中抜き行進曲~アイドルファンですが、アイドル事務所社長に転生してしまいました 作:ひいちゃ
松浦ニャンから、タイトルが大ヒンシュクを買ったファーストシングル『親友だと思っていたのは自分だけだった』だったが、最初にしては悪くない売れ行きだった。
21623枚、324万円の売り上げ。
正直、これだけ売れるとは予想外だった。みんなあれか? この歌詞が刺さった人が多かったのか? タイトル通り、『親友だとおもっていたのは自分だけだった』って人ばかりなのか?
まぁ、でもそこそこ売れたならうれしいことだ。最初の一歩がこれだけ成功したのは幸先がいいぞ。
でも、これに甘えていてはいけない。レッスンや営業もしっかりとやっていかないとな。
そして、ニャンに色々やらせているうちに、また新しい営業の仕事が入ってきた。
* * * * *
こんにちは、ファーストシングルを出して、ついにアイドルへの第一歩を踏み出した松浦弐也子改め松浦ニャンですこんにちわ。
この先どうなるか不安ですけど、アイドルへの第一歩を踏み出した以上、降りるわけにはいきません。猪突猛進でいきます! サーチアンドデストロイです!! え、違う?
その日、私が休憩ついでに、自販機にジュースを買いに行っている途中、社長室から話声が聞こえました。
社長さんの元に、また営業の仕事が舞い込んできたのかな? それなら頑張らなくちゃ!
耳を澄ましていると……。
「……この度私どものデパートでは、屋上でのちびっこ向けの音楽ショーを計画しています」
「ふむふむ。それで、うちの歌手に出てほしいと?」
「はい。契約しているコンサルタントの方に聞いたところ、山上ニャンさんの名前が……」
それを聞いて、私は思わず扉を開けて社長室に入ってしまいました!
「山上じゃありません! 松浦ニャンですぅ!!」
社長さんも、相手の人もびっくりした顔を浮かべていた。
……。
それはともかく、私はさっそく、デパートでの音楽ショーに出演することにした。
……うん、ファンは増えたよ。子供と中年と年寄りのファンが。
まぁ、デパートでの子供向けショーなんだから当然なんだけど、なんかむなしいものがあるなぁ……。
* * * * *
それからも、ニャンにはトレーニングと営業をさせ続けた。
本当は、そろそろ新しいシングルを出させたいんだけども、秘書の比初子に「さっき出してからそんなに時間が空いてません。ニャンさんの負荷もありますから、もう少し時間をおいたほうが」と止められているのだ。
そんなわけで、引き続きトレーニングと営業の日々を過ごさせていると、また営業の仕事が舞い込んできた。
仕事を持ってきたのは、うちと懇意にしているイベント会社の社長だ。ちなみに専門は熟年向けの宴会である。
彼曰く。
「現在、新たに宴会で歌ってくれるタレントさんを探していまして……そこでそちらの、裏浦ニャンさんに……」
と、そこで。
「裏浦じゃなくて松浦ニャンです! それに、また熟年向けの仕事ですかぁ!!」
半泣きになりながらニャンが社長室に飛び込んできた。
* * * * *
そして10月。私の2ndシングルが発売されることになりました!
今度は、1stよりさらに頑張りました! ボイトレの効果もあり、前よりさらにいいものになったという気がします。
タイトルはどうしようかなぁ……。
そこで秘書の比初子さんが。
「『流星群の恋』なんてどうですか?」
と、素敵なタイトルを提案してくれました! うんうん、とっても素敵です! 私もそれにしたい!
しかし社長さんは首を横に振りました。
「いや。そんなつまんないタイトルでは売れないぞ。やはり売れるようにするならこれだろう」
そして社長さんがごり押ししたタイトルは……。
『東京は星が見えない』
「……」
「……」
私と比初子さんはそろって絶句。前回の『親友だと思っていたのは自分だけだった』に比べればはるかにマシですけど……もう少しいいタイトルはなかったんですかぁ!?
……一度、社長さんの頭をかち割って、ネーミングセンスがどうなってるか調べてみたいです。
でも、前回と同じぐらいには売れました。
* * * * *
さて、ニャンの2ndシングルができた。売上は前回と同じくらいだが、デキは前より少しよくなってる。
ニャンの歌もかなり上達している。一流アイドルに比べればまだまだだが。
……もうそろそろいいかな。
俺はニャンに言ってみることにした。
「ここで一つ、ライブやってみるか?」
「え?」
少しの間硬直。そして。
「や、やりますやらせてくださいいやむしろやらせろいえなんでもありませんやらせてください!!」
わかった、わかったから、そんなに乗り出して、鬼気迫った顔をするな! 怖いんだよ!
こんな顔、ファンに見せられねーぞ!!
まぁ、何はともあれ、ライブの準備は着々進み、いよいよ開催当日になった。
ステージの袖に立ったニャンは、やはり小さく震えていた。緊張しているようだ。
俺は彼女のそばに立ち、肩を叩いてやった。
「大丈夫だ。ちょっとぐらいの失敗なんか気にすることはない」
「ほ、本当ですか……?」
そこで俺はさわやかな笑顔を浮かべて言ってやった。
「なぁに、ライブに失敗したら、また営業漬けにするだけだからな!」
「全然気にしますー!!」
それでもいくらか緊張はとれたようだ。そしてライブ開始。
結果は……。
最大収容人数3000人に対して、900人ほど。
「少し空席が目立っちゃいました。許してニャン♪」
「お前ふざけるなよ!!」
とりあえず、こうして松浦ニャンの初ライブは終わった。