こんな状況でも朝日は昇るのだと、一安心。これから死地へ赴くはずなのに、いまだに実感が沸かない。寝ぼけた調子で言笑が作ってくれた朝食を戴こうとするが、堂主はまだこない。また寝坊でもしているのだろうか。ヴェル・ゴレッドなら何か知ってるだろうか。
見晴らし台に向かってみ......
なんだこれ
最初の感想はそれだけ。次に襲い掛かってきたのは自分への嫌悪。
堂主は明らかに疲弊した様子で、ヴェル・ゴレッドから治療を受けていた。
「本当に大丈夫なの?」
「いやー。さすがに舐めすぎちゃったかなぁ。普段本格的に戦闘ってなると、きちんとした準備をしてから向かうから、即席の装備でなーんて初めてだったよ!」
「傷自体はすぐに治せるけど、心の傷は簡単には癒えないの。もう少しここで休んでからにしようって部下くんにも言っておくからね。」
「え?」
「え?」
「心の傷なーんて全然大丈夫だよ?痛いのは好きじゃないけど、私はもともとその道のプロフェッショナルなんだから。体を一切動かさずに怨霊と戦ったことだって......あったようななかったような......」
「本当に?それならいいけど、まさか一晩中守ってくれていたなんて思わなかった。言ってくれれば、手伝えたのに。彼も起こすべきだったかしら。」
「うーん。あんまり一般人は、この手の話に関わらないほうがいいんだよねー。うちに就職する子は、そのあたりの覚悟はしてもらってるけど、彼はまだ入ったばっかだし、霊についてもまだ認識がふわふわーってしてるんじゃないかなぁ?だから、私は寝てたってことにしておいてね?気を使われるのってだぁーい嫌いだから。」
ここまで聞いて何も理解できないほど、自分は愚かじゃなかったらしい。
あいつが言っていた花だの羽だのがどーのこーのという話を、もう少し聞いておけばよかった。しかし、戦う上で重要なものだったらしい。
恐らく戦闘を行う上で、
しかし、彼女は自分に黙っておけと言っていた。何も知らない体でいなくてはならない。とてもつらいが、これがせめてもの誠意だ。
そうして、食堂で待っていると、いつものように詩を口ずさみながら、軽快な足取りで
堂主がやってきた。
「あれぇ?朝ごはん待っててくれたんだ。やっさしいねー。じゃ、食べよっか!」
何とかその場をやり過ごしたが、まともに食事が喉を通らないばかりか、目を見て話すこともできなかった。