うたわれるもの 夢幻の旅人   作:ライム酒

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相変わらずの地の文なし



検非違使の説明

 

【挿絵表示】

 

 

「………あの、誰か……いますか?」

 

「はいなのです。

 スズリ様ですね、お待ちしていたのです」

 

「し、失礼します……。

 …ここが、別当宅。…大きい」

 

「ミカド様が帝都にいる一流の職人を集めて建てた屋敷なのです。

 これからここが検非違使庁、通称使庁となるのです」

「マシロ様、スズリ様がいらっしゃったのです。

 これから引き継ぎを行うことにしようと思うです」

 

「ああ、これからよろしく。自分はマシロだ。

 訳あってミカドさまから不相応な家と役職をもらったが、まだ何も知らないんでな。いろいろ教えてくれると助かる」

 

「拙は…スズリ。前は使督だった。

 今は使佐に宣旨されてる。

 …よろしく」

 

「八柱将オシュトルの妹、ネコネなのです。

 ミカド様からマシロ様の御側付きを任させているのです。

 では早速、検非違使の業務を教えてもらいたいです」

 

「うん。…検非違使はここ帝都の治安を維持する組織。

 もともと、帝都の治安維持は衛門府の仕事だったけど、衛門府は他に戸口名籍の管理、貴族の護衛、…あとは訴訟や租管理など行政の全般をやってた。

 けど、帝都が発展したことで衛門府の負担が大きくなって、警察権の行使を新たに作った検非違使庁に移したことが検非違使の始まり」

 

「ちなみに衛門府は長官のことを督と呼んでいるです。これは近衛府での長官、大将と同じ意味なのです。

 その名残でスズリ様もこれまで検非違使督と呼ばれていたのです。

 それで今回は、改めて独立した組織とするために、長官を新たに別当と呼ぶことにして、次官を佐と呼ぶようにしたのです」

 

「…知らなかった。……詳しいね」

 

「勉強してきたのです!

 それと近衛府も衛門府から分かれてできた役所なのです」

 

「………」

「………」

 

「あっ、こほん…失礼したのです、続きをお願いしますです」

 

「う…うん。

 それで、警察権を行使して悪人を捕らえたり、役人の不正を暴いたりするのが検非違使の仕事。

 けど…長官が特にすることはない。現場が各自で判断して行動してる。

 …拙も命令とか……話すの得意じゃないから、一人で見回りをしてる」

 

「そうなのか?治安部隊だから上下に統制がキッチリしてると思ってたんだが……」

 

「…統制は、あまりよくない。

 検非違使は危ない仕事だから…人気がない。

 それで、人が足りなくて態度の比較的良い罪人を多く雇ってる。

 でも…やっぱり罪人だから……」

 

「うーん、立派な國でも闇はあるんだな」

 

「……知らなかったのです」

 

「その環境じゃ、どこでどんな事件があったかとか、しっかりとした報告は上まで届かなさそうだな」

 

「多分、…全部は届いてない、と思う」

 

「手をつけるとしたらそこからだな」

 

「…教育するの?」

 

「真剣に勉強はしないだろうな。罪人あがりで文字を書けるかどうかも怪しいし。

 帝都の住民の識字率はどれくらいだ?」

 

「商人はほとんど読み書きができるです。

 市民も家を構えてるなら読み書きができる人が世帯に最低1人はいるはずです」

 

「悪くないな。なら報告書は市民に書いてもらうか」

 

「市民にですか?うーん、難しいと思うです」

 

「報告書が上がった地域に検非違使を重点的に配備する、と言ったらどうだ?」

 

「…なるほど」

 

「良い案だとは思うですけど信用の問題なのです。

 実績がないと習慣化するには時間がかかると思うです。

 それに習慣化したとしても、同一の事件が何度も報告されたり、虚偽の報告が混じることも考えられるです」

 

「まあ、いろいろ問題はあるだろうな。

 とりあえず習慣化した後の問題はその時に考えるとして、まずはどうやったら習慣化してもらえるかを考えよう」

 

「報告は、どうやってさせるの……?

 紙に書いて、持ってきてもらう?

 手続きが複雑だと、誰もやってくれない……」

 

「各地に投書箱を設置するのが手っ取り早いか?

 それで投函の多い地域に検非違使を配備するってのはどうだ?」

 

「うーん、そもそも検非違使の多いところで暮らしたいかと聞かれると少し疑問に思うです。

 市場とかに検非違使がたくさんいたら買い物を楽しめない気がするのです」

 

「確かに……」

 

「なら検非違使の印象の改善が必要だな。

 何か案はあるか?」

 

「服装を可愛くする……武器を隠す……、うーん、難しいのです」

 

「お菓子を、配る……とか?」

 

「それはとてもいい案なのです!

 通りにある飴屋は店主の顔が怖いですけど飴がとても甘いのです!」

 

「甘味で釣るのか……。

 まあ、元罪人の検非違使も子どもに感謝されたら更生するかもしれんしな

 一石二鳥でいい案かもしれん」

 

「そ…そう?」

 

「そうなのです!

 すぐに始めるといいと思うです!」

 

「う、うん。……飴を、作らないと…」

 

「……いや、飴は飴屋から買うべきだろう。

 まあ、甘味を配る検非違使が配備されるなら、そう邪険に扱われんか」

「次は報告の形式文について考えるか。

 ある程度決まった形式を作っておかないと書くのも読むのも面倒くさいしな」

 

「絶対に必要なのはいつ、どこで、何が、どうした、の4つなのです。

 いつとどこでは投書箱の設置で何とかなりそうですので、何がとどうしたを決めるといいと思うです」

 

「何が、どうした……盗みとか喧嘩とかか?他にどんなものがあった?」

 

「殺人、暴行とか…誘拐、放火…密売、賄賂、賭博……いろいろあった」

 

「結構闇が深いんだな……」

 

「人の世だから当然なのです…。

 大いなる父(オンヴィタイカヤン)のようにはいかないのです」

 

「いや……自分も情報を盗んだりとかしてたんだよな……。

 ……それに旧人類は比べ物にならないほど倫理的に汚いからな」

 

「そうなのですか?

 でも大いなる父(オンヴィタイカヤン)とわたし達とでは倫理観が違うのも当然のことなのです」

 

「……本当に業が深いよな。

 …滅んだのも神の天罰であながち間違ってないのかもしれん」

 

「大丈夫……?

 一旦、休憩する?」

 

「ああ、問題ない。あまりクヨクヨ考えても仕方のないことだしな。

 とりあえず、先に上げてもらったもので市民と関係する窃盗、暴行、誘拐、放火を選択肢に入れて、他をその他の欄として書いてもらうか」

 

「丸をつけるだけなら多くの人ができると思うです」

 

「何が、は何個盗まれたかとか…何人怪我したとか、対象と規模を書いてもらえば、いいと思う」

 

「そうだな。

 選択肢は人、商品、放火用に家を用意するか」

 

「悪くないと思うのです。

 その他の欄で記述されることが多いモノをその都度追加していけば、とても便利な報告書になると思うです」

 

「よし、モノは試しだ。

 テンプレの用紙をたくさん作りたいんだが印刷機とかはあるのか?」

 

「テン、プレ…?

 ええと、印刷機は先帝様が聖廟に残しているのですが、利用には東宮府ホノカ様の許可がいるのです」

 

「ホノカさま、か…。

 許可は難しそうか?」

 

「許可が降りるのに時間はかかると思うのですが、たぶん大丈夫だと思うです。

 今度空いている時に申請しておくのです」

 

「ああ、じゃあよろしく頼む。

 とりあえず組織改善はこんなところかな」

 

「………すごい」

 

「いや、まだ何もしていないし、これが上手くいくとも限らんからな」

 

「でも、拙はいままで何も……」

 

「スズリも一緒に意見を出してくれたし、それに今までこの帝都を見回りしてたんだろ?

 人には得意不得意あるんだから、自分のできることだけをやったら良いんだよ。

 自分なんか数百年近く寝てたんだしな。その前も適当に研究していただけだし」

 

「……ありがと」

 

「ああ。

 けどそれならどうして検非違使の長官になったんだ?

 もっと合う役職もあっただろ」

 

「…先帝様に任されたから。

 拙はただ、流されるまま生きてきて……」

 

「まあ、自分も流れるまま生きてるが、嫌なことは嫌って言うべきだと思うぞ。

 大抵は聞き入れてもらえないがな」

 

「ふふ。……そうだね」

 

「スズリは先帝さまの子って聞いたんだが本当なのか?」

 

「……そう、だと思う。

 でも、詳しいことは聞いてない」

 

「そうか。

 ……つまりその性格もある程度……先帝は帝都の治安をそれほど気にしていなかったのか?」

 

「マシロ様、急に考え込んでどうしたのです?」

 

「まあ、今後のことについてな。

 検非違使の長の仕事は他に何かあるか?

 朝議とかに出る必要はありそうだが」

 

「出る…けど、そんなに発言したことはない。

 帝都の治安は実質、左右近衛府が管理してたから……。

 発言もそっちがしてる」

 

「近衛府っていうとゲンホウとミカヅチだったか?

 なら今度そいつらと話し合わんとな」

 

「ミ、ミカヅチ様と、ですか……うう、リムリ様が来るまで会うのは待って欲しいです」

 

「なんだミカヅチは怖そうなやつなのか?」

 

「こっ、怖くなんかないです!

 鋭い目つきでこっちを見ることがあって、ちょっと苦手なだけです!」

 

「…それを、怖がってるって……」

 

「怖くなんかないのですっ!」

 

「わかったわかった。会うのはリムリって子が来てからだな」

 

「本当に怖くなんかないのです…」

 

「それでその子はいつ頃来るんだ?

 他にもいろいろ来るんだろ?」

 

「こほん、…あまりマシロ様の近くに新派ばかりを置くのは旧派がいい顔をしないのです。

 スズリ様もどちらかと言うと新派よりと見なされているので、次に配属されるのはルルティエ様だと思うです。

 ですが、ルルティエ様は現在クジュウリの代表として朝廷にご挨拶をしているので、もうしばらくかかると思うです」

 

「新派旧派は結構根深いんだな。

 こんなところにも配慮しないといけないのか」

 

「マシロ様は大いなる父(オンヴィタイカヤン)なので当然の配慮なのです。

 ご自身の影響力をあまり過少してはいけないのです」

 

「……はあ、やりづらいな」

 

「申し訳ないと思っているのですが、仕方がないことなのです」

 

「…何百年も生きていた先帝がいなくなったのもこういう事が原因なのかもしれないな」

 

「…シンパ?」

 

「スズリは新派旧派を知らないのか?」

 

「うん…初めて聞いた」

 

「それなのに勝手に分けられてるのか……。

 どうも今のミカドさまの支持者を新派、先の帝の支持者を旧派って呼ぶらしいぞ」

 

「…そうなんだ。

 拙はどっちでもいい…」

 

「まあ、そう言う考えが一番だろうな」

 

「一行政機関の長官次官が政治に無関心なのはあまり良くないと思うのです…。

 偉大な先帝様がお隠れになった今は皆が政治に関心を持ち、新たなミカド様を補佐してヤマトをより良くしていこうと考えるべきです」

 

「……とりあえず茶を入れるか」

 

「……うん」

 

「に、逃げずにちゃんと話を聞いて欲しいのです!」

 




 
せっちゃんかわいい
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