相変わらずの会話劇
そろそろ設定は全部説明できたかな
「本日よりルルティエさまが検非違使に所属することになったのです。
ルルティエさま、よろしくなのです」
「は、はい。
ク、クジュウリ皇オーゼンの末娘、ルっ、ルルティエ……です。
ミカド様より検非違使のジョ、判官である使尉の官位を賜りました。
よ、よろしくお願いします……」
「ルルティエとは帝都で別れて以来だな。
改めてこれからもよろしくな」
「……検非違使次官、使佐のスズリ。
はじめまして、よろしく……」
「は、はじめまして……」
「ところで判官っていうのは長官次官の次ってことか?」
「はいなのです。
各國皇の子は基本的に官位に就く際、判官以上を任せられるです」
「風習っていうか慣習があるんだな。
そういえばネコネの官位は次官なのか?」
「次官なんて恐れ多いのです。
わたしは田舎國の小さな家の出身なので文官に就くのはとても難しいです。
なので一生懸命勉強をして哲学士という学位を頂き、前は大宮司ホノカ様が長官を務める神祇府の長上官に就いていたのです。
そこで
「権力に就くのにもやっぱり大変なんだな。
長上官はどれくらいの立場なんだ?」
「……長上官はただの常勤の官人のこと。
非常勤を番上官って呼んでる……」
「……正規と非正規みたいなものか」
「…………」
「あっ、ルルティエさまが気にされることではないのです。
もともとわたしも兄さまのおかげで年齢制限を免除されてミカド様より哲学士を頂いているのです。
優遇されている以上にヤマトの為に頑張ればいいのです」
「……はい、ネコネさま、ありがとうございます。
私もマシロ様を支えられるように頑張りますね」
「その意気なのです!」
「……拙も頑張る」
「そんなやる気を出されるとこっちが困るんだが……」
「そういえばルルティエは旧派の出だったよな。
新派についてはネコネに聞いたんだが旧派はどんなところなんだ?」
「えっ、ネ、ネコネさま?
……マシロ様にそんなことまでご説明されたんですか?」
「今のヤマトは伏魔殿なのです。
知識は身を守る為に絶対に必要です。
……たとえ帝都の闇だとしても包み隠さずお教えするのが誠意というものです」
「……わ、わかりました。
私はネコネさまほど詳しくないのですが、知っていることは包み隠さずお伝えします」
「いや、そこまで真剣になるほど聞くつもりはなかったんだが……」
「わ、私のお父さま……父、オーゼンは旧派の革新派代表の1人となっています。
そしてシャッホロの皇、ソヤンケクル様もその1人とされています。
この革新派は……その、先帝様がお隠れになってから執られた対外政策に不満を持って集まった派閥になります」
「それは新派がやってる宥和政策のことか?」
「はい……。
クジュウリやシャッホロなどのヤマト構成國は、昔から帝都に対して朝貢を献上して、このヤマトの発展に貢献してきたという自負があります。
……それなのに、……あえて旧派の言葉を用いますが、戦争ばかりしていた南蛮人や略奪しかしない北狄人を優遇することに不満を持っているんです」
「ルルティエさま、‥‥ぶっちゃけすぎなのです」
「え、ち、違うんです。
お父さまやソヤンケクル様などがこの呼称を使っているだけで、私は思ってません……。
……思ってないんです」
「……ああ、そんなこと思ってないから。
しかしなるほどな、旧派の成り立ちはわかった。
それで旧派は何を目指しているんだ?」
「……はい。
父、オーゼンやソヤンケクル様が纏める革新派はヤマト構成國の待遇改善と政治への積極的参加を目指しています」
「それがネコネが言ってた地方分権のことか」
「……独立するの?」
「ち、違いますっ!
地方分権というのはその通りなのですが、決して独立を目指しているわけではありません……。
……ヤマトの政治は帝都があまりにも中心的になっているので、それを改善したいと革新派は考えています」
「実際、地方國の皇より帝都の貴族の方が立場が上なことは多いのです」
「そっか、拙も……」
「いえ、スズリ様は先帝様の御子なので貴族や皇とは一般に比べられないのです」
「いろいろと根深い話なんだな。
そういえばオシュトルも、それと確かライコウやミカヅチも帝都出身の貴族じゃないんだろ?
そこのところは革新派と共有できるんじゃないのか?」
「……そうですね。
わたしと兄さまはもともと皇ではないので立場が違うのですが、出身のエンナカムイはとても小さな國なのでヤマトの政治に関わる余裕はないのです。
なのでそれほど地方分権にこだわってはいないです」
「自力で自治ができるほどの國が革新派に所属しているわけか。
ライコウ達はわかるか?」
「……公に明かされてないのでここだけの話にして欲しいのですが、ライコウ様達はクナシコル皇の嫡子なのです。
ですが、ライコウ様とミカヅチ様はその縁を切ってミカド様に仕えているです。
そこにはいろいろとミカド様とライコウ様の密約があるそうなのですが詳しくは知らないのです。
そういう関係もあって、ミカド様とライコウ様は強固な関係を形成しているのです」
「あまり気軽に聞いちゃダメそうな話だな……」
「……闇が深そう」
「ルルティエ様も、くれぐれも多言無用でお願いするのです」
「……はい。
お父さまからもここだけの話にするようにと言われてきているので、会話の内容は気をつけています」
「おいおい、ここを勝手に政争の舞台にしないでくれ……」
「……マシロ様が
なので、マシロ様を巻き込んでしまった者としての責任を取るため、しっかりと身を守るための術をお教えしているのです……」
「はぁ、まあこれも人の業ってことか……。
さっき言ったことは気にしないでくれ。
……自分の身は自分で守らないとな」
「ご迷惑をお掛けして申し訳ないのです……」
「……私が深く考えずに、マシロ様を帝都にお連れしたことで」
「いえ、あの時点でマシロ様を帝都にお連れしない選択肢はなかったのです。
その選択はわたし達だけでなくマシロ様にも良くないのです」
「あの場所じゃ食い物もろくになかっただろうしな。
たとえ村に移り住んでも文字も読めないやつが1人で生きていけるわけがないからな」
「それにたとえ生きていけたとしても、何かの拍子で素性が明るみになって守ることすらできない状況になりかねないのです」
「そういうことだ。
話を切って悪かったな」
「……とても勉強になった。
思った以上に今の状況は薄氷の上だったんだ……」
「……はい。
覚悟をあらためて尽くしていきます」
「気にするなってのは無理なことだろうと思うが、いつもそんな固い表情だとこっちが疲れるんだ。
日常は日常として楽しまないか?」
「それがいいのです。
マシロ様のお言葉に甘えさせてもらうのです」
「では話を戻すのですが、……確か地方の皇より帝都の貴族の方が優遇されているという話だったのです。
そこまではもう大丈夫ですか?」
「ああ、革新派の成り立ちと目的ってのはよくわかった。
それでそもそもの話なんだが、革新派は自分をどうしたいと考えているんだ?」
「……父、オーゼンは現状静観を選んでいます。
ソヤンケクル様の話は聞いていませんが、おそらく同様だと思います」
「なんだ、静観なのか。
構えて損したな」
「父もソヤンケクル様も……革新派の者は先帝様に大恩があるため、その嫡流であるミカド様をお支えすることを心がけています。
現状は執っている政策に不満があるだけで対立みたいな形になっていますが……これが本意ではありません。
なので、……その、マシロ様を担いで等は一切考えていません」
「新派と旧派の革新派はそこまで離れているわけではないのか。
……その言い方だと革新派じゃない方は違うってことか?」
「そ、その……。
……クジュウリから外にあまり出たことがなかったので守旧派については……。
父からも詳しく教えられていません……」
「守旧派ね……。
ネコネは何か知っているか?」
「あまり詳しくはないのですが、概要ぐらいならわかるのです。
守旧派の代表は八柱将のヴライ将軍とデコポンポとされているです。
あと、同じく八柱将のトキフサ様も守旧派だと思うのですが、革新派とも関わりを持っているのです」
「噂のデコポンポか。
トキフサは初めて聞くな、どんなやつなんだ?」
「トキフサ様はイズルハというエヴェンクルガに連なる氏族が集まった國の皇、というより族長なのです
エヴェンクルガの種族は先帝様の古い傍流とされており、スズリ様ほどではないのですがヤマトでもかなりの影響力があるです」
「また傍流か……。
しかし一族が國にまで発展してるのか」
「國と言っても里集落みたいなものだと聞いているです。
右近衛大将のゲンホウ様もイズルハ出身なので、そういう話をされていたです」
「ゲンホウ……、ミカドさまに取り立てられた新派のやつだったか?」
「はいなのです。
ゲンホウ様はもともとイズルハの長を務めていたのですが、なんらかのことがあってトキフサ様と交代しているです。
ゲンホウ様もミカド様も詳しい経緯をお話ししていただけないのでよく知らないのですが、ライコウ様と同様に取引があったと考えられるです」
「……確かゲンホウは元八柱将だったはず。
それで任務中に大きな失敗をして先帝様から将を降ろされてた……」
「そのようなことが……」
「それで隠居してたところをミカドさまに取り立てられたってところか」
「なるほどなのです。
それと小話なのですが、エヴェンクルガは傍流ということもあって、八柱将には代々必ず1人はエヴェンクルガが任命されているそうです。
そのことからエヴェンクルガのいるところには御意向ありと考えられて、それが転じて義はエヴェンクルガにありという格言が生まれたそうなのです」
「ずいぶんと大きく出たな……」
「あ、……ヤマト内で紛争があったときは、味方にエヴェンクルガ族がいたら勝てるという話を聞いたことがあります」
「それほど先帝さまから重用されていたってことか」
「そういうことなのです。
トキフサ様については知っていることはこれぐらいなので、守旧派の話に戻るのです」
「そうだな。
守旧派の目的なんかを教えてくれ」
「はいなのです。
守旧派の目的は強いヤマトに帰ることと考えられているです」
「また宥和政策のことか?」
「なのです。
ただ革新派とは違って守旧派の多くは帝都の貴族なので、内政状況ではなく敵は倒して服従させろと宥和政策自体を否定しているのです」
「随分と乱暴なんだな」
「……ヤマトはそうやって出来た國。
それだけ圧倒的な力があった……」
「それが
今はもう無理ってことか?」
「……確かに
ただ、トゥスクルにはとても強い力を持つ種族がいるという噂もあり、それをライコウ様は気にされているのです」
「そうなんですか……?」
「なんでも鎖の巫と同等の力を持った者が種族単位であるそうなのです」
「それは……」
「まだ噂程度の話なので一般には知られてないのですが、それが本当なら攻め込むのはとても危険なのです」
「そんなにやばいのか?」
「剣を持った兵士が弓矢を持った兵士に近づくようなものなのです。
呪法の砲撃にあえば上陸すらままならないのです」
「呪法の砲撃……。
ネコネもそうだったがほんとゲームのような世界だな……」
「げえむ?なんなのです?」
「いや何でもない。
旧派についてはよくわかった。
ルルティエも話しずらいこともあっただろうが助かった」
「い、いえ……。
……少しでもお力になれれば」
「……勉強になった」
「じゃあ今日はこれぐらいにして、ルルティエの歓迎会も兼ねて飲みに行くとするか」
「……そう言って毎日呑んでいるのです。
ですが歓迎会は賛成なのです。
今日は特別なところを予約しているのです」
「……楽しみ」
「あ、ありがとうございます……」
新作ゲーム楽しみ
過去のヤマトのこととか最高すぎる