"元"執行者が逝く人理修復の旅   作:アポロ231号

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「えっ、今回(アタランテ戦)歌ってもいいの!?」
「ダメ……いや、でも……うーーーーーーーん……ヨシ!」


第13話 オン・ステージ

「ああああああっ!!!」

 

狩人が叫びながら弓を引く。

射られた無数な矢は雨のように降り注ぐ。

取り出した防御礼装と玉藻の術で矢の雨を防ぐ。

対するエリザベートは長槍を軽々と振り回して矢を叩き落としていく。

それどころか、矢を捌きつつ徐々に狩人の方に距離を縮めている。

 

狩人も近付いてくるエリザベートから離れながら矢を放つ。

近付いては離れの繰り返し。

同じ作業にエリザベートの顔が段々と険しくなっていく。

 

「このっ、大人しくしなさいよアンタ!」

 

そんな事言って止まる筈はなく。

このまま長引いてしまえば、敵の増援が来てしまうかもしれない。

それは避けたい。

義手に仕込んだ刃を出しながら脚部に魔力を集中させる。

あとはタイミングを見計らうだけ──

 

「しつこい……!これでは埒があかん……!」

「じゃあ止まりなさいよ!そうすればこんな下らないやり取りも終わるんだから!」

「止まるワケないだろう!」

 

弓を構えた瞬間、狩人に向かって走り出す。

慌てて照準をこちらに向け、矢を放つ。

放たれた矢は最早人間の目では捉えることができない程の速度だった。

どのタイミングで避ければ矢が当たらないのか分からない。

だから勘で躱した(・・・・・)

しかし、完全に躱しきることはできず、頬を掠めてしまった。

 

「はぁぁぁぁぁっ!? アンタ、なん、はぁっ!?」

 

その様子を見たエリザベートは凄く驚いた模様。

狩人もただの人間が音速の矢を避けられたことにショックを受けたのか、呆然とし、こちらの攻撃に対して一瞬遅れてしまい傷を負った。

 

「くそっ、浅い……!」

 

狩人は慌てて距離を取る。

傷を負い、手に付着した血を見た狩人の目付きが更に鋭くなり、殺意も強くなる。

 

「子イヌ!アンタねぇ!大人しくしてなさいって言ったでしょ!見なさいあいつの顔、もうアンタを真っ先に殺すって顔してるわよ」

「いやいや。俺にはお前を先に仕留めてやるって感じに見えるが?」

「アンタよ子イヌ」

「エリザベートじゃね?」

「あの〜お二人方。そんなことよりあちらの方、宝具の準備してません?めっちゃヤバくありません?」

 

敵に視線を向けると玉藻の言う通り、徐々に魔力が膨れ上がっていく。

 

「我が矢と弓を以って太陽神(アポロン)月女神(アルテミス)の加護を願い奉る──」

 

太陽神と月女神の名を口に出す。

ギリシャ神話における二大神、狩人……まさか。

 

「アタランテ!? ギリシャ神話に登場する『純潔の狩人』アタランテか!」

「当たらんて?あいつの矢正確なんだけど?」

「違うわバカ!女神アルテミスの加護を授かった女狩人。英雄イアソン率いるアルゴー船の船員としても有名だが、後にカリュドーンの猪の逸話が最も有名……じゃなく!」

「バカ?アンタ今アタシのことバカって言った!?」

 

アタランテから溢れる魔力から察するに、直に宝具が放たれるだろう。

阻止しようにもアタランテとは距離がある。

全力で駆けても間に合わない。

なんとか止める方法はないだろうか。

チラリとエリザベートの方を見る。

 

「……なによ」

「エリザベート。お前、アレ止められるか?」

「ちょっとマスター!? もしやエリザベートさんの宝具に頼るおつもりですか!? いや、ちょっとやめた方がいいんじゃないかなぁって玉藻ちゃん思っちゃうな〜…なんて」

「そうよ!アタシはアンタたちの為に宝具使うつもりなんてないわよ!せめてバカって言った件に関して一言謝りなさい、それでチャラよ!」

 

どうやらエリザベートは先程バカと言ったことを根に持っているようだ。

……まあ、確かにバカは言い過ぎたかもしれない。

正直あまりにつまらない事を言ったから、つい本音を漏らしてしまったが言い過ぎだった。

 

「バカは言い過ぎた、すまなかった。だが今は時間がない。後でお前が納得するまで謝罪する。この状況を切り抜けるにはお前の力が必要なんだ!頼むエリザベート!力を貸してくれ!」

「……本当に?本っっっっっっっ当にアタシの力が必要?」

 

首を縦に振る。

玉藻の呪術では宝具を受け切ることはできない。

エリザベートならば防ぐことが、いや、或いは宝具を展開される前に仕留められるかもしれない。

 

「…………いいわ。その誠心誠意の謝罪に免じて力を貸したげる。それに、そろそろ歌いたい気分(・・・・・・)だったのよね!」

 

エリザベートの機嫌が分かりやすく良くなる。

それにしても歌いたい気分とは一体どういう事だろうか?

 

「マスター、(わたくし)から忠告です。死にたくなかったら耳を塞いでください(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

「は?」

「この厄災の捧がん──『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』!!!」

 

二本の矢は天高く放たれた。

次の瞬間、空から矢の豪雨が降り注ぐ。

 

「ねえ子イヌ。ゲリラ豪雨で歌うアイドルって中々絵になると思わない?観客がアンタたちしかいないのはアレだけど……まあいいわ。それじゃあサーヴァント界最大のヒットナンバーを聞かせてあげる!」

 

軽快に振り回した槍を地面に突き刺す。

すると魔法陣が展開され、城が召喚される。

あれこそが、エリザベートが生涯に渡り君臨した居城チェイテ城……なのだろうか?

城というよりアンプのように見えるが……。

 

「フィナーレよ!『鮮血魔城(バートリ・エルジェーベド)』!!!」

 

エリザベートが歌うと(アンプ)からスーパーソニックが放たれた。

その歌声を聞いたアタランテは堪らず耳を塞ぎ込み苦しみ出す。

玉藻も同様に苦しみながら転げ回っていた。

 

 

アタランテの宝具とぶつかり合うと凄まじい衝撃が発生する。

エリザベートは負けじと声量を更に大きくする。

次第に矢の勢いは落ちていき、ついには完全に矢を叩き落とした。

 

「バカな……こんなカリュドーンの叫びを何十倍にもしたような歌(?)に私の宝具が破られるなんて……!」

 

よほどショックだったのか、アタランテは顔面蒼白になっていた。

俺もまさかエリザベートの宝具(うた)がここまで下手くそだとは思わなかった。

耳鳴りと頭痛が治らない。

彼女のあまりに絶望的な歌声のせいで吐き気が止まらない。

不快感を抑えながら動きの止まったアタランテの背後へと回り───貫いた。

 

「……やっと、やっと終わったか。酷い悪夢だった、色んな意味で……。

あの黒い聖女に狂化(・・)を付与され、無辜の民たちを多く殺した。それを汝らが狂気に囚われた私を止めてくれた……納得はいかないが」

「すいません……」

「……一つ忠告だ。あの黒い聖女には聖杯により召喚した吾々の他にも邪悪なる竜を喚んでいる。竜殺しを捜せ(・・・・・・)。でなければ汝らに勝ち目は……」

「あ、竜殺し既にいるんだよね」

 

邪悪なる竜を討ち果たすのに必要となる竜殺しを捜せと言われ、既にシグルドがいることを伝えると真顔で黙り込んでしまう。

アタランテの目は哀しさで満ち溢れ、耳が彼女の感情に連鎖するように落ち込んでいた。

 

「そ、そうか……ならばいい。健闘を祈る。……次こそ機会があれば……」

 

無念そうにそう呟き、光の粒子となってアタランテは消えてゆく。

なんだか色々申し訳ない気持ちになってきた。

 

「ふぅ、終わりましたか。あの方とっても不憫でしたね……。(わたくし)も流石に同情してしまいます」

「うーん、アタシ的にはまだ歌い足りないし本調子じゃないんだけれど……ま、その分はあいつ(・・・)にぶつければいっか!」

「(あれで100%じゃないのか……)

──それで、エリザベート。お前はこれからどうする?」

「そうねぇ……アンタたちについて行けば黒い聖女にも会えるんでしょ?ならアタシも行くわ。どうしてもアタシの手でブッ飛ばしたいやつがいるの、それまでは協力してあげるわ。ま、ついでにその聖女退治も手伝ってあげる。感謝しなさいよね子イヌ!」

 

互いの共通の敵を倒すべく、エリザベートと仮契約のパスを繋ぐ。

隣の玉藻は少し嫌そうな顔をしていたが特に気にすることではない。

 

「さて。仮契約も終わったことだし、そろそろ移動するか。日も落ちる頃合いだし野宿できる場所を探さないとな。それとエリザベート」

「ん、なぁに?」

「お前、俺が許可するまで宝具(うたうの)禁止な」

「なんでっ!!??!?」




アタランテ姐さんかわいそ

ちょっと後半ぐだぐたしすぎ……しすぎじゃない?
次は1月末に投稿できたら……できたらいいなぁ(本人の努力次第)
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