蝶。炎のように   作:旅人さんた

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仙人。狂犬のように迫る

「死ってさ、そんなに悲しいものなのかなー?誰にでも平等に訪れるんだから、怖がる必要なんてないのにねー」

 死に多く触れすぎて、感覚が麻痺してるのだろう。と思った。

だれもが堂主のような死生感を持ち合わせていたら、そも我々のような職業はいらなくなるのではないか?

 

「まぁでも一つ.....自分を自分と認識されないままこの世から消え去るのは悲しいね」

 よかった。こんなちゃらんぽらんな堂主にも悲しいことがあるのだと安心する。

こんな会話も、時と場合によっては洒落にならないものとなる。

普段は盗賊に溢れる場所。

それゆえに重要な文化財を守るのも一苦労だと言われる場所。

かつてこの国で一番栄えた場所。

    

    帰離原は、酷い有様だった。

むせかえるような死臭、骸をつつくカラス......

人間と丘々人が重なるように積まれている。まるで貴様らの命の価値に差異などないと言わんばかりに。

照りつける陽の光だけがこの場で希望と呼べる物だった。

 

 そして、このような所業を行える者は概して人間を超える力を持った者である。そう、たとえば、仙人のような。

 

「靖妖儺舞」

それは死を告げる呪文のように聞こえた。鬼の面を被りし少年はこの場に生者が在ることを許さないとでもいうように、我が身を打ち滅ぼさんと襲ってくる。

 獣の様に襲い掛かる仙人に対するは一匹の蝶。

 

「散!」

堂主は炎を纏う、一瞬顔を歪ませた様な気がするが、難なく仙人の一撃を防ぎ切った。

 

「あれぇー?仙人、だよね?うーんあなたはそんなものに呑まれるような人じゃないと思ってたけどなー。でもざーんねーん私の大事な部下には指一本触れさせませーん!」

互いの槍が一方は障気を纏い、一方は火炎を纏いながら、ぶつかり合う。

仙人は目にも止まらぬ速さで、まるで砲弾の様に突撃するが堂主はその身を一時蝶に変え、そのことごとくを回避する。

 

「我は降魔大聖の名を授かりし者。汝ら望舒旅館へと立ち入らんとするなら、その灯火は断ち消えん。」

 

「聞いてませーん!はーいっ。いってらっしゃーい。」

間の抜けた様な掛け声と同時に、あたり一面は灰燼に帰した。

 

「どうする?これ以上続けたら、お互い内側からボロボロになっちゃうよ?」

 

「笑止。かのお方との約定を違えるくらいならば、この身朽ち果てようとも......くっ」

 

「血梅香はもうしこんでるよー!さぁっていつ爆発するかはー私にもわかりませーん!」

 仙人に付けられた印が燃え、体は崩れ落ちた。

 驚きを隠せない。堂主がかなりの強者だということは知っていたが、まさかあの仙人を倒しうるとは

 

「そんなわけないよ。どう見ても正気じゃない。喋り方もおかしかったし......普段の仙人と戦おうとしたら、冥蝶の舞一回じゃ全然足りない......

そもそもそんな機会、来るはずないんだけど。」

 

「とにかく、望舒旅館に急ごう。なにかがおかしいよ」

 そう言って仙人の体を抱え、堂主は歩き出した。

慌てて荷物を持ち、追いかける。

 

望舒旅館へと渡る橋についた頃には、陽はとっくに見えなくなっていた。

 夜が訪れようとしている。生きる者と死した者の立場を逆転させる様な、そんな暗闇が、望舒旅館を包もうとしていた......

 

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