サイレンススズカの幼馴染   作:二次元の引き篭もり

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一万文字くらい書いてた奴を小分けにして投稿します。



一話「帰省」

 

 サイレンススズカは先頭を走ることが大好きなウマ娘である。

幼い頃よりウマ娘として生を受けた彼女は、走るというウマ娘のアイデンティティたる行為に加えて、誰よりも早く駆け抜けて先頭の景色を見る事を望んだ。

 

 そんな彼女についた渾名は【異次元の逃亡者】先行策では彼女に追いつけない、差し脚では彼女の影すら踏めない、追い込みを仕掛ける前に彼女はゴール板に辿り着いた。

 

 彼女がクラシックに在籍していた頃の中距離~マイルで、彼女に勝てるウマ娘は多くなかった。

後の黄金世代と呼ばれた5人のウマ娘ですら全盛期の彼女と戦って勝てるかと聞かれて言葉を濁したくらいに、絶対と呼ばれた皇帝ですら同時期に彼女がクラシック三冠に現れていたらと思うと背筋が震える程に、過去未来に怪物と名のつく者達ですら真っ向勝負に武者震いする。

 

 レースの外では物静かでストイックな物言いの目立つサイレンススズカに憧れる者は多い。

後の日本総大将、スペシャルウィークが彼女の最も親しい友人と呼べるだろう。

その他ではクラシックで争った女帝エアグルーヴ、マチカネフクキタルとも交流がある。

 

 担当トレーナーとの関係は指導者とアスリート以外の何物でもない。

トレーナーとしてはまだ若造と中央では可愛がられる歳の彼だが、時々世間を賑わせるウマ娘とのイケナイ関係などの噂もなく、真面目で努力家な期待のトレーナーとの評価を受けている。

 

 天皇賞(秋)という重賞レースを勝ち取ったサイレンススズカは、その後に海外遠征を予定していたが脚に怪我の前兆が見られたため海外行きを断念、暫くは治療に専念するとのことだ。

これは伝説となった3年間の彼女を追い続けてきた女記者が後に知る、今まで世間に注目されなかったサイレンススズカの故郷であったお話。

 

 

《次は~〇〇駅~〇〇駅~》

 

 電車に流れるアナウンスと車内の揺れでサイレンススズカは目を覚ました。

眠そうに目を擦って座ったままの姿勢で大きく伸びをすると体の節々が痛んだ。

 

(そういえば昨日は星が綺麗だから、門限ギリギリまで走ってたんだっけ……)

 

 リハビリ中という事もあってハードトレーニングは絶対にダメと医師から念押しされているのだが、1日に何度か走らなければ夜もグッスリ眠れないスズカはトレーナーに懇願して制限されている時間と距離ギリギリまで走っていたのだ。

あの天皇賞(秋)に見せた圧倒的な走りに比べれば劣るものだが、それでも静かで綺麗な先頭の景色を望むスズカにとっては夜空の下でのランニングが他の何よりも楽しかった。

 

(……降りなきゃ……)

 

 胸に抱えていたリュックサックを背負って、近くの手摺に掴まったスズカは立ち上がる。

電車は徐々にスピードを落としていき、目的地である〇〇駅に着こうとしていた。

車両の中に彼女以外に乗客の姿はない。皆殆どが都市部の駅で降りているからだ、今乗っているのはスズカと同じように田舎の方の閑散とした駅に向かう老人くらいのものだろう。

 

 車両が駅で停止してから扉が開くまでの間、スズカはポケットから携帯を取り出す。

眠っている間にトレーナー、寮のルームメイトであるスペシャルウィークからメールが来ていた。

内容はどちらも似たり寄ったりで無事に目的地に着けたかの安否確認みたいなものだった。

脚の怪我を知ってから2人とも周りが注意するくらいに大袈裟に気を遣うようになっていたものだから、スズカはふとそれを思い出してクスッと笑いながら返事を打つ。

 

 〇〇駅はホームに降りて目の前のところに改札がある。

数年前にICカードの読み取り機がやっと導入されたくらいの古い駅には人の姿がなく、駅員室に当番の職員が一人のんびりと椅子に寄り掛かって居眠りをしていた。

3年間は戻る暇もなく忙しかったが、前とあまり変わっていない事に安心してスズカは切符を通して駅の外へと歩いていく。

 

 見渡す限りの青空と山々、果てが見えない田んぼや畑と舗装されていない道路。

草いきれの臭いを鼻で思い切り吸い込んで、スズカは満足げに笑みを浮かべて息を吐きだす。

 

「……変わってない。此処はずっと、あの頃から」

 

「そう言うお前は変わったなスズカ。どえらい美人になった」

 

 後ろから声を掛けられたスズカが振り向くと、そこには駅の脇に車を止めた男が立っていた。

口端に煙草を咥えて、黒縁の眼鏡をかけた20代半ばの彼を見てスズカはまた笑顔を浮かべる。

トレセン学園に入る前までずっと会っていたが、煙草や車といった点以外は彼も昔と同じだ。

 




サクッと簡潔に登場人物の設定的なもの

サイレンススズカ
 URAファイナルズ優勝、天皇賞(秋)優勝、その他重賞レース無敗
グッドエンディングを迎えた後に実家のある田舎へと帰省
脚の不調は天皇賞(秋)直後に発覚、URA以降は治療に専念
トレーナー(男)とは指導者と教え子の関係であり、深い仲とかは無い
両親共に中等部進学直前で他界、トレセン学園へは中等部2年くらいで編入

男(リキ)
 成人した一般男性、田舎住み、スズカの幼馴染(兄貴分)
両親は母親が高校生の頃に病死、定年間近の父親と二人暮らし
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