コトダマ一覧
[モノワニファイル②]
被害者は『超高校級のオカルト研究家』円城寺 霊夜。
死体発見場所はB1Fにある体育館。
舞台上で磔にされた状態で発見された。
側頭部に傷あり。
また、首には索状痕がある。
[綾辻の検死結果]
モノワニファイルの情報と大きな差異はなし。
死体の状況から、死亡推定時刻は昨日の夜から夜中にかけてと推測される。
[吉川線]
円城寺の首に吉川線が残されていた。
[側頭部の傷]
円城寺の側頭部に出来た傷。
殴られた、というよりどこかにぶつけたような傷であった。
[綾辻の証言]
アリバイについては、宴会中はほぼずっと宴会場にいたという。
その後一度個室に戻ったが、深夜12時過ぎの停電復旧後に再び宴会場へ戻り、食器を厨房に運び片付けをしていた。
12時半までは1人だったが、その後は食堂に姿を現した桃林と一緒に皿洗いをしていた。片付けは深夜1時頃終了したという。
[外されたワイヤー]
磔にする際に使用されたワイヤーは、ハンドルを回すことで作動する舞台装置から外したもの。
看板を吊るす用のワイヤー、人や照明を吊るす用のワイヤー両方が外されていた。
[血痕の付いたワイヤー]
舞台にワイヤーが放置されていた。
そのワイヤーには、僅かだが血痕が付着していた。
[舞台袖にあるハンドル]
ワイヤーを下ろすための舞台装置。
非常に硬く、相当力のある者でなければ動かすことは出来ない。
[更衣室のログ]
プールの更衣室のログは以下の通り。
男子
11:27 out
11:31 out
21:14 in
女子
11:34 out
11:34 out
11:34 out
[泳げない円城寺]
円城寺が泳げないことを知っているのは、夢寺、飛鳥、不知火、佐々木、写実、千尋の6人。
[薬師院の証言]
宴会中に怪しい動きをした人はいなかったそうだ。
また、停電直後、宴会場から出た人間はいないとのこと。
[佐々木の証言]
18時半頃、地下1階へと向かう天草を見かけたとのこと。
[プールサイドの血痕]
プールサイドに血痕が残されていた。
[使われた手すり]
2階のギャラリー席部分にある手すりが一部だけ使われた形跡があった。
[引っ掛けた痕]
手すりに何か細い糸状のものを引っ掛けた痕があった。
[謎の手紙]
桃林に宛てられた差出人不明の手紙。
桃林はこれを見て体育館に向かい、そこで円城寺の死体を見つけた。
【私達の中にいる殺人狂が動き出した。既にショーは始まっているぞ。体育館に行ってみるといい】
[工具箱]
磔にされた際に利用された釘等が入ってる工具箱。
使用されたのは釘とトンカチ、ペンチの3つのみ。
何故か食堂の厨房で見つかった。
八尋が体育館の舞台袖に隠しておいたらしいが…………。
[厨房に散らばったお菓子の食べカス]
厨房の床にお菓子の食べカスが大量に散らばっていた。
[補充される食べ物]
厨房の食べ物は全て、毎日午後12時に補充されるらしい。
[捨てられた容器]
厨房のゴミ箱に捨てられた初めて見る形状の容器。
空のため中身は不明であり、ラベルも剥がされていた。
しかし、『料』という文字だけが辛うじて読めた状態であった。
[体育館のブレーカー]
体育館にあるブレーカーに繋がれた電線は一度切断された跡があった。
[お菓子の食べカス]
体育館のブレーカーの下にお菓子の食べカスらしきものが落ちていた。
[Mr.ジェントルマンの新聞記事]
天草の部屋にあった殺人鬼である《Mr.ジェントルマン》が一面に載った新聞記事。
【世間を騒がせている殺人鬼《Mr.ジェントルマン》、またもや出没?】
白い仮面を付け、黒いマントを羽織り白い手袋を付けた、まるで怪盗のような姿の殺人鬼、《Mr.ジェントルマン》がまた現れた。夜中に大通りから外れた人気のない道に現れ、男性1人を殺害。その後堂々と駆けつけた警察の前に現れ、中指を立てるなどの挑発行為を行った。そして信じられないことにそこから警察の手を振り切り逃走に成功したのだ。
仮面で素顔を隠しているため正体は未だ不明だが、体格的に男性であると推測される。身長は180cm〜185cmくらいで、細身でスラッとした体型である。が、力が恐ろしく強く、どんな相手も瞬時に叩きのめす戦闘力があると、対峙したことのある警察官は証言している。
そして彼の最大の特徴は、『殺人幇助』を行うことである。
恐らく彼は依頼を受け、殺人の手助けをすることを生業としているのであろう。
相当手慣れている上に、幇助する際の殺害方法は多岐にわたるため、犯行方法や実際に殺人を行った人間の特定が非常に困難であるとのこと。
更に厄介なのが、殺人幇助をした相手をジェントルマンが殺してしまう事もあるということだ。
依頼主と請負人という関係の中で何かトラブルが起きた結果なのだろうが、その殺害方法は極めて残酷な方法である。
その方法とは、四肢を切断し、目玉と鼻、耳を削ぎ落として机に並べるという常軌を逸したものである。
警察は捜査本部を設置しジェントルマンの逮捕に動いているが、逃げ足が早く未だ逮捕には至っていない。
[宴会で出された酒]
宴会に出された飲み物に酒が混ざっていた。
宴会の料理を準備したのは綾辻、円城寺。
宴会の料理を運んだのは結城、桃林、風神、ハルク、千尋。
酒を飲んで酔っ払ったのは風神、不知火、写実、佐々木。
学級裁判 再開!
ジェントルマン「ヒャハハハハハハハ!オレっちこそが殺人鬼【Mr.ジェントルマン】だぜェ!!!」
両手を広げ、高らかに宣言する男。
それは、天草であり、天草ではない人物。
綾辻 澪「まさか…………本当に夢寺様の言う通り…………天草様が【Mr.ジェントルマン】…………!」
写実 真平「あ、天草氏………?本当に天草氏なのでありますか………?」
ジェントルマン「あァ?だからオレっちはジェントルマンだって言ってんだろォ?話聞いてなかっのたかメガネオタククンよォ?」
写実 真平「め、メガネオタクって………」
夢寺 蓮「だから言っただろ。こいつは天草であり天草ではない。二重人格なんだよ天草は」
ジェントルマン「そうそう、流石は夢寺パイセン!オレっちの唯一の友なだけあるッス!」
夢寺 蓮「誰が友だ。それにその『パイセン』って呼び方はやめろ」
しかし、まさか本当にこいつが殺人鬼ジェントルマンだったとは。
未だに目の前で起きてる現実を受け入れられていない自分がいる。
当然殺人鬼に会うのも初めてだし、二重人格の人間を見るのも初めてだ。
いきなり受け入れろと言われる方が難しい。
飛鳥 圭「…………ねえ、じゃあもう決まりだよね?」
全員が驚き呆然としている中、飛鳥がジェントルマンを睨む。
北桜 千尋「きまりって、なにが?」
飛鳥 圭「ユーレイのお兄さんを殺した犯人だよ。この殺人鬼がユーレイのお兄さんを殺したんだ」
怒りを滲ませながらジェントルマンを指差す。
ジェントルマン「はァ?おいおいおチビちゃんよォ!何だかよく知らねえがいきなりオレっちを犯人扱いとは失礼だと思わねえのかァ??」
飛鳥 圭「黙れ。次おチビちゃんっていったら殺すから。…………記憶がないとかいう意味不明の言い訳しかしないし、アリバイもない。おまけに新聞の一面になるほど有名な殺人鬼。どう考えても犯人でしょ」
桃林 林檎「そ、そうだす!!きっと我慢出来ずに殺したんだす!だからもうこの人が犯人で決まりだす!!」
怯えた桃林がヒステリックにそう叫ぶ。
ハルク「スリサンの言う通りデース!きっとこの人がオカルト研究家サンを殺したんデース!」
飛鳥の発言を筆頭に、続々とジェントルマンが犯人ではないかという声が挙がる。
確かにあいつは怪しい。
犯人だと疑うには十分すぎる理由があるからだ。
けど……………………。
夢寺 蓮「待ってくれ。そいつが犯人だと決めつけるの早いと思う。もう少し議論してみないか?」
俺はそう提案する。
まだ投票には早い。
何故なら…………話していないことがいくつも残っているからだ。
桃林 林檎「ど、どうしてだす!?もう犯人は決まってるし時間の無駄だす!」
夢寺 蓮「まだ分かっていない謎がいくつもある。それを放置したまま投票するのは危険だ」
北桜 八尋「夢寺さんに全面的に賛成ですね。僕達はまだ話し合う必要があります」
すると意外なことに、八尋が真っ先に俺の意見に賛成してくれた。
桃林 林檎「で、でも…………そんな面倒な…………」
北桜 八尋「間違えたら僕達が死ぬんですよ?なら面倒でも慎重かつ丁寧に議論していくのが普通だと思うのですが?………というか、前回の裁判でも似たような話しましたよね?それとも何ですか?貴女が犯人だからとっとと投票に移りたいとか思っているんですか?」
桃林 林檎「うっ…………」
八尋に立て続けにそう言われ、桃林は黙る。
風神 雷哉「ま、蓮がそう言うなら間違いねーよ。続きの議論しよーぜ」
不知火 椿「これは命を賭けた戦い。慎重すぎるくらいが丁度いいでござる」
雷哉と不知火も頷いている。
雷哉に関しては何も考えずに適当に言ってるだけだと思うが………。
夢寺 蓮「飛鳥もそれでいいか?」
飛鳥 圭「…………」
ジェントルマン「流石は夢寺パイセン!!!パイセンは命の恩人ッスよォ!」
夢寺 蓮「だからパイセンはやめろ。それに俺はお前をまだ疑ってるからな」
ジェントルマン「そ、そんなァ!!」
風神 雷哉「蓮、なんかお前随分と慕われてんだな………」
夢寺 蓮「憐れむような目で見るのはやめろ。俺も何がある何だか分かんないんだよ」
こいつには聞きたいことが山ほどあるが………それは後にしよう。
薬師院 月乃「うちもまだ議論することには賛成やけど………じゃあ次は何を議題にするかっちゅう話やね」
結城 晴翔「そうだね………。次は『殺害方法』について議論してみようか」
佐々木 莉央奈「確かに、首を絞められたことによる窒息死っていうのは分かりましたけど、詳細についてはまだ不明でしたわね」
円城寺を殺害した方法………。
よし、これを明らかにしていくぞ。
議論開始!
結城 晴翔「円城寺君がどうやって絞殺されたか考えてみよう」
ジェントルマン「おいおい絞殺ってひでえことしやがるなァ!」
風神 雷哉「殺人鬼のテメーが言うんじゃねー!!」
写実 真平「絞殺というと………やはり[ロープ]か何かで絞められたのでありますか?」
佐々木 莉央奈「でもモノワニファイルの写真を見ると、もう少し細い何かで絞められたように見えますわよ。[ワイヤー]か何かで絞められたのでなくって?」
ハルク「もしかしたら[素手]で首を絞められたのかもしれまセーン!」
北桜 八尋「もしそうなら、一番力のあるハルクさんが最有力容疑者候補ですね」
ハルク「ノー!?ワターシ犯人じゃありまセーン!!信じて下サーイ!!」
[ワイヤー]← [血痕の付いたワイヤー]
それに賛成だ!
佐々木 莉央奈「うわびっくりした!?急に大きな声を出さないで下さいませ!?」
驚きの表情で文句を言う佐々木。
夢寺 蓮「悪い。………佐々木の言う通り、円城寺はワイヤーで首を絞められて殺されたんだ」
佐々木 莉央奈「だから『莉央奈』と呼べと言ってるでしょう!アナタいつになったら苗字で呼ぶのやめるんですの!!」
夢寺 蓮「そしてワイヤーがあった場所なんだが、体育館の舞台に放置されていた。そのワイヤーには僅かだが血が付着していたから、円城寺の殺害の際に使われたと考えていいと思う」
佐々木 莉央奈「無視しないでくださいませ!!ムキーッ!!」
写実 真平「流石に不憫でありますなぁ………」
顔を真っ赤にして怒る佐々木を無視して俺は説明する。
結城 晴翔「ワイヤーか………。けどそんな物、どこから取ってきたんだろう?初めから舞台にあったわけじゃないよね?」
不知火 椿「拙者の記憶でも、最初きた時は舞台にそのような物は無かったでごさる」
ワイヤーの出どころか。
それもハッキリさせておいた方がよさそうだな。
コトダマ提示
[外されたワイヤー]
磔にする際に使用されたワイヤーは、ハンドルを回すことで作動する舞台装置から外したもの。
看板を吊るす用のワイヤー、人や照明を吊るす用のワイヤー両方が外されていた。
これだ!
夢寺 蓮「結城の言う通り、ワイヤーは元から舞台に置いてあったわけじゃない。舞台装置に使用されているワイヤーを外して利用したんだ」
風神 雷哉「舞台装置ぃ?そんなのあったっけか?」
夢寺 蓮「探索結果の報告の時言っただろ?看板を吊るす用のワイヤーと人や照明を吊るす用のワイヤーが二つあって、それを操作する舞台装置が舞台袖にあるって」
風神 雷哉「あーそんなこと言ってたな!すっかり忘れてたぜ!ガハハハ!!」
笑い事じゃねえよ。
ジェントルマン「ハッハッハッ!!いいじゃねぇかァ!身近にあるものを使って殺してるのは大きなプラスポイントだぜェ!やっぱ殺人はスマートにやらねえとなァ!」
薬師院 月乃「あんたは黙っといて。………でも夢寺はん。この舞台装置って確か………」
夢寺 蓮「………ああ、分かってる」
俺は薬師院の言いたいことを察した。
この舞台装置には大きな特徴がある。
それは………。
コトダマ提示
[舞台袖にあるハンドル]
ワイヤーを下ろすための舞台装置。
非常に硬く、相当力のある者でなければ動かすことは出来ない。
これだ!
夢寺 蓮「あの舞台装置は、作動させるのにハンドルを回す必要がある。だが、相当力がないと回すことが出来ないんだ」
北桜 千尋「えー!じゃあつまり、ちからもちのひとじゃないとまわせないってこと?」
薬師院 月乃「その通りや。ちなみにうちもやってみたんやけどびくともしなかったで。だから女子には無理なんとちがうんかな」
桃林 林檎「ということは………犯人は男子だす!!」
夢寺 蓮「ちなみに俺と八尋もやってみたんだが、八尋は無理で俺がギリギリ回せるくらいだった。だから俺より細身の結城とかには難しいと思う」
結城 晴翔「そう、だね………。僕も正直力はあまり無いほうだから」
写実 真平「某も絶対無理であります!このだらしない体型で力があると思うでありますか!」
風神 雷哉「誇らしげに言うなよ………」
つまり舞台装置を動かすことが出来るのは、ハルクと雷哉。
そして………。
夢寺 蓮「ジェントルマン。お前も出来るよな?」
ジェントルマン「勿論ッス!舞台装置ってのが何か知らないッスけど、オレっち超力強いんで多分余裕ッスよ!」
何故かニヤニヤしているジェントルマンに対してそう質問すると、あっさり自分も可能であることを認めた。
写実 真平「え?でも天草氏………じゃなくてジェントルマン氏は長身だけど細身であります。なら力はそんなに無いんじゃ………」
夢寺 蓮「理由は後で説明する。とにかく、ジェントルマンにも舞台装置を動かす事は可能な筈だ」
飛鳥 圭「ほらやっぱり。こいつしか犯人はあり得ないよ」
それに対して飛鳥はやはりジェントルマンが犯人だと主張する。
綾辻 澪「ですが、風神様やハルク様も可能みたいですし………」
飛鳥 圭「けど一番怪しいのはこいつでしょ?ならこいつで決まりだよ」
夢寺 蓮「待て飛鳥。確かにジェントルマンも舞台装置を動かせるとは言ったが、犯人だと言ったわけじゃない。だから…………」
「その推理、盗んじゃうよ」
飛鳥「ねえ、どうしてそこまで殺人鬼を庇おうとするの?どう見てもこいつが怪しいじゃん。邪魔しないでよ。もう少しでユーレイのお兄さんを殺したクソヤローに辿り着けるんだからさ」
夢寺 蓮「それは………」
飛鳥 圭「もういい。ボク言ったよね?たとえはとのお兄さんでもボクの邪魔をするようなら容赦しないって。ボクがはとのお兄さんの目覚まさせてあげる」
夢寺 蓮「………そうか。なら俺もお前に納得してもらえるまで主張するしかないな」
反論ショーダウン 開始!
飛鳥 圭「だからさー、何度も言ってるじゃん」
飛鳥 圭「犯人はどう考えてそこのイカレ殺人鬼しかいないんだってー」
飛鳥 圭「何でいちいちそいつの事庇うのー?これって立派な裁判の遅延行為だよねー?はとのお兄さんって馬鹿なのー?」
発展!
夢寺 蓮「別に庇うつもりはない。だが、俺は現時点でジェントルマンが犯人だとは思えないだけだ。お前も読んだあの新聞を思い出せばその理由も分かる筈だぞ」
飛鳥 圭「はー?あの新聞ならボクも読んだしー。ジェントルマンの特徴がちゃんと書いてあったじゃーん」
飛鳥 圭「それがアーメンのお兄さんの外見と一致したんでしょー?だからそいつが殺人鬼って確定したわけじゃん」
飛鳥 圭「それに言動がおかしいし、昨日のアリバイがないから停電も起こせたし、凶器のワイヤーも手に入れる事が出来るんでしょー?全部の条件当てはまってるじゃーん。そいつがユーレイのお兄さんの[首を絞めて殺した]に決まってるよー」
[首を絞めて殺した]←[Mr.ジェントルマンの新聞記事]
その言葉、断ち切る!
夢寺 蓮「新聞記事の下の方を見てくれ。『殺人幇助をした相手をジェントルマンが殺してしまう事もあるということだ』。そして『その方法とは、四肢を切断し、目玉と鼻、耳を削ぎ落として机に並べるという常軌を逸したものである』って書いてあるだろ?」
飛鳥 圭「だから何ー?そんなの今回の事件に関係………あ」
飛鳥も自分で読んで気がついてたようだ。
夢寺 蓮「ジェントルマンが
桃林 林檎「そ、そんなの偶々今回殺害方法を変えただけかもしれないだす!その殺人鬼が犯人じゃない理由にはならないだす!!」
ジェントルマン「はァ………。なんも分かっちゃいねえなァ」
桃林の反論に対し、ジェントルマンは大きくため息をつく。
ジェントルマン「オレっちはこれでも殺人のプロなんだぜェ?殺人にも殺人幇助にもちゃんとポリシーってもんがあんだよォ。オレっちは殺人幇助を専門とした殺し屋で依頼主から受けた依頼は必ず遂行するんだけどよォ、基本的にオレっちは依頼以外で殺人を犯すことはしねえんだァ。けどよォ、そんな心優しいオレっちでも一つだけ例外があるんだァ。オレっちに殺人を依頼する奴は大抵イカレた奴ばっかりでよォ、ターゲットを殺した後口封じのためにオレっちも殺そうとする輩がいるんだァ。そういう奴に対してはオレっちは制裁のためにより残酷で惨めな方法で殺すんだけどよォ、そん時は必ず四肢を切断するって決めてんだァ。つまりオレっち自身が人を殺す時は四肢切断しかあり得ねえんだよォ。分かったかこのミートボール女」
桃林 林檎「だ、誰がミートボールだすか!!!」
綾辻 澪「つまりジェントルマン様は円城寺様を殺害していないと、ということでしょうか?」
ジェントルマン「ま、そういうことだァ」
殺人鬼にもしっかり『様』を付ける綾辻に対してジェントルマンは親指を立てる。
夢寺 蓮「確かにジェントルマンは怪しい。それは間違いない」
俺は全員を見渡して話し始める。
ジェントルマン「そんなァ!夢寺パイセン酷いッスよォ!!」
夢寺 蓮「だが、新聞記事の件が真実だとすると、今回の事件で少なくともジェントルマンはクロじゃない。しかもさっきジェントルマンの口からあんなにも具体的に殺害方法の証言があったんだ。尚更俺はジェントルマンをクロとして投票出来ない。………納得してくれたか?飛鳥」
飛鳥 圭「………………………ごめん。ボクが間違ってたよ」
飛鳥は珍しくしょげた様子で謝ってきた。
佐々木 莉央奈「飛鳥サン?やはりアナタ今回変ですわよ?いくら仲良しの円城寺サンが殺されたからって焦りすぎじゃありませんの?」
結城 晴翔「悔しい気持ちはよく分かるよ。僕も同じ気持ちだからね。でもこの裁判は、誤った答え一つで僕達の命が失われる危険なものだよ。だからみんなで協力して丁寧に議論していこう」
結城が優しくフォローする。
飛鳥は黙って頷いた。
北桜 八尋「ですが、ジェントルマンが犯人ではないとなると、誰が犯人になるのですか?もうだいぶ議論を重ねてきましたが、一方に犯人を絞り込めていませんよ?」
八尋が議論が進んでいないことに対する苛立ちを見せる。
薬師院 月乃「そうやなぁ。それにまだ重大な謎が残ってるで」
北桜 千尋「なぞ?なぞってなあに?」
薬師院 月乃「『
薬師院に問いかけられ、俺は思い出す。
さっき捜査中に話したこと。それは…………。
『プールの利用記録』の謎とは?
1.利用時間がおかしい
2.入退出の記録がない
3.特におかしなところはない
→2.入退室の記録がない
これだ!
夢寺 蓮「犯人の入退室の記録、そして円城寺の退出の記録がないってことだよな?」
薬師院 月乃「それやそれ。うちそれが気になってしょうがないんよ」
うんうんと深く頷く薬師院。
ハルク「記録がないのが問題なんですカ?」
佐々木 莉央奈「問題おおありですわよ。円城寺サンはプールサイドで襲われたのは間違いないのはさっき話しましたわよね?なら犯人は間違いなくプールに入った筈ですわ。それなら普通は必ずプールのログに入室が記録されるのに、今回はそれがないってことですわよ?理解しましたかしら?」
ハルク「ワーオ!それはなんか大問題デス!」
写実 真平「絶対理解してない反応であります………」
結城 晴翔「それに、退出の記録がないのもおかしいよね。円城寺君は体育館で発見されてるわけだから、必ずプールから出て体育館に移動した筈なんだけど、退出の記録はないわけだから、円城寺君はプールから出ていないことになっている………」
綾辻 澪「綺麗に矛盾していますね。これはどういう事なのでしょうか………?」
風神 雷哉「あー、もうわけ分かんねー!頭パンクしそうだぜ!」
入退室の記録を取らずにプールに出入りする………。
そんな事が可能なのか………?
不知火 椿「………………閃いたでござる」
すると今まで黙っていた不知火が静かに呟いた。
夢寺 蓮「不知火?」
不知火 椿「拙者、今の今までずっと考えていたでござる。プールの出入口以外からプールに出入りすることが可能なのか。ろぐに記録されずに出入りすることが可能なのか。………そうしたら拙者、一つ名案を思いついたでこざる」
写実 真平「ほ、本当でありますか!?それはどんな方法でありますか!!」
不知火 椿「拙者、説明するのが大の苦手でござるからうまく言えるか分からないでござる。故に夢寺殿。拙者のさぽーとをお願いしたいでござる」
夢寺 蓮「お、俺か?まあ俺に出来る事ならやるが………」
不知火 椿「かたじけない。では拙者が思いついた方法………。それは『
風神 雷哉「はぁ?何言ってんだオメー?」
雷哉を始め、ほぼ全員が困惑の表情を浮かべる。ちなみに俺もそうだ。
不知火 椿「順番に説明するでござる。夢寺殿、それに飛鳥殿。拙者がプールの2階で見つけた証拠を覚えているでござるか?」
飛鳥 圭「………ああ、あれねー。ボク覚えてるよー」
立ち直った飛鳥がそう発言する。
それは確か………。
コトダマ提示
[使われた手すり]
2階のギャラリー席部分にある手すりが一部だけ使われた形跡があった。
[引っ掛けた痕]
手すりに何か細い糸状のものを引っ掛けた痕があった。
これだ!
夢寺 蓮「2階のギャラリー席の手すりに使われた形跡があったんだよな?」
飛鳥 圭「それに手すりに何か引っ掛けた痕があったんだよねー?」
俺と飛鳥の回答に不知火は頷く。
不知火 椿「然り。つまりその部分を誰かが使用したということでござる。そしてここで重要な事実があるでござる。………………
北桜 八尋「………!?そうか、そういうことでしたか…………」
不知火の言葉に八尋が反応した。その表情はやっと分かったといった顔をしている。
北桜 千尋「やひろ?なにかわかったの???」
北桜 八尋「…………不知火さんの言いたいことが分かりましたよ。犯人は
不知火 椿「その通りでござる。流石は八尋殿でござる」
八尋の指摘に対して真顔で肯定する不知火。
ハルク「どういうことデスカ???ワターシにも分かりやすく説明してくだサイ!!」
不知火 椿「結論を言うとこうでござる。まず犯人は体育館の2階からプールの2階に侵入するでござる。この方法ならプール入口のログには入室の記録はされないでござる。次に2階の手すりにワイヤーを括り付けておいて、ギャラリー席から1階に飛び降り、既に1階から入室している円城寺殿を襲うでござる。そして意識のない円城寺殿と自分の体にワイヤーを括り付け、崖登りのように1階から2階へよじ登るでござる。最後に円城寺殿を背負って体育館の2階へ脱出すれば、退出の記録も残らないでござる。これなら先程の疑問も解消されるのではござらんか?」
ハルク「壁を登ったんデスカ???凄いデース!まるで忍者サンみたいデース!」
北桜 千尋「すごいね!つばきおてがらだよ!!」
不知火 椿「いやいや、大した事はないでござる」
結城 晴翔「ちょ、ちょっと待ってよ!?」
不知火が推理を披露し、ハルクと千尋が褒めている時だった。
結城が慌てて口を挟む。
結城 晴翔「確かに推理としては面白いけど、少し無理があるんじゃないかな?まず意識のない円城寺君と一緒に2階によじ登るって言ったけど、そんなのどうやってやるの?仮に円城寺君を背負ってよじ登るのだとすると、そんなの普通に人間には無理だよ」
薬師院 月乃「円城寺はんは結構タッパがあったもんなぁ。そんな体の大きな円城寺はんを背負ってよじ登るなんて、よほどの超人やないと出来ないんちゃうん?」
パスポートの個人データを見ると、円城寺の身長は184cm、体重は72kgとなっている。
70kgの重りを背負ってよじ登る?
俺にはとても無理だ。
結城 晴翔「それに不知火さんの推理だと、ワイヤーを命綱にしてボルダリングみたいに壁を登っていったってことだよね?」
不知火 椿「その『ぼるだりんぐ』というのは存ぜぬが、壁を登るという認識に誤りはないでござる」
結城 晴翔「つまりワイヤーを握りながら登ったわけだけど、そんな事したら手がズタズタになっちゃうんじゃないかな?」
綾辻 澪「確かに………素手で掴んだら大変なことになりますね」
不知火 椿「……確かに一理あるでござる」
不知火はその事実に気が付かなかったのか、自身の手を改めて見つめる。
不知火 椿「どうやら拙者の推理にはだいぶ穴があるようでござるな。素直に撤回させてもらうでござる。また別の可能性を考えなくては………」
飛鳥 圭「えー?そんなことないと思うけどなー。忍者のお姉さんの推理、あながち間違ってないと思うけどー」
場が今一度議論し直そうという雰囲気になった時だった。
飛鳥が笑みを浮かべながらそう発言した。
風神 雷哉「どーいう意味だよ?」
飛鳥 圭「意味も何も、ボクは忍者のお姉さんの意見に賛成ってだけー。確かに
佐々木 莉央奈「
飛鳥 圭「そうそうー。例えば1階から2階に上がる時、2階にもう1人いたら、上から引っ張って手伝うことが出来るでしょー?他にも1人じゃ無理でも2人なら出来ることなんていっぱいあるよねー?」
北桜 八尋「共犯、ですか………モノワニ。仮に共犯者がいた場合、脱出出来るのは2人になるのですか?」
モノワニ「いいエ。脱出出来るのはあくまで殺人を実行した人1人のみでス」
桃林 林檎「な、なら殺人を手伝っても何の得もないってことじゃないだすか!なら共犯なんてあり得ないだす!」
写実 真平「その通りであります!人殺しを手伝っても結局出られないのなら意味ないであります!」
飛鳥 圭「どうかなー?自分のことなんかどうでもいいって人この中にいるかもしれないよー」
風神 雷哉「オメーまた適当なこと言って混乱させようとしてんじゃねーのか!」
ジェントルマン「ヒャッハー!!!なんかよく分かんねぇが面白くなってきたじゃねぇかァ!!!このカオスな展開、オレっちの大好物だぜェ!!」
風神 雷哉「オメーは黙ってろっての!!」
再び混乱する裁判場。
俺はそんな中、頭の中でもう一度今までの議論で分かったことを整理していた。
円城寺は停電後、プールへと向かい、21時14分に1階の入口からプールの男子更衣室へと入室した。
一方犯人は、入室のログが残ってないにも関わらずプールへと侵入、円城寺を襲った。
そして円城寺と一緒に退出のログを残すことなく体育館へと移動した。
しかし、ログを残すことなく1階の入口からプールに入ることは不可能だ。
とすれば、プールに入れる場所は1階の入口以外だったらただ1つ。
隣にある体育館の2階から、ギャラリー席になっているプールの2階に移動するしかない。
もしそうなのであれば、不知火の推理も正しいのではないか。
実際手すりには何かを引っ掛けた痕があったし、手すりが使用された形跡もある。
手すりにワイヤーを括り付け、2階から1階へ飛び降りる。
そして円城寺を襲い、気絶、もしくは死亡した円城寺の体と自身の体にもワイヤーを付け、命綱の代わりとしてクライミングの要領で1階の壁をよじ登る。
そしてまた体育館の2階へ移動する。
これなら犯人のプールへの入退室の記録がないのも納得だし、円城寺がプールから体育館に移動したことも説明がつく。
しかし、結城がさっき言ったような問題もあるし、飛鳥の共犯者という話も、共犯者は一緒に脱出出来ないとなれば難しそうだ。
ん?
待てよ?
共犯者?
他の人の殺人を……………………
夢寺 蓮「…………分かった」
北桜 千尋「…………れん?どうしたの?」
俺が小さくそう呟く。
隣にいる千尋には聞こえたのか、不思議そうにこちらを見ている。
夢寺 蓮「分かったかもしれない。プールの謎が」
北桜 千尋「ほんとう!?やっぱれんはすごいね!!」
夢寺 蓮「だが、確証はない。それに犯人もなんとなく予想はついてるが………あってるかどうか自信がない………」
北桜 千尋「だいじょうぶだよ!!」
すると何故か千尋が俺の手を繰り返し握ってきた。
夢寺 蓮「千尋?」
北桜 千尋「ちひろばかだからわかんないけど、きっとれんのだしたこたえならだいじょうぶ!ぜんりょくでぶつかればはんにんみつけられるよ!」
どうやら俺を励ましてくれてるみたいだ。
夢寺 蓮「………そうだな。びびってたら始まんないもんな。ありがとう千尋。少し勇気が出たよ」
北桜 千尋「どうしたしまして!!」
ニコニコ笑う千尋にお礼を言うと俺は深く息を吸い………
夢寺 蓮「みんな聞いてくれ。ひとまず、プールの謎は解けた」
風神 雷哉「マジかよ!?待ってたぜ蓮!!やっぱ蓮しか頼れる奴はいねーよ!」
キラキラして目でこちらを見てくる雷哉。
調子のいい奴だ。
結城 晴翔「謎は解けたということは………犯人が分かったのかい?」
夢寺 蓮「いや、違う。まず結論から言うと………この事件には共犯者がいる。犯人の手助けをした人物がこの中にいるんだ」
佐々木 莉央奈「けど、共犯者はクロが勝ったとしても脱出出来ないのでしょう?なら手伝う意味なんてありませんわよ?」
佐々木がそう追求してくる。それに対して俺はゆっくり首を振った。
夢寺 蓮「違う。共犯者はここから出ようなんて思いっていなかったんだ。ただ
佐々木 莉央奈「ふぇ!?そ、そんな事ってあるんですの!?」
佐々木は驚き目を見開いている。
そして………俺の言葉で何人かは既に察しがついたようだ。
この事件の共犯者。
その正体は……………。
怪しい人物を指定しろ!
夢寺 蓮
桃林 林檎
風神 雷哉
薬師院 月乃
百々海 真凛
写実 真平
結城 晴翔
乃木 環
司 拓郎
佐々木 莉央奈
天草 京介/Mr.ジェントルマン
飛鳥 圭
ハルク ゴンザレス
不知火 椿
北桜 八尋
綾辻 澪
円城寺 霊夜
北桜 千尋
夢寺 蓮「…………お前だ、ジェントルマン」
ジェントルマン「オレっちッスか!?」
俺が指差したその男は自らを指差し驚いている。
ジェントルマン「酷いッスよパイセン〜!いくらオレっちが殺人鬼だからって可愛い舎弟を疑うなんて…………」
夢寺 蓮「お前が共犯者だと考える根拠は3つある。昨日1日中アリバイがないこと。尋常ではない力の持ち主であること、そしてお前が『殺人幇助』を生業としていることだ」
ジェントルマン「…………」
ジェントルマンの顔から笑みが消える。
夢寺 蓮「1つずつ理由を説明していくぞ。まずアリバイがないことについてだが、今回の事件では体育館の舞台装置のワイヤーが使われていた。当然、ワイヤーを使うには舞台装置から外さなければならない。だが、21時過ぎの停電後の真っ暗の中でそのような作業が出来るとは思えない。となると必然的に停電前、つまり朝から夜の宴会の間にワイヤーが外されたと考えるべきだ。しかし昨日の午後は俺達は体育館でバスケをしていた。その時は確かにワイヤーはちゃんとあった筈だ。つまり…………昨日の昼過ぎから停電が起きる夜の9時前までにワイヤー外されたと考えるべきなんだよ。その時アリバイがなかったうちの1人がお前だ」
ジェントルマン「………………」
夢寺 蓮「2つ目はお前の持つ力だ。新聞記事には『力が恐ろしく強く』と記載がある。つまりお前は見た目以上に力があり、重たい物を持ち上げるなんてことも軽々出来てしまうということだ。…………例えば円城寺を背負った犯人とかな」
ジェントルマン「……………………」
夢寺 蓮「そうするとさっき話していた『共犯者はプールの2階で待ち、壁をよじ登る円城寺を背負った犯人を引き上げることを手伝った』というシチュエーションもお前であれば可能な筈だ。そして3つ目の『殺人幇助』。これはお前自身もさっき証言していたことだ。お前は依頼を受けたら必ず遂行する殺人幇助のプロ。殺害方法からお前は確かにクロじゃないが、共犯者の可能性は大きくある。お前は『依頼を受け』、共犯者になったんだ。お前がここを出たいかどうかは関係ない」
ジェントルマン「…………………」
夢寺 蓮「どうだ。何か反論はあるか?」
俺が喋っている間一言も発しなかったジェントルマン。
今も黙ってじっと俺を見ている。
そして…………
ジェントルマン「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
ジェントルマン「大正解ィィィィィ!!!流石は夢寺パイセンッスねェェェェェェ!!!」
口を大きく開け発狂した。
桃林 林檎「ひいぃ!?なんなんだすこいつは………」
薬師院 月乃「見事なまでにイカれてるなぁ。こんな奴が天草はんと同じ体にいるなんて信じられへんわ」
ハルク「けど、今自分が共犯者って認めマシタヨ!」
綾辻 澪「では、やはりジェントルマン様が共犯者………!」
ジェントルマン「正解に辿り着いたご褒美としてお前らにも少し話してやるかァ。夢寺パイセンの言う通り、オレっちは昨日の朝依頼を受けたんだァ、『短気野郎を殺すのを手伝ってくれ』ってなァ。だからオレっちはそれを『殺人幇助の依頼』として受けたわけだァ。ヒャハハハハ!」
飛鳥 圭「短気野郎とか言うな………!」
写実 真平「飛鳥氏、今は話を聞くであります!」
両手を広げ下品な笑い声を上げるジェントルマンは俺達を見渡しながら話を続ける。
ジェントルマン「依頼人の依頼内容は『首を絞めて殺した痕、磔にしたい』だったかァ。おかげでだいぶ苦労したらぜェ。朝お前らの目を盗んで体育館に行ってワイヤー調達して、磔用の看板も作って………。知ってるかァ?依頼主の希望を叶えるのも大変なんだぜェ?」
佐々木 莉央奈「ということは、停電もアナタの仕業ですの?」
ジェントルマン「いーや、停電はオレっちはノータッチだぜェ。命に誓ってもオレっちは停電を起こしてないって言い切れるぜェ」
つまり、停電は犯人自身が起こしたことか。
北桜 八尋「貴方の苦労などどうでもいいです。それより重要なのは…………貴方が依頼主、つまり
ジェントルマン「そりゃそうだァ。わざわざオレっちを訪ねてまで依頼してきたんだからなァ」
飛鳥 圭「教えろ!!誰が犯人なんだよ!!!」
取り乱した飛鳥が席から身を乗り出している。
それに対しジェントルマンは……………。
ジェントルマン「なーに言ってんだおチビちゃん。教えるわけねぇだろうがァ」
呆れた顔で返答した。
飛鳥 圭「はぁ………?」
ジェントルマン「オレっちはこれでも依頼主の個人情報は絶対漏らさないってポリシーがあるんだァ。だからオレっちは死んでも依頼主のことは吐かないぜェ」
風神 雷哉「な、何言ってんだオメー!?クロが逃げ切ったらオメーも死ぬんだぞ!?」
ジェントルマン「そんなの関係ねえよヤンキー野郎。オレっちはオレっちの信念を貫き通す。たとえそれが自分の死に繋がったとしてもだァ。それにオレっちは別に死は怖くねぇしなァ」
風神 雷哉「が、ガチで頭おかしいぜコイツ………」
ジェントルマンの態度にドン引きする雷哉。
飛鳥 圭「この野郎………!だったら今すぐ拷問でもして………」
ジェントルマン「おうおうやってみろォ。オレっち、口の固さには自信があるんだァ。どんなことされても言わねえぞォ」
夢寺 蓮「待ってくれ。そんな事しなくてもいい」
俺は今にも飛びかかりそうな飛鳥にそう声をかける。
夢寺 蓮「犯人の目星はもうついてる」
飛鳥 圭「…………え?」
夢寺 蓮「犯人を言う前にみんなに1つ聞きたい。………もし暗闇で急に何か作業をしなければならなくなった時、どうすればいいと思う?」
犯人を指名する前に、最後の確認として俺は1つ疑問を投げかけることにした。
風神 雷哉「んだよ急に?んなの明かりを付ければいいじゃねーか」
夢寺 蓮「明かりが無い場合は?」
結城 晴翔「なるほど。停電で明かりが付かない時はどうすればいいかってことだね。そうだね………例えば視覚以外に頼るとかどうかな?」
北桜 八尋「なら触覚でしょう。触って確かめながら作業が出来ますから」
北桜 千尋「みみでききながらとか?」
佐々木 莉央奈「作業という面では微妙ですが、嗅覚も一応判断基準にはなりますわね」
不知火 椿「拙者の里では、暗闇で気配を察知する力を習ったでござる。しかし中々難易度の高い技である故、拙者もまだ完全には習得してないでござる………」
ハルク「ピカピカ光る物を置いておけばいいんデス!真っ暗でもすぐ分かりますヨー!!」
薬師院 月乃「成程なぁ。確かに夜光塗料みたいな目印を塗っておけば真っ暗でも分かりやすいかもしれへんな」
写実 真平「アニメやドラマの推理モノでよく見るやつでありますな」
夢寺 蓮「みんなありがとう。これでハッキリした。犯人は………あいつしかいない」
風神 雷哉「お?今ので分かったのかよ?」
夢寺 蓮「ああ」
円城寺がプールに来た時、停電で真っ暗だった筈だ。
数メートル先すら見えないのに、どのようにして犯人は暗闇の中で円城寺を襲ったのだろうか。
パッと思いつく方法は、標的である円城寺に何か暗闇でも分かる目印を付けておくことだ。
夜光塗料でも何でもいい。
とにかく犯人は円城寺の服、もしくは円城寺の肌に対して暗闇でも分かる何かを施した筈だ。
停電前に円城寺に対して細工…………。
停電前、円城寺の身に何が起きていた?
円城寺はあの時、ずぶ濡れだった。
その原因って…………………。
怪しい人物を指定しろ!
夢寺 蓮
桃林 林檎
風神 雷哉
薬師院 月乃
百々海 真凛
写実 真平
結城 晴翔
乃木 環
司 拓郎
佐々木 莉央奈
天草 京介/Mr.ジェントルマン
飛鳥 圭
ハルク ゴンザレス
不知火 椿
北桜 八尋
綾辻 澪
円城寺 霊夜
北桜 千尋
夢寺 蓮「お前が犯人なんじゃないか?」
夢寺 蓮「桃林」
桃林 林檎「なっ!?」
自らの名前を呼ばれた桃林はビクッとその巨体を震わせた。
桃林 林檎「ど、どうしてわ、ワタシが犯人なんだすかっ!?頭おかしいんじゃないだすか!!」
結城 晴翔「夢寺君、それはあんまりだよ。彼女が犯人なわけないじゃないか」
最近では一番桃林と仲良くしてきた結城が桃林を庇う。
写実 真平「夢寺氏の言うことを全く信じてないわけではないでありますが……臆病な桃林氏が人を殺すとは到底思えないであります」
風神 雷哉「確かにそれはそうだよなー。こんなチキンに人殺しが出来るとは思えなねーな。なあ蓮、本当に桃林が犯人なのかよ?」
ハルク「ワターシ、グルメリポーターサンが犯人とは思えマセーン!」
桃林 林檎「そ、そうだす!!こんなに臆病なワタシに人なんか殺せないだす!早くさっきの発言を撤回するだす!そして謝るだす!!」
予想以上に自身を擁護する声が多かったからか、さっきより強気に桃林が俺を責め立てる。
北桜 八尋「貴方達は黙って話を聞くことも出来ないんですか?夢寺さんは根拠もなく犯人を名指しする人ではないことは、前回の裁判でよく分かっていることじゃないですか。なら騒ぎ立てる前に彼の話を聞くべきじゃないですか?」
すると意外にも八尋が援護射撃をしてくれた。
八尋の言葉で裁判場が静まり返る。
夢寺 蓮「悪い、八尋。助かった」
北桜 八尋「謝ってる暇があったら話の続きをしてください。もううんざりなんですよ、こんな裁判…………」
盛大にため息をつく八尋に対し、俺は深く頷くと、全員を改めて見渡す。
夢寺 蓮「八尋の言う通り、俺は適当に犯人が桃林だと言ったわけじゃない。ちゃんと根拠がある」
桃林 林檎「そ、そんなの無いだす!!」
叫ぶ桃林を無視し、俺はとある人物を見ながら口を開く。
夢寺 蓮「まず考えたのは、『ターゲットである円城寺を暗闇の中、どのようにして襲ったか』についてだ。さっき俺は『暗闇の中どのように作業するか』をみんなに聞いたよな?あれは暗闇で他人を認識する方法がないか知りたかったんだ」
綾辻 澪「暗闇………そ、そうです!確かに円城寺様がプールに入られた21時14分頃は既に停電で全館真っ暗でした!」
北桜 千尋「ほんとだ!まっくらなられいやがどこにいるかわかんないよ!」
佐々木 莉央奈「それで先程のような質問をしたのですわね。それで?さっきの会話の中に答えはあったんですの?」
夢寺 蓮「ああ。恐らく犯人は『夜光塗料』を使用した筈だ。夜光塗料を円城寺に付けておけば、暗闇でも犯人からは円城寺の姿が見えるだろ?」
薬師院 月乃「あら?適当に言ったのが合ってたんやなぁ?けど、そんなのどこにあったん?」
ジェントルマン「おいおい夢寺パイセンよォ?それに夜光塗料なんて、どのタイミングで短気野郎に仕掛けたんだァ?」
薬師院とジェントルマンの疑問。
それについては………。
夢寺 蓮「夜光塗料の入手方法は俺にもわからない。だが、仕掛けるタイミングはあった筈だ。そうだろ?…………結城」
俺は青ざめた顔で立ち尽くす結城にそう問いかける。
結城 晴翔「そんな…………まさか
風神 雷哉「おいおい、何で結城の顔が真っ青になってんだよ。まさかオメーが犯人なんか?」
結城 晴翔「違う。結城には心当たりがあるからだ。
それは、停電になる前起きた出来事。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なっ………!?てめえ何しやがるんだコラァ!!!」
「ご、ごめんだす………」
「だ、大丈夫円城寺君?」
「ん?」
食堂へ入ると円城寺の怒ったような声と桃林が謝る声が聞こえた。
「何かあったのか?」
「ゆ、夢寺君………」
厨房へ慌てて入ると、びしょ濡れになった円城寺と申し訳なさそうに謝る桃林、そしてキッチンペーパーで濡れた円城寺を拭く結城の3人がいた。
「桃林さんが躓いて円城寺君に水を掛けてしまったんだ」
「ったくよ………どこまで鈍臭いんだてめえは」
「ご、ごめんだす…………。急いで持って行こうとしたらつい………」
「…………チッ、次からは気をつけろや」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夢寺 蓮「停電になる前、厨房で桃林が円城寺に水をぶちまけたんだ。もしその水に…………夜光塗料が混ざっていたとしたらどうだ?」
不知火 椿「成程。その水を浴びた円城寺殿は暗闇でも光るようになるでござるな。そしてそれを用意してわざと掛けたのが桃林殿であるなら………」
桃林 林檎「ば、バカなこと言わないでほしいだす!!」
それを聞いた桃林は烈火の如く怒り出した。
桃林 林檎「そ、そんなデタラメな推理でワタシを犯人扱いするなんて信じられないだす!中身はちゃんとした水だし転んだのもわざとなわけないだす!」
結城 晴翔「ま、待ってよ夢寺君!その推理はいくらなんでも荒唐無稽すぎるよ!!夜光塗料なんて物初めて聞いたし、桃林さんが掛けた水に夜光塗料が入っていたなんて証拠がどこにもないじゃないか!」
夢寺 蓮「だが、夜光塗料が入ってないという証拠もどこにもない。それに結城、お前は桃林がその水をどこから持ってきたのか知ってるのか?実際に水を汲むところでも見たのか?」
結城 晴翔「そ、それは………!」
俺の指摘に対し結城は黙り込んでしまう。
夢寺 蓮「それに、俺はもう一つ証拠を持っている」
厨房で見つけたもの。
それが、夜光塗料を使ったという何よりの証拠になる。
コトダマ提示
[捨てられた容器]
厨房のゴミ箱に捨てられた初めて見る形状の容器。
空のため中身は不明であり、ラベルも剥がされていた。
しかし、『料』という文字だけが辛うじて読めた状態であった。
これだ!
夢寺 蓮「これは、厨房のゴミ箱に捨てられていた容器だ。中身は空で元々何が入っていたのかは分からない」
俺は捨てられていた容器の写真を全員に見せる。
桃林 林檎「こ、これが何だっていうんだすか!」
夢寺 蓮「この形状の容器を見たことがなかったから、俺と飛鳥は疑問に思って調べてみたんだ。容器の外側を見ると何か剥がされた跡があるだろ?」
北桜 千尋「ほんとうだ!あれ?でももじがのこってるよ?」
飛鳥 圭「ブラコンのお姉さんの言う通りだよー。多分犯人が焦って全部剥がし忘れたんだろうねー。んでー、その残った文字だけどさー、『料』って読めるよねー?」
綾辻 澪「確かに『料』と読めますが………。!!もしかして『夜光塗料』の『料』という事では…………!
思いついた綾辻に対して俺は頷く。
夢寺 蓮「最初は厨房で見つかったわけだし、『調味料』の『料』だと思ったんだ。けど、夜光塗料が使われた可能性がある以上、この容器に元々夜光塗料が入っていた可能性は十分あるんじゃないか?」
佐々木 莉央奈「ラベルを剥がしたのも、夜光塗料を使用したことがバレないようにという理由であればしっくりきますわね」
桃林 林檎「だすっ!?」
桃林は焦りからなのか、しきりに額に滲む汗を拭いている。
飛鳥 圭「でもはとのお兄さん。イケメンのお兄さんの言うことも一理あると思うよ。だって夜光塗料塗料なんてもの、存在自体を今まで誰も見たことがないんだし、それだけでおデブのお姉さんが犯人だとは決めつけられないよ」
飛鳥の指摘は最もだ。
当然それは俺も分かっているし、桃林を犯人だと疑う理由は他にもある。
夢寺 蓮「俺が桃林を犯人だと思う理由はまだある。みんな、一応確認するが、円城寺の死因は首を絞められたことによる窒息死だよな?」
綾辻 澪「ええ。円城寺様のご遺体の様子からそうであると結論が出ましたから」
夢寺 蓮「じゃあ、円城寺を襲った時に出来た頭部の傷。あれはどうやって出来たと思う?」
写実 真平「また道具で殴ったのでありますよ。前回の………その………百々海氏の時のように」
言いづらそうに発言する写実。
北桜 八尋「それはないですね。厨房にあった木槌は既に回収されていますし、厨房に人を殴れるような凶器はありませんでした。僕が断言します」
厨房をチェックした八尋が堂々と証言する。
風神 雷哉「分かった!!拳でぶん殴ったんだろ!」
佐々木 莉央奈「では、力に自信のあるアナタが犯人ということになりますわね」
風神 雷哉「ち、ちげーよ!?じゃ、じゃあハルクが犯人だ!アイツの方が筋肉あるしな!」
ハルク「ワッツ!?喧嘩屋サン酷いデース!!ワターシ、人を殴ったりしまセーン!!」
夢寺 蓮「いや、今回は道具を使ったわけでも拳で殴ったわけでもない」
今回の状況は、プールの
2階にいる人間が1階の人間に対して道具や拳ではない方法で頭部に傷を負わせる………。
そしてプールサイドに血痕を付ける………。
そんなことが出来る方法とは…………。
「2階から1階にいる円城寺の上に
「……………………え?」
誰かの困惑した声が聞こえてくる。
夢寺 蓮「別の表現だと………
薬師院 月乃「なるほどなぁ。それは盲点だったわ。急に上から人が降ってこられたから、重さに耐えきれずに倒れてプールサイドに頭をぶつけて傷が出来てしもうた、と。……けどそうなると、結構な重さの人が飛び降りたってことになるんやろうけど…………ははあ、桃林はんなら確かに十分過ぎるほどの重さがあるなぁ」
桃林 林檎「だすっ!?」
桃林は口を開け驚愕している。
佐々木 莉央奈「確かに、その方法なら道具を使わずに人の頭部に傷を負わせられますわね」
ジェントルマン「いやいや夢寺パイセン、冗談キツイッスよォ」
するとジェントルマンが口を挟んできた。
ジェントルマン「確かにその方法ならいけるかもしれないッスけどォ、ミートボール女レベルの重量級の奴が上から落ちてきたらたんこぶ程度の傷じゃ済まないと思うんスよォ?その辺はどう説明するんスかァ?」
本当は全て知っている癖に、こいつは面白おかしくそう聞いてくる。
夢寺 蓮「恐らく、円城寺は何かが自分の真上に落ちてくるのを察知して避けようとしたんだ。だから怪我こそしたがそこでは死なずに済んだんだよ。円城寺の首に吉川線がある以上、首を絞められる際に抵抗したのは間違いない。つまり、頭を負傷した時はまだ円城寺は意識があって、その後犯人に絞め殺されたんだ」
綾辻 澪「犯人は円城寺様を自身の体重で押し潰して気絶させ、その後ワイヤーで締め殺すつもりだった。しかし円城寺様がうまく避けたせいで気絶しなかった。だから円城寺様の首には吉川線が残されていた……………。ということでしょうか?」
綾辻の結論に対して俺は頷く。
これで円城寺の頭部の傷についても説明がつく筈だ。
夢寺 蓮「そんな方法は、体重の重いお前みたいな奴じゃないと思いつかない方法だと思うぞ」
桃林 林檎「な、納得いかないだす!」
しかし、桃林は反論をやめることはなかった。
桃林 林檎「そ、そんな体重をかける方法なんてワタシ以外の人にも出来るだす!!」
ジェントルマン「ミートボール女の言う通りだァ。今までの証拠は
飛鳥 圭「………もうアンタが庇ってる時点で犯人みたいなもんじゃん」
ジェントルマン「いやいやァ、オレっちは至極まともなことを言ってるつもりだぜェ?」
確かにジェントルマンの言うことは正しい。
今まで俺が話してきたことはあくまでクロは桃林だと確定させるものではない。
夢寺 蓮「………そうだな。確かに断言出来る証拠はない。…だが、総合的に考えると犯人はお前しかいないんだ」
ジェントルマン「ヘェ………。じゃあ夢寺パイセン、オレっちが納得出来る推理、ちゃんと用意してるんスよねェ?」
挑発のようにベラベラと喋るジェントルマン。
落ち着け。
あと少しのところまで来ている。
後は順番に詰めていけば問題ない筈だ。
夢寺 蓮「勿論だ。まずは…………」
コトダマ提示
[泳げない円城寺]
円城寺が泳げないことを知っているのは、夢寺、飛鳥、不知火、佐々木、写実、千尋の6人。
これだ!
夢寺 蓮「円城寺は最終的には絞殺された。これはさっきから散々議論されたことだから間違いない。だが、何故犯人は殺害方法に絞殺を選んだんだと思う?」
綾辻 澪「それは………前回の事件で百々海様の死因が撲殺であったから、警戒されると思って別の方法である絞殺を選んだ、とかでしょうか………?」
夢寺 蓮「確かにその可能性もあるかもしれない。だが、絞殺より
風神 雷哉「あ?それって重要なことなのかよ?」
飛鳥 圭「…………そっか、よく考えたらおかしいよ」
すると飛鳥が何かに気がついたのか、小声で何かを呟いている。
ハルク「スリサン?どうしたんデスカ?」
飛鳥 圭「ユーレイのお兄さんを手軽に殺せる方法がすぐそこにあったのに、どうして犯人はそれを選ばなかったのか………。はとのお兄さんが言いたいのはそういうことでしょ?」
夢寺 蓮「ああ、その通りだ」
結城 晴翔「ど、どういうこと?」
困惑する結城を始めとする数人に対し、俺は視線を向ける。
夢寺 蓮「円城寺が昨日プールに入らなかった理由…………それは円城寺が
俺の言葉に対し、手を挙げたのは俺を含めた先程の6人。
北桜 八尋「円城寺さんが泳げない………?そんな話は初めて聞きました」
ハルク「オカルト研究家サン、カナヅチだったんデスネ!!」
ジェントルマン「おいおいマジかァ!?あの短気野郎泳げねえのかァ!?ダッセェなァ!」
新たに判明した事実に驚きを隠せない一同。
夢寺 蓮「俺が言いたいのは、今手を挙げた俺を含めた6人は、円城寺が泳げないことを知っているんだから、上から飛び降りるなんて真似しなくても
桃林 林檎「そ、それはそうだすが………!もしかしたら犯人が円城寺君が泳げないのを知りながら敢えて違う方法を選んだのかもしれないだす!」
夢寺 蓮「自分の手元すら見えない暗闇の中、敢えて回りくどい方法で殺害するメリットがないだろ。それどころか今回みたいに殺し損ねるデメリットがあるんだ。溺死させるならプールに突き落とすだけでいいし、短時間で終わる。そうだろ?」
桃林 林檎「うっ…………」
言葉に詰まる桃林。
夢寺 蓮「まだあるぞ。お前が怪しいという根拠は」
俺は落ち着いて次の証拠を出す。
コトダマ提示
[工具箱]
磔にされた際に利用された釘等が入ってる工具箱。
使用されたのは釘とトンカチ、ペンチの3つのみ。
何故か食堂の厨房で見つかった。
八尋が体育館の舞台袖に隠しておいたらしいが…………。
これだ!
夢寺 蓮「八尋。例の工具箱について説明してもらってもいいか?」
北桜 八尋「工具箱………?ああ、あれですか」
いつも通り表情を変えず八尋は頷く。
北桜 八尋「地下1Fが解放された時、僕は体育館の舞台袖で工具箱を見つけました。そこには様々な工具が工具が入っていましたが、僕はそれを誰にも見つからないように体育館袖の端に隠しておいたんです。しかし、それが何故か厨房で見つかったんです。恐らく犯人が利用した後厨房に隠したんでしょう」
佐々木 莉央奈「あ!もしかしてそこに入ってた工具を使って円城寺サンを磔に………」
北桜 八尋「中に入った工具のうち、トンカチと釘、そしてペンチに使用された形跡がありました。佐々木さんの言う通り、トンカチと釘は磔に、ペンチは停電を起こす際コードを切断するために使用したと考えていいでしょう」
佐々木 莉央奈「『莉央奈』ですわ!!!」
北桜 千尋「けど、はんにんはいつこうぐばこをちゅうぼうにかくしたんだろうね?」
千尋はそう疑問を口にする。
夢寺 蓮「そう、犯人は犯行後食堂に行き厨房に工具箱を隠した。じゃあ果たしてそれがいつなのか。………桃林、お前はさっき夜12時半に食堂に行ったって言ってたよな?……………お前は犯行後、工具箱を隠すためその足で食堂に向かったんじゃないのか?」
桃林 林檎「ヒッ!?」
夢寺 蓮「しかし、食堂には後片付けをしている綾辻がいた。だからひとまず眠れないと言って誤魔化し、その後隙を見て厨房へ行って工具箱を隠したんじゃないか?」
桃林 林檎「そ、そんなわけ………」
明らかに狼狽える桃林。
綾辻 澪「そんな………!しかし、片付けの最中に桃林様はそのような素振りは一度も………」
夢寺 蓮「綾辻、一つ聞きたいんだが」
動揺を隠せない様子の綾辻に対して俺は質問する。
夢寺 蓮「片付けを終えて食堂を出た時、後に食堂を出たのはどっちだ?」
綾辻 澪「それは…………桃林様です。私が出た30秒後に桃林様も食堂から出られました」
夢寺 蓮「なら、そのタイミングで工具箱を隠した可能性が高い。隠すのなんて10秒もあれば十分だ」
桃林 林檎「ま、待つだす!そ、それなら綾辻さんが犯人だす!ワタシが来る前から食堂にいたなら、先に来て工具箱を隠しておけばいいだす!」
薬師院 月乃「けど、綾辻はんは桃林はんに比べて随分体重が軽いで?それに綾辻はんには夜光塗料を付ける機会もなかったやろ?」
桃林 林檎「う、うるさいだす!!ワタシは絶対犯人じゃないだす!」
桃林はあくまでも自分が犯人ではないと主張を続ける。
………これでも駄目か。
なら次は…………。
結城 晴翔「夢寺君。君の主張はよく分かった。けど………桃林さんが犯人だという確固たる証拠も出てきていないし、何より優しい彼女が円城寺君を殺すなんてとても思えないんだ。今一度考え直すべきだよ」
俺が次に話すべき内容を考えていると、黙って話を聞いていた結城が諭すような声で俺にそう訴えかけてきた。
ハルク「ワターシも同じ考えデース!グルメリポーターサン、犯人じゃないと思いマース!」
写実 真平「某もいまいち納得出来ないであります。別の犯人がいる可能性もまだ捨てるべきではないであります」
佐々木 莉央奈「夢寺サンの推理を否定するつもりはありませんけど、桃林サンを犯人だと言うにはもう少し材料が欲しいですわね」
同じく桃林を犯人ではないと考える数人から声が挙がる。
飛鳥 圭「いや、さっきまではおデブのお姉さんがじゃないと思ってたけど………はとのお兄さんの推理聞いたら犯人にしか見えなくなってきたよ」
綾辻 澪「確かにまだ断言は出来ません。しかし、桃林様を犯人だと疑う理由がいくつもあるのも事実です」
北桜 八尋「寧ろここまで怪しい点があってもなお、彼女を犯人ではないと庇う人がいることに驚きですよ。その人達は今までの議論で一体何を聞いていたんですか?」
不知火 椿「『人は見かけによらない。外見に惑わされるな』。拙者この言葉を里で何度も聞かされたでござる。人を殺しそうにない、という主観は当てにならないでござるよ?」
それと同時に、桃林が犯人であると疑う数人からの声も挙がった。
ジェントルマン「夢寺パイセンよォ。ミートボール女が犯人だって証拠がない以上、あの女が犯人とは限らないッスよねェ?」
そして、今回の事件の渦中にいるこの男は、変わらず桃林を庇う態度を見せている。
夢寺 蓮「さっき飛鳥も言ってたが、お前が庇うってことはつまり、桃林が犯人だと言っているようなものだぞ。それでもお前は俺と反対意見を述べるのか?」
ジェントルマン「そりゃそうッスよォ。だってオレッち、夢寺パイセンとこうしてバチバチに闘いたいってずっと思ってたんスからァ!」
………何なんだコイツは。とにかくイカレている。
モノワニ「おヤ?意見が真っ二つに割れてしまいましたネ。では例のやつ、始めますカ」
するとモノワニの合図で裁判場の席が動き始めた。
またアレが始まるのか…………。
数秒も経たないうちに、2つの陣営に分かれて向かい合う形へと変化した。
正面にいるのは結城。
………くそ、やるしかないか。
俺の意見を…………全てぶつける!
《桃林林檎は犯人か?》
犯人だ!………夢寺、飛鳥、薬師院、八尋、風神、不知火、綾辻
犯人じゃない!…………結城、桃林、ジェントルマン、ハルク、写実、佐々木、千尋
議論スクラム 開始!
写実 真平「桃林氏が犯人だっていう明確な証拠がないのに犯人だと決めつけるのはおかしいであります!」
北桜 八尋「明確な証拠でなくても疑うには十分すぎる証拠が既に揃ってるんですが、それについてはどう考えるんですか?」
佐々木 莉央奈「証拠といっても不十分なものもありますわよ。例えば円城寺サンに桃林サンが水を掛けた件だって、証拠としては弱いんじゃありませんの?」
薬師院 月乃「確かに夜光塗料の話は明確な証拠はあらへん。けど、『停電が起きる直前に桃林はんが被害者である円城寺はんに水を浴びせた』ということ自体が怪しいとは思わへんの?」
結城 晴翔「そ、その話だってただ桃林さんが偶然転んでしまっただけだよ!夜光塗料の話なんてなんの根拠もない推理じゃないか!」
風神 雷哉「けどよー、じゃあどうやって犯人は円城寺を暗闇の中で見つけられたんだよ?結局それが分かんねー以上、蓮の推理が正しいってことになんじゃねーの?」
北桜 千尋「でもりんごがれいやころすなんてかんがえられないよ………。そんなことしなさそうなのに…………」
不知火 椿「千尋殿。先程も申したが、人は見かけによらないのでござる。どんな善人でも他者を殺める可能性は大いにあるでござる」
桃林 林檎「わ、ワタシ以外にも犯人候補はいるだす!ワタシだけ疑われるのはおかしいだす!」
綾辻 澪「犯人であるための条件を全て満たすのは、現時点では桃林様しかいらっしゃいません」
ジェントルマン「1つの証拠に拘りすぎて全体が見えてねぇんじゃねんスかパイセン!本当にソイツが犯人でいいんスかァ???」
夢寺 蓮「今ある証拠から客観的に事件全体を振り返った結果、桃林が最も犯人である可能性が高いと判断したんだ」
これが俺達の答えだ!
夢寺 蓮「…………犯人が今回実行したこと、そして誰に犯行が可能なのか改めて整理しよう。そうすれば自ずとお前にしか犯行が出来ないことが分かる筈だ」
桃林 林檎「………え?」
夢寺 蓮「悪い。みんな協力してくれるか?もしこれで桃林が犯人じゃないことが分かったら好きなだけ罵ってくれ。責任は全て俺にある」
風神 雷哉「勿論協力するぜ!ダチがこんなに気張ってんだ!オレも負けてらんねーよな!」
飛鳥 圭「もう少し………もう少しで犯人が決まる………!」
ハルク「分かりマシタ!ワターシも頑張りマス!マジシャンサンのお手伝いシマス!」
結城 晴翔「………………………」
桃林が犯人だという明確な証拠がないなら、桃林以外に犯行が不可能だということを証明するしかない。
………真実まであともう少しだ。
議論開始!
薬師院 月乃「まず犯人は………宴会を混乱させるために[飲み物に酒を混ぜた]んやったな」
綾辻 澪「また、どこかのタイミングで円城寺様に対して[夜光塗料]を付け、停電で真っ暗な時でも円城寺様の姿が見えるようにしました」
風神 雷哉「そんで、オレらが宴会やってる最中に[停電を起こした]んだよな?」
不知火 椿「その後犯人はプールに円城寺殿を呼び出し、1階にいる円城寺殿目掛けて[2階から飛び降りて押し潰そうとした]のでござるな」
北桜 八尋「しかし円城寺さんはそれでは死ななかった。だから[ワイヤーを使い円城寺さんの首を絞めて殺害した]んですよね」
ジェントルマン「んでェ、今のを全部出来るのがミートボール女しかいねえってことかよォ?何かを反論はねぇのかァ?」
桃林 林檎「は、反論しかないだす![飲み物に酒が入ってた]のも、[夜光塗料]も、[停電]も、[飛び降りた]のも、[ワイヤーで殺した]のも全部ワタシとは関係ないだす!!!!!!」
[飲み物に酒が入っていた]→ [宴会で出された酒]
それは違うぞ!
夢寺 蓮「宴会の飲み物に酒を混ぜることが出来たのは、宴会の参加者で、かつ宴会の準備をしていた人に限られるんだ。桃林、お前は宴会の準備で料理を宴会場に運んだりしていたってさっき言ってたよな?」
桃林 林檎「うっ……!」
桃林は顔を引き攣らせる。
ハルク「えっと………宴会の準備をしてたのって誰デシタ?」
薬師院 月乃「料理の準備をしたのは綾辻はんと円城寺はん。そしてその料理を運んだのは結城はん、桃林はん、風神はん、ハルクはん、千尋はんやね」
写実 真平「確かに桃林氏はメンバーに入ってるでありますな」
桃林 林檎「で、でも料理を運んだのはワタシだけじゃないだす!なら他の人にも酒を混ぜる機会はあるだす!」
北桜 八尋「はぁ………………往生際が悪いですね。さっさと他の部分についてもハッキリさせましょうか」
うんざりした表情で八尋がため息をつく。
北桜 八尋「まずは円城寺さんの姿が暗闇でも見えるよう細工出来る人物ですが………これは保留にしておきましょう。桃林さんの行動が怪しいとはいえ、夜光塗料が使われたという明確な証拠もないですし、何より円城寺さんに細工出来る時間なんていくらでもありますからね」
北桜 八尋「次に停電を起こすことが出来る人物。停電は宴会中に起きたわけですから、宴会に参加していた人物には停電は起こせません。つまり、被害者である円城寺さんを除けば、宴会に不参加だった僕と天草さん、そして直前に単独行動をしていた桃林さんの3人の誰かが停電を起こした犯人になるわけです」
桃林 林檎「なっ………!?それは…………!」
北桜 八尋「次に円城寺さんにのしかかり気絶させることが可能な人物。これは体重が重い人でないと不可能です。これに当てはまるのは………ハルクさん、桃林さん。ギリ風神さんも入りますかね」
桃林 林檎「ち、違………!」
北桜 八尋「ああ、それと工具箱を厨房に隠すことが出来た人ですか。それは桃林さんと綾辻さんなら可能という話がさっき出てましたね。2人は夜中厨房にいましたから。それと一応僕も可能っちゃ可能ですか。工具箱の隠し場所を知っているのは僕ですからね」
桃林 林檎「あ、ああ……………………!」
北桜 八尋「どうです?これで皆さんも分かったでしょう」
北桜 八尋「今回犯人がしたこと。そしてそれが可能な人物。その全てに桃林さんの名前が挙がってるんですよ。だから夢寺さんは言ったんです。『
八尋の論理的かつ的確なまとめ。
それを聞き終えたみんなの視線が………一斉に桃林へと集まる。
桃林 林檎「な………なんだすかその目は!?」
風神 雷哉「ってことはやっぱオメーが円城寺を………」
ハルク「そ、ソンナ………。グルメリポーターサン、嘘デスヨネ?」
飛鳥 圭「……決まりだよ。このクソヤローがユーレイのお兄さんを殺したんだ」
桃林 林檎「ま、待つだす!!そ、そうだす!犯行に使用されたワイヤーは舞台装置から取ったものだす!あれは力がないと動かせないだす!だかやワタシは犯人じゃないだす!」
佐々木 莉央奈「苦しい言い訳ですわね。それは共犯者のジェントルマンにやってもらえば解決する話ですわ。というか、さっきジェントルマン自身が自分でやったって言ってたじゃないですの」
桃林 林檎「うっ………!ま、まだだす!ワタシは停電の後ずっと女子大浴場の前で蹲ってただす!それでその後晴翔くんに助けに来てもらったから………だから人殺しなんてする時間はないだす!」
夢寺 蓮「お前がずっと女子大浴場前で蹲ってたのを見た人はいるのか?いないならお前がずっと同じ場所にいたという証拠にはならない。それに結城がお前を迎えに行ったのは停電があってすぐじゃないだろ?」
桃林 林檎「は、晴翔くん!!」
結城 晴翔「…………僕が桃林さんを迎えに行ったのは午後11時過ぎだ…………。よく考えたら、停電後2時間もその場所にいてその後連絡してくるなんておかしな話だったんだ…………!どうして僕はそこで気づかなかったんだ………!」
桃林 林檎「なっ…………!?」
どんどん追い詰められていく。
そして彼女の顔はどんどん青ざめていく。
桃林 林檎「じぇ、ジェントルマン!!た、助けるだす!!ワタシがピンチなんだすよ!!」
もはやそれが今回自分が犯人だという自白に等しいことにも気付かず、桃林はジェントルマンに助けを乞う。
ジェントルマン「あー………こりゃ無理だなァ」
しかし、桃林を助けるため手を差し伸べるものはいない。
桃林 林檎「………は?」
ジェントルマン「オレっちも依頼主であるテメェの味方としてなんとかしようと思ったけどよォ、もう無理だ、諦めろォ」
桃林 林檎「な、何を言って………」
ジェントルマン「そもそも1人で14人全員を相手取るのが無茶なんだァ。それに夢寺パイセンが敵に回った時点でテメェに勝ち目はねえんだよォ。何せ夢寺パイセンはオレっちが認めた超凄え人だからなァ」
桃林 林檎「……………………」
ジェントルマン「つーことでオレっちはもうパス。後は夢寺パイセンに任せるッスよ」
夢寺 蓮「何が任せるだ。お前も同罪なんだぞ。………桃林、これ以上反論がなければもう認めてくれ。お前が円城寺を殺した犯人だって」
俺は下を向き震えている桃林に向かってそう言葉を投げかける。
「………………………………」
「わ………………………………」
「ワタシが犯人なわけないだす!!!!!」
しかし、それでも桃林は認めない。
桃林 林檎「い、今までの証拠はその男の嘘だす!わ、ワタシに罪を被せるために嘘で全員を騙そうとしてるだす!!」
俺を指差し激昂する。
北桜 八尋「………ここまで往生際が悪いと呆れて物も言えないですね」
風神 雷哉「嘘ついてんのはオメーだろうが!いい加減認めろって!!」
桃林 林檎「う、うるさいだす!そ、そうやってワタシみたいなか弱い人間の意見を多数派の意見で押し潰そうして………恥ずかしくないんだすか!!この人でなし!!」
佐々木 莉央奈「さっきからアナタの発言、ことごとくブーメランですわね」
綾辻 澪「夢寺様。やはりもう一押ししないと桃林様は納得されないみたいです」
夢寺 蓮「………ああ。そうみたいだな」
なら、ここで俺が桃林に罪を認めさせるしかない!
理論武装 開始!
桃林 林檎「わ、ワタシが人殺しなんかするはずないだす!」
桃林 林檎「ワタシは力もないし………な、何よりワタシはか弱い女の子だす!」
桃林 林檎「男子の円城寺君を殺せる筈ないだす!」
桃林 林檎「それに体育館にもプールにも行ってないだす!ど、どうしてワタシのことを信じてくれないのだすか!!」
桃林 林檎「わ、分かっただす!ワタシがブスでデブで醜いとか思ったから信じてくれないだすね!!」
桃林 林檎「1人の女子を寄ってたかって虐めるなんて…………人として終わってるだす!!」
桃林 林檎「もう[何も証拠は残っていない]だす!だからワタシは犯人じゃないだす!!」
[何も証拠が残っていない]←
[厨房に散らばったお菓子の食べカス]
厨房の床にお菓子の食べカスが大量に散らばっていた。
[補充される食べ物]
厨房の食べ物は全て、毎日午後12時に補充されるらしい。
[お菓子の食べカス]
体育館のブレーカーの下にお菓子の食べカスらしきものが落ちていた。
これで終わりだ!
夢寺 蓮「桃林。そういえば気になっていたんだが………昨日お菓子は食べたか?」
桃林 林檎「た、食べただす!それがどうしただす!!」
夢寺 蓮「そうか。いや、厨房と体育館のブレーカー前に大量のお菓子のカスが落ちていたからな。誰の仕業かと思って聞いたんだが………桃林のせいだったのか」
桃林 林檎「ふ、ふざけるのも大概にするだす!!わ、ワタシはそんな汚い食べ方しないだす!!昨日もお菓子食べた後はちゃんと綺麗にして体育館に行って………………………あ」
自分の失言に気がつき、口を押さえる桃林。
夢寺 蓮「体育館に…………行ったんだな?」
桃林 林檎「ち、違うだす!い、今のは昨日体育館に散歩に行っただけで…………」
薬師院 月乃「さっき『体育館になんか一度も行ってない』って大声で叫んどったのは誰やったっけ?」
飛鳥 圭「それに運動嫌いなお前が体育館に用なんかあるわけないじゃん。いい加減認めたら?」
桃林 林檎「ワタシじゃないだす!わ、ワタシは………」
夢寺 蓮「お菓子を含めた食材は、毎日午後12時にモノワニが補充しているそうだ。そして昨日の宴会の時、お菓子の在庫はまだ沢山あったが、捜査の時見たらほとんど残っていなかったんだ。そうだよな?飛鳥」
飛鳥 圭「うん。間違いないよ。ボクはちゃんとこの目で見た。お菓子は昨日の宴会の時、ボクが少しだけ食べたけど、それでも沢山まだ残ってた。けど捜査の時見たらほとんど残ってなかったよ」
夢寺 蓮「結城。昨日宴会の時桃林と一緒にいたお前に聞きたいんだが、桃林は宴会中お菓子を食べてなかったか?」
結城 晴翔「…………確かに食べてたよ。料理を宴会場に運んで戻ってくる度に何かを口にしていた」
呆然とした顔で結城はそう証言する。
もはや言い逃れの出来ない事態であることを結城は理解したのだろう。
桃林 林檎「ううう…………!?」
全員から集まる疑惑の視線。
その視線に桃林は顔を真っ青にして後ずさる。
桃林 林檎「は、晴翔くん!!助けてだす!は、晴翔くんならワタシが犯人じゃないって」
そして絶叫に近い声で結城に助けを求める。
この中で誰よりも自分に対して優しく接してくれた存在である結城に。
結城 晴翔「もうやめてくれっ!!!!!」
しかし、結城はそれを一蹴した。
結城 晴翔「もう…………君の負けだよ」
桃林 林檎「晴翔、くん…………?わ、ワタシを見捨てるだすか!!わ、ワタシのことあんなに大事にしてくれたのに!!」
結城 晴翔「………夢寺君」
夢寺 蓮「どうした?」
結城 晴翔「…………頼む。終わらせて欲しい。この裁判を。この事件を」
激しく唇を噛む結城。
口元からは血が流れ出ているのが分かった。
大事な仲間を殺したことが許せない。
しかし、身近にいながらそれを止められなかった自分はもっと許せない。
そんな感情が流れ出ている。
夢寺 蓮「…………分かった。じゃあ最後に事件を振り返ってこの事件を終わらせる」
悲痛な面持ちの結城からの頼み。
分かってるよ。
この事件に…………幕を引こう。
仲間同士で糾弾し合う馬鹿げた時間を………終わらせないといけない。
クライマックス推理 開始!
act.1
今回の事件は、ある2人によって引き起こされた。
1人は今回の事件のクロ、そしてもう1人は、天草京介のもう一つの人格である『ジェントルマン』と呼ばれる殺人幇助を生業とする犯罪者だ。
具体的なタイミングは分からないが、天草とジェントルマンの人格が入れ替わり、そのことを知ったクロはジェントルマンに『円城寺を殺す手伝いをして欲しい』という依頼をしたんだ。ジェントルマンはそれを了承し、クロが円城寺を殺すための準備を始めた。
act.2
ジェントルマンはまず、『円城寺を絞殺して、その後体育館に磔にしたい』というクロの依頼のため、絞殺するための道具を準備するところから始めた。
その道具というのは、体育館の舞台にあるワイヤーだった。午後、俺達がバスケを終えて宴会をしている最中に体育館へ行き、本来看板などを吊り下げるために使われるワイヤーを外して凶器にしたんだ。ワイヤーを外すためには力のある男子じゃないと動かせない舞台袖の機械装置を動かし、ワイヤーを下ろす必要があった。けど、細身の割に信じられないほどの力を持つジェントルマンなら全く問題にはならなかったんだ。
そして、舞台の看板を2つ十字に重ねて即席の磔用の十字架を作った。
これで殺人の準備はあらかた完了だ。
act.3
ジェントルマンが着々と殺人の準備を進めている間に、クロの方も準備を進めていた。
まずクロは、モノワニが持ち込んだ酒を、パーティに持っていくドリンクの瓶に混ぜたんだ。そんなことをした理由だが、恐らくパーティ会場を混乱に陥れてジェントルマンがいる体育館の方に意識を向けさせないためだろう。
そしてどこで手に入れたか分からないが、暗闇でも光る夜光塗料を水か何かの液体に混ぜて準備をした。もちろんこれは、後の停電騒動が起きる前に、ターゲットである円城寺に浴びせるためだ。円城寺を暗闇でも視認するにはこれが一番手っ取り早い方法だとクロやジェントルマンも考えたんだろう。
act.4
その後、俺達は1Fの宴会場で宴会を始めた。
そして、クロの思惑通り用意した酒による大騒ぎで宴会場に意識が集中している中、結城と一緒に料理を定期的に厨房から宴会場に運ぶ役割を担っていたクロは、アクシデントを装って円城寺に先程用意した夜光塗料入りの液体を浴びせたんだ。
当然、円城寺はびしょ濡れになり、着替えるために一度自室に戻ろうとした。そこでクロは、この場を離れて1人になるために大浴場に行きタオルを取ってくると宣言したんだ。
そしてクロは大浴場には行かず、その足で体育館へと向かい、ジェントルマンに用意させていた工具箱からペンチを取り出し、体育館にあるブレーカーを切断、停電起こしたんだ。
しかし、クロはここで一つミスを犯した。クロは宴会中にこっそり厨房でお菓子をやけ食いしていたのだが、その後自身にお菓子の食べカスが付着しているのに気が付かず、ブレーカーがある場所にお菓子の食べカスを落としてしまったんだ。そのおかげで俺達はクロを特定することが出来たから、これが無かったら犯人だと断定するのは難しかっただろうな。
act.5
突然の停電でパニックなる俺達の目を掻い潜り、クロは円城寺をプールに呼び出した。そして円城寺はその呼び出しに応じ、暗闇の中プールへと向かったんだ。
円城寺が何故その呼び出しに応じたのかは分からない。だが、根は優しあいつのことだ。何か俺達のことで弱みを握られていたのかもしれない。
円城寺が普通にプールの入口から入る間に、クロとジェントルマンは体育館の2階からプールの2階へと侵入し、円城寺が来るのを待っていた。
体育館の2階から入れば入退室の記録がされないため、犯人だとバレないだろうと考えてのことだろう。
そして円城寺がプールに入ってきた瞬間、2階にいたクロが円城寺を気絶させるため、円城寺の頭目掛けて飛び降りたんだ。
act.6
しかし、ここでクロ達によって予想外のことが起きた。
当初の計画では、クロによって気絶させられた円城寺を、無抵抗の状態で首を絞めて殺す予定だったが、円城寺は頭をプールサイドに打ち出血したにも関わらず、気絶しなかったのだ。
クロはその後、慌ててワイヤーを使って円城寺を締め殺した。円城寺の首に吉川線があったのは、円城寺が気絶せず抵抗したからだったんだ。
円城寺が死んだのを確認すると、クロは円城寺を背負いワイヤーで自身の体に固定すると、2階で待機しているジェントルマンに手伝ってもらいながら、1階から2階へとよじ登ったんだ。人間2人分の重さをもち上げるなんて普通は考えられない事だが、これも常人離れした力を持つジェントルマンだからこそ出来る芸当だろう。
act.7
その後、クロ達は退出の記録を残さないためにプールの2階から体育館の2階へと戻り、舞台で円城寺を磔にした。看板で作った十字架に円城寺を磔にしてワイヤーで縛りつけてから舞台の壁に釘で固定したんだ。
作業を終えた後は、クロは証拠隠滅のために使用した工具箱を厨房へと隠そうとした。
しかし、クロにとって予想外だったのは、そこに綾辻がいたことだ。後片付けをしている綾辻と鉢合わせたクロは、眠れないと誤魔化して綾辻のことを手伝いつつ、隙をついて工具箱を隠したんだ。
その後、翌日にクロは第一発見者を装い全員を起こして円城寺の死体を発見させた。これは恐らく死体発見アナウンスによる犯人の特定を恐れたためだろうな。
殺人幇助を生業とする犯罪者、ジェントルマンと協力して円城寺を殺した犯人は………………お前だ!
【超高校級のグルメリポーター】桃林 林檎!
桃林 林檎「あ…………あああ…………!」
これ以上にない程顔を真っ青にして桃林はカタカタ震えている。
佐々木 莉央奈「…………終わり、みたいですわね」
夢寺 蓮「…………ああ」
桃林からの反論はない。
つまりは…………………そういうことなんだろう。
モノワニ「おヤ。どうやら議論に決着がついたようですネ。でハ、前回と同様、今回の事件のクロのパネルをタッチして下さイ
俺は手元にあるパネルから、桃林の顔写真をタッチする。
モノカバ「全員の投票が終了しましタ。では、投票の結果、クロになるのは一体誰なのカ。そして正解なのか不正解なのカ。ルーレットをご覧下さイ」
すると、俺達のドット絵が書かれた巨大なルーレットが出現し、回転し始めた。そして桃林の所で止まると、「guilty!!」の文字と共に大量のコインが出てきた。
桃林 林檎「どうして…………いつもワタシだけ…………こんな酷い目にあわなくちゃいけないんだすか…………」
ポツリとそう呟く桃林。
その一言に対して全員が冷たい視線を向ける。
彼女の味方は………もうこの場には誰もいなかった。
学級裁判 閉廷!