)っ!?」

 

「いや、猫妖精(ケットシー)だよ?俺」

 

「嘘だ!髪が赤いじゃないか!」

 

「ああ、これ?森で頭に赤い木の実の粉をふりかけたら、こうなったんだよね。おしゃれでしょ?」

 

「紛らわしいっ……!!!」

 

「落ち着いて、レコン。この人たち、見た感じはバカだけど、スパイとかではないと思うわ。特にこのキリトくんは絶対にありえない、だってホントにバカだし」

 

「泣いていいかな……俺」

 

警戒態勢のレコンを咎める傍ら、キリトの心を抉るリーファの無自覚な刃。その側で、目尻にキリトは涙を浮かべていた

 

「よろしくお願いしますね、ダイコンくん。ヴェルデと申します」

 

「ヒイロ。よろしくね、レンコン」

 

「キリトだ。リーファと仲良くしてくれてありがとな、サーモン」

 

「キリトくん、君はあたしのなんなの?」

 

「あ、どうも………(誰一人として、名前をしっかり呼んでないっ!!!)」

 

「じゃあ、あたしたちは行くわね。おつかれ〜」

 

名前を間違えられ、ショックを受けるレコンにリーファが稼いだアイテムを譲渡し、その場を離れようとする

 

「待って、リーファちゃん。シグルドたちはいつもの酒場で席取ってるから、行くなら、其方に行かない?」

 

「あ〜………ごめん、無理。実はこのヴェルデくんに助けてもらったんだ、その御礼に今日は彼に奢るのよ。キリトくんとヒイロくんは勝手に着いてきたから、奢らないけど」

 

「「ケチっ!!!」」

 

「じゃあ僕も!」

 

「君は駄目です」

 

「なんでっ!?しかも即答っ!!!」

 

付いていこうとするレコンの言葉を遮るように、食い気味でヴェルデが拒否する。まさかの展開に取り残されたレコンは呆然と立ち尽くす

 

「よろしかったんで?姐さん」

 

「誰が、姐さんよ。誰が」

 

「あの人はお知り合いですか?それともストーカーの類いで?」

 

「いやストーカーではないかな。リアルでも知り合い……ではあるけど、それだけよ」

 

「なるほど、遊びの関係か」

 

「誤解を招く言い方しないでくれるっ!?」

 

きゃぁぁぁぁぁ!

 

リーファ行きつけの店に到着し、扉に手を掛けようとした時だった。甲高い悲鳴が響き渡る

 

『事件かっ!!!』

 

「…………」

 

「テン!ちょっと!起きなさいよ!」

 

「テンちゃん!死なないでっ!」

 

「起きやがれっ!バカテン!」

 

「とーさん!」

 

『人が死んでるっ!!!』

 

店内で水色のポニーテール少女を中心に、皿へ顔面を突っ込み動かない少年の周りで二組の少年少女が騒いでいた

 

「…………寝てた」

 

『紛らわしい真似すんなっ!!こんの迷子野郎っ!!!』

 

その少年、ソウテンの顔面にミト達の制裁が襲い掛かった

 

「賑やかな人たちね……ホントに」

 

「バカなだけだよ……って、リーファ?」

 

「あれ?フィリア?なにやってんの?」




世界樹を目指す道化師一行、その案内役はテンとキリトの妹たちだと…!?

NEXTヒント 妹も迷子です

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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