ダンガンロンパ ルーナ   作:さわらの西京焼き

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3章スタートです。









3章 『羨望と嫉妬は混沌の華』
(非)日常編①


 

 

 

 

 

 

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「………所長、失礼します」

「…………何だ」

「接種後に体調を崩していた1名が死亡しました」

「………そうか。これで残ったのは3人か」

「はい。これで全ての実験は終了となります」

「50名もの孤児を使用して残ったのがこれだけとは………。だが、生き残った3人は間違いなく最強の兵器となった」

「ええ。これで未来機関の奴らにも大打撃を与えることが出来ます!そうなれば我々が勝ったも同然ですよ!」

「気が早いな。だが、そうなる未来も近い。これ以上あの偽善者共の好きにさせてたまるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この選ばれし3名がきっと、私達の彼岸である()()()()()を成し遂げてくれるだろう。………フハハハハハ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

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3章 『羨望と嫉妬は混沌の華』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

目を覚ました俺は、ぼんやりとした状態のまま起き上がる。

「…………頭が重い」

寝た筈なのに全く体の疲れが取れていない。

おまけに頭も重く、なんかフラフラする。

もしかして俺は本当は一睡も出来てないんじゃ………。

 

 

 

 

 

 

 

…………いや、それはない。

俺は自分でその答えを否定する。

意識が途切れた感覚も覚えてるし、何より昨日ベットに入ってからの記憶がない以上、寝たのは間違いない。

ただ俺の場合、異常に睡眠の質が悪いだけなのだろう。

「………ひとまず顔でも洗うか」

俺は目覚ましも兼ねて顔を洗うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なんだこりゃ」

洗面所の鏡で自分の顔を見た俺は驚き固まってしまった。

鏡にはとんでもなく濃い隈のゾンビみたいな顔色をした人間が映っていた。

当然、映っているのは他でもない俺だ。

「これはどうにかしないとまずいな……」

こんな恥ずかしい顔で外になんか出たくない。

かといって今から改めて寝るのも目覚めてしまったし難しいんだよな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それに…………ずっと部屋にいたらどうしても昨日のことを思い出してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血を吐き、絶望の表情で死んでいった桃林。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人の尊厳を弄ぶようなオシオキ。

 

 

 

 

 

 

 

血塗れの光景が今も脳裏に焼きついている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしかしたら俺もいつかあんな風に………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………出よう」

俺は首を振り嫌なイメージをかき消す。

そして朝食の時間にはまだ早いが、俺は身支度を整える。

とりあえず部屋を出て誰かと話をしたい。

そうでもして気を紛らわさないと………頭がおかしくなってしまう。

そう思い、俺は個室の外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あ」

「………げ」

廊下に出た瞬間、同じく廊下に出てきたとある人物と鉢合わせた。

その人物は………人の顔を見て「げ」なんて失礼なことを言うのは………あいつしかいない。

「よりにもよってアナタに最初に見られるとは………屈辱の極みですわ」

「その台詞、そっくりそのままお前に返すよ」

その人物、佐々木莉央奈は朝から早々、俺の顔を睨みつけてくる。が、いつものような強い眼差しは感じられない。

そして目が大きく腫れていることから、恐らく昨日夜な夜な泣いていたことが想像出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………アナタ、今からどこに行くんですの?」

俺がかける言葉を探していると、佐々木は俺にそう聞いてきた。

「食堂だ。お前こそこんな早くにどこ行くんだ」

「アナタと同じ食堂ですわ。……全く、アナタと一緒にいたら仲が良いなんて誤解を受けそうですわね」

「そうだな。じゃあお前が後から来ればいいだろ」

「嫌ですわ。どうしてアナタの言うことなんか聞かなければいけないんですの?」

「…………」

こいつ…………相変わらずムカつく奴だ。

だが、今はこうして誰かと話をするだけでも気が楽になるのも確かだ。

 

 

 

 

 

 

「佐々木、少し歩きながら話さないか?」

俺はそう考えて、佐々木に提案する。

「え………?」

「食堂までだけどな。まあお前が嫌なら別にいいが」

驚きの表情でこちらを見てくる佐々木に対してそう付け加えておく。

「………分かりましたわ」

すると佐々木は、意外なことにすぐ了承した。

「いいのか?俺と一緒にいるのを見られたくないんじゃないのか?」

「さっきはあんな事言いましたけど、どうせこんな時間に見られることもないですし、周りの目を気にしてもしょうがありませんわ。それに正直………わたくし、誰かと話をしたいと思ってましたの。だからアナタのお喋りに付き合ってあげますわ」

どうやら、佐々木も同じ考えだったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………昨日はだいぶ堪えましたわ」

歩き始めて数秒。

佐々木は深く溜息をつきながらそう言葉を溢した。

「司サンの時もそうでしたけど、やはり身近な人の死はいつ見ても慣れないですわね」

「それはそうだろ。俺だって未だに慣れない。逆に慣れたらそれはもう人間としてお終いだと俺は思ってる」

「それは言えますわね。………はぁ、全くいつまでこんな生活が続くんでしょうか。わたくし、このままだといつか絶対心が壊れる自信がありますわ」

「同感だ」

既に心も体も疲弊しきっている。

これ以上身近の人の死を目撃したら………と考えるとぞっとする。

「けれど、問題は減るどころかどんどん増えていますわね。例えばあの…………ジェントルマン、でしたっけ?あの人、随分とアナタに懐いてましたけど、本当に関係ない人なんですの?」

疑うようにジロリとこちらを見てくる。

「初対面だ。ジェントルマンって名前も初めて聞いた」

「それを今すぐに信じろと言われても難しいですけど………まあ、アナタが嘘をつくと思えませんし………ひとまずは信じてみることにしますわ」

「随分と信頼してくれるんだな。もしかしてお前、俺のこと………」

「天地がひっくり返ってもあり得ませんわ。馬鹿なこと言わないで下さいませ」

ふざけて言ってみたが、佐々木は嫌悪感を隠そうともせず言い切った。

だろうな。俺が逆の立場でもそう言うよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アナタを信用すると言ったのは、これまでの裁判で結果を出してるからにすぎませんわ。それがなかったらわたくし、アナタなんかと口も聞きたくありませんもの」

「はいはいそうかよ………ん?誰かいるぞ」

無駄口を叩きながら食堂に入ると、厨房に誰かがいるのに気がついた。

「………あれ?夢寺様に莉央奈様。おはようございます」

厨房から出てきたのは、お玉を手に持った綾辻だった。

「おはよう、綾辻」

「アナタ、いつもこんな時間から朝食の準備をしているんですの?」

「ええ。私は手際が悪い人間なので、人より早めに動くことを心がけているんです」

そう答える綾辻の目元にも隈が出来ていた。

やはり彼女も眠れなかったのだろうか。

「それに…………もう円城寺様もいらっしゃいませんし、天草様も………その………あんな状態になってしまったので………。私が頑張らないといけないと思いまして」

俺は昨日のジェントルマンの姿を思い浮かべる。

あいつが何を考えているのか分からないが、人の殺人を手伝い、おまけに人の命を何とも思っていないという倫理観が破綻している奴だ。

俺達に協力する可能性は限りなく低いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そうだよな。じゃあ食事当番は………」

「現状、私しかいない状態になります。ですが、皆様のお手を煩わせるわけにはいきませんので、私1人でも大丈夫です」

「いや、そういうわけにはいかないだろ。綾辻1人に負担させるわけにはいかない。俺も今日から手伝う」

流石に綾辻1人にやらせるわけにはいかないと、俺も協力を申し出る。

「夢寺様………。ありがとうございます」

「それと佐々木も手伝わせる」

「は、はあ!?どうしてわたくしが!?」

驚愕している佐々木。

「俺と綾辻だけじゃまだ人手が足りない。だからお前も手伝え」

「命令しないでくださいませ!!わたくしは嫌ですわよ!早起きは苦手なんですの!」

「今日は起きれてるだろ」

「今日は例外ですの!ぜっっっっっったいに嫌ですわ!!」

「お前、綾辻に無償で作らせて申し訳ないと思わないのか?」

「そ、それは………」

「ああそうか。もしかしてお前料理出来ないのか。なら悪かった。食事もまともに作れない世間知らずのお嬢様がいても邪魔なだけだからな」

「夢寺様………流石にそれは言い過ぎでは…………」

「大丈夫だ。任せてくれ」

これくらい煽っておけば佐々木は必ず乗ってくる。

何故なら、こいつは人のことを煽る癖に自分は煽り耐性ゼロの自称お嬢様だからだ。

「はああああああああああ!?馬鹿にしないで下さいませ!わたくし、料理超得意ですわよ!!」

案の定、佐々木は俺の挑発に乗ってきた。

「どうせそれも嘘だろ?お前が見栄を張る奴だっていうのは周知の事実だからな」

「じょ、上等ですわ!!わたくしを馬鹿にしたアナタにギャフンと言わせてやりますわよ!もしわたくしの方が料理出来たならアナタは一生わたくしの奴隷になってもらいますわ!!」

「はいはい。………というわけだ。流石に円城寺達より頼りないとは思うが、俺達もこれから手伝うよ」

「お二人とも…………ありがとうございます」

深く礼をする綾辻。

こうして新たな食事当番が決まり、早速俺達は綾辻の手伝いに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、俺の働きは悪くは無かったと思う。

綾辻からの指示をしっかりこなし、無事に料理を完成させる事が出来た。

そして肝心の佐々木だが………はっきり言って足手纏いだった。

一生懸命やろうとする意思は伝わるのだが、いかんせん不器用なため、野菜を切る事すらままならない。

俺は早々に佐々木に料理を担当させるのを諦め、料理を運ぶ担当に回ってもらった。

………よくあれで大口を叩けたもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食の時間が近づいてくると、徐々に人が集まり始めた。

「おはようであります。………あれ?夢寺氏、今日は早いでありますね」

眼鏡を拭きながら入ってきた写実は、やはりいつもより顔色が悪い。

「ああ。今朝食担当が綾辻しかいないんだ。だから俺が代わりに朝食担当として今日から手伝うことにした」

「そ、そうでありました………。円城寺氏もいないし、天草氏は頭がおかしくなって………某にも手伝える事はあれば何でも言って欲しいであります!」

「助かる。だがひとまず今は大丈夫だ。人手は足りてるしな。必要があれば呼ぶよ」

「分かったであります!………ん?人手が足りてる……?今何人朝食担当はいるのでありますか?」

「俺と綾辻と佐々木の3人だ」

そう俺が言った時だった。写実が突如俺の肩を掴んできた。

「お、おい!?」

「そ、それって………は、ハーレムということでありますか!!ず、ずずずずるいでありますよ夢寺氏ぃ!!」

「…………」

………本当にブレないな、こいつは。

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんでありますかそのゴミを見るような目は!夢寺氏だけ抜け駆けして女の子と交流なんて………男の風上にも置かないであります!某ら非モテ同盟を締結した仲じゃないでありますか!」

「誰がいつそんな同盟を結んだんだ。というか俺達はただ朝食を作るために集まっただけだ。お前の考えてるようないかがわしいことは一切してない」

「う、嘘であります!あんな狭い厨房の中で何も起こらない筈もなく………って展開が絶対起きてるであります!きっとどさくさに紛れて2人の色々な所をお触りしたり、しまいには2人を調理するところまで…………よ、よし!なら某も手伝うであります!それてさりげなく綾辻氏と莉央奈氏の体をお触りするであります!」

「お、落ち着けって!?」

俺がなんとかして興奮している写実を宥めている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや。朝から賑やかやねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背筋がぞっとするような声。

俺は反射的に声がする方を向いた。

「うちにもその話、詳しく聞かしてもろうてもええ?」

「こ、これは薬師院氏。お、おはようであります」

隣にいる写実は汗をダラダラと流している。

そして俺も、一瞬で冷や汗が出るのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と写実の両方が今、薬師院の登場で焦ってる状態ではあるが、その理由はそれぞれ根本的に違う。

それは、写実は今の話を薬師院に聞かれて怒られるかもしれないという恐怖から焦っているのに対し、俺は裏切り者である薬師院月乃という存在自体に警戒しているという違いだ。

「夢寺はんもおはようさん。………ん?どうしたん?うちの顔そんなにじっと見て」

そして薬師院は、何事もなかったかのように俺に挨拶する。

「………ん?あ、ああ。おはよう薬師院」

「目の隈さらに酷くなってるけど、大丈夫なん?」

「いや、大丈夫だ。心配かけてすまない」

お前のせいだ、ともみんながいる前では言えず、俺はひとまずそう返す。

「そう?ならええけど。………さて写実はん。さっき随分と話してたこと、もう一回うちの前で聞かせてもらいたいんやけど?」

「ひ、ひぃぃぃ!?わ、分かったであります!分かったから耳引っ張らないで欲しいであります!!」

「そう?なら自分で席に座ってな」

「は、はいいいいい!!!」

逃げるように席へと向かう写実を見ながら、薬師院は微笑みを浮かべ俺の横を通り抜けようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あかんて、夢寺はん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

すれ違う瞬間だった。

薬師院は俺にだけ聞こえるような小声でそっと耳打ちしてきた。

「そんな不自然な演技しとったら、すぐバレてまうで?もっと自然に振る舞った方がええと思うよ♪」

「………うるさい」

「ま、うちはバレても別にええけど…………夢寺はんはそうはいかへんよなあ」

「………」

「ふふ、うちからの優しいアドバイス、ちゃんと分かってもらえたみたいで嬉しいわあ♪ほな、今日もよろしゅう♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言い残し、薬師院は離れて行った。

……確かに、腹が立つが薬師院の言う通りだ。

みんなにあいつが裏切り者であると知られないよう、俺はふるまう必要がある。

もし知られたら………あいつは何をしでかすか分からない。

もしかしたら誰かを殺すことだってあるかもしれない。

それだけは絶対に避けなければならない。

俺の行動でみんなの命が守れるのなら、なんだってやってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の集合時間になった。

全員揃ってはいないが、ひとまず朝食を食べ始めることにする。

「いねーのは………飛鳥と天草、それに結城の3人か?」

雷哉が周りをキョロキョロ見渡す。

「まー天草の奴はこねーだろ。どうせ今もジェントルマン、だっけか?アイツの人格のままだろ?」

「八尋、あさみたのって………」

「お前に言われなくても分かってますよ。………今朝、食堂に向かう時に僕と千尋は天草さんを見かけました。千尋が声をかけようとしたら、訳のわかない声を叫びながらどっかに走って行ってしまいました。ほぼ確実に昨日と同じ状態でしょう」

静かに食べる八尋と、不安そうに八尋を見る千尋がそう証言する。

「えっと、では結城様は………」

「結城殿は、昨日の裁判で相当心身ともに疲弊した様子だったでござる。今、拙者らの元に姿を現す程の余裕がないのかもしれないでござる」

相変わらず異常な量を食している不知火はそう予想する。

確かに桃林が処刑された後の結城の様子からして、しばらく立ち直るのは難しそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、ではスリサンはどこデスカ?スリサン、朝ごはん今まで絶対来てましたヨネ?」

「ああ、飛鳥のことなんだが………」

ハルクの問いに対して俺は、昨日飛鳥と話したことをみんなに伝えた。

「じゃあ、飛鳥様はもう私達と一緒に行動することはないということでしょうか………?」

「そうなるな。俺も止めようとは思ったんだが、飛鳥の心情を考えると、無理に止めるのはよくないと思って強く言えなかった。すまない」

「夢寺はんはなんも悪ないって。飛鳥はんは円城寺はんっていう大事な家族を亡くしたんやし、そんな飛鳥はんに無理強いするのは良くないことくらい、ここにいるみんなは分かってると思うで」

「…………ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が円城寺が殺される原因を作った癖に、よくもそんな台詞をペラペラ喋れるな。

そんな言葉は当然、今俺の口からから出すことはできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもいいじゃねーか。別にオレらの敵になるわけじゃねーんだし。それよりもひとまずオレらが真っ先にやんなくちゃいけねーことは………」

「ジェントルマンをどうするか、ですわね」

「おい!?俺のセリフ奪うなよ佐々木!!」

「莉央奈、ですわ!………殺人幇助のプロなんて、いるだけでわたくし達の身に危険が及ぶのは明らかですわ。皆さんもそう思いますわよね?」

悲しそうな顔をする雷哉を睨み、佐々木はみんなに呼びかける。

「危険だということには同意しますが、具体的どうするつもりですか?あの人、異常な身体能力の持ち主なのでしょう?」

「んなの、オレとハルクの2人で十分だろ?なあハルク?」

「勿論デース!ワターシ、喧嘩屋サンの2人いれば百人力デース!」

「それ、自分で言うんでありますね………」

「オレらで取り押さえてどっかに監禁しときゃいいんだよ。な?」

ジェントルマンを力で押さえる、か。

果たしてそう簡単にうまくいくのか………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ…………皆サマ朝から元気ですネ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると突如、テーブルの下からモノワニがゆっくりと出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

「で、出やがったなこのクソワニ!!」

「ワターシ、アナタ嫌いデース!とっととbeat itするデース!」

「おやおや、随分と血気盛んですネ。ワタシまだ何もしていませんヨ?」

途端に戦闘体制に入る雷哉、ハルクの肉体派の2人に対してモノワニは不敵な笑みを浮かべる。

「畜生が拙者らに何の用でござるか?生憎拙者、食事中故邪魔されると非常に気分が悪いでござる」

不知火は殺気を出して威嚇する。

「なになに、また皆サマ裁判を無事切り抜けられたということで、新たなエリアの解放のお知らせをするために来たのでございまス」

「しんえりあ………?またあたらしいところにいけるの?」

「そうでス。次は地下2階、【学習エリア】でございまス」

「学習エリア?なんですのそれは」

「前回は地下1階の運動エリアで体を動かしたでしょウ。では次は学びの時間というわけでス。よく学びよく遊ぶ。これが学生のあるべき姿ですからネ」

「僕達を監禁している人がよくそんなふざけたことを言えますね」

「では、伝達事項は以上ですのデ。詳細は直接行って確かめてみてくださイ」

八尋の怒りのこもった言葉を無視し、モノワニは去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら地下2階が新たに解放されたみたいやね」

「ど、どうするでありますか?また探索でありますか?」

「そりゃするに決まってんだろ!」

「で、でもまたトラブルとかに巻き込まれるかもしれないでありますし……」

「んじゃ、このまま何もせずに過ごせってか?オレはごめんだぜ!もしかしたら地下2階に手がかりがあるかもしれねーじゃねーか!」

「雷哉の言う通りだ」

俺も探索には賛成だったため、地下2階へ行く意思を伝える。

「このままじっとしていても状況はよくならない。なら少しでも手がかりを見つけられる可能性に賭けるべきだと思う」

「お!さすがは蓮!!オレの大親友なだけあるぜ!」

「私も賛成です。行かないことには何も始まらないですから」

「ちひろもいく!」

「ワターシもデス!!」

「み、みんな行くのでありますか………」

「アナタは行きたくなかったら行かなくていいんですわよ。1人で寂しく留守番してて下さいませ」

「お、置いてけぼりは嫌であります!!!」

結局、写実を含めた全員で探索することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では探索のペアはどうするでござるか?」

「適当にくじ引きでいいんじゃねーか?」

「いや。この際まだあまり交流がない人同士で組むのはどうだ?」

ペアがくじ引きで決まりそうだったので、俺はある目的のため、各々好きな人と行動することを提案する。

「あー、別にそれでもいいけどよ。じゃあどう決めるんだ?」

「指名制でいいと思う。俺は……………………薬師院。お前を指名する」

「あら♪」

「え………!?」

俺が薬師院を指名した途端、全員が驚きの表情を見せる。

綾辻に至っては開いた口を手で押さえる程驚いている。

「嬉しいわあ♪夢寺はん直々のご指名だなんて♪」

「おいおい蓮?まさか蓮、薬師院に惚れたんか?まったく、罪な男だぜ!」

脇腹を肘でガツガツ突いてくる雷哉。

「断じて違う。ただあまり薬師院と話したことがないから、せっかくの機会にと思っただけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘だ。

本当の狙いはただ一つ。

裏切り者を自称するこいつを監視するためだ。

 

 

 

 

 

 

 

「それで?薬師院はどーすんだよ?」

「勿論ええよ♪夢寺はんからの熱いラブコール、答えんわけにはいかへんからな♪」

「ヒューヒュー!!」

「黙れ」

こいつから目を離してはいけない。

俺のためにも、そしてみんなのためにも。

「そういうことならじゃあオレは…………八尋!!一緒にいこーぜ!」

「…………指名は拒否してもいいんですか?」

「おい!?ひでーなせっかく声かけたのに!!」

「………はぁ。わかりましたよ。どうせ断っても無駄ですしね」

「じゃあちひろはりおなといくー!」

「ちょ!?くっつかないでくださいませ!?」

「では某は………隣で呆然としている綾辻殿と行くでござる。………綾辻殿?」

「夢寺様が…………薬師院様を………」

「ああ………続々とペアが決まってるであります。これが陰キャの宿命………必ず余る運命であります………」

「カメラマンサン!ワターシといきまショウ!!!」

「…………………泣いていいでありますか?」

こうしてペアが決まった俺たちは、分かれて探索を始めた。

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

地下2階

 

 

 

 

「ははーん。これはまた壮大な建物やなあ」

「………」

エレベーターで地下2階へと向かうと、俺達を迎えたのは白い建物が複数立ち並ぶ光景だった。

「んーと、あるのは【美術館】、【図書館】、【映画館】、【科学館】、【音楽館】やって。どっから行く?」

「………」

「夢寺はん?聞いとる?」

「………ん?あ、ああ。まずは【音楽館】からだ」

「わざわざ一番遠いところ選ぶなんて………もしかしてうち、人気のないところでなんかされるん?怖いなあ、うち、まだ嫁入り前なんやけど♪」

「ふざけるな。お前には聞きたいことが山ほどある。そのためだ」

「んもう、冗談やって。そんな怒らんといて♪」

これ以上ヘラヘラした態度を取るこいつと話しても怒りを覚えるだけなので、早足で目的地に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽館

 

 

 

音楽館の中に入ると、まず目の前にあったのは大きなコンサートホールと中央にあるグランドピアノだ。

グランドピアノは上空にあるスポットライトで照らされている。

そして同じく天井には、煌びやかなシャンデリアが飾られている。

一体、モノワニがこの場所を用意した意図はなんだろうか。

「夢寺はん。こっちに楽器室があるで」

ステージ横の扉から薬師院がこちらに手を振っているため、俺は言われた通り向かい、中に入ってみる。

「すごいなあ。楽器なんでも揃ってるんちゃうん?」

中には名前の通り、ありとあらゆる楽器が揃っていた。

トロンボーン、クラリネット、大太鼓、鉄琴、エレキギターにドラム、コントラバス………。

「これ、全部楽譜みたいやね」

そして壁には楽譜らしきものが所狭しと詰め込まれていた。

試しに何冊かめくってみるが、音楽に疎い俺はほとんどの曲を知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………薬師院」

「………ん?どうしたん?」

「ここならしばらくは誰も来ないだろう。お前には色々聞かなくちゃいけないことがある」

俺はこのタイミングでしかないと思い、薬師院に話しかけた。

正直、昨日聞いた話を俺は完全には信じられなかった。

少しお茶目な一面もあるが、冷静で、この中の誰よりも大人びていて、いざという時に頼りになる薬師院が、俺達の敵であることを、俺は信じたくなかったのかもしれない。

「んもう、せっかちやな♪それで?夢寺はんは何を聞きたいん?」

「お前は…………本当に裏切り者なのか?」

裏切り者であるということを否定してくれる可能性を信じて、俺は改めて問いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうやで。信じられんかもしれへんけど、紛れもない事実や」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その淡い希望は打ち砕かれた。

薬師院は堂々と、自分が裏切り者であると宣言した。

「………昨日言っていた、桃林にジェントルマンの存在を教えたのもお前か」

「その通り♪ちなみに天草はんにジェントルマンの記事を届けたのもうちやで♪理由はジェントルマン覚醒のきっかけを作るためや。ま、これくらいなら夢寺はんは言わなくても分かると思うけど♪」

「!?」

つまり、もう一つの人格であるジェントルマンの意識が完全に覚醒するトリガーがあの新聞で、人格が入れ替わったのもこいつが原因だってことか………!

「お前…………一体何がしたいんだ」

「それも昨日言ったやろ?うちは人間観察が大好き。この閉鎖的環境で人間はどうなるのかを観察したい。そのためには殺人が起きてもらわなあかん。だからモノワニに協力する。シンプルな理由や思わへん?」

「どこがだ!俺はお前が理解出来ない!自分が死ぬ可能性があるのに呑気に人間観察?同級生である俺達を殺そうとする敵側につく?俺には何一つ理解出来ないんだよ!」

常人には理解出来ないことをペラペラと喋る薬師院に俺の言葉も思わず強い口調になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱええわあ♪夢寺はんのその冷静に見えて意外とムキになるとこ♪益々興味がそそられるわぁ♪」

「!?」

しかし、薬師院は全く気にする様子はなく、寧ろ嬉しそうにこちらに顔を近づける。

「一つ忠告。夢寺はん、もしみんなを守りたいのなら、()()()()()()()()()()()()を勧めるで」

「………どういう意味だ」

「それは自分で考えた方がええんちゃうん?その方が自分の力になると思うし、それにすぐ答え教えたらおもろないやん♪」

「…………」

「とにかく、今はうちとの秘密、みんなにバレへんようにな♪」

そう意味深な言葉を言い残すと、薬師院は部屋を出て行ってしまった。

「…………」

俺は冷静さを欠いていたことを自覚し、一度深呼吸をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間観察………。

あいつが俺にアドバイスしてきた意図は分からない。

だが、意味はなんとなく分かる。

俺はあいつの言われた通り、()()()()()()()()()()してやる。

あいつがこれ以上、妙な真似をしないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風神、八尋ペア

(風神視点)

 

 

 

 

科学館

 

 

 

「んだこりゃ!?でっけー建物だな!」

オレと八尋は中央にあるやたらとでっけー建物にやってきた。

真っ白で真四角の建物。

正直、オレこういうキッチリカッチリした建物苦手なんだよな。

なんかこう………もっと男心をくすぐる路地裏のボロい建物みたいな、スラムっぽいやつの方が好きだぜ。

「何をぼけっとしているんですか。早く中に入りますよ」

隣の八尋にそう言われてオレは慌てて入口に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

なーんか八尋の奴、いつもより機嫌が悪ぃんだよな。

まーぶっちゃけ、コイツはいつも仏頂面だし、機嫌がいい時とかあるか正直わかんねーけど。

オレが今回八尋を誘ったのは、その理由を聞き出すためだ。

兄貴ポジションのオレが話を聞けば、きっと八尋も悩みを打ち明けてくれんだろ。そうすればトラブルも起きねーし万事解決だろ。

オレもそろそろ蓮みたいに活躍してみんなを守んねーとな。

 

 

 

 

 

 

 

「………入口はゲート式ですか。パスポートをかざせば入れる形ですね」

科学館の入口には電車の改札みてーなものが置いてあった。

これに自分のパスポートをかざせば入れるみてーだ。

「プールのやつと同じってことか?」

「そうみたいですね。それにほら、またログが見れる機械が壁に付いていますよ」

なるほどな。これで入場と退場を記録してるってことか。

流石のオレでも2回目だから理解出来るぜ。

オレと八尋はパスポートをタッチして中に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。この施設は、①歴史コーナー②自然コーナー③科学技術コーナーに分かれているみたいですね」

正面にある案内図を見る八尋。

「ほーん。なんか見てるだけで眠たくなってくるぜ」

「貴方は適当に見ていたください。僕が手がかりがないか回ってきます」

「お、おい!?」

八尋はオレを放置して勝手に奥に行っちまった。

ったく、少しくらいオレと会話してくれてもいいと思うんだけどな。

まあいっか、オレも手がかりないか探してみっか。

 

 

 

 

 

 

「ふわあ……………」

オレはとりあえず、適当に①歴史コーナーを回ってみる。

………が、難しい話ばっかでよく分かんねー。

それに死ぬほど興味ないしめちゃくちゃ退屈だぜ。

なにせ内容は、『日本の生い立ち』とか、『人類の進化』とか何言ってるかよく分からん難しいことばっかだからな。

オレ、こういう勉強マジで嫌いなんだよなあ………。

だったら体動かす方が100倍マシだぜ。

「風神さん」

そんなことを考えていると、後ろから八尋に声をかけられた。

「あん?どうしたんだよ八尋」

「来てください」

八尋はオレにそう言うと早足で歩き出した。

「おい!?どうしたんだよ!」

「………」

オレの問いかけに答えず、八尋は歩き続ける。

「おい待てって!!」

「ここです。これを見てください」

ようやく止まった八尋が指差した場所をオレは素直に見る。

するとそこには、【ソルジャー化実験】なんて書かれた実験のデータやらなんやらがごちゃごちゃ書いてあった。

「んだよこれ?『そるじゃー』………?」

「名前はどうでもいいです。それより気になるのは、この『利点』そして『副作用』です」

 

 

 

 

 

 

 

・ソルジャー化実験によりソルジャー化した子供は、身体能力が飛躍的に向上し、常人を遥かに超えた力を手に入れることが出来る

 

 

 

 

・また、もう一つの人格を埋め込むことにより、更なる身体能力の向上を促すことが出来る

 

 

 

・しかし、副作用として、肉体が脆く壊れやすくなること、人格が入れ替わる度に酷い頭痛に襲われ、場合によっては気を失ってしまうこともあることが確認されている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………こりゃ物騒な実験だな」

この『ソルジャー化実験』っつうのはよくわかんねーけど、子供を利用する時点で最低な実験だってのはオレでも分かるぜ。

「んで?これがどうしたんだよ?オレらにはあんま関係ねーんじゃねーの?」

「………ここをよく見てください。思い当たることがあるでしょう」

八尋は何言ってんだコイツみたいな視線をオレに向けて、ある文章を指差す。

「んだよ?えーっと………『人格が入れ替わる度に頭痛に襲われ、場合によっては気を失う』?これがなんだって……………あ!?」

そうじゃねーか。これって…………。

「……天草ん時とおんなじじゃねーか」

最初の裁判の時、確か天草はチャイムが鳴った瞬間に頭を押さえながら苦しんでた。

「そうです。この記述が本当なのであれば、天草さんは…………この『ソルジャー化実験』によってもう一つの人格、つまりジェントルマンの人格を埋め込まれた被験者である可能性が極めて高い。つまり、彼は『絶望側の人間』なんです」

「けど待てよ。この『ソルジャー化計画』が絶望側が立てたものだとは限んねーだろ?」

「こんな非人道的な計画、絶望側の人間が考えたものに決まってるでしょう。それともあなたは、これが希望側の人間が考えたものだと思ってるのですか?」

「いやまあ、それはそうだけどよ………」

「そんな人間が僕達の中に紛れてるなんて、考えもしませんでした。これから先、僕達はより一層、仲間も疑うべきです。でなければ…………間違いなく僕達はこのまま全滅します」

八尋は珍しく怒りの表情を浮かべてやがる。

………なんかやっぱ、八尋らしくねーんだよな。

いつもの冷静な感じじゃねーつうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ八尋。オメーなんか変だぞ?なんかあったのか?」

「………」

八尋はオレの質問に対してため息をつく。

「…………別になにも。僕はただ心配してるだけですよ。何も進展がないまま5人も死んで、さらに人が死ぬ可能性があるんですよ?逆にあなた達が楽観的すぎるんじゃないですか?」

「………もしかして、オメーが心配してんのって千尋か?」

「!?」

オレがふと思いついたことを言ったら、八尋の顔色が明らかに変わった。

「やっぱそういうことかよ。そりゃ双子の妹だし、心配するよな」

「………あなた、普段は馬鹿なのにこういう時だけ勘が鋭いんですね」

八尋は諦めたようにため息をついた。………ちょっと待て。オレ今馬鹿にされたよな?

 

 

 

 

 

 

 

「その通りですよ。僕は千尋を守る義務がある。兄として僕は千尋を死なせるわけにはいかないんですよ。あいつは危なっかしくて、人を疑わない馬鹿正直な奴だから、僕が守らないとあいつはいつか必ず殺される。だから僕は新たな危険分子が現れたことに危機感を抱いているんです」

八尋は深くため息をつく。

「でもオメー、千尋に対していつも冷てーじゃねーか。てっきり仲が悪いと思ってたぜ」

「…………あれは、僕からあいつを引き離すためです。口が悪くて人との付き合い方が上手くない僕は、いつか人から恨みを抱かれるかもしれない。その時、僕と一緒にいたらきっと千尋も標的にされるかもしれない。だからあいつには僕から離れてもらう必要があったんですよ。少しでも千尋の生存率を上げるためにね」

なるほどな。

単に八尋は千尋のことを心配してただけだったんだな。

けど意外っちゃ意外だな。八尋はてっきりガチで千尋のこと嫌ってると思ったから、正直びっくりだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうことかよ。かっけえじゃねーか八尋」

「?なんですか急に」

「だってよ、自分のことより千尋のこと大事にしてんだろ?最高に男らしいじゃねーか。オレも見習いたいぜ」

オレは素直に八尋に気持ちを伝える。

それに対して八尋は訝しむような目を向けてくる。

「んだよ?照れてんのか?」

「どこをどう見たらその結論に辿り着くんですか?あなたを不審に思ってるんですよ。対して親しくない人間に急に褒められたら、誰でも今の僕みたいな態度をとると思いますけど」

そう言って八尋は別の場所に言っちまった。

あんなこと言ってるけど、本当は照れてんだな。

 

 

 

 

それにしても、天草が絶望の人間か………。

確かにジェントルマンの野郎は相当ヤベー奴だし、納得出来るけどな。

………まあ、大丈夫だろ。

いざとなったらオレがなんとかするさ。

オレは最強だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐々木、千尋ペア

(佐々木視点)

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふーん♪」

「あの…………千尋サン?」

「ん?どうしたのりおな?」

「何故わたくしとアナタは手を繋いで歩いているんですの?」

「だって千尋、りおなともっとなかよくなりたいんだもん!」

「は、はあ………」

わたくし、佐々木莉央奈は隣でウキウキしながら歩く北桜千尋サンに指名され、ペアで探索をすることになりました。

正直、何故わたくしが千尋サンに指名されたのか分からず困惑してる状態だったのですが………。

「………もしかしてアナタがわたくしを指名した理由って…………」

「ん?りおなとたくさんはなしてなかよしになりたかったからだよ!だってりおなとあんまりはなしたことないでしょ?」

………はあ。

深く考えたわたくしが馬鹿でしたわ。

そんな単純な理由だったとは思いもしませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

「………千尋ね、すっごくこうかいしてるんだ」

すると突如、千尋サンは声のトーンを落とし悲しそうな表情でそう呟きました。

「後悔?」

「もっと千尋がりんごとなかよくなっておけば、りんごがなやんでれいやをころすことなんてなかったかもしれないって」

「…………」

「もしなかよくなってれば、りんごが千尋にそうだんしてくれたかもしれないでしょ?」

なるほど。

千尋サンは桃林サンともう少し仲を深めておけば事件が起こらなかったと考えていますのね。

しかし………ハッキリ言って仮に千尋サンが仲良くなっていたとしても無意味だ、とわたくしは考えています。

あの女の捻くれた性格は生まれつきでしょうし、いずれ円城寺サンでなくても誰かとトラブルを起こして殺人事件を起こしていた可能性が極めて高いと思いますわ。 

……………なんて言うのは野暮、ですわね。

 

 

 

 

 

 

「………アナタがわたくしを誘った目的が分かりましたわ。でしたら是非わたくしとお喋りしましょう。わたくしもあんな殺人事件、2度とごめんですから」

「ほんと!やったあ!!」

千尋サンはわたくしの手をぶんぶん振り喜んでいます。

殺人事件なんて2度とごめんだ。

わたくしもその気持ちに嘘偽りはありません。

それに…………この子をはじめとする皆サンの笑顔が狂気に変わる瞬間を見るなんて、まっぴらごめんですから。

 

 

 

 

 

 

図書館

 

 

 

 

「わあ!みてみて、ほんがたくさんあるよ!!」

「そりゃ図書館ですからね。さあ行きますわよ」

図書館の入口はゲート式になっていて、自身のパスポートをかざすと入れる仕組みになっていますわね。

地下2階のプールと同じ………。プールと聞くとあの事件のことを嫌でも思い出してしまうから嫌ですわ。

中には壁にぎっしりと詰まった本、それに本棚が5つ、さらには閲覧用の机や椅子まで置いてありますわね。

「でも、こんなにたくさんあるとさがすのたいへんだね?」

「それは仕方ないでしょう。分担して手がかりを探しますわよ。その方が効率的ですわ」

話し合った結果、わたくしが時計回り、千尋サンが反時計回りで見ていくことにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はあ。そう簡単に見つかるとは思っていませんでしたけど………」

探索を初めて1時間。

本棚にある本を一つずつ丁寧に確認していますが、未だに手がかりらしきものは一つもありません。

なんでもいいから何か見つかれば、わたくしとそこで飽きて本を読んでいる千尋サンのモチベーションも上がると思いますが………。

「………ふぅ、ここにも何もありませんわね。次はどこを…………えっ?」

わたくしがため息をつきながら軽く本棚に手をかけたその瞬間でした。

突如わたくしの隣にあった本棚が動き出し、謎の入口が出現したではありませんか。

「こ、これは………!」

「どうしたのりおな?なんかおとがきこえたけど………ええ!?」

わたくしの様子を見に来た千尋サンも目を見開いています。

どうやら本棚にある本がスイッチの代わりになっていて、わたくしはそれを押してしまったようです。

「すごいよりおな!だいはっけんだね!!」

「そ、そうですわね。わたくしにこの程度の隠し部屋、発見できないはずがありませんわ!」

偶然見つけたことは伏せ、千尋サンにはそう説明しておきます。

純粋無垢な千尋サンを騙すのは少々心苦しい気持ちになりましたが………。

とにかく、わたくし達は警戒しつつ、出現した小部屋に足を踏み入れました。

 

 

 

 

 

 

???

 

 

 

 

中に入ると、本ではなくファイルのようなものが入った本棚がわたくし達を出迎えました。

「すごーい!かべいちめんにはいってるね!」

「ええ。とんでもない量ですわね………」

とはいえ、わざわざ隠し部屋を作ってまで保存してあるファイル。

きっとなにかしらの重要な手がかりがあるはず。

わたくしの勘がそう言っていますわ。

ひとまずわたくしは適当なファイルを手に取りパラパラめくってみます。

「……………これは!?」

ファイル名は「xxxx年 殺人事件ファイル」と書かれており、中には今まで起きた殺人事件の詳細が細かく記載されていました。

「なんて物騒なものを置いてるんですの。………しかも写真付きなんて」

あまりにもグロテスクな写真にわたくしは気分を悪くしないうちにファイルをしまいました。

「ねえりおな。これって………」

「千尋サン。そのファイルは見ない方がよろしいですわ」

同じようにファイルを開いて顔が青ざめている千尋サンにそう言って、彼女のファイルも元の場所にしまいます。

「大丈夫ですの?気分が悪かったら外に出てもいいんですのよ?」

「………う、ううん。ちょっとびっくりしただけだから。千尋もがんばっててがかりさがすよ」

「分かりました。でもくれぐれも無理はしないでくださいませ」

千尋サンの意思を尊重し、引き続き2人で小部屋の探索に取り組みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ん?」

すると、わたくしは色の違うファイルが本棚の端にあることに気がつきました。

早速手に取り、中を見てみます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【絶望軍 ソルジャー量産計画】

 

 

*この計画書は極秘とし、関係者以外の閲覧を禁止とする。

 

 

 

 

 

概要

 

この計画の最終目的は、小学4〜6年生の子どもを「ソルジャー」として改造、育成し、量産することで、軍隊を作り、戦力を増強することである。

現在、私達絶望側は劣勢に立たされており、いずれ未来機関を始めとする希望側に戦力差で押し負けてしまう可能性が非常に高いため、少しでも戦力を強化する必要があるためである。

「ソルジャー」となった子どもは身体能力が常人の約3倍にも上昇し、その戦闘力は成人男性5人分にも匹敵することが既にデータにより明らかとなっている。そのため、この計画が無事成功すれば、たちまち戦力差はひっくり返るであろう。

よって、上記の計画の前段階として、近々「ソルジャー化実験(仮)」を開始する予定である。

詳細については以下の通りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソルジャー化実験

 

 

対象者

 

 

10歳〜12歳の小学生50人

 

 

 

 

 

①新たな人格の埋め込み

 

独自開発した装置、そして過酷な環境に対象者を置くことによって、より凶暴な「もう一つの人格」を目覚めさせる。

所謂「二重人格」の状態になるが、上記のようなことを実行する理由としては、一つの人格を持つ人間より身体能力が向上するというデータがあること、そしてこちら側の作戦(人格を使い分け敵地に潜入等)に幅が広がるからである。

 

 

 

 

 

②脳のリミッター解除

 

人間の脳というのは、自身の力で骨や筋肉が破壊されないように、普段から制御装置(リミッター)として、本来の20〜30%しか力が出せないようコントロールしている。

今回の実験では、継続的な薬品投与により脳のリミッターを長期間かけて外していき、最終的には常人の力を遥かに上回るような身体能力を身につけさせる。

なお、身体の耐久性については微調整が必要だが、最終的には不要品として処分される予定であるため、特別な考慮は不要である。

 

 

 

 

 

 

(ここから先は紙が破り取られている……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………これは」

「りおな?どうしたの!かおがまっさおだよ?」

紙を持つ手を震わせていると、千尋サンが心配そうに声をかけてきます。

しかし、今は返事をするどころではありませんでした。

「……………これは由々しき事態ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾辻、不知火ペア

(綾辻視点)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、綾辻澪は、ずっともやもやした何かを心に秘めながら考え事をしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………夢寺様が、探索のペアとして薬師院様を選んだ。

一体何故、夢寺様は薬師院様をお選びになったのでしょうか。

夢寺様曰く、「普段あまり交流がない人と探索がしたい」とのことでしたが………本当にそうなのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通に見れば、夢寺様の言い分はおかしなところはないと思ったかもしれません。

しかし私は、どうしても腑に落ちない部分があります。

それは、夢寺様の表情です。

普通、親しくなりたい方を誘う時、人間は明るい表情になると思います。

けどあの時の夢寺様は………とても友好的な態度には見えませんでした。

いつも見せてくださる優しい笑みなど一切浮かべず、険しい表情で薬師院様とお話されていました。

仲良くなりたいというより、何かに警戒しているような感じに私は見えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしかしたら…………夢寺様と薬師院様の間で何かあったのでしょうか。

それに、険しい表情とかも単に私の気のせいで、もし2人が実はより親密な関係を築いていて、気づかれないように嘘をついた、なんてことだったら………。

…………ああもう、ここ最近このような事ばっかり考えてしまいます。

そんな呑気な事考えてる場合じゃないのに…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…………止まらないんです。

このもやもやした感情………私もその正体はとっくに分かっています。

それは…………「嫉妬」です。

夢寺様が他の女性の方とお話されているとどうしても気になってしまうんです。

私も話したい。ずるい。他の方と話さないで。私だけを見て。

そんな醜くて浅ましい感情が溢れ出てきてしまうんです。

本当に、私は最低な人間です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、夢寺様に恋をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一目惚れ、でした。

最初に命を助けてもらってから、ずっと夢寺様を目で追っていました。

こんな馬鹿でなんの価値もない私を自分の命も顧みず助けてくれた夢寺様が、私に気を遣って話しかけてくれる夢寺様が、裁判で幾度となく私達を救ってくれた夢寺様が、どうしようもなく好きなんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど、私は自分の想いを伝えるつもりはありません。

この感情は…………絶対に表に出してはいけないんです。

こんな死と隣り合わせの場所で過ごしている最中、呑気に恋をしているなんて夢寺様や皆様に知られたら、きっと幻滅される。

それに………昨日の桃林様の例もあります。

あの方は、色恋に狂った結果、関係のない円城寺様の命を奪い、飛鳥様を傷つけ、結城様を傷つけた。

恋が時には人を狂わせるということを皆様は理解したでしょう。

だから、私は、この感情をひたすら心に秘めるんです。

もう、決して夢寺様達に迷惑をかけるつもりはありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の裁判後の桃林様からの言葉を今でも覚えています。

あの方は私に、『男に恋したことすらない芋女』と仰いました。

その言葉に、私は何故か心の底から怒りが沸き、つい強い口調で言い返してしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、恋をしている。

けど、貴女とは違う。

私のこの恋心は誰にも否定させない。

そして…………私は全力で夢寺様を守る。

たとえ何があろうとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綾辻殿!」

「えっ!?」

「どうしたのでござるか?拙者の呼びかけにも全然答えてくれない故」

「も、申し訳ありません。少し考え事をしてしまって………」

すると、隣を歩いていた不知火様に肩を叩かれながら声をかけられていることに気がつきました。

どうやら、先程から不知火様からずっと呼びかけられていたみたいです。

「………何か困り事でござるか?」

「いや、大した事じゃないんです。すみません、気を遣わせてしまって」

「綾辻殿が謝ることではござらん。拙者らは同じ希望ヶ峰学園の新入生。困り事があれば互いに助け合うのが当たり前でござる」

「ありがとうございます………。不知火様は立派でいらっしゃいますね」

「世辞が上手いでござるな、綾辻殿は」

不知火様は優しい方です。

途中から参加された方故にその正体を疑われている方もいらっしゃるようですが、少なくとも私は信頼に値する方だと思っています。

「では、中に入ってみるでござる」

「はい」

とにかく、今は探索に集中しなくては。

気合いを入れ直し、私達は、目の前にある美術館に足を踏み入れました。

 

 

 

 

 

 

 

美術館

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはまた……………」

「拙者、芸術については存じ上げぬでござるが、これが趣味が悪いことだけはよく分かるでこさる」

電車の改札のような入口にパスポートをかざして入った私達を出迎えたのは、巨大なモノワニの銅像でした。

私も芸術に明るい方ではないですが、正直言って不知火様の言う通りだと私も思ってしまいました。

それに、自身の巨大な銅像を作りそれを一番目立つ場所に飾る、なんていう趣向が私には理解不能です。

「綾辻殿。どうやら壁一面にある絵画は全てあの畜生の自画像みたいでござる」

そして信じられないことに、壁面に飾られていた絵画の全てが、モノワニを描いたものでした。

「……一応、全体を回ってみましょうか」

「……承知」

私達は大きなため息をつきつつ、他の場所も見て回ることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間の無駄だったようでござるな」

「仰る通りです」

その後、私達は他の場所を見て回りましたが、全ての作品がモノワニに関係するものでした。

はっきり申し上げますと、見てて不快なものばかりでした。

「では最後のコーナーを見たら出ましょうか」

「承知」

私達は残った最後のコーナーに足を踏み入れます。

「!?」

「…………これはあの畜生の絵ではないでござるな」

飾られていたのは今までで一番巨大な油絵でした。

描かれていたのは5人の男女。

見覚えのある人物は少なくとも1人もいません。

………いえ、重要なのはそこではありません。

「この風景………」

()()()()()()()()()()でござるな」

不知火さんの言う通り、この風景は見覚えがあります。

何故ならこの絵は………()()()()()()()()5()()()()()、そして()()()()を描いているのですから。

「この生き物はモノクマでござるな」

「ええ。私達の先輩が巻き込まれたコロシアイの際、黒幕である江ノ島盾子が使用したマスコットキャラ………」

今のモノワニのような立ち位置のキャラであるモノクマ。

それが写っているということはまさかこの絵は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「綾辻殿。絵の下に何やら文字が」

すると不知火様が絵の下に文字が書いてあるのを見つけられました。

絵のタイトル、でしょうか。

「これは……………!?」

「綾辻殿?」

私は思わず口を押さえてしまいました。

何故なら………この絵のタイトルが信じられないものであったからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第88期生  第一回コロシアイ  5回目の裁判】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写実 ハルクペア

(写実視点)

 

 

 

 

 

 

「カメラサン見て下サイ!!おっきなシアターがありマスヨ!」

「はは…………そうでありますね………。ははは…………女の子と来たかったなあ…………」

某、写実真平とハルク氏のむさくるしい男2人組は、【モノワニシアター】と書かれた映画館の前に来たであります。

どうやらここは名前の通り、映画を見れる場所みたいでありますが、問題はどんな映画を見れるかでありますね。

「フフフ……いらっしゃいまセ。男2人で映画館とは、随分と親しげな様子ですネ」

「ワオ!急に出てきまシタ!」

「余計なお世話であります!某だって出来るなら女の子と2人きりで来たかったであります!」

受付から顔を出したモノワニにそう言い放ち、某はすぐ中に入ろうとしたであります。

「ああ、駄目ですヨ。まずは受付でチケットを買ってもらわないト」

するとモノワニから受付でチケットをもらい、その後チケットにスタンプを押してもらってから初めて入れるという説明を受けたであります。

そういうのは早く説明して欲しかったであります………。

ちなみにチケットは入場の際に全て回収するらしいであります。

なら、わざわざチケットをもらう必要ないと思うのでありますが………。

 

  

 

 

 

 

 

 

「楽しみデスネ!カメラマンサン!!」

「ハルク氏は何故そこまでウキウキなのでありますか………」

「だってワターシ、ヒーロー大好きデス!アメリカンヒーロー、かっこいいデスカラ!」

「そうでありますか………」

結局、ハルク氏からの熱い希望で、某らはヒーローものを観ることになったであります。

……………ふむ。

スクリーンは一つで、席はそこそこ広いでありますな。

設備としてはまあまあといったところであります。

実は某、映画館には中々うるさいのであります。

アニメ映画を何十本も見てきた某は、そんじょそこらの映画館では満足しないでありますよ。

「カメラマンサン!始まりマスヨ!」

なんてことをポップコーンを食べながらぶつぶつ言っていると、映画の上映が開始されたであります。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ある2人の少年がいました。

 

 

 

 

 

 

 

1人は力が強く、性格も明るくて、みんなの人気ものでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

もう1人はひ弱で、性格も暗く、目立つのを嫌う静かなタイプでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしそんな正反対の2人は、普段からとても仲良しでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、年が経つにつれて、その立場は逆転しました。

 

 

 

 

 

 

静かな少年は、その冷静な性格と優秀な頭脳を生かして、みんなを引っ張るリーダーとなりました。

 

 

 

 

 

 

 

一方明るかった少年は、力こそあったものの、頭脳はもう1人に遠く及ばず、みんなの役に立つことが出来ていませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力のあった少年は、徐々にもう1人の少年に嫉妬するようになっていきました。

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに力のあった少年は我慢できず、もう1人の少年に勝負を挑みました。

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の少年より自分が優れているということを証明するために。

そして、自分の存在価値を改めて示すために。

自分はみんなのヒーローであると、自分自身に納得させるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それでもなお、力のあった少年は勝てませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭脳、人望、社会での生き様。

その全てにおいて少年は完全に敗北したのです。

 

 

 

 

 

 

 

少年は発狂し、力でねじ伏せそうとしました。

しかし、それも叶わず、最後は地獄に落とされてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

少年は地獄に落ちる寸前に気がつきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、人間というのはなんて難しい生き物なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か一つでも欠けていたら、超人にはなれないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「……………」

「………お、終わってしまいまシタ………」

その時間僅か15分程。

ヒーローものであるはずの映画は、あっという間に終わってしまったであります。

「…………ど、どこがヒーローものでありますか!!?」

某は思わず立ち上がってそう叫んでしまったであります。

ヒーローものと聞いたら、1人の英雄が敵をバッタバッタと倒して最後はハッピーエンド、そんな展開を予想するのが当たり前であります!

それなのに………なんでありますかこの思春期男子のドロドロ人間関係ドキュメンタリーは!!

リアルすぎて気分が悪くなるであります!

アクションなんて、2人の最後の殴り合いくらいしかなかったであります!

「ワターシの思ってるものと少し違いマシタ………」

ほら見ろであります!ハルク氏もあからさまにテンションが下がってるであります!

「ハルク氏。戻るでありますよ。ここにハルク氏の望む映画は恐らくないであります」

「ウゥ………。ヒーロー見たかったデス………」

どうせ他のジャンルでも、今みたいなドキュメンタリーみたいな内容を流すに決まってるであります。

「おヤ、写真サマ。それにハルクサマ。映画の方はいかがでしたカ?」

「どこがヒーローアクションでありますか!?あんなの詐欺であります!二度と見ないでありますよ!!」

「ワターシもデス!!」

「おやおや。お気に召さなかったようデ。ですが

他にも映画はたくさん用意してありますヨ。もしかしたら写実サマ達に合う映画があるかも………」

「行くでありますよ!ハルク氏!」

「は、ハイ!」

某らはモノワニの言葉を最後まで聞かず、映画館をあとにしたであります。

ふん、時間を無駄にしたでありますな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生存者

 

 

 

 

 

 

 

1.飛鳥 圭【スリ】

2.天草 京介【神父】

3.綾辻 澪【軍医】

4.円城寺 霊夜【オカルト研究家】

5.風神 雷哉【喧嘩屋】

6.北桜 千尋【ピアニスト】

7.北桜 八尋【作曲家】

8.佐々木 莉央奈【かるたクイーン】

9.写実 真平【カメラマン】

10.司 拓郎【秀才】

11.百々海 真凛【水泳部】

12.乃木 環【???】

13.ハルク ゴンザレス【ボディービルダー】

14.桃林 林檎【グルメリポーター】

15.薬師院 月乃【女将】

16.結城 晴翔【バトミントン部】

17.夢寺 蓮【マジシャン】

18.不知火 椿【くノ一】

 

 

 

 

残り13名

 

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