私は目を覚ました。
■
私は誰もいない部屋で目を覚まして、蜃気楼みたいな意識で宙を見ていた。
病院のベッドは個室だ。これはあるいはどうでもいいことかもしれないが、入院費は誰が負担しているのだろうか。私はそう大した保険に入っていた覚えがない。ここが六人部屋などの、言い方は悪いが安く上がる部屋でないのは、一体なぜなのか。私はずっとそれが気になったまま、スマホに充電器のケーブルを差し込んだ。
いまだに気だるい頭痛が残留している。
目が覚めてから、私はずっと鈍い痛みに襲われている。吐きそうなほど清潔で、狂いそうなほど白い部屋で、ただ私の存在だけがこの純白の空間を汚しているような気がした。
──酷い矛盾だ。病人を受け入れ、養うための空間があまりに綺麗すぎるがために、人を拒絶している。
「……気が狂いそうですね」
思わず独り言が零れ落ちた。それを反省する気にはならなかった。
──
気が狂いそうなほど、
さっぱりわけの分からないことに、一室には時計が掛けられていなかった。そのため、私は気を紛らわすためにスマホに視線を落とした。
11月23日 P.M 14:01
定価21000円が黙って見せつけてきた文字の組み合わせを見せられてどうしろというのか?
私は結局、枕に頭を投げ出して、ぼんやりと天井を眺めていた。
『prrrrrrrrrrrrr──』
また鳴り出したポンコツにため息を吐き出したのも、誰が責められるものか。私は黙って応答ボタンに指を滑らせた。
「もしもし?」
『…………ぇ』
帰ってきたのは沈黙だけだった。わずかなノイズには喧騒の声が混ざっている。
「あの、もしもし」
『…………トレー、ナー……さん?』
その声を聞いた時、私はひどく戸惑ってしまった。機械越しに伝わってきた女の子の声、不安そうで消えてしまいそうな。
『トレーナーさん、なの?』
「あの、あなたは」
『トレーナーさん、トレーナーさん……!? トレーナーさんだ、トレーナーさんっ!』
「あの、──」
『ト"レ"ーナ"ーさ"ん"だ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁ、う"あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ん"ん"ん"ん"ん"っ!!!』
反射的に目を瞑って、スマホを持つ右手を遠ざけてしまった。明らかにスピーカーが発していい迫力ではない。すごい声量だ……。
「あの、落ち着いて」
『トレーナーさんんんんんんんっ!!! トレーナーさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああんんんんんっ!!!! よかったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……』
「あの、あの……」
『ぐずっ、ひぐっ、うぇえええええん、ゔえええええええええんん、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……──』
今日で一番衝撃的な電話だった。
掛かってきたものは数あれど、最も混乱させたのは電話の向こうにいるこの子であることは間違いがない。私はもうどうしていいかわからず、気が狂いそうなほど清潔な部屋で、おろおろとし続けている。
それから彼女が泣き止むまで体感5分ほどだったので、おそらく私はその間ずっとおろおろしていたことになるのだろうか。
わんわんと泣く声が収まってきた頃合いを見計らって、私は恐る恐る問いかけた。
「あの、落ち着きましたか」
『う"ん"……ご"め"ん"ね"、ト"レ"ーナ"ーさ"ん"ん"ん"……」
喉とか大丈夫かな。心配になるほどすごいガビガビ声だ。
「大丈夫、ですか」
私は恐る恐るそう聞いた。正直何を話していいのか分からなかった。そもそも、
『……っ! と、ト"レ"ーナ"ーざ"ん"、大変なことになっちゃった"の"に"ぃ"い"〜、あ"た"し"の心"配"な"ん"て"し"て"く"れ"る"な"ん"て"ぇ“ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"……っ!!!!』
逆戻りした……。
ああ、どうすればいいのだろうか。
『ごめ"ん"ね"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"……。た"づ"な"さ"ん"か"ら"ぁ"……、大変だ"っ"て"聞"い"て"た"の"に"、あ"た"し"、泣いてばっかりでぇぇぇぇぇ……』
「え、ええと──」
『トレーナーさんがぁぁぁぁぁ……生きてて良かっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 良かったよおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ……』
その言葉を聞いて、私はそっと口を閉じた。
情けない話だ。こんな情緒溢れる子に、こんなに心配されるような事態になっていたとは。本当に情けない大人になってしまった。
「……心配を掛けてすみません。きっと、すぐ良くなります。だから、あまり心配しないで下さい」
『う"ん"っ!』
こんなに力強い"うん"は初めて聞いた。言霊か何かがこもっているかもしれない。
『待"っ"て"る"ね"、ト"レ"ーナ"ーさ"ん"っ!』
「はい。気を付けて」
何に?
──ぷつり。
通話が切れたのを確認して、私は一息ついた。そうすると、自分がいつの間にか微笑みを浮かべていたことに気がつく。
そして一つ、とんでもないことに気がついてしまった。すらすらと流れ出てきたさっきの私の言葉は、全てただの気休めに過ぎないということだ。
──私は。
何故、ここにいるのだろうか。
何故、足が動かないのだろうか。
何故、誰一人この病室を訪ねてこないのだろうか。
何故。何故。何故。
何故、私は──────。
何も、思い出せないのだろうか。
■
夜になると、病室の扉がゆっくりと開かれ、ナースの人が食事を運んできた。それと一緒に《下》の世話だとかを含む諸々の世話をされたりした。私の尊厳は30ほどは下がったと思う。
それから一週間ほどして、私は退院した。ひどく退屈な日々の中で、ただ一つだけ存在していたスマホだけが私の友人だった。
全くの初期設定のまま隣に在ったそれは、全てを忘れてしまった私のようで、なんだか親近感が湧いた。
ネットサーフィンと、時々かかって来る電話。それらだけが、退屈を凌がせてくれていた。
電話の内容は様々だ。喉が心配になるような泣き方をする彼女や、元気なのだがどうにも怪しく胡散臭い雰囲気の子──随分個性がカラフルだ、と思った。
一日中、ぼうっとするだけの日々に変化が訪れる。
コンコン──ノックの音が、吐きそうなほど白い空間に響いた。初めてのことだった。
「入りますね、■■トレーナーさん」
なんか緑っぽい女の人が軽く会釈して入ってきた。
「こんにちは。調子は如何でしょうか?」
「え。あ──はい、その……まあまあ、です」
つい反射的にそう答えた。
誰だ、この緑の人?
「あの、あなたは──」
「退院ですよ、■■トレーナーさん。良かったですね」
「え?」
「手配は私の方で済ませておきましたから。いい加減、入院生活で体が鈍っているんじゃないですか?」
「あの──」
「さあ、行きましょう」
さっぱり話を聞いてくれない。笑顔のゴリ押しをされているようだった。
「あの、いいですか!?」
「はい、なんですか?」
「あの、あなたは?」
「あなたは……って────まさか、……。■■さん、一つだけ質問をします。答えてください」
雰囲気がガラッと変わった。随分驚いているようだ。
「
確信をついたような言葉で、私はそれほどの驚きはなかった。
「……いえ、何も」
私はなんだか申し訳なくなって、怒られた子供のように目を逸らした。
「…………そんな」
緑の人は、愕然──そういう表現が似合う表情を浮かべている。
「記憶喪失」
緑の人がぽつりと呟く。
すぐに緑の人は表情を切り替えた。
「……私は『駿川たづな』と言います。よろしく──お願いしますね、■■さん」
「えっと、はい。『よろしくお願いします、駿川さん』」
「たづなで構いませんよ。……では、行きましょう。車を用意してありますから」
どこか寂しそうに駿川さんはそう微笑んで、私がベッドから出るのを待った。
「……あの、すみません。私、実は足が動かせなくて」
居心地の悪い気まずさを感じながら、私はそう言った。私の足は糸の切れたマリオネットのように、だらりと釣り下がって私の意思に応じようとしない。動かせるのは上半身だけだ。
「申し訳ありませんが、車椅子を持ってきてくれませんか。あるはずです」
「…………。はい。分かりました、少し待っていてください」
彼女はすぐに車椅子を運んできた。
上半身しか動かせない私では、一人でそれに乗ることは出来ないので、彼女の助けを借りながらそれに腰を下ろした。
「……すみません」
私は何に対して謝ったのか自分でも分からないまま俯くように頭を下げた。どうにも彼女と視線を合わせたくなかったのだ。
「謝罪は必要ありません。あなたは……何も、悪くないんですから」
どういう意味か尋ねる前に、車椅子が動き出した。
私はその言葉の真意を尋ねる機会を逃したまま、しばらくお世話になった実験室のような病室を後にすることになった。
■
彼女は、私を見るなり恐ろしい速さで突っ込んできた。
「トレーナーさぁああああああああん!!!!」
──突っ込んできた。この表現に誇張はない。さながらスポーツカーだった。
「ぐはっ!?」
「トレーナーさん、トレーナーさん……っ! 良かった、あたしだよ! 良かった、良かった……っ!」
私は駿川さんに車椅子を押されたままで、私の胸にしがみつくウマ耳の生えた少女に対しどうしていいかわからず、あいもかわらず情けなくおろおろとする。
ただ、泣きながら「生きていて良かった」と繰り返す彼女の背中にこの両腕を回していいものかどうかを迷った末、恐る恐る背中をぽんぽんと撫でるように優しく叩いたら、暖かな抱擁と呼ぶには少々力強すぎるそれが一層強まって──うごごごごごごご痛い痛い痛い痛い。
「チケットさん、力が強すぎます! トレーナーさんが──」
死にかけるところだったところを駿川さんが助けてくれた。
彼女──『チケットさん』と呼ばれた少女は、逆に飛び退くように体を跳ね上げた。
「あっ──ご、ごめんなさい、あたし、つい……。と、トレーナーさん、大丈夫? 大丈夫だよね、痛かったよねっ、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
私ははっとして顔を上げた。
不安そうにして、まるで怒られる前の子供のような表情を浮かべ、私から目を逸らして俯く『チケットさん』が居た。
何かが尋常ではなかった。
「ごめん、ごめん、ごめんね、ごめんなさい……」
彼女はすぐにでも泣き出しそうだ。それは、まあ痛かったが──。
ただ、私は怒ってはいない。驚きの方が大きいだけで、何より私はロケットの如く突っ込んできてくれるくらいには心配してくれていた『チケットさん』を叱る気になどなれなかった。
「顔を上げてください。ほら、そんな顔をしないで」
「え……?」
「私こそ、すみません。心配させてしまいましたね」
私は精一杯微笑もうとしたが、上手くできたかは分からない。ただ一つだけ──私は彼女に申し訳なくなってしまった。
私は、何も覚えてなどいないのだから。
「『チケット』」
反射的に、その呼び名が口をついて出てくる。
「私は大丈夫です。心配してくれるのは嬉しいですが、『私が好きなのはあなたが笑っている顔です。元気を出しなさい』」
──意識しない言葉、それが自分の口から出てきたことに酷い衝撃を感じた。すらすらと、それは私ではない誰かが喋っているかのよう。
だというのに、私はきっと微笑みを浮かべている。何故?
「……っ!」
彼女は大きな瞳を目一杯見開いて、それからくしゃっと顔を歪めて──泣き出した。
「トレーナーさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああんんんんん!!!!!! あたし、あだしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいっ!!」
それも、ものすごい大声で。
病院を出てすぐのところでそんな騒ぎになれば、かなり注目を集めるのは間違いない。だが私はそんなことよりも──この子の泣き顔をなんとかしたいと思った。
まるで、それだけが私の生きている意味であるかのように。
■
「……良かったんですか?」
駿川さんに連れられて、私は『トレセン学園』に着いた。
移動時間が思いのほか長く、太陽の色は白から茜に変わっていた。
「何が、ですか?」
照り付ける日光はもはや夏の勢いを失っている。正直に言うと、少々肌寒かった。カラカラと車輪の回る音が聞こえていた。放課後だろうか、誰かの掛け声や大声などが響いている。年頃の子供たちが集まる場所では珍しい情景ではないだろう。
「チケットさんに、■■さんのこと──記憶喪失であることを、どうして伝えなかったんですか」
駿川さんの優しげな声に、微かに責めるような声色が混ざっていたことは気のせいではない。ただ、それは彼女の本意ではないようだと思った。実際のところは分からない。
「……ウマ娘の直感は鋭く、そして身近な人の変化に気がつかないことはないと思います。それがトレーナーと担当ウマ娘の関係であれば、尚更──でも、彼女は気がつきませんでした。ウイニングチケットさんは元気一杯のウマ娘ですが、それは嘘や誤魔化しに気がつかないほど鈍いという意味ではありません」
私も同感だ。
普通に考えて、会話にボロが出る。それは違和感になる。
それは普段の話し方、纏う雰囲気、昨日あった事、交わしてきた言葉。
初めて会った時のこと、初めてレースに出場した時の思い出、分かち合った喜び、分かち合った悔しさ。重ねた思い出、過ごした日々、互いへの信頼、あるいは不満、あるいは親愛、あるいは憎しみ、怒り、悲しみ。
それら全てが重なり合って、人間関係とは構築されるのであり、またそうあるべきだ。
それは吊り橋に似ていると思う。
二つの向かい合った断崖絶壁があって、その間に吊り橋を通していくのだ。初めはすぐに崩れてしまうかもしれない。崖同士の距離が離れていれば、通すことすら難しいかもしれない。そしてたとえその橋が繋がったとしても、何かのせいで崩れて無くなってしまうかもしれない。
人との繋がりとは、そのぐらいか細く、崩れやすいものだと思う。
『ウイニングチケット』。彼女がそういう名前であることを、駿川さんが教えてくれた。
彼女のことはチケット──そう呼ぶことにするが、きっと以前の私とチケットには重ねた過去があり、今の例えで表現するならば、吊り橋が架かっていた。
だが今の私は、その吊り橋をチケットとの間にどのように渡したのかを覚えていない。
それは許されざることだ。少なくとも私はそう思う。
「……私は、あの子に傷ついて欲しくないんです」
言い出すタイミングがなかった訳じゃない。ただ私がその事実を告げたとして、チケット──彼女は、どんな顔をするのだろう。それが想像出来た。
「最初、あの子──私に謝りましたよね。ほら、最初……がばっと、私に抱き付いてくれたとき、力が強すぎて、駿川さんがそれを注意してくれたあの時──"ごめんなさい、ごめんなさい"って」
「……はい、そうですね」
「あの子はその時、今にでも泣き出しそうで──いえ、今日一日であの子はかなり泣いていたんですが、それは感動? してのもので、涙の種類が違ったと思うんです」
「涙の種類、ですか」
「はい。自責と……絶望。私があの時彼女から感じた感情は、その二つだけでした。私があの時、冗談でも彼女を咎めるような言葉を言ってしまったら、あの子は……なんだか、とんでもないことになってしまうんじゃないかって」
追い詰められていた、と呼ぶべきか。あるいは張り切った糸か。限界まで高まった張力が弾けて、千切れてしまいそうな──。
「『何か』があったんだと思います。それが何なのかは分かりませんが、ただ……」
秋の風が、アスファルトの上を駆け抜けていった。
「彼女に余計な負担を掛けないために、嘘を吐くんですか?」
嘘──そう言われて、私はハッとした。そうだ。
「……隠すんですか。■■さんの記憶喪失を? 一体いつまで?」
さっき、都立病院での診察を受けてきたばかりだ。
脳に関する症状は未だ解明されていない部分が大半であるが故に、私の記憶が戻るのかは『不明』──経過を見守るしかないそうだ。
足が動かない方については、正直よく分からないが──『後遺症』だろうと言われた。リハビリを重ねれば動かせるようになるかもしれないが、詳しい検査が必要になり、完治するかは断言が出来ないと言う。
私自身のことにもかまけてはいられない。私は『中央トレーナー』の資格を有する、一人のトレーナーだ。近いうちに仕事に復帰しなくてはならない。あの子──ウイニングチケットのトレーニングを計画し、レースに勝たせる。それが私の仕事であり、記憶の有無は関係がない。
「答えてください■■さん。その嘘を突き通すのなら、ウイニングチケットさん一人にだけ隠せばいい訳ではありません。そして何よりも、私がそれを黙って見過ごすわけには行きません」
──。
私は少しだけ考えるフリをして答えた。
「"私は大丈夫です"──私はあの子にそう言ったんです」
それは気休めのための軽い言葉で、あるいはその場凌ぎの嘘だったのかもしれない。だが私は、あの子には笑ってほしいと思う。
「私を嘘吐きにさせないでくれませんか、駿川さん」
カラカラと回る車椅子の音が止んだ。摩天楼へと沈みかけている夕日が視界の端に映る。
背中にいる駿川さんが、少しの沈黙の後口を開いた。
「……たづな、と」
「え?」
「私のことは、たづなと呼んでください。■■さん」
戸惑ったが、言われた通りにすることにした。
「わ、分かりました……た、たづな……さん?」
「"さん"は必要ありません。……もう一度、呼んでください」
「た……たづな」
「はい」
私は何だか無性に恥ずかしくなってしまって、顔を伏せた。そうしていると、後ろからため息が聞こえた。
「本当に……仕方がないですね、■■さんは。後ろから刺されないように注意してくださいね、本ッ当に」
「さ、刺される? 私がですか!?」
「ええ。足が動かせないので、おそらく逃げられないでしょうね」
「に、逃げ──待ってください、私は殺されるんですか!?」
「ふふっ……冗談です。■■さんにその覚悟があるのなら、私は出来る限りのサポートをするだけです。ただし、それなり以上の苦労になるでしょう。さまざまなリスクも発生しますし、ただでさえ下半身不随のハンデを背負っているんです。それでもまだ、あなたは『トレーナー』であり続けることを選択するんですね?」
「……はい。自分で決めたことです。後悔はしません」
「なら、もう言うことはありませんね──ああ、一つだけ約束をしてください」
「約束?」
私は聞き返した。何か重要なことなのだろう。
たづなさんがくすくすと笑った。
「はい。二週間に一回は、私と食事に行くこと。そうですね、やっぱり──ラーメンなど、如何でしょうか?」
呆気に取られてしまった。
もしかして、単純に食事に誘われているのだろうか。あるいは全額私の奢りとかだろうか。
だが、私は少し嬉しかった。
「ええ、喜んで」
記憶喪失で下半身不随のトレーナーとウマ娘、当然何も起きないはずはなく……
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