これから始まるのは狩りですらない。目の前にある無抵抗な虫を潰すような、そんな、ありふれたこと。
でも、まさか自分が味わうことになるとは。
すでに瀕死級のダメージを負いながらも、未だに動けることが不思議な体も、何の役にもたたない。こういう場合、只人ができることはただ一つ。祈るだけ。どうか彼女が無事で有りますように。もはやこの国に祈るような神はいないが、この広いテイワットのどこかの神には届いて欲しいものだ。
振り下ろされる巨大な斧。初めて味わう死の感触は、どのようなものだろう。祈りはもはや懇願へと変わった。璃月の人なら知っている。誰であれ、死は避けられない。
あの岩神でさえも……ならば、
せめて一瞬で終わってくれ。と
消えゆく意識の中、二つの声を聞いた。
「堅如盤石!」「靖妖儺舞」
「敵の浅慮だな。只人の勇気に感銘を受ける神がいることを知らなかったとは。」
「誇れ、璃月を守る人。例え、悪の囁きによる蛮勇であろうと、その勇気を持つものがこの地に何人いるか……」
〜璃月某所〜
「あなたがこの事件の大元ね。凝光の頼みとはいえ、何で私がこの程度の小物を……と思ったけど、なるほど。当然の判断。
あなた達、糸は自分が引いてると思っていても、どこに繋がっているかはわからないものなのよ。」
「繋がった先が私でよかったわね。」
〜珉林、人里〜
「ここ一帯の妖魔は退治した、か。そなたがいて助かったぞ。甘雨。」
「敵の排除も仕事の一つなので。それにしても港の方は大丈夫でしょうか。刻晴さんと連絡を取らなくては。」
「僕の体質があっても、妖魔がよってくるなんて。一体どこから湧いているのだろう。」
〜璃月港〜
「えーっと戸籍情報の管理法をもう少し引き締めて……殺人と隠蔽と改竄の罪状……はいいとして、幽霊に対して罪を与えるかどうか……
あ〜もう!ここのところ前例のない事件が多すぎる!」
「はぁ、やることがまだ残っているというのに、何て空気の読めない連中なのかしら。」
「仕方ないわ。本物の魔神ほどではないけれど、放っておける事態でもないのだから。要人は群玉閣に避難させている、全力で戦えるわ」
「凝光、あなたも要人でしょう……」
「うおおおお!最高のロックを聞きやがれ!にしても、あんたまで戦うのかい?」
「ロックをこの距離で聞けるのです。それに、劇の題材にもなりますしね。」
「わわ、グゥオパー、なんかいつもより元気だね!こんな量の食材を前にしたら、気分上がるのはわかるけど!」
「重雲……どこに行ったんだ……このままじゃ大量の料理を僕一人で食べることになりそうだよ……」
「七七、戦う、先生は、行かない?」
「今回、あなたは相性がよろしくないようです。飲まれないように、私と共に不卜廬に籠城ですよ。」
「ふむ、この国は勇気ある人間に恵まれてるようだ。」