"元"執行者が逝く人理修復の旅   作:アポロ231号

11 / 27
唐突のカルデア連中の騎乗力測定

立香…未成年なので運転免許なし。自転車は乗れる。
マシュ…騎乗:Cなので指導すればちゃんと乗れる。
オフェリア…生粋の魔術師が車を運転する訳がない。多分自転車も乗れない(カワイイ)
シグルド…さすが北欧最強の一角、騎乗:Aですよ。でも走った方が速くない?
玉藻の前…キャスタークラスぞ? 我キャスタークラスぞ?
ロイド…人間なのに走った方が速い。なんやこいつ。



第10話 聖処女との邂逅

目を開くと、そこはどこまでも蒼く広がる空に生い茂る大地。

心地よい風が髪を靡かせ、空を仰ぐと巨大な光帯が視界に映る。

とても巨大で、あれが何なのかは分からなかった。

今考えても分からないものはカルデアにいる解析班に任せるとしましょう。

 

「此処がフランス特異点……見た感じ普通のフランスっぽいけど、このフランスを歪ませてる異常があるんだよね?」

「はい。では早速探索を……」

「フォウ!」

 

マシュの盾の内側からフォウがぴょこんと顔を出す。

思わず声を出してしまったけれど、一体どうやって……?

 

「もしかしたら私か先輩、オフェリアさんのコフィンに忍び込んでしまったのかもしれません」

「フォーウ」

「まぁ、私たちがこの特異点を修復して帰還すれば問題はない筈よ」

 

そんなことを話しているとドクターから通信が入る。

 

『よし、回線が繋がった! 此処が1431年のフランスかぁ。見渡す限り平原だね。取り敢えずは大きな街を見つけて、そこで情報収集だ』

「了解です。では移動を──」

「その前に一つ良いだろうか」

 

私の騎士、シグルドが口を開く。

 

「何か問題でもありましたか?」

「いや。既に気付いているものかと思い黙っていたのだが、どうやら気付いていないようなので指摘を」

「指摘?」

「もう一人のマスター……名をロイドといっただろうか。彼の姿が何処にもない」

「「「……………………」」」

 

シグルドの言う通り、辺りに一緒にレイシフトした筈のロイドの姿がなかった。

鏡を持っていないから自分の顔は見れなかったが、この時の私の顔はきっと酷く青褪めていたでしょう。

 

「……当方のせいで慄然とさせてしまったのなら謝罪を。しかし、彼もマスターだ。玉藻殿が側にいる筈だ。それに──」

「──きっと、大丈夫」

 

藤丸が私の手をギュッと握り締める。

 

「私、オフェリア先輩ほどロイドさんのこと、よく分からないけど。分からないけど、きっと大丈夫だって気がするんです。シグルドも言ってたけどタマモさんもいるんだし、敵が出ても返り討ちにしてると思います!」

「私も先輩と同意見です。ロイドさんは色々滅茶苦茶な人ではありますが、オフェリアさんを悲しませる人ではありませんから」

「二人とも……」

 

バカね、私は。

今一番不安なのは魔術師でもない藤丸に、マスターである藤丸を守るために戦うマシュだというのに。

……私がしっかりしなくてはならないのに、こんな事で立ち止まる訳にはいかない。

マシュたちの言う通り、玉藻の前が側にいるのなら余程のことがない限りは大丈夫でしょう。

けれど、もし大勢の敵に囲まれてしまったのなら? 強大な敵が彼らの前に立ちはだかったなら?

…………いえ、考えてはならない。

今、私がすべきことはこの特異点で起こっている異常を調べること。

その過程の中で必ず合流できると信じて行動を移すべきだ。

 

「ゴメンなさい。私ならもう大丈夫よ」

「よーし、そうと決まれば善は急げ! 情報を集めよう! ドクター、私たちこれから何処へ向かえばいいですか?」

『ちょっと待ってくれ……うん、少し距離はあるが砦のような建築物を観測した。多分、人もいる筈だ』

「ではそこへ移動します。行きましょう皆さん」

 

シグルドを先頭にドクターが言った砦へ向けて歩き始める。

時間にして約30分ほどで砦に到着すると、そこで目にしたのは──

 

『これは酷いな…中がボロボロで外壁のあちこちが崩壊している。これじゃ砦とは呼べないぞ』

「そうですね……負傷者もいっぱいしますね……。ですが少しおかしいです」

「おかしいってなにが? 戦争中なんだし怪我人が出るのは当たり前じゃないの?」

 

藤丸の疑問はごく普通のことだ。

戦争と言えば想像するのは国と国が争い、人と人が殺し合う、人が生きるための必要だと武器を手に取って行われる侵略行為。

 

「戦争中とは言っても1431年、ジャンヌ・ダルクが処刑された後はシャルル七世とフィリップ三世が休戦条約を結んでいる筈だから、貴女が想像している戦争は起こらないのよ。まあ、ちょっとした小競り合いはあったでしょうけど」

「へーそうだったんですねぇ。……? あれ、なんかおかしいな……」

「先輩? どうかしましたか?」

「ほら、あの壁見て。()()()()()()()()()()()()()?」

 

藤丸が指差した方を見ると確かに何かに引っ掻かれたような傷跡がいくつかある。

私たちはサッパリ分からなかったが、シグルドがこれを見て顔色を変えた。

何に気付いたのか問おうとしたところ、砦の中から兵士がフラフラとした足取りで出てくる。

 

「ひぃっ……!? ま、また来たのか! し、しかも今度はやばそうな奴まで連れてきてやがる……!」

 

此方を見るなり、手に持つ武器を構えるがカタカタと震えていた。

慌ててマシュと藤丸が敵ではないと友好的に接すると、意外にもすんなりと武器を収めてくれる。

自分で言うのもなんだけど私たちの(なり)は初対面の人間に対して信用に値しない。

なのにこんなにもあっさり信用するなんて思わなかった。

或いは、戦う気力がないほど消耗しているのか。

 

「あの、すみません。この砦で何があったのか教えてもらってもよろしいですか? 見たところ負傷者も多く砦も酷い損傷。シャルル七世は休戦条約を結ばなかったのですか?」

「休戦? シャルル王? なんだ知らないのか、アンタ。()()()()()()()。魔女の炎に焼かれてな……」

 

兵士の話によると、地獄より蘇ったジャンヌ・ダルクが悪魔と契約して魔女となり、フランス中で破壊活動を行なっているとのこと。

イングランド兵はとっくに撤退しており、この国で無辜の民たちは何処にも逃げることができず、ジャンヌ・ダルクの侵攻に為す術なく殺戮されているのだ。

兵士たちも持てる力で必死に抵抗しているが、圧倒的な力の前に手も足も出せずに多くの仲間が殺されていった。

 

「決まりね。この特異点の原因はジャンヌ・ダルク。彼女が蘇り殺戮の限りを尽くしているのだったら、それを私たちが止めなくてはならない」

「了解です。あ、すみません。もう一つだけよろしいでしょうか。実は──」

「ちょっと待ってマシュ。なにか変な音聞こえない?」

「変な音? 別にそんなの聞こえな……」

 

耳を澄ますと、バサッバサッと羽ばたくような音が遠くから聞こえてくる。

音は次第に大きくなってくる。

 

「来た……来やがった!くそっ、皆立て! ヤツらが来たぞ! 喰われたくなきゃ迎え討て!」

『っ、注意してくれ! 複数の生体反応がそちらに向かっている! これは……嘘だろ、なんでこんなのがフランスにいるんだ!?』

「此方からも目視できました!あれは……まさか──」

 

大きな翼を羽ばたかせ、強靭な肉体に鋭利な鉤爪を持つ竜種(ドラゴン)……の亜種、ワイバーンが群れを成して砦に接近してくる。

最上位の幻想種、竜種。

その亜種とも劣化種とも称されるワイバーンだけど、決して侮れる相手じゃない。

兵士たちは戦々恐々としているが、私の心は不思議と落ち着いていた。

だって、此方には物凄く頼りになる()()()がいるのだから。

 

「シグルド!」

「委細承知。貪欲なるファヴニールでなくとも、無辜の者に仇為すのであれば。我が魔剣を以て貴殿らを殲滅する」

 

魔剣グラムを構え、翼竜の群れに突撃するシグルド。

翼竜はグラムから放たれる異様な気配に怖気づきながらも、無謀に突っ込む敵を鉤爪で引き裂かんとした刹那、翼竜の体が切り刻まれる。

文字通り、バラバラに。

 

「す、すげえ……あのドラゴンをたった一人で。何者だ、あの男……」

「何をしているのですか! 兵たちよ、武器を取りなさい! 守るべき場所を守るために。奮い立ち、共に立ち向かうのです!」

 

兵士たちがシグルドの戦いに愕然としていると、背後から金髪の少女が現れて激励する。

兵たちは少女の顔を見るなり動揺するが、狼狽ながらも武器を手に取り、翼竜を迎撃する。

少女の指揮の下、攻め立てて来る翼竜の群れを一掃し、最後の一体をシグルドが撃破して何とかこの場を乗り切ることができた。

 

「そんな、貴女は──いや、お前は! 逃げろ! 魔女が出たぞ!」

 

とはならなかった。

兵士は少女を魔女と罵りながら砦の奥まで全速力で逃げてしまう。

魔女と呼ばれた少女は、一瞬だけ悲しげな顔を浮かべる。

 

「あの、ありがとうございます。貴女方がいなければ兵たちは為す術なく竜の餌になってしまっていたでしょう。彼らの命を救ってくださり、感謝致します」

「いえ。それより、貴女の名は──?」

「私はルーラーのクラスで現界したサーヴァント。真名を()()()()()()()()と申します」

「ジャンヌ・ダルク……って、死んで魔女になったって言ってた、あの!?」

「その話は後で。……此処で話すことではありませんから。私についてきてください。話はそこでします。信用はできないでしょうが、どうかお願いします」

「……誘われてしまいました。どうしましょう、オフェリアさん?」

 

……どうしよう。

特異点の原因がジャンヌ・ダルクであることはほぼ確定はして、目の前にその目的の聖処女がいる。

けれど、共に兵士を守るために戦った彼女が本当に私たちの敵なのか、先の戦いで判断がつかなくなっている自分がいる。

……ロイドなら、この状況をどう決断するのだろうか?

 

「私はついて行った方がいいと思う。敵意はないように感じますし、適当に特異点を歩き回って情報を探すより、事情を知ってそうな人がいるならその人から情報を引き出した方がいいと私は思います。……って、すみません。素人が意見してしまって……」

「……いいえ。寧ろありがとう、藤丸。貴女のお陰で決心がついたわ。彼女について行きましょう。彼女はこの時代の事情に精通している筈、詳しい話を聞いてみましょう」

 

罠かもしれないという事を念頭に入れながら、私たちはジャンヌ・ダルクについて行った。

日が落ち始め、空は茜色に染まっていく。

ロイドたちは今頃何処で何をしているのだろうか。

無事であることを祈りながら、砦の近くの森の中へと足を踏み入れるのだった──。





6.5章前にBOXイベ挟みやがって……!
くそ、くそぅ……! 素材集め楽しいです……!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。