ダンガンロンパ ルーナ   作:さわらの西京焼き

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捜査編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーしは百々海 真凛(ととみ まりん)。《超高校級の水泳部》だよ〜。よろしくね〜〜〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は必ず自分の記憶を取り戻す。そしてこんな極悪非道な事を仕掛けた奴に制裁を加えてやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日まで生きていた2人が、

 

 

 

 

 

 

 

パーティで楽しく笑っていた2人が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捜査編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「百々海………!乃木………!」

「マジ………かよ…………」

………恐れていたことが現実になってしまった。

「百々海様…………!乃木様…………!どうして…………!!!」

綾辻は乃木の顔を見ながら涙をこぼす。

そして服が濡れるのもお構いないなしに湯船に入り百々海を引き上げる。

「おい、綾辻………」

「まだ、まだ生きていらっしゃるかもしれません!!もし微かにでも脈があるのならすぐに心肺蘇生を開始すれば………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きている筈がないだろう」

しかし後ろから聞こえた声がそれを否定した。

後ろを振り向くと、大浴場の入口に司が寄りかかっていた。

「司………」

「お前らさっきのアナウンスが聞こえなかったのか?『死体が発見されました』と言ったんだ。それも2回な。ならその女達は既に死んでいると考えるのが当然だろうが。説明しないとそんな事も分からないのか、低脳共」

「………じゃあテメーを今から死体にしてやろうか」

隣にいた雷哉がブチ切れたのか、大股で司の元に歩いていく。

「今はお前のような脳筋男に付き合っている暇はないんだよ。どけクズが」

「何十発殴られてーんだ?気を失うまでか?あ?」

「やめろって雷哉」

俺はいつものように雷哉を押さえつけるようにして止める。

「しかし最初の犠牲者が才能不詳女か。皮肉なものだな。一番コロシアイを止めようとしていた奴が真っ先に死ぬとは」

司は不敵な笑みを浮かべると俺の方を向いた。

「間違っても出しゃばるような真似はするなよ、マジシャン。お前みたいな出来損ないは何をやっても無駄だし邪魔になるだけだからな。この事件、俺様が直々に解決してやる」

何だ、こいつは。

人が死んでいるにも関わらず、何故そう笑っていられるのか。

これ以上こいつを見てるとこっちまでおかしくなってしまいそうなので、俺は綾辻の方へと駆け寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ、綾辻」

「……………」

綾辻は無言で脈を確認し続ける。

しかし、その後ゆっくりと首を振った。

「既に、亡くなっています………」

「………そうか」

俺は頷きつつ、サウナにいる乃木の脈を取る。

「駄目だ。乃木も既に………」

「そんな…………!」

そう言葉をこぼすと同時に、綾辻の目からは大粒の涙が溢れ出した。

「百々海様………!乃木様…………!!!」

「綾辻…………」

俺は泣き崩れる綾辻を見て、どう声をかければいいのか分からなかった。

医者として2人の命を救えなかった悔しさ、そして乃木を喪った悲しみは相当なものだろう。

俺なんかが声をかけても何の慰めにもなりやしない。

寧ろ素人に声をかけられたことに対して怒りを抱くかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「雷哉。ひとまず全員集めてきてくれ」

「…………おう」

冷静になった雷哉は駆け足で女湯を出ていった。

これがもし誰かの手による殺人なら、規則にも書いてあった通り、これから俺達は学級裁判とやらに挑むことになる筈だ。

それなら全員を集めないと話が始まらない。

「…………」

俺は無言で乃木と綾辻を見る。

そして上着を脱ぐと、極力乃木を見ないよう綾辻にそれを渡した。

「………え?」

「乃木のその格好を全員に見せるわけにはいかないだろ?かけておいてあげてくれ」

百々海は服を着ていたが、乃木は今、裸にタオルを一枚巻いたのみだ。

サウナに入っていたのだから仕方がないが、それを全員にまじまじと見られるのは流石に可哀想だ。

「………ありがとう、ございます」

綾辻は涙を拭くと俺の上着を受け取った。

そしてそっと服を乃木の上にかける。

「………優しいのですね、夢寺様は」

「…………」

前にも言われた事と全く同じ台詞を言われる。

「…………優しくなんか、ない」

俺は同じく前言ったことをそのまま返す。

俺は…………本当はそんな人間じゃない。

俺は……………………偽善者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると、さっきの謎のアナウンスを聞いてか、雷哉に呼ばれたか分からないが、とにかく他の人間が集まってきた。

「ギャアアアアア!?百々海氏!!!!乃木氏!!!!!!」

「ワッツ!?水泳部サン、ハテナサン、どうしたんデスカ!!何が起きたんデスカ………!?」

「だ、誰だす!!一体誰がやったんだすか!」

「クソッ!!!一体誰がこんなことを………!」

「うそ、だよね?まりん、たまき、ただ寝てるだけだよね?」

「こんなところで寝るわけがないでしょう。死んでるんですよ、2人は

百々海と乃木の死にこの場にいる全員が驚愕、絶望する。

昨日まで共に過ごしてきた仲間の死。

当然そう簡単に受け入れられるものじゃない。

「………面白いことになってきたじゃないか」

司が先程と同じ笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

「フッフッフ…………。最悪の空気ですネ。それこそ、ワタクシの求めていた展開でス」

モノワニがどこからか現れた。

「おいコラ!!テメーが乃木を殺したんだろ!!」

「フッフッフ、まさか。ワタクシが皆サマに手を出すことなどあり得ませン。そんな事をしても白けるだけでしょウ?間違いなく、皆サマの誰かが百々海サマと乃木サマを殺したのでス」

「それは困ったなぁ。ならうちらは今から、うちらの中にいる犯人を当てなくちゃあかんって事なん?」

「その通りです薬師院サマ。皆サマにはこれから一定時間捜査をしてもらい、その後学級裁判で犯人を見つけてもらいまス。規則にある通りですネ」

「僕達に裁判の真似事をしろと言うのか!?」

結城が憤りを見せる。

「ええ。皆サマ全員が検事でス。そしてこの中に潜む犯人は被疑者であると同時に自分を弁護する弁護士の役割を担わなくてはいけませン。その点犯人の方が若干不利かもしれませン」

「………………だが、自分達は素人だ。急に犯人を探せと言われても難しいのではないか………?」

「天草サマのご指摘も最もでス。なので皆サマには、被害者の状況をまとめた『モノワニファイル』というものを配りまス。パスポートの『コトダマ』というアプリを開いて下さいまセ」

言われた通り開くと、「モノワニファイル①」「モノワニファイル②」というものが追加されていた。

「簡単にまとめてあるだけなのでこれだけで犯人が分かるわけではありませんガ、参考にはなるでしょウ。是非活用して犯人推理に役立てて下さいネ」

 

 

 

 

 

 

 

「そして大事なお話がもう一つありまス。それは追加規則についてでス」

「追加規則、でありますか?」

「そうでス。皆サマ、『規則』アプリをご覧下さイ。1番下までスクロールすると1つ項目が追加されていると思いまス」

 

 

 

 

 

 

13 1度に犯人が殺せる人数は2人までとします。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどなぁ………」

ルールを見た薬師院は納得したのか、しきりに頷いている。

「ねえつきの。これってどういうこと?」

「あんな、例えば犯人が誰かを殺そうとするやろ?そしたらその時殺せるのは2人までっちゅうことなんやで。5人も6人も殺害出来たらコロシアイゲームとして成立しいひんやろ?ここを出たければ極論全員殺せばいいっちゅうことになってしまうかんなぁ」

「流石です薬師院サマ。よう理解していらっしゃル」

「モノワニに褒められても何も嬉しないよ」

不快な表情でそっぽを向く薬師院。

「そしてもう一つ。非常に重要なルールがありまス。後で改めて説明しますガ、2人同時に死体が発見された場合、犯人の数が1人か2人かが問題になりまス。単独犯であるなら問題はないのですガ、犯人が複数いた場合、ここを出られるのは先に殺人を犯した方のみとなりまス」

「意味わかんねーよ。もうちょっと簡単に説明しろよ」

「今ので理解しろや。………ハァ、つまりはこういうことだろ」

理解出来てない雷哉に代わり、円城寺が説明する。

 

 

 

 

「例えば先に殺されたのが環、後に殺されたのが真凛だとすんだろ?それで環を殺した奴と真凛を殺した奴が別々だった場合、環を殺した奴だけがここを出れるんだよ。真凛を殺した奴は裁判で勝ってもここから出れねぇ。犯人は殺し損だし、真凛は殺され損ってこった」

「なっ!?そんなのアリかよ!?」

「そんなルール聞いてないであります!!!!」

「まさか初っ端から同時殺人が起きるとは思わなかったので………失礼しましタ」

謝意が微塵もこもっていない謝罪をモノワニはする。

「テメー…………!」

「さてさて、時間も押してきてますので、ワタクシはこれにし失礼しまス。捜査、頑張って下さいネ」

モノワニは不敵な笑みを浮かべると静かに消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「やるしか…………ないみたいだね」

結城は険しい表情で立ち上がる。

「どうせやんなきゃ死ぬんだろ?ならさっさと始めようぜ」

円城寺も首をゴキと動かしやる気を見せる。

「千尋もやる!!このままじゃまりんとたまきがかわいそうだもん!」

「ワターシも水泳部サンとハテナサンの敵討ちシマース!!腹が減っては戦はできぬデース!!」

「その言い回しを今の会話で使うのは間違ってるであります………。でも拙者もハルク氏に同意であります!!百々海氏と乃木氏の仇、某がとるであります!」

もう逃げられないことは大半の人間が理解してるみたいだ。

 

 

 

 

 

 

………が、そうでない人間もいる。

「い、嫌だす!!殺人犯と一緒にいるなんてまっぴらごめんだす!!」

「桃林はん。別にうちら全員が殺人犯ってわけちゃうよ。この中の1人ってさっき言われたの、忘れたん?」

「う、うるさいだす!ワタシのこと、誰かがきっと殺しに来るだす!」

桃林はそう叫ぶとこの場を出ていってしまった。

「なんだあのデブ。アイツが犯人じゃねぇのか?」

「悪口は駄目だよ、円城寺君。彼女は怖がってるだけなんだ。無理に捜査をさせるわけにはいかない」

結城は円城寺の悪口に対して庇うような姿勢を見せる。

そして俺達を見渡すと、

「桃林さんと同じように精神的にキツいって思う人がいるなら、無理せず休んで大丈夫だよ。この状況に慣れてる人なんて…………いないだろうから」

結城の声かけに対して何人かは悩む様子を見せたが、結局桃林と同じようにこの場を去る人はいなかった。

つまり、ここにいる全員は捜査に参加する決意を固めたということになる。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってくれ」

さっきから気になる事があったので、俺はこのタイミングしかないと発言をする。

「どうしたの、夢寺君?」

「これで全員か?誰かいない気がするんだが」

俺の言葉に全員が周りを見渡す。

「男は全員いるな」

「さっき出ていった桃林氏以外にここにいない人がいるのでありますか?」

「フン、今頃気がついたのか」

司は俺達の話を聞き鼻で笑った。

「スリがいない事に何故今まで誰も気が付かなかったんだ?その目は飾りか?」

確かによく見ると、飛鳥の姿が見えない。

死体発見アナウンスを聞いてもやって来ないのはおかしい気がする。

「いちいち一言多い野郎だな」

「でも司はんの言う通りやなぁ。まだ来てないみたいやねぇ」

「どうする、結城」

乃木が死んでしまった今、指示を出せるリーダーは結城だけだ。

俺は結城に判断を仰ぐ。

「そうだね………さっきのアナウンスが鳴っても来ないのは変だ。探しに行く必要があると思う。けど、捜査も始まるしそこまで人数を割くわけにはいかない。だから2人くらいに飛鳥さんの捜索を任せて、後の人は事件の捜査を始めよう」

結城の判断に何人かが頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員少し黙れ」

しかしそこでまた司が口を挟んできた。

「ここからは俺様が指示する。お前らは俺様の言う通りに動け」

「はあ?誰がてめえの言うことなんか聞くかよ」

「オレも円城寺と同じだな。オレはテメーが大っ嫌いなんだよ。ぜってー言うことなんか聞かねー。思わずぶん殴っちまうかもしれねーからな」

すぐさま司と特に仲が悪い円城寺と雷哉が反発する。

いつもなら、ここで司も悪口を言うことによって喧嘩がエスカレートするのだが………。

 

 

 

 

「フン、なら俺様が既に犯人の目星が付いているとしたら?」

「!?」

司の言葉に全員がざわつく。

「それ本当なん?冗談言っていい場じゃないで」

「誰が冗談なぞ言うか。俺様の言う通りに動けば必ず勝たせてやる。お前らもこんな茶番で死にたくないだろう?」

「そ、それはそうでありますが………」

「ちょっと待って下さい」

そこに意見を唱えたのは八尋だ。

「ではもしあなたが犯人であった場合は?僕たちを間違った方向に導いて自分だけがここを脱出しようとしている可能性もあるでしょう」

「くだらん。俺様が犯人であればこんな杜撰な犯行は行わない。もっと完璧な犯行で殺してみせる」

「それ、なんの根拠にもなってないですよね?」

自信満々に答える司に対して、あくまで八尋も冷静に反論していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………フン、ならもし俺様が間違っていると思うなら学級裁判の場で反論しろ。もし俺様が納得出来る根拠が有れば間違いを認めてやる」

「どうせお前らみたいな凡人は殺人事件の捜査など初めてだろう?なら経験者であるこの俺様に任せた方がスムーズに進む」

経験者、という言葉に全員が反応する。

「け、経験者!?警察官でもない司氏が何故………!」

「今その説明をする必要もないし、その義理もない。………で?どうする?俺様の指示に従って確実に勝ちに行くか、それとも不慣れな捜査で情報不足のまま学級裁判に臨むか?」

司の発言に全員が黙り込む。

正直、司はここにいるほぼ全員から嫌われる程性格が悪い。俺も正直関わりたくないと思っている。何故か俺だけに異常に敵意を示してくるのが主な原因だ。

だが、ここには警察関係の才能を持つ人間はいない。だから殺人事件の捜査など経験したと自称する司の指示に従って行動すれば、素人の俺達が手探りで捜査するよりも遥かに効率よく行えるだろう。

司が犯人である可能性も否定は出来ないが、ここは好き嫌いから目を背け、司を頼るべきではないのか。

心の中で俺はそう考えていると………。

 

 

 

 

 

 

 

「………分かったよ。司君、君に任せていいかな」

結城は俺と同じ考えだったのか、司に向けてそうお願いした。

「お、おい結城!!」

「ここで揉めているより、すぐ捜査に取り掛かった方がいいと思う。それに捜査経験が僕達にないのは事実だしね。学級裁判はともかく、捜査は司君に指示を出してもらった方が僕達も動きやすいんじゃないかな」

「………まあ、晴翔がそう言うならいいんじゃねえのか?」

面倒くさそうに円城寺も賛成する。

「ここでうだうだやってる方がタイムロスだろ。ならそこのクソ眼鏡に任せちまえよ。俺はまだ正直反対派だけどな」

「ありがとう円城寺君。………みんなもそれでいいかな?」

結城の言葉に、不満げながらも他の生徒は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フン、ようやくか………。手間を取らせやがって、無能どもが」

「テメー………!」

「お、怒る気持ちは分かるけどひとまず冷静になるであります風神氏!」

「それで、まずは何を決めるのかな」

またブチギレしそうになってる雷哉を写実がたしなめ、その間に結城が指示を仰ぐ。

「まずは死体の検死役とその見張りを決める。水泳部の検死は俺様がやってやる」

「司氏検死が出来るのでありますか!?」

「俺様を誰だと思っている?お前らとは頭の作りから違うんだ。少しは考えて発言しろ豚が」

「ブヒィィィィィ!!」

「うるせえよ、真平」

「おい、軍医」

騒ぐ写実を無視して司は、まだ涙目の綾辻に声をかける。

「は、はい。なんでしょうか………」

「検死は出来るな?だったらお前は才能不詳の方をやれ。俺様なら2人分検死をやるのも造作はないが、いかんせん時間がない。医者の端くれならそれくらいのことは出来るだろう?」

「はい、分かりました………」

「それと死体の周りには見張りをつけろ。最低でも2人だ」

「………検死をやる人が犯人の可能性があるからだね?」

「そうだ。俺様は犯人ではないが、それでも検死をやっている最中に証拠隠滅を図る可能性があると疑うやつはいるだろう。そのための見張りだ」

「分かったよ。…………誰か見張りをやってくれる人はいるかい?最低でも4人は欲しいところなんだけど………」

「じゃあワターシやりマース!!頭使うの苦手デース!!」

「…………自分も見張りをやろう」

まず手を挙げたのはハルクと天草だった。

「なら貴様ら2人は俺の見張りをしろ。残りはそっちで勝手に決めておけ」

「…………たまきの方は千尋がやるよ。なんか、やくにたてそうにないし……」

千尋が悲しそうな顔で手を挙げる。

「千尋ばかだし、みんなのじゃまになるから………」

「じゃあ僕も綾辻さんの見張りをするよ」

最後に結城が名乗りを上げた。

これで検死と見張りが決まった。

 

 

 

 

「それと、スリ捜索、ついでにそこに寝転んでいるかるたクイーンの介抱は……………おいマジシャン。お前がやれ」

司は俺達を見渡すと、俺の方を指差した。

「……俺か?」

「お前みたいな雑魚はいくら捜査しても無駄だ。一番の役立たずは走り回って人探しでもしていろ」

随分な言われようだ。

何でここまで俺に辛辣なんだ………?

「おいコラ!蓮をこれ以上悪く言うんじゃねーよ!!テメー蓮に何の恨みがあるんだカス!!」

「黙ってろゴミが。他の奴らは捜査だ。早く始めろ」

「………チッ!」

雷哉は悔しそうに地団駄を踏む。

「夢寺君、その………」

「いいんだ。ここで反論してまた時間を使うよりいい。早く始めよう」

心配してくれた結城にそう促す。

「………分かった。じゃあみんな、捜査頑張ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捜査開始

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蓮!一緒に調査しよーぜ!!」

始まった瞬間、雷哉がこっちにやってきた。

「お前、さっきの話聞いてたのかよ。俺は捜索担当だから……」

「んなの知らねー。オレ、あいつの言うこと絶対聞かねーって決めた。だからオレと捜査しようぜ!」

なんの理由にもなっていない。

「それに捜査しながらアイツら探せばいいだろ?」

まあその通りなんだが………。

「………しょうがない。分かったよ、やるか」

「おう!犯人のヤローをとっととぶっ飛ばそうぜ!」

断るのも面倒だったので、雷哉と一緒に捜査することにした。

司にバレないようにしないとな………。

 

 

 

 

 

 

 

「よし、まずは何するんだ?」

俺達はまず現場から離れた。

このまま留まっていると司にまた罵詈雑言を浴びせられることになるからだ。

「まずは『モノワニファイル』とやらを見てみる」

「分かったぜ」

俺達は早速モノワニファイルを開いた。

 

 

 

 

 

[モノワニファイル①]

被害者は《超高校級の水泳部》百々海 真凛。

死体発見場所は1F女子大浴場。

後頭部に複数の打撃痕が見られる。

 

 

 

 

 

[モノワニファイル②]

被害者は《超高校級の???》乃木 環。

死体発見場所は1F女子大浴場の中にあるサウナ。

死因は脱水症状による多臓器不全。

体に目立った外傷は見られない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな………」

乃木たちの状態が簡潔にまとめられている。

モノワニの言う通り、確かにこれを見ただけじゃ犯人は分からない。

だが犯人を見つける手がかりになるのは確かだ。

「おいおい百々海の見ろよ。『後頭部に打撃痕』って書いてあるぜ」

雷哉は思わず顔をしかめている。

「誰かに殴られた、ってことだろうな」

「ま、待てよ。蓮、まさかオメーおれのこと疑ってるんじゃねーだろーな!?喧嘩屋は殴るから百々海を殴ったのもオレ、みたいなこと思ってねーだろーな!?」

「そんな事一言も言ってねーよ」

人の話聞け。

「『打撃痕』は素手で殴るだけでじゃなくてハンマーとかで殴っても出来るだろ?つまり力のある人間がやったとは限らないんだよ」

「あ、確かにそうだな」

あっさり落ち着きを取り戻す雷哉。

「あと気になるのは………乃木のには死因が書いてあるが百々海のには書いてないことか」

わざわざ書いてないってことは…………何か意図があるのか?

とにかくこの情報を元に色々推理していく必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

 

 

 

[モノワニファイル①]

被害者は《超高校級の水泳部》百々海 真凛。

死体発見場所は1F女子大浴場。

後頭部に複数の打撃痕が見られる。

 

 

 

 

 

[モノワニファイル②]

被害者は《超高校級の???》乃木 環。

死体発見場所は1F女子大浴場の中にあるサウナ。

死因は脱水症状による多臓器不全。

体に目立った外傷は見られない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで?とりあえず佐々木は運んだけどよ」

ひとまず俺達は目を覚まさない佐々木を個室に運び(雷哉が背負ってくれた)、次は行方不明の飛鳥の個室前に来ていた。

「とりあえずここに来たのは飛鳥がいるか確かめる為でいいんだよな?」

「ああ。寝過ごしてアナウンスを聞いていない可能性もある」

ひとまず俺は飛鳥の個室のドアをノックする。

「飛鳥。いるなら返事をしてくれ」

しかし応答はない。

「まさか飛鳥まで………」

「でもよ、どうやって飛鳥がいるか確かめんだ?個室のドアは自分のパスポートじゃねーと開かないんだろ?」

「それなんだよな………」

「おや、飛鳥サマの様子が気になるのですカ?」

どうしようかと扉の前で考えていると、突如モノワニが姿を表した。

「うわっ!?急に出てくんじゃねーよ!」

「これは失礼しましタ風神サマ。………言い忘れていましたガ、捜査時間は一部の扉を除いて全て開放された状態となっておりまス」

「もしかしてさっき女湯に入れたのは………」

「お察しの通りでス夢寺サマ。綾辻サマが死体を発見されましたのデ、捜査時間に移行したと判断してワタクシの方で解放させて頂きましタ。なので捜査時間中は心ゆくまで探索して頂けますヨ」

「おい待て!?じゃあオレの部屋も全員入れるってことかよ!?」

「プライバシーとかお構いなしだな………」

まあ俺は別に見られて困るものはないし問題はないが、中には見せたくない物を持ってるやつもいるだろう。

だが裁判に負けて死ぬよりマシだ。

「ということで、捜査頑張って下さいまセ」

モノワニはお辞儀をすると静かに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってことは、飛鳥の部屋にも入れんだよな?」

雷哉が飛鳥の個室のドアを見る。

というか、既にドアノブを掴んでいる。

「ああ。何かあるか分からないから慎重に行くぞ」

「分かってるって」

雷哉はそっとドアを開ける。

そこには…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあ!?」

「うおっ!?」

ドアの目の前に飛鳥が立っていた。

まさか目の前にいると思わなかった俺は思わず声を上げ、先に入った雷哉に至っては驚き尻もちをついた。

「あははー!ヤンキーのお兄さん超驚いてるじゃーん!その顔傑作だよー!」

腹を抱え大笑いしながら雷哉を指差す飛鳥。

「て、テメー飛鳥!!いるんなら返事しろよ!!」

「んー?さっきまで本当に寝てたよー。でもドアの前であんな騒がしくされちゃ起きるでしょー?」

なるほど。俺達の会話をドア越しにずっと聞いていたのか。

「それにしてもヤンキーのお兄さん、喧嘩強いのにこういうの弱いんだねー。弱点1つはっけーん」

「い、今のはたまたまビビっただけだ!オレは最強なんだぞ!」

「はいはい分かりましたー。はとのお兄さんのびっくり顔も面白かったよー。写真撮りたかったなー。それでネットにそれをばら撒くんだだー」

「勘弁してくれ………」

そんなことされたら俺は一生笑い者だ。

 

 

 

 

 

 

 

「それより飛鳥。大変なことになった。実は………」

俺は飛鳥に今の状況を説明した。

「ふーん…………。おチビのお姉さんとぐうたらお姉さん死んじゃったんだー。やっぱり殺人起きちゃったねー」

「お、おい。人が死んでんだぞ?なんで驚かねーんだよ?」

「えー?だってこんなの分かってたことじゃーん。みんなで団結、とかイケメンのお兄さん言ってたけどさー、そんなの無理無理。人間って自分勝手な生き物だからねー。自分がここから出るためなら平気で他人を殺すんだよー」

飛鳥は当たり前だという風にそう話す。

前と同じだ。

彼女は物騒なことを平気で口にする。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、なんだか面白い展開になりそうだし、ボクも捜査に協力するよー」

「面白いって言うんじゃねーよ!!テメー、やっぱおかしいぞ!」

「やめとけ雷哉。………飛鳥、ひとまず捜査に協力するなら聞かせてくれ。飛鳥はずっと個室で寝てたんだよな?」

「そうだよー」

「なら、さっきのアナウンスも聞いてないって事か?」

「アナウンス?何それ、ボクそんなの知らないよ」

よく分からない、という風に首を傾げる。

本当なのか、それとも嘘をついているのか。

「そうか。分かった。何か2人の行動に関して知ってることはあるか?」

「行動………」

飛鳥は少し考え込むと、「あっ」と声を出した。

「全然関係ないけどー、そういえば昨日の夜、ワガママお姉さんがやたらキョロキョロしながら廊下歩いてるのを見たよー。なんか凄く不自然だったー」

「………佐々木か」

「なんか隠してたってことか?」

「十中八九、今回の『動機』の件だろうな」

周りに知られたくないこと。

それは間違いなく『秘密』だ。

「いつ頃見たか覚えてるか?」

「確か夜中の12時前だったと思うよー。ボクが厨房に行った帰りに見たんだー」

「………そうか。分かった、ありがとう」

夜遅くに挙動不審な行動。

それだけで既に怪しさ満点だ。

佐々木が目覚め次第、話を聞く必要があるな。

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[飛鳥の証言]

昨日の夜12時頃、廊下を歩く挙動不審な佐々木を見かけたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に俺達は様子を見るためまた佐々木の個室前にやってきた。

「入るぞ、佐々木」

一応声をかけてからドアノブに手をかける。

「入らないで下さいまし!!」

まさにドアを開けて入ろうとした時だった。

佐々木の甲高い声が聞こえてきた。

「佐々木………?目が覚めたのか。早速で悪いんだが………」

「もう…………もう嫌ですわ………。こんなところに閉じ込められて…………学友同士でコロシアイをさせられて………おまけにわたくし………」

鼻を啜る音が聞こえる。どうやら泣いているようだ。

「どうしたんだあいつ?急に泣き出してよ」

「もう………もう放っておいて下さいまし…………。誰かを疑うのも………自分が犯人扱いされるのも………嫌ですわ………」

「こりゃ相当参ってんな……」

いつもの堂々とした態度はどこへやら。

完全に塞ぎ込んでしまっている。

「ど、どうすんだよ蓮。学級裁判は全員参加なんだろ?このままじゃ……」

「俺が説得して色々聞いてみる。元々俺の役目だしな。雷哉は先に大浴場に戻っててくれ。俺も後で合流する」

「分かった。任せたぜ」

雷哉は走って向かっていった。

「さて………」

俺は問答無用でドアを開けると、佐々木の個室へと入っていった。

 

 

  

 

 

 

「なっ………!?」

部屋では、佐々木がベットの上で体育座りをしていた。

部屋に入ってきた俺を驚きの表情で見る。

さっきまで泣いていたせいか、目には涙が溜まっており、いつもの化粧も崩れてしまっている。

「か、勝手に入らないで下さいませ!!」

「悪い。けど緊急事態なんだ。…………乃木と百々海が殺されたんだ」

「……………聞いていましたわ」

「………え?」

「わたくし、実は全員が集まってきた辺りから目が覚めていましたわ。………そして自分が置かれた状況も何となく理解してますの」

「………そうか」

そして佐々木は自分の膝に顔を埋めて、

「…………もう、嫌ですの」

「え?」

「わたくしのせいで………わたくしのせいで2人が…………」

そう呟くと、また啜り泣き始めた。

「少し落ち着け。何があったんだ?」

「わたくしは…………わたくしは………」

 

 

 

 

 

 

「顔を上げてくれ、佐々木」

俺は出来るだけ優しく声をかける。

「何があったか分からないが、今はお前の力が必要なんだ」

「で、でも………わたくし………」

「気持ちは分かる。2人も死んだんだ。逃げ出したくなるのも無理はない。だが、逃げだらそこでお終いなんだ。だから一度でいい。逃げずに立ち向かってくれ」

「…………」

「頼む」

俺は深く頭を下げた。

「ちょ…………!アナタ何してますの!?」

「お前の証言が必要なんだ。だから………頼む」

このくらいで立ち直るとは思えないが、俺に出来ることはこれくらいしかない。これで無理ならば結城あたりに説得をお願いするしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………アナタにそんな形で頼まれると、なんか調子狂いますわ」

佐々木は自分の袖で涙を拭くと、立ち上がった。

「佐々木………?」

「わたくしらしくありませんでしたわ。動機とやらに大分心を乱されてしまいました。………ですがわたくし、もう逃げませんわ!」

そう宣言すると、俺の方を向き、

「アナタには迷惑をかけてしまいましたわ。…………申し訳ありません。…………それとありがとうございます。わたくし、夢寺サンの言葉で少し救われましたわ」

ゆっくりと頭を下げた。

驚いた。あのプライドの高い佐々木が、しかも嫌っている俺に頭を下げるとは………。

「………何ですの、その顔は」

すると俺の顔を見た佐々木が不満げな顔でこちらを睨んできた。

「もしやアナタ、『こいつが頭を下げるなんて』とか思っているんですの?」

「………正解だ。お前が俺に謝るなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないと思ってた」

「わたくしを何だと思っていますの!?」

その場で地団駄を踏む佐々木。

いつもの調子が戻ってきた。

 

 

 

 

「ハァ………わたくし、世話になった人間には必ずお礼を、迷惑をかけた人間には謝罪をすることは徹底していますの。それがたとえ嫌いな人間でもです。例外はありませんわ」

さも当然のように言う。

「おい待て。お前普段俺に迷惑かけてばっかだろ。なのに一回も謝罪されたことないぞ」

「迷惑をかけてるのはアナタでしょう」

「おい」

こいつ、初対面で俺のこと罵倒したの忘れてやがるな。

「ともかく!これでアナタへの借りは返しましたわ!さあ!さっさと捜査始めますわよ!」

「切り替えが早すぎるだろ………」

さっきまでのテンションは何だったのか。

ともかく、いつもの佐々木に戻ってよかった。

 

 

 

 

 

 

「それで佐々木。昨日何があったんだ?さっき『わたくしのせいで』って言ってたのは……」

「夢寺サン」

俺がそう質問しようとすると、佐々木はそれを遮り、至って真剣な表情でこちらを見た。

「わたくしがこれから話すこと、信じて頂けますか?」

「………内容による。が、とりあえず聞いてすぐ否定したりはしない」

「………煮え切らない返事ですわね。けど分かりましたわ」

佐々木は洗面所の方に向かうと、ある物を出してきた。

「………おい待て。それって………」

「今から全部話しますわ。まず初めに言っておくと………断じてわたくしは犯人ではありませんわ」

佐々木はそう言うと、謎の手紙を持ち出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

「昨日の夜でしたわ。わたくしの部屋に誰かが手紙を置いていきましたの。内容は『お前の秘密を持っている。全員にバラされたくなかったら夜中の12時頃大浴場前に来い』というものでしたわ。

わたくし、行くかどうか迷いましたの。けど内容が分からない以上、行くしかないと思って大浴場前に行きましたわ。

そうしたら突如、気を失って………。それで気がついたら脱衣所にいて、百々海サンと乃木サンが亡くなったって聞いて……。

それでわたくし、怖くなったんですわ。もしかしたら覚えてないだけで知らない間に自分が誰かを殺してしまったかもしれないって」

「だからさっきまで塞ぎ込んでたのか」

「ええ。………でもわたくし、夢寺サンの話を聞いて思いましたわ。わたくし、絶対に誰かを殺したりなんかしてませんわ!!」

はっきりとそう宣言する。

「………話は分かった」

「やっぱり夢寺サン。アナタも………」

「いや、俺もお前が犯人の可能性は低いと考えてる」

「夢寺サン………!」

目をウルウルさせながら佐々木はこちらを見る。

 

 

 

 

 

 

「今の話が本当なら………お前は恐らく真犯人に嵌められたんだろう」

「嵌められた?」

「ここからは俺の予測なんだが、真犯人は佐々木に罪を着せようとしてこんなことをしたんだと思う。死体発見現場にいたら間違いなく疑われるのは佐々木だからな」

「そんな………!!」

目を大きく開き絶句する佐々木。

「わ、わたくしはどうしたら………!」

「ひとまず、今の話を学級裁判が始まったらもう一度してくれ」

「で、ですがそうしたらわたくしが疑われて………」

「隠していて後で判明するのが一番最悪のパターンだ。佐々木の無実を証明するのが難しくなる。俺がなんとかフォローするから正直に話してくれ」

「…………分かりましたわ。アナタにお任せしますわ、夢寺サン」

「よし。とりあえず今は捜査時間だ。みんなと合流しよう」

俺は立ち上がりつつ張り切る佐々木を見る。

佐々木は恐らく嘘が下手なタイプだ。だから今言った事が嘘とは思えない。

だが、それも絶対じゃない。

もし本当に佐々木が殺していたのなら………。

「…………」

佐々木を信じるか、それとも信じないか。

その答えは決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[佐々木の証言]

夜中の12時頃、大浴場に呼び出しを受けたが、何者かによって気絶させられ、気がついたら脱衣所にいたとの事。

 

 

 

[佐々木に向けられた手紙]

佐々木の部屋に挟まっていた手紙。

 

 

 

私はお前の秘密を握っている。

みんなにバラされたくなかったら今夜12時頃大浴場に来い。

 

 

 

 

 

 

「佐々木、最後に一つ聞かせてくれ」

俺は部屋を出ようとする佐々木に声をかけた。

「だから佐々木と呼ぶなとあれほど………………今はそれどころじゃないですわね。なんでしょうか」

「『パンドラの箱』は開けたか?」

「パンドラの箱?」

「ハルクが思いっきり全員の前で開けてたやつだ」

確か、あいつの凶器は「ククリナイフ」だったか。

「ああ、動機発表の時配られたものですわね。それでしたら部屋の隅に未開封のまま放置してありますわ」

佐々木が指差した先には配られたパンドラの箱が置いてある。

「………確かに未開封だな」

「こんな忌々しい物、触りたくもありませんわ。美しいわたくしとどう考えても合わないですもの。………それがどうかしたのですか?」

「いや、佐々木が気絶させられた原因が何なのか考えてたんだ。別に殴られたりはしてないんだよな?」

「ええ。わたくしの体には傷一つないですわ」

「そうか………」

ひとまず、佐々木はパンドラの箱を開けてないことが分かっただけでも十分だ。

………それにしても体を傷つけずに気絶させる方法か。

一応頭の片隅には置いておこう。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[パンドラの箱]

動機発表の際に配られた殺人の手助けとなる道具が入った箱。

ハルクの箱の中身がククリナイフであることはほぼ全員が把握しており、また、佐々木の箱は未開封である。

 

 

 

 

 

 

 

「おう蓮!それに佐々木じゃねーか!」

現場である大浴場に佐々木と戻ると、近くをうろうろしていた雷哉が手を振ってきた。

「てゆーかよく連れてこれたよな?拷問でもしたんか?」

「してねーよ」

「されてないですわ!!」

雷哉のバカな発言に俺達は同時に否定する。

「なんだオメーら、息ぴったりじゃねーか」

「どこがぴったりですの!!こんな無礼な人と一緒にしないでくださいまし!」

ギャーギャ言ってる2人を放置して、俺は一応報告のため検死をしている司の元へ向かう。

「司、佐々木を連れてきたぞ」

「フン、ならお前は自分の部屋にでも閉じこもっていろ。ウロチョロされると迷惑だし目障りだ」

「…………」

相変わらず俺にだけ異常な敵意を示す司。

「………断る」

「………何だと?」

だが、俺はここで素直にはいそうですかと引き下がるわけにはいかない。

「俺だって命がかかってるんだ。捜査はやらせてもらう。それくらいの権利はあるだろうし、お前にやるなと強制される謂れもない」

「お前………!!ゴミみたいな才能を持った出来損ないのくせに俺様に意見するのか………!!!!」

俺の言葉に激昂した司が顔を真っ赤にして立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

「………頭を冷やせ、司………」

しかしそこで見張りをしていた天草が間に入る。

「どけ、神父。俺様の邪魔をするのか?」

「………今一番頼りになるのは君だ。だから君が怒りで我を忘れると私達はどうすればいいのか困ってしまう………」

「そうデスヨ!!ケンカ、よくないデース!みんな仲良くしまショー!」

同じく見張りをしていたハルクも司の肩を掴む。

「………チッ、どいつもこいつも………」

司は立ち上がると出口へと向かう。

「おい司、検死は………」

「とっくに終わった。俺様は他の場所を調べに行く。後は勝手にしろ」

そう言い残すと大浴場を出て行ってしまった。

「悪いな、2人とも」

「………君が謝る必要はない。今のは司が間違っている……」

「そうデスマジシャンサン!助け合いが大切デース!」

心優しき天草とハルクがいてよかった。

 

 

 

 

 

「それで早速なんだが、百々海の検死結果について司は何か言ってたか?」

「……………いや。一応私が尋ねてみたのだが、『お前ら馬鹿が知る必要はない』と言われてしまった……………」

「秀才サンヒドイデース!」

「そうか………」

本当にあいつに任せてよかったのだろうか。

俺はそんな後悔の念を抱いていると、百々海のズボンのポケットが膨らんでいることに気がついた。

「司は百々海の所持品は調べてたのか?」

「……………いや。だが私が見る限りそのような行動はしていなかったと思う…………………」

「ワターシも見てまセン!」

俺は百々海に心の中でごめんと謝りつつポケットをまさぐる。

「………百々海のパスポートか」

出てきたのは彼女のパスポートだった。

しかし俺が持っている物と明らかに違う点がある。

「液晶が壊されてるな」

「本当デース!」

「…………犯人の仕業だろうな………」

百々海のパスポートは液晶が派手に破壊されていた。

「おいおい。派手にぶっ壊しすぎだろ。使いもんになんねーじゃねーか」

「そうかもな………ん?」

念のため電源ボタンに触れてみる。

すると普通に起動し、『百々海 真凛』と名前が表示された。

「………普通に付くな…………」

「ワーオ!!ビックリデース!!!」

どうやらこのパスポートは相当頑丈に出来ているらしく、下手な衝撃では壊れないようだ。

「悪い2人とも。このパスポート、俺が預かってもいいか?」

「………構わない………」

「もちろんデース!ワターシ、とっても優しいデスカラ!」

「ありがとう」

このパスポートが何か手がかりに繋がればいいんだが………。

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

[百々海のパスポート]

百々海が所持していたパスポート。液晶は派手に割れているが、壊れてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百々海の死体付近は大体調べ終わったので、今度は乃木の方へと向かう。

後ろからは先程まで口喧嘩をしていた雷哉と佐々木が付いて来ている。

「夢寺君、それに風神君と莉央奈さんも。捜査は順調かい?」

綾辻がサウナ内で検死を、千尋と結城がその見張りをしていた。

「いや、まだモノワニファイルに目を通しただけだ。そっちの首尾は?」

「検死はもう少し時間がかかるみたいだよ。なにせ熱いサウナの中で倒れていたからね。死亡推定時刻の特定が難しいらしいんだ」

なるほど。死体の温度が著しく変化すると正確な死亡時刻が分からなくなるというのを小説で見たことがある。

となると、犯人は死亡時刻を分からなくする為にサウナを犯行場所に選んだ可能性もあるな。

「そうか。なら結城の気がついた範囲でいいんだが、何か不自然な点とかなかったか?」

「そうだね…………まずこのドアなんだけど、外から鍵がかけられる仕組みになってるんだ」

「乃木は鍵を閉められて外に出られず殺されたって事か」

「断定は出来ないけどね………。あ、あとこの入口のドアノブなんだけど、何故か茶色く汚れているんだ」

「茶色………」

「あ、ホントじゃねーか。よく見ると汚れてんな」

「誰ですの汚したのは?ちゃんと綺麗に使って欲しいですわね」

サウナに入る入口の扉に付いているドアノブ。

それを見ると何やら茶色い汚れが付着している。

「綺麗な浴場にこの茶色い汚れがあるのは変じゃないかと思うんだけど、夢寺君はどう思うかな?」

「いや、結城の言う通りだと思う。これは確かに妙だ」

何故ここだけピンポイントに汚れているのか。

これは覚えておいた方がよさそうだ。

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

 

[ドアノブの汚れ]

サウナ入口のドアノブに茶色い汚れが付着していた。

 

 

 

 

 

「今のところ見つけたのはそのくらいだね」

「助かる。後、今朝起きてから百々海が見つかるまでの行動を教えてもらってもいいか?」

「うん。僕が起きたのは6時30頃。そこから支度をして食堂に向かったのは6時45分頃だったかな。食堂には円城寺君と綾辻さん、それに天草君の3人がいて、食事の用意を始めているところだったよ。彼らはいつも6時半頃集合してるみたいだね。僕はそれを手伝っていたんだ。次に来たのは写実君で、確か7時前くらいだったと思う。その後7時過ぎに司君が水を飲みに来たと言って一瞬入ってきたけどすぐ出て行ったかな。その後は7時半くらいから千尋さん、桃林さん、ハルク君、風神君、薬師院さん、そして夢寺君の順で来たよ」

結城はすらすらと話してくれた。

「オメーすげーな。よく入ってきた順番とか覚えてられんな」

「今日は乃木さんが来ていなかったからね。いつもより気になっていたから覚えていたんだと思う」

今の話を聞いた限りだと…………食堂に来なかったのは死んだ2人の他に八尋か。あいつにも後で話を聞く必要がありそうだ。

「助かった、ありがとう」

「大丈夫だよ。他にも何か聞きたい事があったら声をかけてね」

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[結城の証言]

今朝、食堂に来た順番と時間は次の通り。

 

①天草、綾辻、円城寺………6時半頃

②結城……6時45分頃

③写実……7時頃

④司………7時15分頃

⑤千尋→桃林→ハルク→風神→薬師院→夢寺………7時半以降

 

 

 

 

 

「あ!れんとらいあとりおなだ!」

見張りをしていた千尋が大きくこちらに手を振っていた。

さっきは酷く落ち込んでいたようだが、今はいつもの明るさが戻ってきている。

「大丈夫か?無理しなくてもいいんだぞ」

「………ううん、もうだいじょうぶだよ」

千尋は一瞬悲しげな顔を見せると、すぐ笑顔に戻った。

「まりんとたまきはしんじゃったけど、千尋達はまだいきてる。だから2人のためにも、千尋はわらうことにしたんだ。かなしいかおよりわらったかおでいたほうが、てんごくにいる2人もよろこぶとおもうから」

「………頼もしいな、千尋は」

「えへへ。ありがとう」

千尋のように絶えず笑顔を見せる人がいると、俺達も気分が明るくなる。

 

 

 

 

 

 

「ところで千尋。何か気になったことはないか?些細なことでもいい。とにかく手がかりが欲しいんだ」

「きになること?えーっと…………あ、そうだ!さっきみはりをはじめるまえにたまきのふくとかいろいろしらべてみたんだけど、たまきのパスポートがどこにもなかったんだ」

「パスポートが………ない?」

「犯人が盗んだってことかよ」

「自分のパスポートを使えばいいじゃありませんの。他人のパスポートをわざわざ使う理由が分かりませんわ」

「じゃあ…………オレは知らねー」

「諦めるのが早すぎますわ!?」

「………とにかく分かった。ありがとう千尋」

「どういたしまして!!」

乃木のパスポートの行方か。

まだ事件に関係しているかは分からないが、一応覚えておこう。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[千尋の証言]

乃木のパスポートがどこにも見当たらないらしい。

 

 

 

 

 

 

「検死の方が終わりました」

すると黙々と検死を行っていた綾辻からそう声をかけられた。

「何か分かったか?」

「『モノワニファイル』に書いてあるが通りでした。死因は熱中症で間違いないと思います。ただ、正確な死亡時刻がどうしても割り出せなくて………」

「やはりサウナの暑さが原因か」

「はい………」

「う〜ん、それじゃあ誰が犯人か分かんねーな」

「ですが、乃木様が亡くなってそこまで時間は経っていないと思います。死斑も見られないですし」

乃木は昨日の夜の時点では確実に生きていた。

その後の足取りを知ることが出来れば、もう少し死亡推定時刻を狭められるかもしれない。

「他に何か気になる点はあったか?」

「それが…………乃木さんの体はとても綺麗な状態なんです。外傷が全くないので得られる情報も少なくて………」

「じゃあ乃木は本当にサウナから出られずに殺された、ということか」

「そうとしか考えられないと思います」

そうなってくると中々厄介だ。何故なら、乃木の殺人は誰にでも可能であったということになるからだ。鍵を閉め乃木を閉じ込めるだけなら、強力な力も特殊な技術もいらない。

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、普通に考えから犯人女子しか考えらんねーだろ。そうは思わねーか?」

雷哉は俺達を見渡しそう言った。

「………そうですわね。ここは『女子風呂』。男性の方は入れないですわ」

「電子生徒手帳の貸与は規則で禁止されているしね。もし乃木さんを閉じ込めたのが犯人であるなら、男子に犯行は無理だよ」

「じゃあ千尋たちおんなのこのだれかってこと?」

「………けど、何か引っかかる。女子風呂に女子しか入れないのは犯人も当然知っていた筈だ。それなのにわざわざ犯人候補が絞られる各性別の風呂で殺す理由が分からない。自分の首を絞めているようなものだろ」

「んなのついカッとなってやっちゃったんじゃねーの?」

「衝動的に、か。確かにそれなら説明がつきそうだね。犯人は理性を失っていたから大浴場のシステムを失念していたのかもしれない」

「だろ?やっぱオレ天才だわ!」

「らいやすごーい!!」

「天才かどうかはさておき、その線が一番しっくり来ますわね」

盛り上がる中、俺は頭の中でイメージしていた。

乃木と犯人がなんらかの理由で口論になり、犯人がカッとなって乃木を閉じ込める。

………本当にこれでいいのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

[綾辻の検死結果]

モノカバファイルとの相違点はなし。

暑さのため正確な死亡推定時刻は割り出せないが、そこまで時間は経っていないとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても暑いですわね……………まあサウナだから当然なのでしょうけど」

佐々木がハンカチで額の汗を拭く。

俺も少しいるだけなのに汗が出てきた。

「いや、佐々木さんの感想は正しいよ。ちょっとこっち見てもらえるかな」

結城は見張りを千尋に任せると、一度サウナの外にでた。

「このサウナは外に付いているこのボタンで温度とかを調整出来るんだけど、最初僕がこれを見た時、温度が80度になってたんだ」

「80度ぉ!?」

俺達は驚愕の表情でスイッチを二度見した。

「さっき慌てて僕がスイッチオフにしたからだいぶ暑さは和らいだけど………」

「そんな所に乃木サンは閉じ込められてしまったのですね……」

「…………」

そんな佐々木の言葉に全員が口を閉ざす。

「す、すみませんわ。今のは失言でしたわ」

「……いや、その通りだよ。乃木さんは犯人に閉じ込められて殺させたんだ」

結城は拳を握りしめた手を震わせ怒りを露わにする。

「勿論こんなことをした人も許せないけど、僕はこの状況を作り出したモノワニが一番許せないんだ」

「それは皆同じだ。必ず勝とう。あのワニの思い通りにさせるわけにはいかない」

俺の言葉に全員が強く頷いた。

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[サウナの温度]

乃木の死体発見時、サウナの温度は80度に設定されていた。

 

 

 

 

「ひとまず大浴場内で調べられるところはこのくらいか」

「そうですわね。次はどちらへ行くんですの?」

「あー!オレもう暑くて無理だわ!先外出るぜ!」

雷哉は暑さに耐えきれなくなったのか、ダッシュで外へと走っていった。

「本当に落ち着きがない人ですわね。体も大きくて邪魔だし、男ってどうしてこう品のない人ばっかりなのでしょう」

そんな雷哉に辛辣な言葉をかける佐々木。

「アナタもですわよ、夢寺サン」

俺が苦笑いしていると、佐々木にじろりと睨まれた。

「わたくしに対する数多くの悪口、一生忘れませんからね」

「悪かった、佐々木」

「だから苗字で呼ぶなと何回言ったら分かるのですか!!!」

「許してくれ、佐々木」

「ムキー!!」

いつも通りの佐々木をスルーして大浴場を出る。

 

 

 

 

 

 

 

「脱衣所、随分と荒れてますわね」

「きっと犯人と百々海が争ったんだろう」

脱衣所の床には服を入れるカゴが散乱し、ぐちゃぐちゃの状態になっていた。

「………あ!」

「どうした?」

「ここ見て下さいませ」

佐々木が指差す先には、床に飛び散った血痕があった。

「これは百々海サンのってことですわよね?」

「いや、もしかしたら犯人のものかもしれない。決めつけるのは危険だ」

「だとしたら、犯人は何らかの傷を負っているということですか?」

「これが犯人の血であるならな」

犯人が百々海を襲ったが、百々海の反撃にあい傷を負った。

そういう可能性も考えられる。

「ともかく、これも一応覚えておこう」

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[脱衣所の血痕]

脱衣所の床に血痕が残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出ると、薬師院と写実がとある場所を難しい顔で見ていた。

雷哉の姿は見えないのは、恐らく喉でも潤しにどこかへ行ったのだろう。

「夢寺氏、それに佐々木氏も!無事だったんでありますね!」

「夢寺はんお疲れさん。………おや?そこにいるのは佐々木はんちゃうん?今までどこ行ってたん?」

「アナタに言う必要はないですわ」

佐々木はフンと首を薬師院から逸らす。

「んー?もしや佐々木はん、もしかして2人を殺した犯人だったりするん?」

薬師院はその態度にカチンと来たのか、嫌味を言うような口調でそう問いかける。

「そ、そんな事あるわけないですわ!アナタこそ犯人じゃありませんの?性格悪いし、わたくしよりよっぽど犯人の可能性ありそうですわ!」

「その言葉、そっくりそのまま返すで。佐々木はんほど性格悪い女いないとウチは思うけどなぁ」

「なんですって!この女狐!!」

「ギャーギャうるさいなぁ、このワガママお嬢様は」

「おい待て。頼むから喧嘩は後にしてくれ」

「そうであります!こんなことしてる場合じゃないであります!」

俺と写実は慌てて今にも殴りかかりそうな2人を引き離す。

こいつら、完全に水と油だな………。

 

 

 

 

「それで、2人は何をしてたんだ?」

「それが………」

「大浴場の入退室のログを見てたんやけど、ちょっと妙でなぁ」

薬師院がパスポートをタッチする機械の横にある白いものを指差す。

「というか、こんなのあったのか。全然気が付かなかった」

「わ、わたくしはとっくに気がついてましたわよ。夢寺サンもまだまだ甘いですわね」

佐々木が高笑いをする。

絶対嘘だな。顔に出てるぞ。

俺はそれを無視して早速確認する。

 

男湯 

・01:17 in

・01:17 in

・02:04 out

・02:20 out

・06:55 out

・08:19 in

・08:19 in

・08:19 out

・08:19 out

 

 

 

 

女湯

 

・00:21 in

・00:55 out

・00:55 in

・00:56 out

・06:32 in

・06:35 in

・06:37 in

・08:19 in

・08:20 in

・08:20 in

 

 

 

 

「これは…」

「『in』が入った時で、『out』が出た時らしいであります。1人が入る度に記録されるらしいであります」

「パスポートにタッチするのとは関係ないのか?」

「タッチするからカウントされる、って感じでもないらしいで。監視カメラが独自にカウントしてるってモノカバは言っとったけど」

「とにかく、誰かが入る度にここに記録されるってことだな」

「そういう認識でいいと思うで。でもそう考えるとちょっと変な所があってなぁ」

薬師院はとある場所を指差す。

「ほら、ここ何か変やと思わん?」

「…………本当だ。これだとおかしいな」

「な、何がおかしいでありますか?」

「わたくしにも教えて下さいませ!」

俺と薬師院はピンときたが、写実と佐々木はよく分かってないようだった。

「薬師院。このログ写真で撮っておいてもらっていいか?裁判の時必要になるかもしれない」

「分かった。使い所は夢寺はんに一任してもええの?」

「ああ。悪いな」

「ええってええって。うち、夢寺はんのこと信用してるし、夢寺はんの頼みなら何でも聞くで♪」

「な、なんで夢寺サンにはそんな素直に………!やっぱり性格悪いですわこの女狐!」

「佐々木はんみたいな無礼な女に払う礼儀なんてないからなぁ」

「ムキーーー!」

「どんだけ仲悪いんでありますか………。でも美女2人が喧嘩してる姿もなんか………イイ!」

…………頼むから少し静かにしてくれ。

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

[入退室なログ]

大浴場の更衣室に入った時に記録されるログ。

 

 

 

男湯 

・01:17 in

・01:17 in

・02:04 out

・02:20 out

・06:33 in

・08:19 in

・08:19 in

・08:19 out

・08:19 out

 

 

 

 

女湯

 

・00:21 in

・00:55 out

・00:55 in

・00:56 out

・06:32 in

・06:35 in

・06:55 out

・08:19 in

・08:20 in

・08:20 in

 

 

 

 

 

 

「蓮!」

俺と佐々木が次の場所へ向かっていると、雷哉が大きな足音を立てながら走ってきた。

「お前どこ行ってたんだよ?」

「食堂で水がぶ飲みしてきたぜ!お陰で元気満タンだ!」

「アナタ………本当に今の状況理解しているんですの?」

「勿論だぜ!このオレが必要だって事だろ?」

「ハァ………。アナタと話していると疲れますわ」

よく分かってない雷哉と頭を押さえる佐々木を他所に、俺は目的の場所へと足を進める。

「蓮、どこ行くんだよ」

「悪いが雷哉、お前がさっきまでいた場所だ」

「マジかよ!?」

 

 

 

 

 

食堂、というより厨房に入ると、八尋が棚をガサゴソ漁っていた。

「まだいたのかよ八尋」

「いては悪いですか?」

「そうは言ってねーけど」

「八尋、もしかしてお前も凶器の確認か?」

雷哉を睨む八尋に俺は声をかける。

「ええ。あなたもですか、夢寺さん」

八尋はいつも通り抑揚のない口調で答えた。

「人を殴り殺せる凶器なんてここにしかなさそうですからね」

「それでどうなんですの?凶器らしいのはありそうなんですの?」

「自分で調べればいいでしょう。僕はもう確認は済みましたから」

八尋はそう言うと、立ち上がって出口へと向かう。

「そこにリストがありますから、今の在庫と照らし合わせてみればすぐ分かりますよ」

「ちょ、そんくらい教えてくれてもいいじゃねーかよ!」

「あなた達が犯人である可能性もあるでしょう。そんな簡単に情報を渡すわけないじゃないですか」

「なあ八尋。それは俺達で確認するからいいとして、昨日の夜中と今朝何をしてたかだけ教えてくれないか?」

「………アリバイですか」

八尋はこちらに顔を向けると意外と素直に答えてくれた。

「基本的に僕は1人でいたのでアリバイはありません。ただ、今朝6時半過ぎ、百々海さんが慌てて食堂から出て行くのを見ました。僕が散歩がてら本館を歩いている時でしたね」

「百々海を………?」

「では、僕はもう行きますから。後はせいぜい頑張って下さい」

八尋はそう言い残すと去っていった。

 

 

 

 

コトダマゲット!

[八尋の証言]

今朝5時半頃、食堂から急いで出て行く百々海を見かけたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですの、あの人!わたくしに対してあんな態度を取るなんて!」

「んだよケチくせーな」

「いや、八尋の言いたいことも分かる。誰が犯人か分からないからな。警戒するのも無理はない」

俺はそう言ってリストの確認を始めた。

 

 

 

 

 

 

雷哉と佐々木も手伝ってくれたお陰で、確認自体は割とすぐ終わった。

「………このハンマーみたいなやつが無えな」

リストと在庫が合わないのが一つだけあった。それが木槌だ。

「そもそも、何で木槌が厨房にあるのかが疑問だ」

「それだよそれ。何でここにあるんだよ」

「魚を捌く時に使う道具、ですわね」

俺達が頭にハテナマークを浮かべていると、佐々木がボソリとそう言った。

「魚を捌く?」

「ええ。鰻や穴子を裂く時に、目の下に目打ちと呼ばれる金具を打ち込んでまな板に縫い付けるようにする手順がありますの。その打ち込む時にこの木槌を使うんですわ」

佐々木のスラスラと説明する様子を見て俺達は揃って顔を見合わせた。

「………何ですの、その顔は」

「いや、オメーってなんかバカっぽいキャラだと思ってたから意外だったというか……」

「俺も同じ意見だ。悪かった、佐々木」

「ば、馬鹿にしないで下さいませ!わたくし、教養はこの中の誰よりもあるんですの!!それと夢寺サン、また佐々木って呼びましたわね!!」

しかし佐々木のお陰で用途が分かった。

犯人は恐らくこの木槌を使った筈だ。

そしてその木槌の行方は………。

 

 

 

 

コトダマゲット!

[無くなった木槌]

厨房から木槌が無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「後は………」

俺は厨房をウロウロしながら今まで集めた情報を頭の中で整理する。

「なあ、モノワニって今呼べば来ると思うか?」

「モノワニ?知らねー、呼べば来るんじゃね?」

「どうしてそんなことを聞くんですの?」

「いや、あいつに聞かなくちゃいけないことがあって」

試しに呼んでみるか。

「おいモノワニ!聞きたいことがあるんだ!」

「なんでしょうカ夢寺サマ」

「うわっ!?どっから出てきたんだオメー!」

俺が呼びかけた瞬間、モノワニは足元から現れた。

「モノワニ。聞きたいことがある。答えてくれるよな?」

「ワタクシにお答え出来ることであれバ」

ニタニタと笑うモノワニに軽く腹を立てながら俺は質問する。

「そうか。………聞きたいのは、あのアナウンスについてだ」

「『アナウンス』?」

「お前も聞いただろ?百々海と乃木を見つけた時、『死体が発見されました』って流れたアナウンス。あれが流れるのは何か条件があるんじゃないかって俺は思ったんだが………」

「なるほド。いいところに目を付けましたネ、夢寺サマ。ではお答えしましょウ。あのアナウンスは『死体発見アナウンス』と言いましテ、『クロ以外の3人が死体を発見すると流れるアナウンス』でス」

「クロ以外か………」

これは重要な情報だ。このアナウンスによって3人は無実を証明出来る。

「よくわかんねーんだけどよ、それ何か聞いて意味あるのか?」

「大ありですわよ!アナタ本当に脳みそありますの!?」

「ちゃんとあるわ失礼だなオイ!」

「内容は分かった。もういい」

「では、ワタクシはこれにて………」

モノワニは突如姿を消した。

………あいつ、一体どこから現れて消えてるんだ?

 

 

 

 

 

 

コトダマゲット!

 

[死体発見アナウンス]

クロ以外の人間3人が死体を発見すると鳴るアナウンス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポンパンポーン………。

 

 

 

 

 

 

 

「皆サマ、大変長らくお待たせ致しましタ。学級裁判をこれから始めようと思いまス。今すぐ玄関前に来てくださいまセ」

館内に流れるモノワニからのアナウンス。

タイムリミットのようだ。

「おっしゃ!さっさと行こうぜ!」

「うぅ………なんだか緊張で胃が痛くなってきましたわ………」

「………行こう」

俺達は玄関ホールへと駆け足で向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が玄関ホールに到着すると、既に他の全員は到着していた。

捜査に参加しなかった桃林もちゃんと来ている。

………何故か縛られた状態だが。

「は、離すだす!ワタシは学級裁判なんか出ないだす!!」

「残念ですが桃林サマ。学級裁判は全員参加でス。欠席者がいると困るんですヨ」

「うるせーよデブ!いい加減腹括れや!」

その様子をイライラした様子で見ていた円城寺が怒鳴る。

「円城寺君。言いたいことは分かるけど言い方がキツいよ。もう少し優しく言ってあげて欲しい。………桃林さんもこうなってしまった以上、僕たちはやるしかないんだ。もう覚悟を決めよう」

「………」

「………は、晴翔くんがそう言うのであれば………」

円城寺がチッと舌打ちし、桃林は頷く。

「これでぜんいんそろったね!」

「某らをこんなところに集めて………モノワニは何をするつもりでありますか?」

確かに、玄関前にあるのは趣味の悪いモノワニの像だけだ。

何故広い宴会場ではなくここなのか。

 

 

 

 

 

 

「皆サマお揃いのようですネ」

するとモノワニが像の脇から現れた。

「おいガラクタ。これから学級裁判とやらを始めるのだろう?なら早く場所に案内しろ」

「勿論でス。では、皆サマ少しお下がり下さイ」

言われた通り、全員は像から少し下がる。

すると突如、ゴゴゴという地鳴りと共に像が動き始めた。

そして謎のエレベーターへと続く通路が現れた。

「なんだこりゃ!?勝手に像が動きやがった!」

「うわあ!みてみて八尋!ぞうがうごいたよ!」

「言われなくても分かりますって…………。あー鬱陶しい………」

「なるほど、これからあのエレベーターで移動するって訳やねぇ」

「その通りでス。皆サマにはあれにのって裁判場まで移動して頂きまス」

「フン、さっさと行くぞ」

どうでもいいといった風にエレベーターへ向けて歩き出す司。

「僕達も行こう。ここで立ち止まるわけにはいかない」

結城の呼びかけに、俺達はゆっくりと歩き出す。

そして全員がエレベーターに乗ると、ドアがゆっくりと閉まりガタンと動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15人を乗せたエレベーターは、ただひたすら下へと落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口を開く者はいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

不気味な機械音を鳴り響かせながら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深く、深く、どこまでも落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてエレベーターは停止し、扉が開かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆サマ、ようこそ学級裁判場へ」

すると、やたら派手なカーテンと真っ赤なカーペットで彩られた空間が現れた。

そして部屋の中央には、円形のテーブルが置かれていた。

証言台のようなものだろうか。

「なんだぁ、この趣味の悪ぃ空間は」

「目がチカチカするであります………」

「お褒めに預かりどうもでス。さテ、皆サマ自分の名前が書かれた席についてくださイ」

反抗しても無駄だと分かっているため、大人しく全員が自分の席へとつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超高校級の水泳部、百々海 真凛。

 

 

 

 

 

常に気怠げで、かつ自称する程の気分屋であった。

彼女の自由奔放な行動に困らされた人間も少なくはないだろう。

 

 

 

 

 

だが、実際話してみると明るく話好きな普通の高校生だった。

とても殺されるような悪い人間には思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、みんなのまとめ役であった少女、乃木 環。

 

 

 

 

 

正義感が強く生真面目な性格であり、その持ち前のリーダーシップで結城と共に俺達を引っ張ってくれた。

俺も乃木には何度も助けられた人間のうちの1人だ。

そして彼女は自身の記憶を取り戻す為、懸命に抗い生きようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、2人は殺されてしまった。

 

 

 

 

百々海は恩師に感謝の意を伝えられないまま。

 

 

 

 

乃木は自身の超高校級の才能を思い出せないまま死んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

2人を殺した犯人は同じなのか。

それとも別なのか。

 

 

 

 

 

 

 

とにかく、俺達を裏切りここを出ようとしている人物がこの中にいる。

 

 

 

 

 

 

 

俺に何が出来るか分からない。

でも、生きるために、そして百々海と乃木の為にも、俺は犯人を見つけてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1回目の学級裁判が今、始まろうとしていた。

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