ダンガンロンパ ルーナ   作:さわらの西京焼き

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プロローグ2

 

 

 

 

俺達が次にやってきたのは食堂だった。

旅館に食堂、と言われると違和感を感じるのは俺だけだろうか。

「………殺風景だな」

扉を開けると中にあったのは長いテーブルと座り心地の悪そうなイス。それだけだった。

とてもお客をもてなす旅館の施設とは思えない。

「まーメシなんかどこでも食えるしな。別にこんだけで十分だろ」

だろうな。お前はそう言うと思ったよ。

 

 

 

 

 

 

 

「あ?誰か来たのか?飯はまだ出ねーっってんだろコラ」

そんなツッコミを心の中で入れた時だった。奥にある厨房からガラの悪い男が顔を出した。  

「ちげーよ円城寺。最後の1人が目を覚ましたから色々案内してやってんだよ」

「あぁ?最後の1人?」

円城寺と呼ばれたその男は俺の方をジロリと見る。

「てめえが最後までぐーすか寝てたねぼすけか。やっとお目覚めかよ」

「ああ。悪いな、他のみんなが探索してる中最後まで寝てて」

一応謝罪は入れておく。最後まで目覚めなかったのは事実だしな。

「………へえ、案外まともな奴もいるんだな。ここには変人奇人しかいねえと思ってたから意外だ」

するとその男は感心したように俺に向けて頷く。

「てめえの名前は?」

「………ん?」

「名前はって聞いたんだよボケ」

こいつ、ナチュラルに口が悪いな。

「俺は夢寺蓮。超高校級のマジシャンとしてやってきた」

「マジシャン?ふーん、まあ才能なんてどうでもいいけどな。俺も自己紹介しとくわ」

 

 

 

「俺は円城寺 霊夜(えんじょうじ れいや)。《超高校級のオカルトマニア》だ。よろしくな、蓮」

 

 

 

 

 

 

《超高校級のオカルト研究家》円城寺 霊夜(えんじょうじ れいや)」

 

 

 

 

 

「………………」

「あ?なんだよ黙りこくって」

「いや、てっきり才能を馬鹿にされると思ってたから少し意外だった」

さっきの佐々木や司のようにまた何か言われると思っていた。

「才能なんかどーでもいいんだよ俺は。俺はただ希望ヶ峰に入れば将来が約束されるって聞いたから入っただけだ」

「じゃあオカルト研究家っていうのは………」

「俺が研究したやつをクソジジイが勝手に発表しやがったんだ。それでどっかのお偉い奴が勝手に評価してこうなった。詳しいことは知らねー」

円城寺はチッと軽く舌打ちする。

「何が《超高校級》だ。くだらねえ。誰が決めてんのか知らねーが何様のつもりなんだよ」

どうやら円城寺は《超高校級》という称号が気に食わないらしい。

「そしたら今度は攫われていつの間にかこんなクソみてえな場所に閉じ込めてるんだ。災難でしかねえよ。しかも同級生は話の通じねー奴ばっかりだし、本当に入るところを間違えたと俺は思うね」

「それについては同意だ。俺も同級生がだいぶアクの強い奴らなのはさっきよく分かった」

「だろ?とにかく俺はてめえみたいな普通の奴がいて安心したよ」

「そうだな」

俺は素直に頷く。口は悪いが、悪い奴ではなさそうだ。それに何故か親近感を覚える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれー?ヤンキーのお兄さんだー。今までどこいたのー?…………んー?それに隣にまた知らない人がいるー?」

すると厨房から小さい少女が現れた。

身長は俺よりも遥かに低い。

………本当に同級生か?

「おいコラクソガキ。今俺が喋ってたんだよ。あっち行ってろ」

「嫌だー。だってボクもこの人とお話ししたいんだもん」

「………チッ」

円城寺は大きく舌打ちをすると厨房に戻っていった。

その女子は円城寺に向けて舌を出すと俺の方を向いた。

「やったー邪魔者が消えたねー。じゃあボクとお話ししようよー。お兄さんのお名前はなにー?」

「俺は夢寺蓮。超高校級のマジシャンとしてやってきたんだ」

「マジシャンかー。…………じゃあお兄さんのこと、『はとのお兄さん』って呼ぶねー」

「………はとのお兄さん?」

意味が分からず聞き返してしまった。

「だってよく鳩使ったマジックやるでしょー?帽子から鳩が出るやつ」

「ああ、あれか。けど俺はちゃんとしたマジシャンじゃないからそれはまだ………」

「細かいことはいいのー。はい、これからお兄さんは『はとのお兄さん』にけってーい」

「………………」

どうやら俺はこれから『はとのお兄さん』と呼ばれるらしい。

全く話を聞いてもらえなかった。

超高校級、恐るべし。

「あ、そうだ。じゃあボクの名前も教えてあげるねー」

 

 

 

「ボクは飛鳥 圭(あすか けい)。《超高校級のスリ》だよー。これからよろしくね、はとのお兄さん」

 

 

 

 

《超高校級のスリ》 飛鳥 圭(あすか けい)

 

 

 

 

 

 

 

 

「超高校級のスリ?」

スリとはつまり…………窃盗のことでいいのだろうか。

「そうだよー。物を盗むのに関しては誰にも負けないよー」

「つまり飛鳥は、今まで数多くの物を盗んできたから超高校級に認められたのか?」

「その通りー。ボクのこと見直したでしょー」

えっへんと胸を張る飛鳥。

いや、普通に犯罪だろ………。

「警察には捕まらなかったのか?」

「えーっとね、今までずっと逃げ続けてきたんだけど、この前ついに捕まっちゃったんだよねー。そしたらなんか希望ヶ峰学園の人が来てボクのこと入れてくれるって話になったんだー」

飛鳥の話を聞いて俺は確信した。

この学園は才能があると認めれば犯罪者も平気で受け入れる。

噂程度でしか知らなかったが、どうやら本当らしい。

「それにしてもこの場所、すごく面白そうだよねー」

「面白い?」

俺は思わず言葉を繰り返す。

「怖くはないのか?一応正体不明の奴に攫われて知らない場所に閉じ込められてる状況なんだが」

「ボクの住んでた街に比べたら全然だよー。それよりもいろんなイタズラができそうですごく楽しみなんだー」

「………」

飛鳥が笑顔を見せる。

その笑顔が、俺には少し怖く見えた。

この危機的状況を楽しんでいるようにしか見えない。

 

 

 

 

 

「おーい蓮!話終わったかー?」

するといつの間にか厨房に移動していた雷哉が戻ってきた。

「ああ。ここにいるのは円城寺と飛鳥だけだよな?」

「さっき他の人もいたけどねー。今いるのはボクとユーレイのお兄さんだけだよー」

「ユーレイのお兄さんって中々酷え言い方だな」

「えーなんでー。オカルト研究してるんでしょー?」

いや、その呼び方だとまるで円城寺が幽霊みたいに聞こえるぞ。

「なら次の場所行こうぜ」

「ヤンキーのお兄さんとはとのお兄さんまたねー」

「おう。オメーもちゃんと探せよ」

そして俺らは食堂から出て次の場所へと移動を始めた。

「それにしても『ヤンキーのお兄さん』か。お前にピッタリだな」

「だろ?俺ヤンキーに見えるだろ?かっこいいだろ?」

「そこまで言ってねーよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂を出て廊下を歩いていると、ある扉の前に3人いることに気が付いた。

「ん?オメーらこんなところで何してんだ?」

雷哉が声をかける。

「ん?風神雷哉か。実は『大浴場』と書かれたこの場所を探索しようと思ったのだが、扉が開かないのだ」

飛鳥より多少大きいくらいの小柄な少女が扉に手をかける。が、びくともしない。

「恐らく中から鍵がかかっているのであります。となると現時点で某らが入る手段はないでありますよ」

黒縁の眼鏡をかけた少年が諦めたようにため息をついた。

「ほんなら、ここは後回しやなぁ。別の場所探しに行ったらええんちゃう?」

着物を着た少女がのんびりとした口調で提案する。

「無理矢理ぶっ壊して開ければいいんじゃねーの」

「いや、ここがどのような施設かはっきりと分かってない以上、むやみに物を破壊する行為は避けるべきだろう」

「なら開かねーってか。じゃあ諦めるしかねーな」

「そうだな。…………ん?君は確か………」

「ああ、悪い。さっき目覚めたんだ。俺の名前は夢寺蓮。超高校級のマジシャンとしてやってきたんだ。寝てたせいで探索に参加できず済まなかった」

小柄な少女が俺の存在に気がついたため、先に自己紹介を済ませることにした。

「おお!無事目覚めたのでありますな!某も一安心であります!!」

「良かったわぁ。このままずっと寝てるんじゃないかって心配しとったんやけど、どうやら杞憂だったみたいやねぇ」

隣の2人も心配してくれていたらしく、安堵の表情を見せた。

「良かった。無事に目覚めたのだな。どこか体に異常はないか?もしあるのなら、私達と同じくここにいる軍医の才能を持つ者を紹介するから頼んで診てもらうといい」

「いや、特に異常はないから大丈夫だ。それに綾辻にはさっき会った」

「そうか。既に何人かとは自己紹介を済ませたのだな。それならいい」

ハキハキと喋るその少女は腕を組み頷く。

こんな非日常的な状況にも関わらず全く動揺していない。

落ち着きっぷりだけで言えばさっき会った結城以上だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では私達も自己紹介しよう。まず私は乃木 環(のぎ たまき)。恐らく君達と同じ希望ヶ峰学園の新入生だ。よろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

 

《超高校級の???》 乃木 環(のぎ たまき)

 

 

 

 

 

 

 

 

「恐らく………っていうのはどういう意味だ?」

俺はその単語に違和感を覚え質問する。

「………実は私は…………」

「あのなぁ、乃木はんは記憶喪失なんよ」

「………!」

答えにくそうにしている乃木に代わり、着物の少女がそう答えた。

「………本当なのか、それ」

「………ああ。かろうじて名前は思い出せたが、それ以外の記憶が一切ないんだ。私がどのような人間でどのように人生を送ってきたか。それがどうしても思い出せないんだ………」

悔しそうな表情で拳を強く握る乃木。

「………そうか。悪いな、聞かなければよかった」

「………いや、既に他の者には自己紹介の時説明したし、夢寺蓮にもこのことは知っていて欲しかったから問題はない。むしろ気を遣わせてしまったことを謝罪する」

「謝罪しなくても大丈夫だ。記憶、なんとか思い出せるといいな」

「ああ…………」

まさか記憶を失っている者までいるとは。

ここに拉致された時なんらかの衝撃で頭を打ってしまった可能性もありそうだが…………見た感じ乃木が頭に怪我をしている様子はない。

なら記憶喪失には別の原因が…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫であります!!きっとすぐ記憶が戻るでありますよ!」

すると乃木の様子を見た眼鏡の少年が励ましの言葉をかけた。

「某、記憶喪失は一時的なものだってアニメで見たであります!なら現実もきっと一緒であります!

「現実とアニメは違げーだろ」

「シャーラップであります風神氏!!そういうツッコミは場が冷めるからやめるであります!!」

「元々冷めるほどの熱ないと思うけどなぁ」

「や、薬師院氏までぇ………」

がっくしと肩を落とす眼鏡の少年にをよそに着物の少女がこちらを向いた。

「ほんならうちも自己紹介させてもらってもええ?」

「ああ、よろしく頼む」

「おおきに」

着物の少女はやんわりと微笑むと、丁寧にお辞儀した。

 

 

 

 

 

 

「うちの名前は薬師院 月乃(やくしいん つきの)。《超高校級の女将》なんて呼ばれてます。以後、よろしゅうなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

《超高校級の女将》 薬師院 月乃(やくしいん つきの)

 

 

 

 

 

 

 

「女将っていうのはつまり、薬師院はどこかの旅館に勤めてるってことか?」

「そや。うちの実家は老舗の旅館でな、そこで親の仕事を手伝ってるうちに『女将』なんて呼ばれるようになったんよ」

こんな若いのに女将として働いてるのか。

さぞかし立派な勤務態度なのだろう。

「でもうち、実家の仕事大嫌いでなぁ」

「え?」

薬師院は心底嫌そうな顔をする。

「親からは家を継げって言われてるんやけど、あの家やたらと厳しいし、ぐちぐち小言言われるし、窮屈でしゃあないんよ。だからうち、高校卒業したら海外に逃げようかなって考えてる最中でなぁ」

「………なるほどな」

才能はあるが自分のしたいことではない。

確かにそれなら無理にその仕事に就く必要はないだろう。

「………それにしても夢寺はん」

「ん?…………お、おい!?」

薬師院は急に俺の目の前まで顔を近づけてきた。

かわいいというより美人と言った方が正しいその端正な顔を近づけられると、どうしても恥ずかしくなってしまう。

「夢寺はん…………かわええなぁ」

「………は?」

薬師院は顔を離すとふふっと笑った。

「その女の子にウブな感じ、うちめっちゃ好きやわぁ。あかん、うち夢寺はんのこと気に入ってしもうた」

「なっ………!?」

予想外の発言に俺は目を見開いた。

「おおっ!!蓮にもついに春が来たか!」

「薬師院氏!?」

「………何を言ってるんだ君は」

雷哉と眼鏡の少年は驚きの反応を見せ、乃木は呆れた表情を見せる。

しかし薬師院は何故か手を左右に振り否定の意思を見せた。

「ちゃうちゃう。誤解されんように言っておくと、うちは別に夢寺はんに恋したわけちゃうよ。ただからかいがいのあるかわええ子やなぁっ思っただけやでぇ」

「…………」

一瞬でも期待した俺が馬鹿だった。

「てなわけで、これからよろしゅうな、夢寺はん♪」

楽しそうに笑みを浮かべる。

「…………ああ」

薬師院月乃。

こいつはかなり曲者だ。

 

 

 

 

 

 

 

「夢寺氏…………」

「な、なんだ………?」

その様子を見ていた眼鏡の少年が何故かこちらを睨んでいた。

「………なんて羨ましい!!!」

「うわっ!?」

すると突然、俺の両肩を掴むと大声で泣き始めた。

「同級生の女の子と顔を近づけて挙げ句の果てにはお気に入り認定でありますか!!某は人生でそのような経験一度もないであります!!

「と、とりあえず落ち着いてくれ………」

とりあえず引き剥がそうとするが、写実は全く離れない。

「これが落ち着いていられるかであります!!目の前で女の子とイチャイチャされたら誰だってそうなるであります!!」

「相変わらずうるせーなオメーは。ほら、戻ってこい写実」

見かねた雷哉が強引に眼鏡の少年を俺から引き離すと、軽く頬を叩いた。

「………ハッ!?某は一体………」

「ほら、あと自己紹介してねーのオメーだけだぞ?」

「こ、これは失礼したであります!」

正気に戻った眼鏡の少年はこちらに向き直る。

「某の名は写実 真平(しゃじつ しんぺい)!《超高校級のカメラマン》であります!!」

 

 

 

 

 

 

《超高校級のカメラマン》 写実 真平(しゃじつ しんぺい)

 

 

 

 

 

 

「先程は取り乱して申し訳なかったであります!これからよろしくであります!!」

「あ、ああ。よろしく」

先程泣いていたのが嘘のような笑顔で挨拶され、俺は驚きつつ挨拶を返す。

それにしても……………………やたらとハイテンションだな。

さっき円城寺が言ってたうるさい奴は間違いなく写実のことを指しているだろう。

「カメラマンか。その首に下げているやつで撮影とかするのか?」

俺は写実が首に下げているカメラについて指摘する。

「そうであります!!ここに来る前に持っていたマイカメラであります!」

どうやらカメラは没収されなかったみたいだ。

ちなみに俺が身につけていた携帯や財布は没収されたらしく、手元にはない。

「ちなみにこのカメラ、30万くらいするでありますよ!これが無事だったのが不幸中の幸いでありますな!」

「そんなに高いのか………」

てっきり高くても10万くらいだと思っていた。

ここに来てから驚かされっぱなしだ。

世の中には俺の知らないことが沢山あることを改めて自覚させられる。

 

 

 

 

「写真はどんなものを撮るんだ?」

「某が撮るのは風景が多いであります。特に日本の風景は写真映えしやすいし海外の人にも評判なのでありますよ」

「確かに、それを見るために日本に来日する外国人も多いからな」

秋の紅葉に冬の雪景色。そして春の満開の桜。

どれも日本が誇る美しい風景だ。

直で見たいと思う人間も多いだろう。

「そうなのであります。ところで夢寺氏………」

写実は俺の耳元に近づくと、

「どのような女性がタイプなのでありますか?」

「…………は?」

唐突に何を聞いてくるんだこいつは。

「ロリか、それとも熟女か。巨乳か、それとも貧乳か。某は夢寺氏のタイプが非常に気になるであります!ちなみに某はほぼ全ての女性が好きであります!ストライクゾーン超広いであります!!」

「…………………」

「乃木氏と薬師院氏をはじめ、ここにいる女の子は全員レベルが高いであります!ぐへへ、いつか親密になってヌードを撮らせて欲しいでありますな………」

そんなことを言いながら下劣な笑みを浮かべ涎を垂らす写実を見て、俺は距離を取った。そして乃木と薬師院をチラ見すると、静かに背を向けた。

「なっ!?何故距離を取るでありますか!?某らは女の子同盟を組んだ同志でありますよ!?」

「いつ同盟なんか組んだんだ。それに同志になった覚えはない。………雷哉。そろそろ行こう」

「お、おう」

「夢寺氏!話はまだ………」

「それよりも写実。後ろに気をつけた方がいいぞ」

「えっ!?」

「おい写真真平。また高校生にあるまじき猥談をしていたな。その曲がった根性私が叩き直してやる」

「またお下品なこと言ってたんやねぇ。これはうちらでたーっぷりお説教しないといけない感じやなぁ」

「ま、待って欲しいであります!!某は…………ホギャーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写実を置いてきた俺達が次に向かったのは宴会場だった。

早速扉を開けて中に入る。

「すげー広いな」

「宴会場だからな」

畳が一面に敷き詰められた壮大な景観が俺達を迎えた。

軽く50人は収容できるであろうその宴会場は、鮮やかな絵画が描かれた襖に四方を囲まれ、まるで日本の中世にタイムスリップしたような気分になった。

「ワーオ!!コンナ所二マイクガアリマスヨー!」

「ほんとだ!!!すごいすごいー!!!!」

「み、見れば分かるだす………」

「本当にうるさい人達ですね。今どういう状況か分かっているんですか?」

正面を見ると、4人の生徒らしき人物が舞台のような場所で何かを話してる。

「お、ここにいたか。あっち行こうぜ、蓮」

「あの4人も同級生か?」

「生徒以外に見えねーだろ」

いや、2人どう見ても高校生には見えない奴がいるんだが………。

「おーいオメーら!最後の1人連れてきたぞー」

「あーーーーー!!」

雷哉が呼びかけた瞬間、1人の少女が物凄い勢いで駆け寄ってきた。

「やっと目がさめたんだねー!!だいじょーぶなの???」

「あ、ああ。なんとか大丈夫だ」

「良かったーー!」

少女は突然くるくる回りだした。

「な、何してんだ………」

「無事だったから嬉しくて踊ってるんだ!」

なんだそりゃ。

「あ!千尋の名前、教えてあげるね!」

「千尋の名前は北桜 千尋(きたざくら ちひろ)っていうんだ!《超高校級のピアニスト》だよ!よろしく!!!」

 

 

 

 

 

 

《超高校級のピアニスト》北桜 千尋(きたざくら ちひろ)

 

 

 

 

 

 

「ピアニスト………」

「そう!千尋はね、いっぱいピアノ弾けるんだ!!だからピアニストって呼ばれてるんだよ!」

それは聞いたら分かる。

「何かの大会で優勝とかしたってことか?」

「そうそう!なんか楽しんでピアノ弾いてたらいつのまにか1番になっちゃった!」

なるほど。これは完全に天才型だな。

「俺は夢寺蓮。《超高校級のマジシャン》だ。よろしく」

「マジシャン!?れんってマジックできるの!」

千尋の目が途端に輝きだす。

「一応な。そんな面白いものは出来ないぞ」

「みたいみたいー!!」

「今は無理だ。ここを出たら見せてやるよ」

「わーい!!!れんのマジックたのしみ!!」

ジャンプして喜びを全身で表す千尋。

まるで小学生と話してるみたいだ。

飛鳥とは違った意味でとても高校生には見えない。

 

 

 

 

 

 

「そうだ!!千尋って実は双子なんだよね!もう1人紹介するよ!千尋のお兄ちゃんの………」

「千尋。余計なことしないでいいです。自己紹介くらい自分で出来ます」

千尋がそう言うのを遮るように、千尋そっくりの顔をした少年が俺の方を向いた。

「こんなことしてる時間がもったいないのでサクッと終わらせますよ。僕の名前は北桜 八尋(きたざくら やひろ)。《超高校級の作曲家》です。よろしくお願いしますね、夢寺さん」

 

 

 

 

 

 

《超高校級の作曲家》北桜 八尋(きたざくら やひろ)

 

 

 

 

 

「作曲家………?どんな曲を作ってるんだ?」

「それ今言う必要ありますか?」

質問に対して八尋は表情を変えず冷淡にそう返した。

「いや、才能について少し気になったから……」

「夢寺さん。僕達が今どんな状況に置かれているか分かっていますか。誘拐されて監禁されているんですよ。僕達は一刻も早くここを脱出する方法を探さなくてはならない。なのに呑気に自己紹介なんてしてる暇があると思いますか?」

「あ、ああ………そうだな」

早口にそう捲し立てられ、俺は思わずたじろぐ。

「分かってくれたのなら結構です。では僕はこれで。別の場所探索しに行くので」

八尋は俺達に背を向けて去っていってしまった。

「あー!待ってよお兄ちゃん!!」

千尋もその後を追って出て行った。

「アイツ………そんくらいの話してもいいじゃねーか」

「いや、八尋の気持ちも分かる。こんな見知らぬ場所に閉じ込められたら焦りもするだろ」

むしろ他の人間の落ち着き具合が異常なくらいだ。

 

 

 

 

 

 

「ンー、仲悪いの良くないデスネ!ワターシが2人をくっつけてアゲマス!」

「どう考えても余計なお世話だす…………」

残った2人は特に出て行った2人を追いかけることもなくこの場に残っている。

この2人こそ、俺がさっきとても高校生に見えないと言った奴らだ。

その理由は…………その体格にある。

「ア!!そう言えば自己紹介まだデシター!」

そのうち片言の少年の方が俺に話しかけてきた。

2メートルはある身長に加えて、とんでもない量の筋肉が付いた体。

要するにゴリマッチョだ。

とても同じ人間とは思えない。

「自己紹介、してもよろしいデスカ?」

「あ、ああ」

その体格に思わず萎縮してしまう。

「ワターシはハルク・ゴンザレスデース!《超高校級のボディビルダー》デース!!」

 

 

 

 

 

《超高校級のボディビルダー》 ハルク・ゴンザレス

 

 

 

 

 

ボディビルダー…………。その体格に一瞬で納得がいった。

「夢寺蓮だ。…………それにしても凄い体だな。やっぱ普段から鍛えてるのか?」

「ありがとうございマス!!毎日バリバリ鍛えてマスヨ!」

筋肉を見せつけるポーズをするハルク。

半袖のシャツから覗く腕には血管が浮き上がり筋肉が膨れ上がっている。

俺の2倍の太さはあるんじゃないか。

「ハルクは外国出身でいいんだよな?」

「そうデス!!アメリカ人の父とカナダ人の母のハーフデス!」

「何で日本に来ることになったんだ?」

「父の仕事の都合デス!ニホン、とてもいいところデース!」

親の仕事の都合で日本に移住してきたらしい。日本のことはとても気に入っているようだ。

「詳しくは分からないんだが、ボディビルダーっていうのは体を鍛えてそれを大会で見せるっていうのを仕事にしてる職業でいいのか?」

「その通りデス!日々体を鍛えて誰が1番凄い筋肉を持っているか勝負するのがボディビルダーデス!」

つまり普段から肉体を維持しつつ大会直前にはさらに鍛える必要があるということか。簡単に言うが相当な努力が必要だろう。

「にしてもすげー筋肉だな。喧嘩とか相当強そうだぜ」

「ノー!ワターシ、争い嫌いデース!人を殴るなんて出来まセン!」

雷哉はそれを聞いてがっかりしている。

さりげなく喧嘩に誘うな。

 

 

 

 

 

 

 

「わ、ワタシを無視するなんて………ワタシが地味でブスだから眼中にないってことだすね…………」

俺達がそんなことを話していると、残りの1人の少女が爪をかじりながらこちらを恨めしそうに見つめていた。

「悪い。無視するつもりは毛頭なかったんだ」

「ふ、フン。どうせワタシがデブだから話しかけるのは後回しにしようって思ってるだすよ……」

「誰もそんなこと言ってねーよ」

その体の大きな少女は目を合わせないまま呟く。

「気分を悪くさせてしまったのなら謝る。俺は夢寺蓮。超高校級のマジシャンとしてやってきたんだ。よかったら名前を教えてもらえないか?」

相手の気分を害さないよう柔らかくそう言うと、

「………分かっただすよ」

その少女は警戒しながらもこちらを向いた。

「ワタシは桃林 林檎(ももばやし りんご)。《超高校級のグルメリポーター》だす。どうせすぐ忘れると思うけど一応名乗っておくだす」

 

 

 

 

《超高校級のグルメリポーター》桃林 林檎(ももばやし りんご)

 

 

 

 

 

 

「桃林だな。これからよろしく」

俺は握手のため手を差し出すが、桃林はそれに応じずフードを被ってしまった。

「こ、こんな状況でよろしくなんか言ってられないだすよ。八尋くん

がさっき言ってただす。閉じ込められてるんだから交流を深めるより手がかりを探すのが先だすよ。だからワタシみたいなデブに構わずさっさと別の場所に行ったほうがいいだす」

「自己紹介なんてたかが1.2分じゃねーか。別にそんぐらいいいだろ」

「う…………。そ、そうやってワタシの意見に圧力をかけて潰していい気になってるんだすね…………」

「そんなつもりねーよ。面倒くせーなオメーは」

「おい」

流石に面倒くさいは言い過ぎだと思い注意する。

しかし俺も正直、性格に難ありだなとは感じてしまった。

「ワタシはここの探索を続けるだす。だから他の場所に行くだす」

桃林はフードを深く被り直すと後ろを向いてしまった。

どうやら相当警戒されているようだ。

「……分かった。行こう雷哉」

「おう。さっさと行こうぜ。ハルクはどうすんだ?」

「ワターシはグルメリポーターサンと一緒にイマス!まだお話全然出来てないですカラ!」

「アンタも一緒に出てって欲しいだすよ………」

桃林が何か言ったようだが、ハルクには聞こえてないみたいだ。

「ったく、オレアイツ苦手だわ。なんか卑屈だしよ」

雷哉は棘のある言い方でそう呟いた。

雷哉は良くも悪くもまっすぐな性格だ。

桃林ような性格の人間とは相性が悪いのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本館の全てを探索し終えた俺達は、別館の個室へと足を運んでいた。

別館は2階建てになっており、俺達の個室は1階にあった。

それぞれの個室の前にはネームプレートがかかっており、対応する個室に鍵を使用して入る仕組みだろう。

「けど、その鍵がないと………」

「そうなんだよ。そんな物持ってねーし、そもそも鍵穴がねーんだとよ」

確かによく見ると鍵穴がない。

ならどうやって中に入るのか………。

「………ん?」

そこで俺はふと、インターホンの下にある謎の機械を見つけた。

「………よく分からないけど、これを使うんじゃないか?何かをここにタッチすれば開くみたいな」

「そういうことか!!蓮、オメー頭いいな!」

「お前も絶対この機械見たことあるはずだぞ………」

駅の改札とかバスの降車口とかに付いているものと同じだ。

なら誰でも一度は目にしたことがあるはず。

「あれ〜〜〜〜〜?雷ちゃんなにしてるの〜〜?」

すると突然、後ろから気怠げな声が聞こえてきた。

俺達は慌てて振り返る。

後ろには長身でスタイルのいい女子が立っていた。

「んだよ百々海か。びっくりさせんなよ」

「そんなの知らないよ〜〜。あーし声かけただけだし〜雷ちゃんダルいわ〜」

「ダルいじゃねーよ!?」

興味なさそうに欠伸をする百々海と呼ばれた少女は、俺の方をチラッと見る。

「ん〜〜〜〜〜?その人誰〜〜?」

「夢寺蓮だ。《超高校級のマジシャン》としてやってきた。よろしく頼む」

「ふ〜〜〜ん。オッケ〜、蓮ちゃんね〜。じゃああーしも自分の名前言わないとね〜〜」

俺が先に自己紹介を済ませると、その少女は目をこすりながら口を開いた。

「あーしは百々海 真凛(ととみ まりん)。《超高校級の水泳部》だよ〜。よろしくね〜〜〜」

 

 

 

 

《超高校級の水泳部》百々海 真凛(ととみ まりん)

 

 

 

 

「よろしく」

「蓮ちゃんマジシャンなんだ〜〜〜。やっぱプロなの〜?」

「いや、まだマジシャン見習いだ。アマチュアですらない。百々海はやっぱ大会に出るプロなのか?」

「あーしも蓮ちゃんと同じだよ〜。大会には一回無理矢理出場させられただけでまだプロじゃないんだ〜〜」

百々海はハハハと笑う。

気怠そうではあるが、愛想がよくとても感じがいい。

それが百々海と話して抱いた第一印象だった。

「おいおいオメー、さっきと違ってめちゃくちゃ喋るじゃねーか。さっきは一言喋ってどっか行っちまったのによ」

しかし雷哉が突如妙なことを言い始めた。

さっきと違って………?

「ん〜〜〜。あの時はあーしが喋る気分じゃなかったからだよ〜」

「なんだそりゃ」

「どういうことだ?」

意味が分からず問いかけると、百々海はまたハハハと笑った。

「あーしってさ〜、自分でいうのもナンだけど〜、すごく気分屋なんだよね〜。だからその時の気分によって〜態度を変えるんだ〜。今は凄く気分がいいからめっちゃ喋ってるんだよ〜」

「つまり、もし気分が乗らなければ俺とこういう風に話すことはなかったってことか?」

「そうだよ〜。そもそも話しかけに行くこともなかったし〜。だって話すのダルいも〜ん」

随分ハッキリ言うな…………。

「だから蓮ちゃんはやる気のあるあーしと会えてよかったね〜。こういう風に話せるテンションあーしの中で珍しいんだよ〜〜〜」

「そ、そうなのか。なら俺は幸運だったんだな」

「そうだよ〜〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン…………。

 

 

 

 

『あーマイクテストマイクテスト…………』

 

 

 

 

 

 

「ん?なんだこりゃ」

俺と雷哉と百々海。この場にいる3人以外の声がどこからか聞こえてきた。

『えー希望ヶ峰学園新入生の皆サマ。おはようございまス。全員無事に目覚めたようで何よりでス』

「そこのスピーカーきら聞こえるね〜」

百々海が指差した先には学校でよく見るスピーカーが壁に設置されていた。

『目覚めたばかりで誠に恐縮でございますが、今からチェックインを行いますので本館1階の宴会場にお集まり下さいまセ。なお、万が一来られない方がいる場合、その方には死んで頂きますのでご注意下さイ』

「死ぬ………だって」

死という単語を聞いた瞬間、俺は背筋がヒュッと寒くなった。

『制限時間は5分でス。遅刻した場合も同様の処置をとらせていただきますのでご了承下さイ』

謎の音声はそこで途切れた。

「い、今の放送ってマジかよ………。なら早く行かねーと!」

「え〜〜〜〜どうせ誰かのイタズラでしょ〜〜〜宴会場まで行くのダルいよ〜〜〜〜」

「確かに誰かのイタズラかもしれない。でもそれは行って確かめるのが1番だ。もしイタズラだったとしても『なんだそうだったのか』で済む話だからな。この話が本当で行かずに殺されるのが1番まずい」

「蓮の言う通りだ!ほら行くぞ百々海!」

「え〜〜〜〜ダルい〜〜〜〜」

「オメーさっきまであんなに元気だっただろうが!!」

「今はダルい気分〜〜〜〜」

「めんどくせーなオイ!」

俺と雷哉は、行くのを渋る百々海を連れて宴会場へと向かうのであった。

 

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