蝶。炎のように   作:旅人さんた

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不信。煙のように湧く

 朝七時......あさしちじ?あの時はさらっと流してしまったが出勤時間としてはいささか早朝に過ぎる気がする。するが、すでに約束してしまった。あの堂主のことだ,特に何も考えず、その場のノリで決めたのだろう。

 今日のうちに荷物をまとめておかなければ。渡されたメモを確認する。

 書かれているのはまずお弁当とココナッツミルクだった。ココナッツミルクに関しては、あの薬屋の娘のご機嫌取りだろう。

 他には花と羽、時計に杯に冠を用意しろと......意味不明だ。どう考えても説明が足りない。大方儀式をそれっぽく見せるための小道具だろう。

 ちょうど知り合いの張順が幸福を呼ぶアイテムだとか言って上記の物を売っていた気がするのでそこで調達しよう。全部で1万モラ。迷信グッズに払うにはなかなか腹の痛くなるお値段だ。

 

「お、よう!なんだ?お使いか?」

 

「ほぅ往生堂の堂主にねぇ。それは本当にこの品で合ってんのか?こんなのじゃ全部揃ってもせいぜい金運が上がるくらいだぞ?それこそ、火魔女の方が......」

 呆れた男だ。友人に対してもセールストークを仕掛けてくるとは。それとも本気で言っているのか。

 はっきり言って自分は迷信を信じてない。もちろん、往生堂で働き始めた頃は一体どんな心霊体験ができるのかとワクワクしたものだが、その実態がほとんどカウンセリングでは信じろという方が難しいだろう。

 実際、一番死に近い職業の葬儀屋ですらこれなのだ。

 張順は南十字の元メンバーと聞く。船乗りならば心を鎮めるために幸運のグッズなどに縋ることもあるだろう。悪いことだとは思わないが押し付けないで欲しい。

 

「いやまぁあんなもの俺が売ってるわけないんだが......それこそ往生堂の本部になら揃ってるんじゃないか?稲妻で集めたしめ縄なら一応ここにもあるけど。」

 無視して商品を受け取る。第一魔女なんて不吉な名前が付いたものなど、お守りにもなりやしない。

 

「まぁお前がそれでいいって言うならいいんだけどよ。あ、そうだこれ持ってけよ。俺が死兆星号に乗ってた頃北斗姐さんがくれたもんだ。」

 そう言って渡されたのは千岩軍の礼服についてるような羽と日時計だった。一体どうして海賊の首領が千岩軍の装備を持ってるかについては......聞くだけ野暮だろう。

 

 渋々受け取ったそれを無造作にカバンに突っ込み、弁当の用意をしに向かう。

 そういえば、例の水質汚染の件は片がついたのだろうか。確かあれは花初という名の女性の自殺が原因だった。というのが千岩軍の結論だった。

 世間に名前は公表されていないが、彼女の葬儀を担当したのはうちなので多少は世間より情報がある。

 それと、堂主が気になることがあると言って調査をしてたはずだ。

 確か婚約相手の鑑秋という数学教師がまだ見つかっていないとか……。

 

 まぁそんなことより重要なのは水質が戻ったのかどうかだ。

 あそこで取れるハスの花托でできた盛世太平は、かなりの絶品なのだから。

 




胡桃ちゃんって誤解されがちだよね。




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