蒼の道化師は笑う。   作:田中滅

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今回はヤツが動き出す……!あのマイクパーフォマーが!!


第九奥義 ガイドさんは何でも知っている

2025年1月21日 神奈川県横浜市繁華街

 

 

「えっ?あたし宛に小包ですか?」

 

アイドル活動を始めてから二日、圭子の元に届いたのは怪しげな小包であった。オウム返しのようにプロデューサーへ問いを投げ掛ける

 

「ああ、差出人は道化師(クラウン)と書いてるが……覚えはあるか?」

 

「う〜ん……あるようなぁ……、ないようなぁ……」

 

道化師(クラウン)、その名を聞き、左右に何度も首を傾げる。実を言うと、彼女はあのデスゲームの帰還から、同じ内容の夢を見ている

 

『おめぇさんは、ちょいと危なっかしくていけねぇ。どうだ、俺たちと一緒に来ねぇか?その方が安心できんだろ。まぁ…バカしかいねぇんだがな』

 

その夢には決まって、同じ人物が姿を見せる。あの世界で出会った想い人が兄と慕う道化師(クラウン)、その顔には常に仮面があり、不敵な笑みを携えていた

しかし、靄に見舞われた姿は、常に曖昧で、不鮮明である

 

「…………ピーナッツバター?あれ……なんだろう…。何か……」

 

開いた小包には二つの物が入っていた。その中の一つであるピーナッツバターの瓶が、圭子の目から離れない。何故かは理解出来ないが、彼女にとって、これは自分と誰かを繋ぐ大切な物である気がしてならない

 

「…………リーダーさんだ。そうだ、絶対に!だって、道化師(クラウン)なんてふざけた名前を使う人なんて、あの人しかいない!良かった………生きてたんだ……。あれ?でも、あたしはリーダーさんを忘れてた……よし、直接確かめて、アホな理由だったら、しばこう。善は急げだよね!えっと……このゲームをやってるのかな?」

 

二つ目の品であるゲームソフトを手にし、裏面の内容を見る。其処には、剣が主流であった世界とは異なるファンタジー溢れる内容が記されていた

 

「圭子!レコーディングの日が決まったぞ!」

 

「………P(プロデューサー)。申し訳ないんですけど、暫くはアイドル活動を休業しなくちゃいけないみたいです」

 

「なにっ!?まだ初めて二日しか経ってないんだぞっ!?急にどうしたんだ!」

 

突然の告白、其れにプロデューサーは慌てふためく。しかしながら、圭子は冷静であった

そして、扉に手を掛けながら、彼女は口を開く

 

「呼んでいるんです、あたしがこの道(アイドル)に進む切っ掛けをくれた人が。あたしを必要としているんです。そう………バカたち(戦友)が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻 埼玉県入間市桐ヶ谷家

 

 

「はぁ…、アイツらと居ると賑やかで気が休まらないよ……ホントに」

 

ログアウト後、自室で目を覚ました和人はALO内での馬鹿騒ぎを思い出し、軽くため息を吐く

アスナ救出を目的としているが、明らかに彼等はあのデスゲーム時代の弾け振りを見せていた

 

「お兄ちゃーん。朝ご飯出来たよー」

 

「ああー、今行くよー」

 

朝食を用意していた妹の直葉からの声に、返事を返し、寝巻き姿のままで、一階の台所に向かう

 

「久しぶりねぇ、アンタに会うのも。暫く見ない間に、また目付き悪くなったんじゃない?天哉」

 

「いんや、翠さんの息子ほどは悪くねぇと思う。あいつの目は死んだ魚みたいな目してんぞ」

 

台所で、母の翠と向き合うのは青メッシュ入りの黒髪が特徴的な見知った少年。その隣では、眼鏡の少年が和食に舌鼓を打っている

 

「確かに……あの子、あんな目をしてて大丈夫かしら。恋人とか出来なさそうよね」

 

「ご安心ください、翠さん。ああ見えてもカズさんには、料理上手な美人の恋人に元気で愛らしい娘さんがいらっしゃいますので」

 

「恋人に娘……?ちょっと、和人!アンタは何を考えてるのよっ!其処に座りなさいっ!!」

 

「ちょっと待て!母さん!別にユイはそういう意味での娘じゃない!いやまぁ、娘なんだけどっ!というか、余計なこと吹き込むなっ!!あと、なんでいるんだよっ!!!」

 

菊丸の発言を聞き、軽く怒った翠が和人に食って掛かるも、彼は母を全力で制止し、元凶の馬鹿二人に問いを投げ掛ける

 

「だって、朝メシねぇんだもん」

 

「僕はスグちゃんの御飯をご馳走になりに来ました。あっ、味噌汁のお代わりをいただけますか?出来れば、カレーパウダーを掛けていだたけると嬉しいです」

 

「お代わりはあるけど、そんなのは掛けません。………って!テンくんは、何してるのぉぉぉぉ!?」

 

妙な要求をする菊丸にお代わりを渡しながら、突っ込みを入れた後に天哉の方へ視線を向けると彼の茶碗がピーナッツ色に染まっていた

 

「見てわからんか?ピーナッツバターご飯だ、メキシコではよくある朝食だ」

 

「いや絶対にないよねっ!?」

 

「全く、これだから迷子は困る。白い米には辣油だと相場で決まってるだろ……なぁ、母さん?」

 

「はぁ?何を言ってんのよ、アンタは。ご飯には、どう考えてもマヨネーズでしょ」

 

「ふっ…どうやら、母さんと分かり合うのは無理みたいだな。きっと、父さんなら分かってくれたろうに」

 

「あの人もマヨラーよ。あとアンタの亡くなった両親も」

 

「俺は桐ヶ谷家の血を引いてなかったのか……!!!」

 

自分以外がマヨラーだと知り、衝撃を受ける和人。その隣では、直葉の突っ込みを他所にピーナッツバターが掛かったご飯を掻っ込む天哉の姿があった

 

「よし、朝飯も食ったし寝るか」

 

「そうですね。ではカズさんの部屋で」

 

「いや普通に帰れよっ!!!」

 

「和人は知らない間にバカになったわね」

 

「いやマヨネーズ掛けご飯を朝から食べてるお母さんが言う資格はないと思う…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2025年1月21日 午後三時 風妖精(シルフ)領 首都スイルベーン酒場

 

 

「う〜む……買い物しねぇといかんなぁ。こりゃあ」

 

「そうね、流石に初期装備だと心元ないわ。本当だったら……職人が居てくれると助かるんだけど」

 

「あーうん、其れはもうちょい待ってくれ。今はまだ無理だ」

 

「まだ……?まぁ、いいわ。キリト達が来る前に買い物を済ませちゃいましょ」

 

「そだな……んと、この《ユルド》ってのが、そうなんか?」

 

煮え切らない態度のソウテンに違和感を覚えるが、直ぐに切り替えると必要な物を揃える事をミトは提案する

 

「そうみたい……うわー、結構な額があるわね」

 

「あるって言うよりも、ありすぎだなぁ。こりゃあ」

 

「だったら、僕の槍も買ってほしいなー。いざって時の為に」

 

「おろ?起きてたんか、ロト」

 

「まあねー」

 

不意に聞こえた声に辺りを見回すと、自分の頭に寝転ぶ息子の姿を見つける。彼は、父からの問いに笑顔で応え、宿屋の一室である部屋の中に、本来の姿である年相応の姿で、降り立つ

 

「ほら、僕って一応はとーさんのプレイヤーデータの一部を流用してるでしょ?だからね、二人がログアウトしてる間に色々と出来そうな事を試行錯誤してみたんよ。その結果、SAO時代のとーさんのデータを学習して、槍の使い方を学んじゃったんだよねぇ」

 

「さすがはロトね。何処かの誰かと違って、賢いわ」

 

「何処かの誰かって?誰それ」

 

「とーさんじゃないかな」

 

「えっ、そなの?」

 

「そんなことないわよー」

 

「あれ?何故に棒読み?ねぇ、ミトさん?何故に棒読みなの?」

 

疑問符を浮かべつつも問い掛けるソウテンを無視し、ミトは武具店に向かう。その道中、市場で何かと睨み合う黒の剣士が視界に入った

 

「すみません」

 

「あいよっ!……お?お客さん、影妖精(スプリガン)か。珍しいな……まぁ、でも客は客だ。で?何をお探しで?」

 

「一口で成人が昏倒するような毒魚を一匹もらえるか?」

 

「ねぇよ、んなの」

 

「「…………………」」

 

「ぐもっ!?」

 

毒魚を探す一名の馬鹿、彼の姿にソウテンとミトは無意識の内に駆け寄り、至極当たり前に蹴りを放っていた

 

「店主さん、うちのバカがすまんな。お詫びになんか買わせてくれ」

 

「ああ、そうしてくれると助かるよ。で?何が欲しいんだ?」

 

「ピーナッツバターに合う魚」

 

「ねぇよ、そんな魚」

 

「「………品揃えの悪い店だ」」

 

「なぁ……水妖精(ウンディーネ)の嬢ちゃん。コイツら、殴っていいか?」

 

「どうぞ」

 

「「ミトさんっ!?」」

 

まさかの裏切りにより、店主の制裁を喰らうソウテンとキリト(二人のバカ)。軽いため息を吐き、ミトは武具店に向かう

 

「だいたい!人の買い物を覗き見するなんて、趣味が悪いぞっ!」

 

「毒魚を買おうとしといて、逆ギレすんなっ!!!絶対に碌でもないこと考えてたろっ!!」

 

(私とアスナはどうして、こんなバカたちに惚れたんだっけ……はぁ、恋愛って難しいわね……)

 

「ロトくん、ロトくん。好きな食べものはありますか?わたしはクッキーです」

 

「ピーナッツバターかな」

 

喧嘩をする二人を背に感じ、ため息を吐きながらミトは歩みを進める。暫くすると、武具店が視界に入る

 

「なるほど、此方がスグちゃんの行きつけですか。やや古びた佇まいではありますが、なんとも寂れた店ですね」

 

「褒めてるように見えて、貶してるよっ!?明らかにっ!」

 

「其れで、この店は何があるんですか?個人的にはカレー屋だと嬉しいのですが」

 

「知らないで付いてきたのっ!?武具店だよっ!!!」

 

「なるほど。で、何を買うんですか?……ふむ、把握しました。スグちゃんに合うバーベルですね?さては。キミは、脳筋ですからねぇ」

 

「そうそう、あたしって脳筋だから、ALOでも鍛えたくてさー………って!誰が脳筋よっ!!!」

 

「ノリツッコミがお上手ですね」

 

「褒められても嬉しくないっ!!」

 

夫婦漫才のようなやり取りを繰り広げるヴェルデとリーファ、幼馴染ならではのやり取りは、普段の彼を知るミトには新鮮に見えた

 

「ヴェルデって、リーファ相手だとボケに拍車が掛かるわね」

 

「そりゃあ、あの二人は、小さい頃からの付き合いだからねぇ」

 

「俺が引きこもってる間は、ヴェルデがスグの相手をしてくれてたからな。俺が知らない信頼感があるんだろうな」

 

「妹相手にも、ぼっちなんか」

 

「兄妹揃って、迷子癖のある迷子(ファンタジスタ)は黙ってろ」

 

「誰が迷子(ファンタジスタ)だ。いいか?俺は、自由(リベロ)だ。決して迷子じゃない」

 

店に入り、装備を揃えていくソウテン達。自分のイメージカラーを基調にした装備と得意とする武器をあらかた揃えた後、店から出るとキリトの姿が目に入る

 

「………なぁ、あれって見たことあるんだけど。明らかに意識してんよな?」

 

「やっぱり、テンもそう思う?私も絶対に意識してると思ってたのよ」

 

「翠さんがしてたゲームに出てましたね、あんな感じの人」

 

「うん、見たことある」

 

その姿とは、逆立った黒髪に、黒いコートを纏い、背丈程はある巨大な剣を装備したキリトの姿である

 

「なぁ、その辺に美容院的なのがあるから金髪にしてみねぇか?キリラウド」

 

「しねぇよっ!!というか誰だっ!キリラウドって!!人を有名ゲームのキャラみたく言うなっ!」

 

「キリトさん。森で拾った金色木の実の粉末を頭に掛けてあげる」

 

「いや、それよりもバナナを絞った桶に頭から打ち込めばいいんじゃねぇか?」

 

「やだっ!グリスさんって、天才なのっ!?キリト、ちょっとやりなさいよ」

 

「やるかぁっ!!!だいたい、どっから湧いたっ!!!」

 

突如、現れた更なる三人のバカを相手にキリトは突っ込みを放つ。グリスとヒイロの装備が揃うのを待ち、店から二人が出て来るとリーファの案内でシルフ領のシンボル、《風の塔》に向かう

 

「は〜い、此方をご覧くださ〜い。この翡翠の輝きを放ち、優美さを感じさせる塔は名称を《風の塔》と言いまして、風妖精(シルフ)領のシンボルになっておりま〜す。そして、中腹当たりに見えます人がぶつかった跡が分かりますでしょうか?彼方は、パスタ好きなおバカさんがぶつかった跡になりま〜す」 

 

ガイド口調で、塔の説明をするソウテン。その手にはマイクではなく、椎茸が握られている

 

「質問よろしいですか?ガイドさん」

 

「どうぞー」

 

「この塔はどういった趣旨で立っているんですか?」

 

「知りません」

 

「この塔って、何の意味があるの?ガイドさん」

 

「知りません」

 

「どうして、この塔に来たんだ?俺たちは」

 

「知りません」

 

⦅このガイド、役に立たねぇ!!!いらんっ、超いらんっ!!⦆

 

全ての質問に対し、「知りません」と返答するソウテンにキリト達は心の中で突っ込みを放った

 

「ミトさん、フィリア……あたし達は、いつになったら出発出来るんでしょう……」

 

「「知りません」」

 




風の塔に足を踏み入れたソウテン達、その彼等に声を掛ける怪しい男性……果たして彼は!
そして、マイクパーフォマンスを極めた彼女の行く先は!

NEXTヒント レディースアンドジェントルメン

もしも、そーどあーと・おふらいんを書くなら…

  • ソウテンとミトが司会の賑やかな雰囲気
  • キリトとアスナが司会の正規の雰囲気
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