人類最強の騎士と悪役令嬢は恋に落ちるか?以上の問いに答えよ。   作:ミストルティ

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問1:騎士なのに頭を打って運び込まれた時の筆者の気持ちを答えよ。なお、雇用主は怖いイケオジとする。

 スタークさんに抱えらた俺とマリー様はすぐさまお屋敷に連れ戻され、俺はベッドの上で寝かされていた。

 

 横にはクリムガルデ家お抱えの医師とマリー様、スタークさんが座っていた。

 

 「おそらく脳震盪でしょう。1日は安静にしてくださいね」

 

 医師のおじさんはにっこりと笑いかけると御当主、マリー様のお父様であるローレン様に報告に行った。

 

 お嬢様もこの後習い事の時間である。俺に無理はしないことね!なんて言って出て行ってしまい、残されたのは俺とスタークさんだけだ。

 

 「ボウズ、お前あのお転婆お嬢様に頼まれるとなんでもするなあ」

 

 ニヤニヤと、なんだろう、嫌な笑い方で俺に話しかけてくる。

 

 前世の記憶を思い出しはしたが、この10年の記憶を忘れたわけでも、ルージュ・メテオールとしての人格が消えたわけでもない。

 

 目の前の兄貴分【スターク・ペレノア】をジト目で見つめながら俺はため息をつく。

 

「そんなんじゃ無いですよ。俺はマリー様付きの騎士です。スタークさんが思ってるような感情はありません」

 

 第一、前世はシャーリー推しである。確かにシャーリーとマリー様は同じ金髪だが、片や可愛い系、マリー様は成長するとどちらかというと綺麗系である。それに15になったら確かこの国の王子と婚約するはずである。

 

 「たく、ガキのくせに可愛くねーなあ。まあなんだ、無事でよかったよほんとにな」

 

 無精髭を撫でながら先程とは違った、心からの笑顔を向けてくる。根は善人である。だからこそ俺は慕っているのだ。

 

 「まあ、今日の護衛は俺が引き継ぐからガキンチョはゆっくり休むこった。じゃあな」

 

 そう言って雑に俺の頭を撫でると部屋を出て行ってしまう。

 

 その時、入れ替わるように別の人物が入ってきた。

 

 この屋敷の主人であり、クリムガルデ家の当主【ローレン・クリムガルデ】公爵である。

 

 ただの側付き、いくら長女の騎士だからといって普通、わざわざ様子を見にきたりはしないだろう。

 

 だが、それには理由がある。

 

 概要しか押さえていないため詳しいバックボーンは知らないが、俺、ルージュ・メテオールはテンペスタリア公国の四大公爵家の一つであり、対魔を司るアスタット家唯一の生き残りである。

 

 確か作中最強のスペルメイル、【スノーホワイト】のスペルナイトだったのがルージュ、俺である。

 

 父と御当主は学園生時代の友人でその忘れ形見である俺を保護し、記憶改竄の魔術をかけ、マリー様の側付きとして"自然に"護衛をつけていたはずである。

 

 あれ、もしかしてこれ記憶改竄が解けたと思われているのか?

 

 やばい???

 

 

 

 

 

 

 

 

 我が友にして最高の騎士よ。何故お前は死んでしまったのだ。

 

 それが私、ローレンが最初に得た感想だった。

 

 冬のある日だった。

 領内の備蓄報告に目をやりながら、領民たちが飢えぬように政策を回す。

 

 それが冬の貴族の勤め。

 

 各種部署や領民からの報告を受けてはまとめ、仕事を振る。この時期は毎回そうだとはいえ、やる事が多く少しだけ憂鬱だった。

 

 その最中、私付きの騎士、当時まだ18になったばかりのスタークが血相を変えて執務室にやってきた。

 

 いつもは礼儀正しい男だが、この日ばかりはノックもせずに執務室へと現れ、私に一枚の紙を渡す。

 

 それに目を通し絶句するしかなかった。

 

 【アンドリュー・アスタット】と【ストレア・アスタット】の戦死報告だった。

 

 私はすぐさまスペルメイルを纏いアスタット領へと向かった。

 

 アスタット領は悲惨では済まないような状態だった。街は火に焼かれ、あちこちでは泣き声や悲鳴が未だ聞こえていた。

 

 領地の騎士たちはスペルメイルを纏い、生存者を探しているようだった。

 

 「ローレン様!」

 

 一人の騎士が私に気が付きこちらへとやってくる。

 

 煤に塗れて誰かわからなかったが、声でアンドリュー付きの騎士である事を思い出し、誘導されるままアスタット邸へと向かったのだった。

 

 アスタット邸は半壊状態。ぼろぼろの庭園で地に伏せる二人の騎士が眠っていた。

 

 その横にはまだ娘と同じくらいの少年、当時8歳のルージュが泣いていた。

 

 「まず、事情を聞いても?」

 

 領主として、騎士としての私が冷静にアンドリュー付きの騎士へと投げかける。

 

 「数時間前のことです。1000を超える魔合獣を従えた黒いスペルメイルが現れました。黒いスペルメイルは魔合獣を解き放つと無差別に攻撃を初めて……」

 

 「まて、黒いスペルメイルだと?」

 

 スペルメイルは騎士の魔術適正により色が変わる。

 

 基本的には炎を司る赤、水を司る青、自然を司る緑の三色とその派生色、そしてアスタット家のように一部のものが、調和の白などを持つ。数こそ少ないが特色を持つ騎士は一定数こそ居る。

 

 だが、黒のスペルメイルなど御伽噺のようなものだ。

 

 500年前の大災害。聖女によって打ち払われたそれと同じなど……

 

 「御当主はルージュ様を守るために直接黒騎士と対峙しました。ですが奴はルージュ様を人質に取り……」

 

 涙を浮かべる騎士を眺めながら一人思う。

 

 我が友は騎士である前に親だったのだなと……

 

 そして私も、旧友が守ったものを守りたいと、友として感じた。

 

 その後、我が領からの騎士が遅れて到着し、復興作業に加わった。

 

 アンドリューの腹心たちとも話し合い、ルージュを引き取る事にした。

 

 おそらくは白のスペルメイルを恐れた誰かの仕業だろう。最近貴族の中でも不穏な動きが見られているからだ。

 

 アスタット家に代々引き継がれるスペルメイル、スノーホワイトが邪魔な誰か、それを炙り出すためにも、ルージュを引き取り、囮にする。冷酷な貴族としての私はそれが最善であるとその選択をする。

 

 きっとアンドリューたちは私を軽蔑するだろう。

 

 だが、最強のスペルナイトとなるルージュならばと思ってしまう私は、人としてはどうしようもないのだろう。

 

 愛娘から渡されたペンダントがやけに重く感じるのを無視しながら、私はルージュを連れ帰る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっと厳ついダンディなおじ様がこのクリムガルデ家現当主のローレン・クリムガルデ公爵である。

 

 国への忠誠心と騎士として、貴族として完成した人だと、俺の2年の記憶が訴えていた。

 

 「ルージュよ、大事ないか? あれがまた我が儘を言ったのだろう?」

 

 ローレン様は頭が痛い、といった感じで俺を見下ろしていた。

 

 「いえ、マリーベルお嬢様の頼みでしたので……」

 

 「まあ良い、あれには私から言い聞かせておく。それより、頭を打ったと聞いたが大丈夫か?」

 

 ローレン様は恐らく記憶改竄の魔術が解けたかを確認しに来たのだろう。

 

 記憶改竄や精神操作の魔術は外的衝撃にめっぽう弱いのだ。

 

 人の記憶や心に作用する魔術は不安定だからだ。

 

 確かヒロイック・ルミナリア本編でも物理的に精神支配を解くイベントがあるはずである。

 

 「はい。お嬢様の騎士であろう者が、申し訳ありません」

 

 側付きの騎士がこの失態、謝罪するのが雇用主への義務だろう。不甲斐無いばかりである。

 

 「良い。騎士と言ってもまだ子供。お前はあれの良き友人であり遊び相手になれば良いのだ。あれには手綱を握るものが居なければどこまでも己が道を進んでしまう」

 

 なまじチカラがあるのも考えものだな、などと呟いてから俺に目線を合わせるようにしゃがみ込む。

 

 マリー様と同じ緋色の眼が俺を映していた。

 

 「今日はゆっくり休め。騎士の本質は肉体にある」

 

 そう言って俺の頭を優しく撫でるローレン様。俺は撫でられながらそのまま意識を微睡へと落としていった。




ヒロインズ・ルミナリア設定資料集01
テンペスタリア公国
スペルナイトが多く在籍しており、オリオンズ大陸で一番の技術国でもある。あなたはこの国で生まれ育った少女だ。
500年前の聖女が動かしたスペルメイルを纏う事が出来たあなたは特例で騎士養成学校に編入する事となる。

聖女のスペルメイル
500年前の大災厄を鎮めた聖女が纏ったスペルメイル。その色は調和をもたらす白の魔術。
希少な白のスペルメイル。

四大公爵家
武を持って公国の剣となるクリムガルデ家
魔を祓い公国に調和をもたらすアスタット家
知を持って公国の盾となるフリズニック家
魔を持って魔を制するレヴンハイム家
だが、ある事件をきっかけにアスタット家は血縁者が死亡しており、クリムガルデ家が領地の運営を行なっている。


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