"元"執行者が逝く人理修復の旅   作:アポロ231号

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シャルルマーニュ実装に感謝──!
若モリアーティ実装に感謝を(弊カルデアには老モリアーティは居らず)



第17話 集結、一休み

「私の敵……三人目のカルデアのマスターですって? リヨンで見たのは二人だけの筈。まさかもう一人別行動をしていたとは」

 

 

竜の魔女は忌々しそうに睨み付けてくる。

彼女の言動から察するに、カルデアのマスターは二人だけの認識しており、「三人目」の存在は予想外だったようだ。

……別に、コソコソ隠れて別行動を取っていたワケではないのだが。

 

 

「ロイド……本当にロイド、なのよね……?」

 

「どっからどう見ても俺だろ。ほら、脚もちゃんと付いてる。

ロマニからお前が竜の魔女に立ち向かってるって聞いた時は心臓が飛び出ると思ったよ。住民達を逃す為に残って戦うなんて……お前もお前で無茶する奴だ。

まあ、何はともあれ無事で良かったよ、ホント」

 

「心配、してくれてるの?」

 

「仲間なんだし当たり前だろ。何言ってんだお前。

住民達の避難は終わっている、あとはお前らだけだ。立てるか?」

 

 

座り込むオフェリアに手を差し伸べる。

差し伸べた手を掴んで立ち上がるオフェリアの顔は嬉しいような嬉しくないような、それでいて泣きそうな顔をしていた。

 

 

「さてと。初めましてだな、竜の魔女。アンタの事は行く先々で耳にしていた。ジャンヌ・オルタとでも呼べばいいかな。随分とフランスに怒りを抱いている様子だな」

 

「…………当然でしょう? 私は祖国に裏切られた。祖国に辱めを受けた。護ろうとした国に焼き殺された。

分かりますか? この怒りが、この恨みが、この憎しみが! 私はこの国を許さない…この地に根付く命全てを蹂躙しなくては!私の復讐は止まらない!」

 

「……………」

 

 

彼女の怒りは最もだ。正当な怒りだ。

この憎悪を止められる者など誰もいまい。

止められるとするのなら、それは俺じゃない。

 

 

「それで? 貴方が来たから何になるというのです?

まさかたった一人のマスターとサーヴァント二体増えた程度で、この戦局をひっくり返せるとでも?」

 

 

側に控えているエリザベートと清姫を見て一笑に付す。

玉藻はゲオルギウスと共に住民の避難に徹してもらっており、今この場にはいない。

ジャンヌ・オルタからすれば、この二人は取るに足らない存在なのかもしれない。

戦力が二人増えた程度では、彼女が使役する無数のワイバーンと邪竜を相手にするのは不可能だろう。

 

 

「さぁどうします? 死に物狂いで抵抗してみせますか?」

 

「……何か勘違いしてるようだが、俺は別に今ここでお前を斃すつもりはない。シグルドがいるとは言え、無理に戦えば全滅も有り得る。

無茶はするが無謀はしない性分(たち)でね。悪いがこの場は逃げさせてもらうさ」

 

「……呆れた。この状況でも尚逃げられるとでも?」

 

 

逃げられるとも。

不敵な笑みを浮かべながら、自信満々に言葉を吐いた。

 

 

「んじゃあオフェリア。今から逃げるから、ちょっと耳塞いでいてくれ」

 

「えっ、それってどういう」

 

「説明は後でする。耳塞げ」

 

 

言われるがままにオフェリアは両耳を塞いだ。

これから何が起きるのか、一体どうやってこの場を切り抜けるつもりなのか検討もつかない顔をしている。

正直言うと、この方法は気が引けるし、俺自身の命にも関わるかもしれない。

しかし、手段は選んでいられない。

 

 

「エリザベート!歌え!」

 

 

後ろにいるエリザベートに向け、叫ぶ。

 

 

「いいわ。昨日と比べれば観客も多くて非常にグッドよ!

翼が生えたトカゲ相手でもアタシの歌声で魅了したげる!」

 

 

大きく息を吸い込む。

そうだ、『エリザベートの歌で怯ませてる内に逃げる』事が窮地を脱する策だ。

苦肉の策なのは承知の上だ。だがこうするしか今の俺には考え付かなかった。

自信に満ちた態度なのも、相手にこの策を悟らせない為のものだ。相手もまさかこんな常軌を逸したやり方をするとは考えもしないだろうが。

もうすぐあの地獄の歌が始まってしまうと考えると、まだ聴いていないのに悪寒と吐き気に襲われたような気がした。

覚悟を決めろ、ロイド・レオンハート──!

ここで無惨に殺されるぐらいなら、エリザベートに歌わせて生存できる可能性に賭けてやる。

 

 

「ボ〜〜〜エ〜〜〜〜!!!」

 

 

エリザベートが歌うと、そこからは阿鼻叫喚の地獄絵図だ。

声を聴いただけでワイバーン共は痙攣し、泡を吐きながら失神し始める。

邪竜も叫び声を上げながら苦しみ、ジャンヌ・オルタも邪竜の背の上で悶え苦しんでいる。

無論、それはこちらの陣営も同じことなのだが。

 

 

「な、なに、この歌声……!? 耳が……壊れる……!」

 

「なんという悍ましい音……! 耳と霊基が腐り落ちてしまいそうです!マリー、シグルド、ご無事ですか!?」

 

「え、えぇ! まさかアマデウスの性格より酷いものがこの世にあるとは思わなかったわ。彼が聴いたらきっと卒倒してしまうわ!」

 

「断言しよう。この歌はまさしく邪竜の咆哮そのもの。いや、それ以上だ。ファヴニールが苦しめられているのが何よりの証左!」

 

 

散々な評価である。

だが、その不愉快と不快が混じり合った歌のおかげで道が開けた。

逃げるなら今しかない。

 

 

「エリザベート、もういい! 今すぐ歌をやめて逃げるぞ!」

 

「ダメよ。アイドルが途中でライブを中断するなんて許されることじゃないわ!」

 

「ああもう! この頭お花畑サーヴァントが! シグルド頼む!」

 

 

シグルドがエリザベートをヒョイと持ち上げる。

「まだ歌い足りない」だの「セクハラだ離せ」だの子供のように暴れ回るのを無視して逃げる準備を進める。

 

 

「清姫!」

 

「それでは御照覧あれ。これより逃げた大嘘吐きを退治……ではありませんが、愛しの旦那様(ますたぁ)の為、(わたくし)は愛の竜となりましょう。

転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)』!!」

 

 

清姫の姿が青き焔の竜へと変貌する。

恋焦がれた妄執だけで竜へ転身し、どこまでも追いかけた果てに焼き殺した伝説が昇華した宝具。

竜に成った清姫は業火を巻き起こす。ファヴニールやジャンヌ・オルタを斃すには物足りないが、ワイバーンを焼き殺すには十分すぎる威力だ。

取るに足らないと断じたサーヴァント二人の助力により、大きな隙を生んだのだ。

この隙にモンリュソンから脱出を図るべく、肉体を強化して街を後にする。

 

 

「逃、すかぁぁぁぁっ!」

 

 

業火に呑まれず無事だったワイバーンに命令する。

焔の壁を越えた一瞬、竜の首がボトリと落ちた。

 

 

「サンソン!」

 

「行くんだ、マリー! ここは僕が食い止める……!」

 

 

差し向けられた追手をあの男に任せて一気に駆け抜ける。

 

 

 

 

 

 

「……どういうつもりですか」

 

「どういうつもりもなにも。ただ目が覚めただけさ。

君とあの娘の歌……アレのお陰にするの少し、いやかなり不服だけど。

霊基はズタズタで消滅を待つだけの身だったけど、それでも今の僕でも出来ることはある。

……マリー。君の言う通り、僕の刃は既に処刑人とは程遠いものになってしまった。竜の魔女の手によって狂っていたとは言え、多くの命を絶ってしまった」

 

 

サンソンは後悔を口にし、無辜の命を奪ったことに対し自己嫌悪に陥る。

それでも消え掛けの霊基(にくたい)に鞭打ち、剣を握り締め、立ち上がったのは贖罪の為。

 

 

「けれど。殺人者に堕ちた僕の剣にもまだ役目はある……!

希望は潰えさせない、このフランスを救う星を消させはしない!」

 

「…………そう。アレを希望だのなんだのほざくと言うのですか。逃げ回り、フランスを救うの言葉だけの聖女サマを。

ああ、忌々しい、虫唾が走る。青臭い理想を語る輩は特にそう。

ファヴニール! いつまで呆けているのです! 早くこの男を焼き殺しなさい!」

 

 

ジャンヌ・オルタが邪竜に命ずる。

ファヴニールが纏っている魔力が膨張し、大きな風圧(かぜ)が竜を中心に巻き起こる。

空気中のマナを吸収した一撃が、直に解き放たれるだろう。

そうなれば自分は死ぬだろう、サンソンは小さく笑った。

 

 

「唯一の懸念はあの最低最悪の奴がマリーの側にいる事だな……。まあ、あんな奴でもいないよりはマシだろうな。

だが、無駄死にするつもりはない。少しでも彼女たちに希望を遺す……!」

 

 

目の前の脅威に鋒を向け、走り出す。

崩壊寸前の霊基を奮い立たせ、ワイバーンの首を断ちながら真っ直ぐ。ただ真っ直ぐ。

ジャンヌ・オルタまであと一歩のところまで迫り、罪人の首を断つべく宝具を──解放することは出来なかった。

怨嗟の炎槍がサンソンを貫いたことで只管(ひたすら)に耐えていた霊基が限界を迎え、撃墜されてしまった。

 

霊基と肉体が消滅し、落ちていく意識の中、一つの確信があった。

「必ず、フランスは救われる」

静かに笑みを浮かべ、ファヴニールが吐き出した息吹に呑まれる寸前、サンソンは最期に言葉を紡ぐ。

 

 

「さよなら、マリー。此処で君と出会えて良かった」

 

 

 

 

 

 

「……ええ、さようなら。サンソン。私も貴方に再会できたこと、とても嬉しいわ」

 

 

背後を振り返り、追撃が来ないことを確認する。

助かった。あのサーヴァントが殿を務めてくれなければ今頃こうして生きていたかどうか分からない。

残ってくれたあのサーヴァントに感謝しなければ。

 

 

「……ロイド、無事、だったのね。本当に、貴方なのよね?」

 

 

だからそうだと言ってるだろう。何度確認するんだ。

 

 

「ああ。レイシフトして早々お前達と逸れた時は流石にちょっと焦ったが、ご覧の通り五体満足だよ。

もっと早く合流する予定だったんだが、エリザベートや清姫を仲間にするのに手間取って(?)しまったからな。こっちはこっちで動かせてもらった」

 

「ちょっと……ですって?」

 

 

オフェリアの様子が変わる。

 

 

「何度連絡しても繋がらなくて、立香もマシュも皆不安になって、それでも私だけでもって気丈に振る舞って、心配だったのに。

それなのに貴方は“ちょっと"で済ませて……考えないようにしてたけど最悪の場合も、考えてしまって……!」

 

 

先程まで安堵した表情から一転、言葉の節々から怒気が含まれており、瞳には涙を滲ませていた。

 

 

「ま、待て待て! そりゃ俺だって連絡しようとはした!

そもそも今回の件はレイシフトにミスがあったからで……!」

 

《ロイドくん。確かにレイシフトに不手際があって君を孤立させてしまった、それは私達のミスだ。

けどね、こういう時は「心配かけて済まない」の一言ぐらい言って抱きしめてやるのが男だぜ?》

 

 

おい待てダ・ヴィンチ。謝罪は分かるが何故抱きしめる必要がある?

 

 

「さあロイド! 再会を祝してオフェリアに熱い愛のベーゼを!」

 

 

焚きつけるなフランス王妃。

 

 

「さ、流石にベーゼはどうかと思いますが、ここまで精神的に追い込まれている中で頑張ったので、温かい言葉をどうか一つお願いします」

 

「(無言でグラムを手に取る)」

 

「あの、すみません。無言でその剣を手に取るのは止めて下さいませんか? 悪寒が……」

 

 

いくら幼馴染といえど口づけなんて出来る訳もなく、ジャンヌの言う通り何か一言だけでも。

オフェリアと視線を合わせるも上手く言葉が出てこない。こういう時、何をどう言えばいいのかまったく分からない。

 

 

「………………悪かった。心配させてしまって」

 

 

暫しの沈黙の中、ようやく出てきたのはこれだ。

なんか急に恥ずかしくなってきた。顔から火が出そうな程熱くなる。

 

 

「……ううん。貴方が無事だったならそれでいいわ。でも、これからは気をつけてね」

 

「……善処する」

 

 

謝り終えると遠くから藤丸の声が聞こえてくる。

数日合わなかっただけなのに妙に懐かしく感じる彼女の声を聞いて、やっとカルデア全員集結を果たした。

ジークフリートの呪いを解いて竜の魔女の本拠地を叩く──と言いたいところだが色んな意味で疲れたから小休止だな。

乗り込む前に作戦会議もしたいし。

 




【オマケ】

「ロイド、大丈夫?」

「大丈夫じゃないな……もう昨日今日で走りすぎて足がパンパンだ……。悪いが料理は任せた」

「はーい。あっ、そういえばロイドさんって料理できるんですか? 逸れてた時どうしてたのかなって」

「作れるぞ。あと逸れてた時は玉藻が簡単なものを作ってくれたり適当に肉焼いて食ってたな」

「えっ、作れるんですか!? じゃあ今度でいいんでカルデアで作って下さいよー! ロイドさんの手料理食べてみたいです!」

「ああ、今度な」

「!?(オフェリアのやる気が上がった)」
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