ダンガンロンパ ルーナ   作:さわらの西京焼き

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捜査編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

俺達の目の前で磔にされた円城寺。

それを見た俺達は一瞬何が起きたか理解できず、誰も言葉を発することが出来なかった。

そして………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああああ!?円城寺氏ぃぃぃぃぃ!!!!」

「オーマイガァァァァーーーーーー!!!」

「きゃあああああああああ!?」

一斉に悲鳴を上げた。

「…………また、殺人が起きてしまったのか……………………」

「………円城寺はん…………これは惨いわ…………」

「れいや………どうして…………」

また1人犠牲者が出てしまった。

どうして…………。

昨日まであんなにいい雰囲気だったのに………!

 

 

 

 

 

 

「とにかく、まずは円城寺様を下ろさないと……!もしかしたらまだ生きていらっしゃるかもしれません………!」

「それは許可出来ないですね」

綾辻が涙を流しながら円城寺の元へ向かおうとすると、八尋がそれを止めた。

「ど、とうして止めるのですか八尋様!円城寺様がもし生きていらっしゃるのなら、一刻も早く治療しないと………!」

「『死体発見アナウンス』を聞いたでしょう?彼は間違いなく死んでいますよ。ならこれからまた捜査と学級裁判をしなくてはならない。無闇に現場を荒らすような真似をされては困るんですよ」

「そんな…………!!」

八尋はいつも通り抑揚のない声でそう言った。

「八尋!オメー言い過ぎだぞ!!」

「言い過ぎもなにも事実を言ったまでですが」

「だからってよ!言い方ってもんがあるだろーが!!」

「どうしてだよ………!僕達、こんなにも一致団結していたのに………!!」

全員をまとめるリーダー役である結城は頭を抱えてしゃがみ込んでしまっている。

全員まさにパニック状態だ。

このままでは捜査どころじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ………なになにー?また誰か殺されたのー?今度はだ………れ…………………」

俺がどうにかしてこの場を収めようと考えていると、個室のドアを叩いても返事がなかった飛鳥が姿を表した。

彼女は舞台にある円城寺を見ると、呆然とした表情で歩き出した。

そして目の前まで来ると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………なんで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう一言だけ呟いた。

「飛鳥………」

「フフフフフフフフ………。また事件が起きてしまいましたネ」

するとモノワニが不気味な笑い声と共に現れた。

「モノワニ………!また君のせいで円城寺君が!!」

結城は今にも掴みかかりそうな勢いでモノワニに詰め寄る。

「フフフ………確かに動機を提供したのはワタクシですガ、円城寺サマを殺したのは皆サマのうち誰かですヨ?」

「………クソッ!」

「しかし次の犠牲者は円城寺サマですカ。生命力がありそうですシもう少し生き残ると思っていたのですガ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………早くちょうだい」

「はい?」

モノワニが話していると、飛鳥が突如そう口にした。

「捜査と裁判、するんでしょ?なら早くファイルちょうだいよ」

「おやおや飛鳥サマ、随分とやる気のようですネ。それはそうですよネ。親しげだった円城寺サマが死んだとなればやる気もでますよネ」

「……………………」

モノワニの言葉に対して飛鳥は無言でモノワニを睨む。

「………フフフ。では飛鳥サマに怒られる前にモノワニファイルを配りましょうカ」

すると俺達のパスポートから一斉に着信音が鳴った。

「では前回と同じく、ファイルを頼りに頑張って捜査して下さいまセ。裁判場で待ってますヨ…………」

そう言い残すとモノワニは消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、また前回のような捜査をしなくてはならないのでありますか?」

「千尋、もういやだよ………。みんなとなかよしでいたいよ………」

「わ、ワタシも嫌だす!」

また捜査をしなくてはいけないという事実を受け入れられないせいか、中々捜査が始まらない。

「も、もうあんな裁判なんか懲り懲りだす!」

「は?じゃあ勝手に部屋に引きこもっててよ。いても目障りなだけだし」

桃林がそう叫ぶと、飛鳥が怒りの滲んだ声で言い放った。

「な、なんだすその言い方!!わ、ワタシだって………」

「だってやらなきゃこっちが死ぬんだよ?それに………この中にユーレイのお兄さん殺した奴がいるんでしょ?平気な顔してさ」

「………そうだ。モノワニの言っている事が正しければ、前回同様、円城寺を殺したクロは俺達の中にいる筈だ」

代表して俺が答えると、飛鳥は拳を強く握りしめ、

「…………ボクが絶対に犯人を見つけ出す。そして………必ず殺してやる」

今まで見たことのない鋭い目。

普段のイタズラ好きの生意気な少女の姿はどこにもなかった。

「だからさ、生き残る気がない奴はどっか行ってよ。ボクの邪魔になるだけだからさ」

「そ、そんな言い方は………」

 

 

 

 

 

 

 

「僕も飛鳥さんに賛成ですよ」

結城が止めようとした時、八尋が眼鏡の位置を直しながら口を開いた。

「犯人を当てなきゃ全員死ぬという状況なのに、捜査をしない意味が分からないですね。自殺願望でもあるんですか?」

「言い方はよくないけど、うちも同じ意見や。どうせ逃げられへんし、なら立ち向かうしか道はないんやないの?」

「わたくしもそう思いますわ。前回は現実から目を背けようとしましたけど、今は違いますわ。生き残るためにわたくしはやりますわよ」

「………そうだな。自分達には選択肢はない。捜査をしよう…………」

薬師院、佐々木、天草も同意する。

「結城、俺達はやるしかない。円城寺のためにも必ず犯人を見つけよう」

俺は消沈している結城に声をかける。

こういう時こそ、リーダーである結城の一声が必要だ。

「…………………分かった。みんな、やろう。ここから生きて脱出するために。怖いかもしれないけど、進むしか道はないんだ」

結城は全員にそう声をかける。

「けど、本当に体調が優れないとかいう人がいれば言って欲しい。無理強いは出来ないからね」

何人かは顔を見合わせたが、手を挙げる者はいなかった。

「………よし。じゃあ捜査を始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捜査開始

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあまず、現場の見張りと検死役だけど………」

「検死は私にやらせて下さい」

綾辻が手を挙げた。

「司様がいらっしゃらない以上、恐らく出来るのは私だけですから。であれば私がやらなくてはならないと思います」

「うん。じゃあ綾辻さんにお願いするよ」

綾辻はコクリと頷いた。

「次は見張りを決めようか。見張りは………」

「ワターシ、また見張りしまース!頭使うの、苦手デース!」

「じゃあオレも見張りするぜ!怪しい奴が近づいてきたらぶっ飛ばしてやる!」

「オー!喧嘩屋サンとワターシ、仲良しデース!」

「おう!」

謎のハイタッチをかます2人。

「分かった。じゃあハルク君と風神君にお願いするよ。それと………円城寺君は検死のために一旦下ろさないとね」

「少し待って下さい」

「八尋君?」

八尋が円城寺の近くまで行くと、念入りに調べ始めた。

「…………成程。分かりました。もう下ろして大丈夫ですよ」

「そ、そう?じゃあ見張りの2人に手伝ってもらうかな」

「分かりマシター!」

「任せとけ!」

どうやら八尋は磔にされた状態を調べていたようだ。

あの様子だと、何か手がかりを見つけたみたいだ。

後で話を聞きに行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、俺も捜査始めないとな」

俺はどこから捜査しようかと頭の中で色々考えていると………。

「………ねえ」

後ろから声をかけられた。

振り返ると、そこには飛鳥がいた。

「飛鳥?」

「捜査、一緒にやろうよ」

これはまた意外な誘いだ。

あの飛鳥から声をかけられるとは。

「別に構わないが………どうして俺なんだ?」

「だってはとのお兄さん、前回の裁判でクロ当てたでしょ?だからボク、はとのお兄さんの推理力()()は認めてるんだ」

推理力だけって………。

「けど、俺が犯人の可能性だってあるだろ?なら信用出来ない奴と一緒にいるより1人で捜査した方がいいんじゃないか?」

「その時はボクが全力ではとのお兄さんを叩き潰すから問題ないよ」

こ、怖え………。

 

 

 

 

 

「本当はボク1人でも十分なんだけど、今回は確実に犯人を殺すために万全の状態で捜査したいんだ。だから………力貸してよ」

飛鳥の目には怒りの火が灯っている。

仲が良かった円城寺の死。

その結果、彼女は今から犯人への復讐をしようとしている。

本来であれば止めるべき行為だ。

しかし…………。

「………分かった。俺でよければ一緒にやろう」

犯人を当てなきゃ死ぬのは俺も同じ。

たとえ仲間であれ、殺人を許すことは出来ない。

「………ありがと。じゃあよろしく」

飛鳥は短くお礼を言うと、手を差し出してきた。

「ああ。よろしく」

俺もそれに応え握手をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ早速モノワニファイルから見ていくか」

「そうだね」

俺達はモノワニファイル開いた。

 

 

 

 

 

 

 

[モノワニファイル②]

被害者は『超高校級のオカルト研究家』円城寺 霊夜。

死体発見場所はB1Fにある体育館。

舞台上で磔にされた状態で発見された。

側頭部に傷あり。

また、首には索状痕がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

ファイルには死体の簡単な説明と共に苦しそうな表情の円城寺の写真が添付されている。

「側頭部の傷、それに索状痕か………」

側頭部の傷、と言う言い回しは随分と抽象的だな。

前回の百々海と同じように犯人に殴られて出来た打撃痕なのか、それとも鋭利なもので切られたことによる切り傷なのか。

実際に見てみないと何とも言えない。

それに索状痕ということは………。

「多分ユーレイのお兄さんの死因は絞殺っぽいねー」

俺の考えていることを読み取ったのか、飛鳥が俺の顔を見て言った。

「ああ。だが乃木の時は死因が書いてあったのに、何で今回は書いてないんだ?」

「死因がモノワニファイルに書いてないってことは、モノワニが何らかの意図があって隠してるってことでしょー?例えば書いたら犯人がすぐ分かっちゃうとかさー」

成程。犯人が不利にならないように敢えて書いていないのか。

「後気になる点は…………死亡推定時刻が書いてないな」

「そうだねー。でもユーレイのお兄さん、昨日の宴会の時は間違いなく生きてたよー」

「そうだな。俺も昨日の宴会の時円城寺の姿は何度か見かけた」

少なくとも、あの停電前までは確実に生きていた。

それは確かだ。

「じゃあ殺されたのは夜中か朝だねー」

そうなると、宴会中、後誰がどこで何をしていたのかしっかり把握する必要があるな。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[モノワニファイル②]

被害者は『超高校級のオカルト研究家』円城寺 霊夜。

死体発見場所はB1Fにある体育館。

側頭部に傷あり。

また、首には索状痕がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは円城寺の死体の状況を確認しようと思うんだが………いけるか?」

俺は飛鳥にそう声をかける。

仲良しであった円城寺の死体を見るのは精神的にキツいものがあるんじゃないかと思ったからだ。

「何?もしかしてボクに気遣ってるの?」

「いや、まあ………」

すると彼女は怒ったように俺の顔を見た。

「馬鹿にしないでよ。ボクがこの程度で怖気付くと思ってるの?ボクはここに来るまで死体なんか数えきれない程見てるんだよ。人1人死んだくらいで何を今更って感じだし」

そう言う飛鳥であったが、よく見ると握った拳は微かに震えていた。

「………分かった。俺が悪かった。行こう」

「………ごめん。ボクも少し言い過ぎた」

お互いに謝ったところで検死をしている綾辻の元へと駆け寄る。

その近くでは雷哉とハルクの筋肉コンビが見張りとして目を光らせている。

「おーっす蓮!ちゃんと真面目に捜査してるか?」

「少なくともお前よりかは真面目にやってるよ」

「おいおい!見張りという立派な仕事をこなしてるオレに向かってその態度はどうかと思うぜ!」

ドンと胸を張る雷哉。

「そうデース!ワターシと喧嘩屋サン、頑張って見張りしてマース!!」

ハルクも雷哉の真似をして胸を張る。

「立派な仕事とか言ってるけどー、結局自分の頭が悪いから頭使わない見張りに逃げただけでしょー?それで威張られてもねー?」

「「ぐはっ!?」」

飛鳥の発言が2人にクリーンヒット。

流石に不憫だな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢寺様、飛鳥様。お疲れ様です」

作業が一区切りついたのか、検死をしている綾辻が顔を上げた。

「悪いな、忙しい時に」

「いえ、大丈夫です。一応一通り検死は終わりましたから」

「流石医者のお姉さんだねー。どこかの脳筋2人と違って超有能だよー」

倒れ伏す2人の姿が視界に入ったが、ひとまず無視する。

「いえ、私なんか全然………。それより、おふたりが来られたということは、検死の結果をお聞きになりたいということですよね?」

「ああ。説明を頼めるか?」

俺の言葉に対して綾辻は頷く。

「勿論です。…………まずはモノワニファイルに記載された特徴と円城寺様の死体の特徴は一致しました。側頭部には傷。首には索状痕がありました。死亡推定時刻ですが………死後数時間は経過していますので、恐らく昨日の夜から夜中にかけてだと思われます」

「朝、という可能性はありそうか?」

「いえ、亡くなってから少なくとも数時間は経過してしますので、ついさっきという線は薄いと思います」

夜か夜中か………。

となるとアリバイがある奴は少なそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

「そして検死をしていて私が気になった点が2つあります。まず1点目なのですが…………こちらをご覧ください」

綾辻は円城寺の首にある索状痕を指差した。

「これがどうかしたのか?」

「あーなるほどー。…………()()()だね」

よく分からない俺が疑問を口にする一方、飛鳥は綾辻の言いたいことが分かったらしい。

「吉川線?なんだそれ?」

「はとのお兄さん知らないのー?じゃあ無知なはとのお兄さんにボクが直々に教えてあげるー」

小馬鹿にしたような顔で俺を見る飛鳥。はいはい。知らなかった俺が悪うございました。

「吉川線っていうのはねー、絞殺とか扼殺された被害者が紐とか犯人の腕を解こうとして抵抗した結果付くひっかき傷のことだよー」

「引っ掻き傷………?」

確かに、円城寺の首には索状痕の他に何かで引っ掻いたような傷が残っていた。

「この吉川線は自殺か他殺を見分ける重要な証拠なんです。今回の場合は吉川線がありますので、円城寺様は自殺ではなく他殺になります」

綾辻が補足で説明をしてくれた。

つまり、これがあるということは円城寺の死因は絞殺である可能性が極めて高いということか。

 

 

 

 

 

「そしてもう一点気になる点があるのですが………。それがこの側頭部の傷なんです」

綾辻が側頭部の傷を指差す。

そこには傷………というよりたんこぶのようなものが出来ていた。

「この傷なんですが………なんというか、その、殴られたというより()()()()()()()()ような傷なんです」

「本当だー。前回のぐうたらお姉さんみたいに鈍器で殴られた、って感じの傷じゃないねー」

2人の言う通り、殴られたというよりぶつけたと言った方がしっくりくる。

「これが犯人の手がかりに繋がるかどうか分かりませんが、一応お伝えしておいた方がいいと思いまして」

「いや、情報は少しでもあった方がいい。ありがとう綾辻、助かった」

「え………!?は、はい………とんでもありません…………」

真っ直ぐ顔を見てお礼を言うと、彼女は少し顔を赤らめ顔を背けてしまった。

「へ〜〜〜〜。お兄さんとお姉さん、そういう関係なんだー」

「あ、飛鳥様!?」

「ん?どういうことだ?」

「………これはだいぶ時間がかかりそうだねー。医者のお姉さん、ファイトー」

「ふぁ、ファイトとは!?」

「ん????」

「はとのお兄さん、頭いいけど馬鹿だねー」

訳が分からん。

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

 

[綾辻の検死結果]

モノワニファイルの情報と大きな差異はなし。

死体の状況から、死亡推定時刻は昨日の夜から夜中にかけてと推測される。

 

 

 

[吉川線]

円城寺の首に吉川線が残されていた。

 

 

 

[側頭部の傷]

円城寺の側頭部に出来た傷。

殴られた、というよりどこかにぶつけたような傷であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ。綾辻に昨日の宴会の時から夜中にかけてのアリバイを聞きたい」

「アリバイですか………」

綾辻は考え込む様子を見せる。

「どうした?」

「いえ、実は私………ハッキリとしたアリバイがないんです。それに宴会中は運んで頂いた料理を分けたりお皿を片付けたりしていたので、よく覚えてないといいますか………」

「大丈夫だ。素直に知っている事だけを教えて欲しい」

「………分かりました。まずはアリバイですが、宴会中はパーティ中は先程申し上げたように、宴会場で料理を分けたり食べ終わった食器等を集めて片付けたりしていました。途中で何度かお手洗いには行かせて頂きましたが、それ以外は宴会場の外には出ていません。私が宴会場にいたことは、他の方に聞いて頂ければ分かると思います」

「なるほどねー。じゃあ終わった後は?」

「その後は停電が復旧するまで個室にいました。そして復旧した夜中の12時過ぎにもう一度宴会場に戻り、食器等を厨房に持って行って片付けをしていました」

「片付け?もしかして1人でか?」

「ええ。皆様お疲れだと思いましたので、声をかけるのは申し訳ないと思い私1人でやらせて頂きました」

あの大量の皿を1人で片付けたのか………。

俺は非常に申し訳ない気持ちになってしまった。

「………悪い。綾辻1人に任せる形になってしまった」

「いえいえそんな!私1人で勝手にやったことですので。夢寺様が気にすることではありません!」

 

 

 

 

 

 

「でもさー。それってその片付けの時間って医者のお姉さんはずっと1人だったってことだよねー?つまりはアリバイはないってことでしょー?」

すると俺達のやり取りを横で聞いていた飛鳥がそう発言した。

「綾辻はずっと1人だったのか?」

俺の問いに対して綾辻は軽く首を振った。

「いえ。途中までは1人で片付けをしていたのですが、途中から桃林様が手伝って下さって」

「桃林が?」

あの結城以外の人と関わろうとしない桃林が手伝い………?

「ええ。深夜12時半でしょうか。桃林様が食堂にいらっしゃいまして。その時は『眠れない』と仰っていました。そして手伝うと言って皿洗いを一緒にやって下さったんです。おかげで早く終わらせることが出来ました」

「なーんか怪しくなーい?おデブのお姉さん、普段じゃ絶対そんなことしないでしょー?」

飛鳥の言う通りだ。

桃林には悪いが、あいつは誰かを積極的に手伝うタイプじゃない。

普段とは違う行動をしていれば………当然人間はそれを疑う。

「ちなみに片付けが終わったのはいつ頃だったんだ?」

「確か………深夜1時過ぎ頃だったと思います」

「分かった。ありがとう」

ひとまず、桃林に昨日の行動を聞いた方が良さそうだな。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[綾辻の証言]

アリバイについては、宴会中はほぼずっと宴会場にいたという。

その後一度個室に戻ったが、深夜12時過ぎの停電復旧後に再び宴会場へ戻り、食器を厨房に運び片付けをしていた。

12時半までは1人だったが、その後は食堂に姿を現した桃林と一緒に皿洗いをしていた。片付けは深夜1時頃終了したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

「雷哉、ハルク。お前らは宴会の後何してたんだ?」

「オレは正直………よく覚えてねーんだよな。なんか気がついたら自分の個室にいてよ」

「ワターシは部屋戻ってすぐ寝まシター!ちゃんと覚えてマスヨ!」

アリバイの確認をすると、雷哉思い出せないと答えた一方で、ハルクは堂々と部屋に帰って寝たことを証言した。

「そういえばお前、昨日めちゃくちゃ酔ってたな。というかあの酒は誰が持ってきたんだよ」

「分かんねー………なんか知らないうちにあったから飲んじまってよ、それでその後のことは………あーダメだ!思い出せねー!」

「ちなみにボクじゃないからねー」

隣にいた飛鳥を見ると、何故か頬を膨らませ軽く怒ったような様子を見せていた。

「………俺はまだ何も言ってないぞ」

「はとのお兄さん、ボクがイタズラでお酒ジュースに紛れさせたって疑ったでしょー?」

「………まさか」

嘘だ。

すまん、絶対お前の仕業だと思ってた。

 

 

 

 

「ハルクは酒がいつからあったから覚えてるか?」

「ワターシ、よく分かりまセーン………ゴメンナサーイ」

ハルクは申し訳なさそうに首を振った。

「そうか。分かった。ちなみにハルク、お前酒は………」

「飲みマシタ!」

「ん?でも酔ってなかったような………」

「ワターシ、お酒強いデース!昔からよく少しだけど飲んでマシタ!文化の違いってやつデース!」

「おいおい………」

昔からって………いくらハーフとはいえどう考えても未成年飲酒は駄目だろ………。

しかし、なら酒はいつ誰が宴会場に持ち込んだんだろうか。

そもそもあの酒はモノワニが厨房に用意したものではあるが、それを実際に宴会場に持ち込んだのは別の誰かで間違いない筈だ。

「もうここに用はないでしょー。次行こうよー」

すると飛鳥が俺の袖を引っ張っている。

考え事をしていたせいか気が付かなかった。

「次はどこ行くんだ?」

「やっぱりあそこでしょー」

俺は飛鳥に手を引っ張られ次の場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を引っ張られ着いた場所は舞台だった。

円城寺が磔にされていた場所だ。

「…………………」

飛鳥は無言で磔にされていた場所を見ている。

殺すだけでは飽き足らず、その死体を磔にするという円城寺の死を冒涜する行為。

それだけで犯人の性格がいかに歪んでいるかが分かる。

「……飛鳥」

「分かってる。ちょっとぼーっとしてただけ」

彼女はそう呟くと、辺りを捜査し始めた。

「………しかし随分と凝った真似をしたもんだな」

俺は現場を見てそう漏らす。

磔に使用されたのは舞台に掲げる際に使われる看板2つだ。

これらは十字架になるように重ね合わせてある。

ここからは俺が円城寺の磔にされた死体を見た時の記憶になるのだが、円城寺は確かその看板に磔にされ、ワイヤーで手足と胴体を固定されていた。

そして円城寺が磔にされた看板は、舞台正面の壁に釘か何かで打ち込み固定されていた。

現場に釘らしきものが沢山散らばっていることがその証拠だ。

「なるほどねー。だから犯人は夜から夜中を犯行時間に選んだのかー。見こんな時間かかりそうな作業、人が来そうな昼間なんかに出来ないもんねー。…………それにしてもさー、このワイヤーってどこから手に入れたのかなー?」

飛鳥が指差したのは、現場に残骸として残されていたワイヤーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ。それは恐らく………」

俺は舞台袖に移動すると、2つのハンドルを指差した。

「これー?」

「そう。この2つのハンドル両方、上にあるワイヤーを下ろすための装置なんだ。一つは舞台の奥側にある看板を吊り下げる用のワイヤー。もう一つは舞台の手前側にある人や照明等を吊り下げる用のワイヤーだ」

「あーなるほどねー。犯人はそのワイヤーをハンドルを使って下ろしたんだー。それでそれを外して磔のために再利用したんだねー」

「そうだと思う。実際降ろしてみるぞ」

俺は二つのハンドルを思いっきり回してワイヤーを降ろしてみた。

すると手前の人や照明を吊り下げる用のワイヤー、看板用のワイヤー両方が外されてなくなっていた。

「本当だー。ワイヤーが無いよー。外されてるねー」

「ああ。それに現場に残ってたワイヤーの一つを見てくれ」

「んー?これってユーレイのお兄さんを看板に固定してたワイヤーじゃないのー?」

「いや、そっちは看板用のワイヤーだ。もう一つ、照明を吊り下げる用のワイヤーがここに放置されていた」

俺と飛鳥はワイヤーを覗き込む。

するとそこには少量ではあるが血痕が付着していた。

「そっかー。じゃあ犯人はー………」

「ああ」

円城寺の首には索状痕と吉川線が残っていた。

つまり円城寺の首を絞めた凶器が必ずある筈だ。

それは…………。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[外されたワイヤー]

磔にする際に使用されたワイヤーは、ハンドルを回すことで作動する舞台装置から外したもの。

看板を吊るす用のワイヤー、人や照明を吊るす用のワイヤー両方が外されていた。

 

 

 

 

 

[血痕の付いたワイヤー]

舞台にワイヤーが放置されていた。

そのワイヤーには、僅かだが血痕が付着していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもこのハンドル硬すぎじゃないー?」

飛鳥はハンドルを回そうとするがビクともしない。

「そうだな。俺がなんとかギリギリ回せるレベルだ」

そう言った瞬間、俺の脳内に稲妻のようなものが走った。

「あれー?もしかしてはとのお兄さんも気がついちゃったー?」

隣では飛鳥がニヤニヤしている。

犯人がこのハンドルを回してワイヤーを使ったのはさっき確認した。

ということはつまり…………。

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[舞台袖にあるハンドル]

ワイヤーを下ろすための舞台装置。

非常に硬く、相当力のある者でなければ動かすことは出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はどこに行くんだ?」

「じゃあプール行こうよー。まだ調べてないでしょー」

飛鳥の提案で次はプールを調べることになった。

入口に行くと、薬師院と千尋が目の前で何かをじっと見ている。

「薬師院。千尋。お疲れ」

「あら、夢寺はんに飛鳥はん。珍しい組み合わせやねぇ」

「ほんとだー。ふたりなかよしなんだねー」

声をかけると、薬師院は微笑み、千尋は嬉しそうに笑った。

「偶々だよー。それよりきつねのお姉さん達は何してるのー」

「更衣室入室のログを見てるんよ。前回と同じやね」

1Fの脱衣所と同じように、プールの更衣室もログで入室が管理されているんだったな。

「きつねのお姉さん、すっかりログ担当だねー」

「そうなんよ。まあこういう細かい数字とかデータ見る好きやから別にええんやけど」

「千尋はぜんぜんわかんないー!」

薬師院は改めて目の前にあるログをいじる。

「2人も見てみる?中々興味深いことになってるで」

俺達は言われた通りに覗き込む。

 

 

 

 

 

 

男子

11:27 out

11:31 out

21:14 in

 

 

女子

11:34 out

11:34 out

11:34 out

 

 

 

 

 

 

 

「これは………どういうことだ?」

予想外のログに俺はついそう漏らす。

「意味分からへんやろ?うちもそれ見てさっきから唸ってたんよ」

「もしかしてさー、男子のこの『21:14 in』ってユーレイのお兄さんじゃないー?」

すると、覗き込むように見ていた飛鳥がそう言った。

「えー!?れいやがぷーるにきたの!?」

「どうしてそう思うんだ?」

「だってさー、昨日の停電って21時前くらいにあったでしょー?その後ユーレイのお兄さんのこと見た人っているのー?」

「それは………」

確かに、俺は停電の後円城寺の姿は見かけていない。

他に誰か停電後に円城寺を見かけた人はいないか確認する必要があるな。

「もしいないならさー、ユーレイのお兄さんのその後の行動って分かんないわけでしょー?なら停電後にプールに行っててもおかしくないよねー?」

「けど、どうしてプールなんかに行く必要があるんだ?しかも停電で真っ暗の中だぞ?」

「そんなのボクだって知りたいよー。でも実際ログは残ってるんだしー、誰かが真っ暗の中プールに入ったのは事実でしょー?ボクはその誰かがユーレイのお兄さんじゃないかって予想しただけー」

飛鳥の言っていることは確かに分かるが………。

もしこのログの正体が円城寺だとしたら、何故プールに向かったのだろうか。

だってあいつはあの時………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「なっ………!?てめえ何しやがるんだコラァ!!!」

「ご、ごめんだす………」

「だ、大丈夫円城寺君?」

「ん?」

食堂へ入ると円城寺の怒ったような声と桃林が謝る声が聞こえた。

「何かあったのか?」

「ゆ、夢寺君………」

厨房へ慌てて入ると、びしょ濡れになった円城寺と申し訳なさそうに謝る桃林、そしてキッチンペーパーで濡れた円城寺を拭く結城の3人がいた。

「桃林さんが躓いて円城寺君に水を掛けてしまったんだ」

「ったくよ………どこまで鈍臭いんだてめえは」

「ご、ごめんだす…………。急いで持って行こうとしたらつい………」

「…………チッ、次からは気をつけろや」

円城寺はここでさらにキレて暴言を吐くかと思ったが、意外にもあっさり謝罪を受け入れた。

「けどこのままじゃ風邪引いちゃうね………僕大浴場からタオルを持ってくるよ」

「い、いや………ワタシが取ってくるだす!円城寺君に迷惑かけたのは、ワタシだすから………」

「変な気回すな。勝手に部屋戻ってシャワー浴びるからてめえは飯運んどけ」

「で、でもワタシがそれじゃ気が済まないだす!」

桃林は相当申し訳ないと思っているのか、珍しく自分の主張を曲げない。

「………わーったよ。じゃあ俺がシャワー浴びてる間にタオル取ってきてくれや。後で洗って返すからよ」

「わ、分かっただす!だ、だから晴翔君は来なくても大丈夫だす!」

「そう?ならお願いしようかな」

桃林はコクコクと頷くと、円城寺と一緒に食堂を出て行った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

停電前、あいつはシャワーを浴びる為に自分の個室へと向かった筈だ。

だから俺は円城寺がプールに向かった理由が分からない。

一体何故プールへ………?

「飛鳥はんの言ってることにうちも賛成や。多分このログ、円城寺はんのもので間違いないと思うで」

俺が考え込んでいると、薬師院がニコニコしながらそう言ってきた。

「薬師院もそう思うのか」

「勿論根拠もあるで。ほら、このログ。何か見て気がつくことあらへん?」

「気がつくこと?」

薬師院にそう言われ、ログを今一度見直す。

……………あ。

「………そういうことか。………ログが1つしか残っていない」

「どういうことー?」

「あんな、普通は入室と退室、両方が記録されるやろ。でもこの男子のログは入室しか残されていない。つまりプール入ったきり出てないってことや」

「じゃあれいやはぷーるにきてからでてないんだ!」

前回の事件と同じだ。

被害者の百々海と乃木は大浴場で殺されていたが、その2人も入室のログはあったが、退出のログは残されていなかった。

であれば今回の入室だけ残されたログも、被害者である円城寺のものであると考えるのが自然だ。

とすると…………円城寺はプールで襲われた、もしくは殺されたと考えるべきなんだろうな。

 

 

 

 

 

 

「んー?だとしたらおかしくなーい?」

「おかしい?どこがだ?」

飛鳥が納得いっていない様子だったので俺が質問すると、飛鳥がログを指差す。

「ユーレイのお兄さんは体育館で見つかったでしょー?ならどうやってここから出たのー?」

「そう。うちがずっと悩んでたのはそこなんよ」

薬師院もそれだという風にパチンと持っている扇子を鳴らす。

「もしこのログが円城寺はんのなら、円城寺はんはこのプールから出てないことになるんやけど、でも実際、円城寺はんは体育館で見つかったやろ?ならログが残ってないとおかしいやろって思ってな」

「………確かにそうだな」

プールから出るには、1階にある出入口から出る必要がある。

その時は必ずパスポートをタッチしなければならず、その際にログが記録される。

だが、円城寺が入った21時付近の時間に誰かが出た形跡がない。

それどころか、ログは円城寺が入った21:15を最後に記録がない。

であれば、円城寺はどうやってプールから体育館に移動したのだろうか。

これは裁判で大きな議題になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

 

[更衣室のログ]

プールの更衣室のログは以下の通り。

 

 

男子

11:27 out

11:31 out

21:14 in

 

 

女子

11:34 out

11:34 out

11:34 out

 

 

 

 

「でもさー?なんでれいやはおよげないのにぷーるなんかいったんだろうねー?」

俺がログの内容を記憶していると、千尋がふとそう疑問を口にした。

「だからさっき言ったじゃーん。ユーレイのお兄さんは呼び出されたんだってー。泳げるかどうかなんて関係ないでしょー」

「えー?でも千尋がもしおよげないなら、ぷーるなんてぜったいちかづきたくないよ!だってこわいもーん」

「………ん?泳げない………」

俺はふと気になった事を思いついた。

「円城寺が泳げないって知ってるのは何人いるんだ?」

「そんなの午前中の水泳に参加してた人ならみんな知ってるでしょー」

「いや、円城寺はプールに参加しないとは言ったが、『泳げないから』という理由までは話してなかった筈だ。俺達が知ってるのは、あくまで探索の時円城寺が溺れたのを見たからだ」

「………そっかー」

「ちなみにうちはその話初耳や。円城寺はん、単純に泳ぐの好きじゃないから参加しないと思ってたで」

「千尋はしってるよー!れいやがりおなとしんぺいと話してるのきいてたんだー」

「ということは、円城寺が泳げないのを知ってるのは………実際に溺れた円城寺を目撃した俺、飛鳥、不知火。そして教えてもらった佐々木と写実、それにそれを聞いていた千尋だな」

もしかしたら他にも誰かいるかもしれないが、ひとまずはこの6人か。

関係ないかもしれないが、一応覚えておこう。

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[泳げない円城寺]

円城寺が泳げないことを知っているのは、夢寺、飛鳥、不知火、佐々木、写実、千尋の6人。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば薬師院。昨日の宴会の時なんだが………停電の前後で何かおかしな行動をしてる奴はいなかったか?」

「そうやなぁ…………特にいなかったと思うで」

俺の質問に対して少し考え込んだ後、薬師院はそう答えた。

「停電の後に宴会場から出た人はいなかったー?」

「あ、それは誰もいないで。うち、停電の時入口付近にいたんやけど、全員その場にいたのをちゃんと覚えてるわ。流石に真っ暗でも人の気配は分かるし、誰か出ようとしたらその場で気がつくと思うで」

「分かった。ありがとう」

となると、もし仮に宴会中に円城寺が殺されたとしたら、宴会場にいた人には犯行は不可能ってことになるな。

これはしっかり覚えておこう。

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[薬師院の証言]

宴会中に怪しい動きをした人はいなかったそうだ。

また、停電直後、宴会場から出た人間はいないとのこと。

 

 

 

 

 

 

俺達は薬師院と分かれ、それぞれの更衣室を調べた。

しかし特におかしな点は無かったため、そのままプールへと向かった。

「だ・か・ら!!!ここはわたくしがちゃんと調べたんですの!アナタが入る必要は全く無いと何度言ったら分かるのですか!」

「いやいや莉央奈氏!もしかしたら1人では見逃しがあるかもしれないであります!だから某も一緒に………!」

「穢らわしい!」

「ありがとうございます!」

すると入口付近で佐々木と写実が言い争いをしていた。

「………何やってんだ、お前ら」

「夢寺サン!いいところに来ましたわ!この変態を止めて下さいまし!」

「変態で結構であります!今こそ桃源郷である女子更衣室に入るチャンス………」

「気持ち悪い!本当に同じ人間ですのアナタ!?」

「ありがとうございます!」

罵倒する佐々木と喜ぶ写実。

俺達は一体何を見せられてるんだ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オタクのお兄さんが気持ち悪いのはもう分かったからさー、何か手がかりとか見つけたのー?」

飛鳥がどうでもいいといった様子で尋ねる。

「手がかり、でありますか………。男子更衣室には何も無かったであります」

「女子更衣室にも手がかりなしですわ」

「そうか。じゃあ昨日の宴会から夜中までのアリバイを教えてくれ。2人はずっと宴会場にいたんだよな?」

「某はずっと宴会場にいた筈………であります。しかし某、不思議なことに昨日の記憶が曖昧なのであります。何故でありましょうか………」

「わたくしは時々お手洗いのために外に出ましたわ。けどそれもほんの数分でしたわ。それと………わたくしも写実サンと同じで、宴会中盤くらいからの記憶が曖昧でよく覚えていませんの。気がついたら個室にいたというか………。夢寺サン、昨日のわたくしの行動知りません?」

「何にも覚えてないのかよ…………」

酒とは恐ろしいものだ。

俺もこれから先飲む時は十分注意しよう。

「お前らは昨日酒を飲んだんだよ。それで泥酔して大暴れしてた」

「ファッ!?」

「なっ!?」

写実は驚愕の表情を浮かべ、佐々木はその場にがっくりと膝をついた。

俺は続けて、昨日具体的に何があったのか詳しく説明した。

 

 

 

 

 

「………そ、そんなことがあったとは………」

「このわたくしが………そんな無様な姿を見せ人様に迷惑をかけていたなんて………」

「そうだ。特に佐々木。お前は俺にだいぶ迷惑をかけたからな。今ここで謝罪しろ」

「うぅ………!ほ、本当に申し訳なかったですわ。いくらアナタとはいえ、迷惑をかけたのは事実みたいですし………くぅ………!!」

悔しそうに謝る佐々木を見て俺は少しスッキリした。

昨日は意味もなく罵倒されたからな。

これくらいの謝罪はしてもらわないと。

「じゃあもう行こうよー。どうせこの2人昨日のこと何も覚えないんでしょー?」

「まあ、そうだな」

飛鳥に言われ、俺は頷く。

「悪いな、捜査の邪魔して」

 

 

 

 

 

「お待ち下さいませ」

俺達がその場を離れようとすると、佐々木が声をかけてきた。

「役に立つかどうか分かりませんが………わたくし、気になることがございますの」

「気になること?」

「昨日の宴会が始まってしばらくした時、わたくしお手洗いに行くために宴会場を出たんですの。するとわたくし、地下1階に向かう天草サンを見かけましたの」

「天草を?」

「ええ。フラフラとした危なっかしい足取りでしたわ。声をかけようと思いましたが、だいぶ距離が離れてましたので……」

「それは何時頃だ?」

「えっと確か…18時半くらいでしたわ」

宴会が始まったのが18時過ぎだから………開始から30分後くらいだな。

体調が優れないと言って宴会を欠席した天草を見かけた、か。

それも地下に行くなんて………何の用があったのだろうか。

「後でアーメンのお兄さんに聞きに行こうよー。普通に考えて怪しいもーん」

「そうだな。ありがとう、佐々木。助かった」

「り・お・なですわ!!わたくしの証言、ちゃんと役立てて下さいまし!」

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

[佐々木の証言]

18時半頃、地下1階へと向かう天草を見かけたとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

揉めている佐々木と写実を残し、俺と飛鳥はプールサイドへとやってきた。

「プールは………特に変化はないな」

「だねー。変な物も落ちてないし、今回の事件には関係ないんじゃないー?」

一応プールの底も覗いてみたが、何か落ちている様子はない。

そうなると今回の事件にプールは関係ないのだろうか。

いや、恐らく入口のログからして円城寺がプールに来たのは間違いない。

であれば何も関係がない、とはならない筈だ。

「…………」

俺は無言でどこを探すべきか考え込む。

 

 

 

 

 

 

 

「夢寺殿!飛鳥殿!」

「ん?」

名前を呼ばれた俺と飛鳥が同時に周りを見渡す。しかし誰もいない。

「上でござるよ!」

そう言われ素直に上を向く。

すると、プールの2階であるギャラリー席に不知火がいた。

大きく手を振っている。

「不知火?どうしてそんなところにいるんだ?」

「プール全体を見渡せる場所がないかと探していたのでござるが、ここならちょうどいいと思い移動したのでござる」

「なるほどねー。忍者のお姉さんにしては頭使った方なんじゃないー?」

「恐悦至極でござる」

「いや、皮肉なんだけどー………」

「夢寺殿、今そちらに行くでござる」

すると不知火は手すりに足をかけると、そのままジャンプして下に降りてきた。

危ないと思い俺は受け止めようと一瞬思ったが、すぐにやめた。

何故なら彼女は…………「くノ一」だからだ。

この程度の落差はどうてことはないだろう。

そして予想通り、不知火は見事な着地を決め、こちらにやってきた。

「流石だな。俺ならあんな鮮やかな着地は無理だ」

「夢寺殿も運動神経は悪くないでござるからきっと出来るでござるよ」

「それでー?お姉さんは何か収穫はあったー?」

飛鳥の質問に対し不知火は静かに頷くと、

「こっちでござる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不知火について行くと、プールサイドのとある場所を指差した。

「上から見て分かったでござるが………ここを見るでござる」

「これは…………血痕だな」

彼女が指差した場所を見ると、微かにだが血痕が残されていた。

「水で薄まっているでござるが、これは確実に血でござる」

「円城寺の頭部には外傷があった。つまりアイツは………ここで犯人に外傷を負わされた?」

「………やっぱりそうだ。じゃあユーレイのお兄さんはここで犯人に…………」

そう呟く飛鳥の語尾は震えていた。

「それと………これを見るでござる」

不知火は自分の服からパスポートを取り出し、手慣れた様子でいじり始める。

「随分と手慣れてるな。俺より使いこなしてるんじゃないか?」

「夢寺殿に教えて頂いたおかげでござる」

そして俺達にとある写真を見せてきた。

「これは?」

「先程2階のギャラリーで撮ったものでござる。この手すり………見て欲しいでござる」

「………普通の手すりしか見えないんだが…………」

「行ってみたら分かると思うでござるが、2階は1階と違って掃除が全くされていない状態でござった。だから埃が椅子や手すり等、あちこちに付いていたのでござる。しかしある1箇所だけ、埃が無かったのでござる。まるで前に誰かがその箇所だけ握ったみたいに」

「ふーん。じゃあここが解放されてから誰かが2階に登ってその手すりを掴んだってことだねー」

「左様。あ、勿論先程拙者が掴んだ手すりとは違う場所でござるよ」

「その埃が無かった手すりっていうのはどこにあるやつなんだ?」

「丁度この血がある場所の真上の手すりでござる」

俺達が上を見上げると、確かにそこには手すりがあった。

血痕があった場所の真上の手すりを犯人が使ったのか?

もしそうなら偶然では済まされないかもしれない。

 

 

 

 

 

「そしてあと一点、気になることがあるでござるが………」

不知火はまたパスポートをいじり撮った写真を見せてきた。

「この手すりの部分に何か引っ掛けた痕があるでござる」

「本当だねー。これってさー、何か細い糸状のものじゃないー?」

「ロープか何かってことか?」

「ロープにしては細すぎるよねー。それに第一ロープなんてどこにあるのって話ー」

「確かにな」

この痕から何かを引っ掛けたのは間違いないと思うんだが………。

その正体が何かはまだ分からないな。

「助かった不知火」

「これくらい大したことではないでござる」

「ちなみに聞くが、昨日の宴会のことって覚えてるか?」

「それが摩訶不思議なことに………さっぱり覚えてないのでござる。まるで記憶が抜け落ちているような………そんな奇妙な感覚でござる」

「…………」

………お前もか。

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[プールサイドの血痕]

プールサイドに血痕が残されていた。

 

 

 

 

[使われた手すり]

2階のギャラリー席部分にある手すりが一部だけ使われた形跡があった。

 

 

 

 

[引っ掛けた痕]

手すりに何か細い糸状のものを引っ掛けた痕があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に俺達が向かったのは宴会場だ。

「…………ここには何もなさそうだよー」

「そうだな」

事件と関係がある手がかりがないか捜索してみたが、特に怪しいものは見つからなかった。

「よし、じゃあ次は………」

「あ、夢寺君。それに飛鳥さんも」

宴会場を出ようとすると、結城と桃林に遭遇した。

桃林は飛鳥を見ると、怯えたような表情で結城の背中に隠れる。

「んー?どうして隠れるのー?」

「……………」

飛鳥の問いに対しても口を開く様子はない。

相当警戒しているようだ。

「桃林さん、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。2人は捜査してるだけなんだから」

「だ、だって…………この2人のうちどちらかが円城寺君をこ、殺したクロかもしれないだす………。なら、近づかない方が賢明だす………」

「は?何?ボクがユーレイのお兄さんを殺したって言いたいの?」

飛鳥の表情が途端に怒りに染まる。

「ひいい!?」

「飛鳥。気持ちは分かるが今は抑えてくれ。桃林が怯えてるぞ」

「………………ごめん」

反省したような表情で俯き謝る飛鳥。

これは俺が話した方がいいな。

 

 

 

 

 

 

 

「結城、桃林。俺達は今、昨日の宴会中からのアリバイを確認してるんだ。2人の昨日の行動について教えてくれないか?」

「アリバイか………なるほどね。夢寺君は停電直後に犯行が起きたと考えてるんだね」

「その線が高いと俺は思ってる。まだ確証はないが」

「分かったよ。僕の知ってる限りのことを話すよ。桃林さんもそれでいいよね?」

「で、でも………もし夢寺君が犯人だとしたら…………」

「夢寺君は殺人なんて絶対しないよ。だから大丈夫。僕が保証する」

「そう言ってもらえるのは嬉しいが、少しは疑った方がいいと俺は思うけどな」

「まさか。前回の裁判で活躍した君が誰かを殺すなんて絶対にあり得ないよ」

「…………わ、分かった。まずは宴会中の話なんだが、2人は料理を運んでたよな?2人はずっと一緒にいたのか?」

結城の俺に対する謎の信頼に驚きながら俺はそう尋ねる。

「そう、だね………停電時以外はほとんど一緒だったよね?」

「そ、そうだす!ワタシと晴翔君はずっと一緒だっただす!」

どうやら2人は宴会中ずっと一緒だったらしい。

 

 

 

 

 

 

「その後だけど………夢寺君も知って通り、()()()()が起きちゃったんだよね」

「そうだな。あれはちょうど停電直前だったよな?」

「あ、あれは本当に申し訳なかっただす………」

「んー?なになにー?なにかあったのー?」

気を取り直した飛鳥が質問する。

「ああ。実は………」

俺は、昨日厨房で起きた事故について話した。

「…………ふーん?それでユーレイのお兄さんはシャワー浴びる為に個室へ行っておデブのお姉さんがタオルを取りに大浴場まで行ったんだー」

「ああ。それで桃林に聞きたいことがある」

「わ、ワタシにだすか?」

「桃林は大浴場に向かったんだよな?その後恐らく停電があった筈だ。その時以降の行動を教えてもらいたい」

「わ、ワタシを疑ってるだすね………。い、いいだすよ。どうせワタシは犯人面してる気持ち悪い奴だすから………」

「桃林さん。夢寺君はそんな事は言ってないよ。君にただ質問してるだけなんだ。だから落ち着いて答えてくれたら大丈夫」

またネガティブな発言をする桃林を結城が宥める。

こういう時の結城の気遣いは本当に有り難い。

 

 

 

 

 

「わ、分かっただす。ワタシはあの後、大浴場に向かっただす。でも途中で停電になって真っ暗になって………。怖くてその場で暫く蹲ってただす。で、でも中々明るくならないから………しばらくしたら晴翔君にチャットで連絡して助けてもらっただす。その後は個室に戻って朝まで寝てただす」

桃林は怯えながらも自身の行動を説明した。

………ん?

「結城。今の話は本当か?」

「本当だよ。一旦個室に戻った後桃林さんのチャットに気がついてね。慌てて桃林さんを迎えに行ったんだよ。もう少し早く行ってあげればよかったね」

「そ、そんな………!わ、ワタシは晴翔君が来てくれただけて嬉しかっただす!」

桃林が結城に対して目を潤ませながらお礼を言っている。

俺はその間、飛鳥と目を合わせる。

飛鳥もコクリと頷く。

間違いない。

俺達の今まで集めてきた証言と()()()()()()()()が1つあった。

今追求してもいいが………学級裁判中に証拠が出揃ってから改めて話をした方がいい気がする。

なので今は黙っておくことにした。

 

 

 

 

「…………分かった。じゃあ結城は…………言うまでもないか」

俺の問いに対して結城は微笑を浮かべた。

「そうだね。僕は停電時、夢寺君とずっと一緒にいたよ。その後もさっき桃林さんが言った通り、一度個室に帰ってから大浴場前まで桃林さんを迎えに行って個室に送り届けたんだ。その後は自分の個室に戻って寝たかな」

「夜中外には出なかったか?」

「うん。朝まで一度も出なかったよ。まあ証人はいないけどね」

「そうか………分かった」

結城の行動におかしな点は特には見受けられない。

「桃林。もう一つ聞きたいんだが………。今朝円城寺を最初に見つけたのは桃林か?」

「そ、そうだす」

「見つけるまでの流れを教えてくれないか?」

「わ、ワタシが目覚めたら個室のドアにこれが挟んであったんだす」

桃林がポケットから出したのは、1枚の紙だった。

「見せてもらってもいいか?」

「だ、だす………」

俺と飛鳥は手紙を広げて中身を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

【私達の中にいる殺人狂が動き出した。既にショーは始まっているぞ。体育館に行ってみるといい】

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、これ………」

想像を絶する内容に俺はついそう漏らしてしまった。

俺達の中に殺人狂がいる、だって?

「ふーん、なるほど。なんで朝っぱらから体育館なんかに行くのかなって思ったけど、これがあったから行ったんだねー」

「だ、だってもし晴翔君が殺されてたりしたら………心配で仕方がなかったんだす!」

「ありがとう、桃林さん。それにしても………最低なやり方だね。人の善意につけこんで桃林さんに死体を発見させるなんて……」

結城が怒りを滲ませる。

「それで円城寺の死体を見つけて、慌てて全員を起こしに回ったのか」

それが今朝の出来事だ。

俺達は桃林にドアを激しくノックされ目を覚ました。

そしてほぼ全員で体育館に向かい、そこで死体を発見したのだ。

「ん?そういえば飛鳥。お前だけ遅れて来てたが………」

「ボクはゆっくり来たからねー。だって死体は逃げないでしょー?急ぐ必要ないじゃーん。………まあ、その死体がユーレイのお兄さんの死体だとは思わなかったけど」

「…………」

これ以上は言及しない方がいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

 

[謎の手紙]

桃林に宛てられた差出人不明の手紙。

桃林はこれを見て体育館に向かい、そこで円城寺の死体を見つけた。

 

 

【私達の中にいる殺人狂が動き出した。既にショーは始まっているぞ。体育館に行ってみるといい】

 

 

 

 

 

 

 

俺達は次に厨房へと向かった。

すると入れ違いで厨房から出て来た八尋と出くわした。

「八尋、少しいいか?聞きたいことがあるんだが」

「………なんです?僕は今忙しいので手短にお願いします」

相変わらずの塩対応の八尋に苦笑しながら俺は口を開く。

「お前、円城寺の死体を下ろす前に色々調べてたよな?その時気がついたらことがあったら俺に教えて欲しい」

「ああ、そのことですか」

八尋はこちらを向いた。

「特別おかしな点はありませんでしたよ。ただ一点気になったのが、円城寺さんを壁に磔にした際、釘で固定していたのですが、その釘をどこから取ってきたのかが分からなかったんです。ですが………それはもう解決しました」

八尋は厨房の下からある物を取り出した。

「これは…………工具箱?」

「そうです。中を見てみますか?」

俺は八尋から手渡された大きめの工具箱を手に取り開けてみる。

中にはトンカチやノコギリ等、日常大工で使われる工具が一式揃っていた。

そして………問題の釘もしっかり入っていた。

「今中を見てみましたが、ここに入っている釘だけ明らかに数が減っていました。そしてこの釘の他には、トンカチとペンチのみ使用した形跡がありました

「なるほどねー。犯人は釘とトンカチを使ってユーレイのお兄さんを舞台の壁に固定したんだねー。けど変じゃなーい?何で厨房に工具箱があるのかなー?それに数が減っていたって………まるで減る前の数を知ってるような言い方だったねー」

八尋の言い方が引っかかったのか、飛鳥がそう尋ねる。

「………そうですね。貴方達になら教えておいてもいいでしょう」

「え?」

八尋はじっとこちら見ると、

 

 

 

 

 

 

 

「実はこの工具箱………体育館舞台袖の階段を上がったところに僕が隠していたのです」

「階段?」

俺は一瞬、何のことか分からず聞き返した。

「プールの2階に観客席があったでしょう。あそこはプール側の建物からは入れず、隣の体育館からしか行くことが出来ないのは知っていますよね?」

「それは知ってるけどー、階段なんてあったかなー。覚えてないやー」

確かに俺も、どうやって2階の観客席には行くかまでは把握してなかったな。

「階段は舞台袖にありましたが、カーテンで隠されるようにしてあったから普通なら気がつきませんよ。………とにかく、体育館の2階に上がり、プールの2階へと行くためには階段を登る必要があるのですが、僕が解放されてから最初にここを調査した時、階段を上がったところにこれがあったんです」

「それを八尋が…………隠していた」

「はい。また殺人に利用されると面倒ですからね。舞台袖の普段誰も見ないような場所に隠しておいたのですが………結局意味がなかったですね。どうやって見つけたのか不明ですが」

「…………」

俺は八尋の話を聞き考える。

何故、犯人は八尋の隠した工具箱に気がついたのだろうか。

偶然?いやその可能性は薄い。

八尋は普段人が絶対見ないところに隠したと言っていた。

なら何故…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[工具箱]

磔にされた際に利用された釘等が入ってる工具箱。

使用されたのは釘とトンカチ、ペンチの3つのみ。

何故か食堂の厨房で見つかった。

八尋が体育館の舞台袖に隠しておいたらしいが…………。

 

 

 

 

 

 

 

「………ん?」

俺は他に厨房に手がかりがないか視線をあちこちに向けていると、とある事に気がついた。

冷蔵庫の隣には、誰もが自由に持っていくことが出来るお菓子が入っているカゴがあるのだが、その周辺の床が酷く汚れているのだ。

「これは………お菓子の食べカスか?」

落ちていたのは全てお菓子の食べカスだった。

誰かやけ食いでもしたのだろうか。

だとしたらせめて後片付けくらいきちんとして欲しいものだ。

「あれー?なんでこんなにお菓子ないのー?」

飛鳥がカゴを覗きながら不思議そうにしている。

「何か心当たりがあるのか?」

「んー?ボク昨日の宴会前にちょっとお菓子食べたけど、こんなに減ってはなかったよー」

「じゃあその後誰かが食べたってことか」

「ちなみに前モノワニに聞いたんだけどー、お菓子を含めた厨房の食材は毎日昼の12時にはじゃあされるらしいよー」

「それは初めて知ったな」

まあ………一応覚えておくか。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[厨房に散らばったお菓子の食べカス]

厨房の床にお菓子の食べカスが大量に散らばっていた。

 

 

 

 

[補充される食べ物]

厨房の食べ物は全て、毎日午後12時に補充されるらしい。

 

 

 

 

 

 

「ねーはとのお兄さん」

「どうした?」

「この容器なんだと思うー?」

厨房のゴミ箱を覗き込む飛鳥に呼ばれ行ってみると、中に謎の白いプラスチックの容器が捨てられていた。

「………いや、分からない。というかその形状の容器を初めて見たな」

「だよねー。ボクもこんな形の容器見たことないからさー。一体何が入ってたんだろうねー」

容器を手に取り中を覗いてみる。

中身は空っぽであった。

「しかも見てよー。なんか剥がされた跡が残ってるよー。きっとラベルか何かが貼ってあったんだろうねー」

確かに外側には剥がされた跡が残っていた。

「………ん?微かに文字が残ってるぞ」

「あ、本当だー」

しかし目を凝らしてよく見ると、剥がしきれていない部分があった。

「これは………漢字の『料』だな」

「だねー。何かの調味料とかー?」

「そうかもしれないな」

………捨てられた謎の容器、か。

事件には関係ないかもしれないが、一応覚えておこう。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[捨てられた容器]

厨房のゴミ箱に捨てられた初めて見る形状の容器。

空のため中身は不明であり、ラベルも剥がされていた。

しかし、『料』という文字だけが辛うじて読めた状態であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ僕はもう行きますよ。これから確認しなくてはいけない場所があるので」

八尋は捜査したい場所があるのか、この場を立ち去ろうと背を向けた。

「どこ行くのー?」

「体育館のブレーカーのところですよ。今回の事件、昨日の停電が大きな鍵を握っていることは間違いないですからね」

ブレーカーか。そういえばまだ確認してなかったな。

本当なら今日、薬師院と一緒に見に行く予定だったが………。

「八尋。ブレーカーの確認、俺もついて行っていいか?」

「………着いてくるなら勝手にどうぞ。ただし僕の邪魔はしないで下さいね」

すると八尋はご自由にといった風に言うと、そのまま食堂を出て行った。

「能面のお兄さん相変わらずそっけないねー。それで?ボクも一緒に行った方がいいのー?」

「いや、飛鳥にはある場所の捜査を頼みたい」

俺は飛鳥に捜査して欲しい場所を教える。

「あーはいはい。そういうことねー。じゃあついでに()()()がいたら話聞いてみるよー」

「助かる。また調べ終わったら合流しよう」

「りょーかい」

俺は飛鳥と別れ、体育館へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「あら夢寺はん。約束、ちゃあんと覚えててくれたんやな♪」

体育館に戻りブレーカーのある舞台袖まで向かうと、そこには八尋と昨日ここへ一緒に行く約束をしていや薬師院がいた。

「あ、ああ。昨日そう言ったしな」

「嬉しいわぁ♪そんでな、今八尋はんに見てもらってるんやけど………」

「静かにして下さい。集中出来ません」

「あら、ごめんなぁ」

八尋は怒りながらブレーカーを色々いじっている。

「…………なるほど。やはり電線が一度切断されているようですね」

「どうしてそんなことが分かるんだ?」

「電線に無理やり繋げたような跡があります。恐らくモノワニが応急処置としとてやったことなのでしょうが………」

「となるとやはり、あの停電は誰かが電線を切断したことによって意図的に起こした………?」

「そう考えるのが自然です」

「でも停電が起きたのって昨日の夜9時ごろやろ?そん時はみんなで宴会やっとっかたから、停電起こせる人は限られてくるんちゃうん?」

「そうですね。………チッ、こんなことなら嫌でも宴会に参加しておくべきだったか」

「ん?なんか言った八尋はん」

「いえ、なんでも」

薬師院の言う通り、停電発生時はほぼ全員が宴会場や食堂にいたため、停電を起こせる人物はだいぶ限られてくる。

そもそも何故、停電を起こす必要があったのだろうか。

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[体育館のブレーカー]

体育館にあるブレーカーに繋がれた電線は一度切断された跡があった。

 

 

 

 

 

 

「…………ん?何だこれ?」

ブレーカーの近くの下を見ると、俺は何かが落ちていることに気がついた。

「夢寺はん?どないしたん?」

「何か見つけたのですか?」

薬師院と八尋も近くに寄ってくる。

「いや、何かゴミみたいのが落ちてたんだが………」

「これは………お菓子の食べカスやない?」

俺は目を凝らして見てみると………確かに言われてみればそう見える。

「ブレーカーを切断した人物が落としたものである可能性が高そうですね」

「せやな。これも一応覚えておいた方がええんちゃう?」

「そうだな」

些細な事だが、それでも情報は一つでも多く持っておいた方がいい。

しっかり記憶しておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

 

[お菓子の食べカス]

体育館のブレーカーの下にお菓子の食べカスらしきものが落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポンパンポーン………。

 

 

 

 

 

 

 

「皆サマ、捜査時間のお知らせでス。学級裁判が始まりますのデ、玄関前に集合して下さイ」

館内に流れるモノワニからのアナウンス。

「………時間か」

「………行こか」

「………」

俺達3人は玄関前へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よー蓮!」

玄関前へ着くと雷哉がいつも通りの様子で声をかけてきた。

「お前な………もう少し緊張感を持てよ」

「あ?別に普通でいいだろ?だって俺と蓮のコンビがいるんだぜ?ならもう勝ったようなもんだろ?」

どっからその自信が湧いてくるんだ。

「だからよ、今回も頑張ろうぜ、相棒!」

「…………分かったよ」

俺は呆れながらも雷哉とハイタッチをする。

「…………」

「天草君大丈夫?随分と顔色が悪いようだけど………」

「…………………済まない。数日前から体調が悪くてな…………。だが大丈夫だ…………。君達の足を引っ張らないように努力する…………」

「本当に大丈夫?辛かったら言ってね?」

「…………済まない………」

その時、俺は顔色の悪い天草に対して結城が声をかけている様子を目撃した。

大丈夫とは言っているが、誰がどう見ても無理してるのは明らかだ。

 

 

 

 

 

 

 

「はとのお兄さん」

そんな2人の様子を遠くから観察していると、別行動をしていた飛鳥がこちらにやってきて小声で話しかけてきた。

「全員の個室見てきたよー。あとアーメンのお兄さんに話聞いてきたー」

「助かる。それでどうだった?」

「アーメンのお兄さんの個室にこんなのがあった」

飛鳥は手に持った紙を見せてきた。

「これは…………新聞?」

「【世間を騒がせている殺人鬼《Mr.ジェントルマン》、またもや出没!?】………?」

新聞には一面にドカンと大きな写真が載っている。

その写真は白い仮面にマントを羽織り、さらには白い手袋をしている。

殺人鬼というより………怪盗に近いな。

「はとのお兄さんはこの殺人鬼、聞いたことあるー?」

「いや、無いな」

初めて聞く名だ。

この記事は勿論見たことがないし、こんな一面で特集されるのであればきっとニュースにでもなっているだろうが、そんなニュースを見た記憶もない。

「しかし、なんでこんな新聞が天草の部屋に?そもそも新聞なんてどこから持ってきたんだ?」

「ボクもそれ気になったから、ちょうど見かけたアーメンのお兄さんに聞いてみたんだよー。そしたらー………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「……………………分からない。何も自分は知らないんだ…………!」

 

 

 

 

 

「…………………気がついたら何もかも終わっていた…………。まるでずっと夢の中にいたような気分なんだ…………」

 

 

 

 

 

「自分が…………まるで自分じゃなくなってるみたいだ………………」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「なーんて訳の分からない事言っていなくなっちゃったー」

「…………」

飛鳥の言葉を聞いた俺は思考を巡らせる。

一見するとただの言い逃れにしか聞こえないが……飛鳥の言い方からして相当必死であったことが窺える。全くの嘘というわけではないのだろう。

しかし、かといって全く何も知らないということは恐らく無いだろう。

天草はこの事件の何かを知っている。

それどころか、犯人、もしくは第三者という形でこの事件に関わっている可能性が高い。

事件前の不審な行動、アリバイが不明確、おかしな様子など怪しむべき点が多いからだ。

「佐々木の証言について天草から話は………」

「聞けてないよー。だってすぐいなくなっちゃったしー」

となると、裁判で直接聞くしかないな。

俺は改めて新聞をじっくりと見てみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【世間を騒がせている殺人鬼《Mr.ジェントルマン》、またもや出没?】

 

 

白い仮面を付け、黒いマントを羽織り白い手袋を付けた、まるで怪盗のような姿の殺人鬼、《Mr.ジェントルマン》がまた現れた。夜中に大通りから外れた人気のない道に現れ、男性1人を殺害。その後堂々と駆けつけた警察の前に現れ、中指を立てるなどの挑発行為を行った。そして信じられないことにそこから警察を振り切り逃走に成功したのだ。

仮面で素顔を隠しているため正体は未だ不明だが、体格的に男性であると推測される。髪型は銀髪、身長は180cm〜185cmくらいで、細身でスラッとした体型である。

そして彼の最大の特徴は、『殺人幇助』を行うことである。

恐らく彼は依頼を受け、殺人の手助けをすることを生業としているのであろう。

相当手慣れている上に、幇助する際の殺害方法は多岐にわたるため、犯行方法や実際に殺人を行った人間の特定が非常に困難であるとのこと。

更に厄介なのが、殺人幇助をした相手をジェントルマンが殺してしまう事もあるということだ。

依頼主と請負人という関係の中で何かトラブルが起きた結果なのだろうが、その殺害方法は極めて残酷な方法である。

その方法とは、四肢を切断し、目玉と鼻、耳を削ぎ落として机に並べるという常軌を逸したものである。

警察は捜査本部を設置しジェントルマンの逮捕に動いているが、逃げ足が早く未だ逮捕には至っていない。

 

 

 

 

 

 

 

記事を見終わった俺は深く溜息をついた。

こんな奴が俺達の身近にいるのか。

とても同じ人間とは思えない。

「随分派手にやってるみたいだねー。でもおかしいなー。ボクそんな事件聞いた事ないんだけどなー」

飛鳥は不思議そうに首を傾げている。

新聞の一面にもなるようなニュースを俺達が知らないのは気になるが、それは今考えても仕方がない。

この新聞の内容については、もしかしたら天草が何か知っているのかもしれない。

裁判で聞く必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

【Mr.ジェントルマンの新聞記事】

天草の部屋にあった殺人鬼である《Mr.ジェントルマン》が一面に載った新聞記事。

 

 

 

 

【世間を騒がせている殺人鬼《Mr.ジェントルマン》、またもや出没?】

 

 

 

白い仮面を付け、黒いマントを羽織り白い手袋を付けた、まるで怪盗のような姿の殺人鬼、《Mr.ジェントルマン》がまた現れた。夜中に大通りから外れた人気のない道に現れ、男性1人を殺害。その後堂々と駆けつけた警察の前に現れ、中指を立てるなどの挑発行為を行った。そして信じられないことにそこから警察の手を振り切り逃走に成功したのだ。

仮面で素顔を隠しているため正体は未だ不明だが、体格的に男性であると推測される。髪型は銀髪、身長は180cm〜185cmくらいで、細身でスラッとした体型である。が、力が恐ろしく強く、どんな相手も瞬時に叩きのめす戦闘力があると、対峙したことのある警察官は証言している。

そして彼の最大の特徴は、『殺人幇助』を行うことである。

恐らく彼は依頼を受け、殺人の手助けをすることを生業としているのであろう。

相当手慣れている上に、幇助する際の殺害方法は多岐にわたるため、犯行方法や実際に殺人を行った人間の特定が非常に困難であるとのこと。

更に厄介なのが、殺人幇助をした相手をジェントルマンが殺してしまう事もあるということだ。

依頼主と請負人という関係の中で何かトラブルが起きた結果なのだろうが、その殺害方法は極めて残酷な方法である。

その方法とは、四肢を切断し、目玉と鼻、耳を削ぎ落として机に並べるという常軌を逸したものである。

警察は捜査本部を設置しジェントルマンの逮捕に動いているが、逃げ足が早く未だ逮捕には至っていない。

 

 

 

 

 

 

 

「では皆サマお揃いのようですのデ、通路を解放しまス。どうぞエレベータに乗って下さイ」

モノワニの案内により、俺達は通路に進み続々とエレベーターに乗る。

裁判が………ついに始まる。

俺は一度目を閉じ深く深呼吸をする。

「………絶対殺す。殺してやる」

近くにいた飛鳥がそう呟いたのが聞こえた。

「飛鳥。気持ちは分かるが冷静にな。今までの証拠を元に議論すれば必ず犯人を見つけられる筈だ」

「そんなのはとのお兄さんに言われなくても分かってるよ。………誰が犯人であろうとも容赦しない。………たとえ一緒に捜査したはとのお兄さんが犯人だとしても」

「ああ。肝に銘じておくよ」

そして俺と飛鳥が乗り込むと扉が閉まり、エレベーターが動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金属同士が擦れるような不快な音を立てながら、エレベーターは降下していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も口を開かないため、沈黙がエレベーターを包み込む。

エレベーターの機械音だけが聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレベーターは深く、深く、どこまでも落ちて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ガタンという音と共に扉が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆サマ、ようこそいらっしゃいましタ。どうぞ自分の席へ移動してくださイ」

「なんか………前回と装飾が違うであります」

前回は水色の装飾だったが、今回は紫だ。

「前回は百々海サマのイメージである海を模した色、今回は円城寺サマのイメージである幽霊を模した紫で飾り付けしてありまス」

「本当に悪趣味やな。頭おかしなるわ」

薬師院が吐き捨てるように言う。

「そんなのどうでもいいですよ。装飾が何だろうと僕達がやるべきことは変わらないのですから」

八尋の感情のこもっていない発言。しかしその通りだ。

周りがどうなろうと関係ない。

俺達のやるべきことはただ一つ。

円城寺を殺したクロを突き止めることだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『超高校級のオカルト研究家』円城寺 霊夜。

 

 

 

 

 

 

 

見た目はチャラい、口が悪い、喧嘩腰。

最初のイメージは正直あまり良く無かった。

けど話してみるとアイツは面倒見がよく、冷静に物事を判断できる非常に頼りになる奴だった。

料理も毎日欠かさず美味しい物を作ってくれたし、状況を読み的確に指示を出してくれた時もあった。

俺達の中では特に飛鳥との仲がよく、2人が遊んでいるのを見ると、本当の兄妹のように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな円城寺が……………殺された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この中に円城寺を殺した犯人がいる。

まだ誰が犯人かは分からない。

けど………必ず今回も犯人を見つけなくてはいけない。

でないと俺達に待っているのは………………死だ。

円城寺の弔いのためにも………俺は必ず生き残ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2回目の学級裁判が今、始まろうとしていた。

 

 

 

 

生存者

 

 

1.飛鳥 圭【スリ】

2.天草 京介【神父】

3.綾辻 澪【軍医】

4.円城寺 霊夜【オカルト研究家】

5.風神 雷哉【喧嘩屋】

6.北桜 千尋【ピアニスト】

7.北桜 八尋【作曲家】

8.佐々木 莉央奈【かるたクイーン】

9.写実 真平【カメラマン】

10.司 拓郎【秀才】

11.百々海 真凛【水泳部】

12.乃木 環【???】

13.ハルク ゴンザレス【ボディービルダー】

14.桃林 林檎【グルメリポーター】

15.薬師院 月乃【女将】

16.結城 晴翔【バトミントン部】

17.夢寺 蓮【マジシャン】

18.不知火 椿【くノ一】

 

 

 

 

残り14名

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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