ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話 作:APHE
例えば宇宙世紀の場合 陸戦編①
宇宙世紀0079、地球連邦軍は窮地に立たされていた。
当初、ジオン公国の反乱は地球連邦軍の圧倒的な戦力と物量により鎮圧されるだろうと誰もが思っていた。
連邦軍の誇る主力戦艦による長距離砲撃や巡洋艦のミサイル飽和攻撃によって打破できなかった困難は今まで存在しえ無かったのだ。
しかし、ミノフスキー粒子の特殊な作用を理解し大々的に使用した撹乱戦法と合わせて開発された金属の巨人、モビルスーツを使用した新しい形の白兵戦の前に地球連邦軍は大敗。
戦線を次々と押し込まれ、ついにはスペースコロニーを質量兵器として使用するコロニー落としまで許してしまう。
地球に落着したそれは都市をまるごと消し去り、数多の命を奪った。連邦軍はジオン軍の虎視眈々とした計画性と常軌を逸した行いにすくみ上がり、明らかに不利な休戦条約を飲まざるを得ない所まで追い込まれた───
だが、ここで諦める連邦ではない。地球圏の支配者たる存在がその程度で両手を上げて蹲う事はないとジオン側も分かっていた。
この物語は月の反対側に漂うコロニー、サイド7…………
ではなく、南アメリカ大陸に位置する連邦軍ジャブロー基地の一室から始まる。
「…これは良くないな」
研究員はそう呟いた。
戦争は変わった。
変わってしまった。
ミノフスキー粒子を散布してレーダー波を妨害し、人型汎用兵器モビルスーツでの近距離戦を挑む新しい戦法。
高度なレーダーやデータリンクを経由して視界の外で敵を攻撃し、標的ロストの報告を受けるだけの戦いは終わりを告げた。
こうなればもはや61式戦車やフライ・マンタなどの『旧い戦い方』をする兵器は軒並み旧式、産廃となるだろう。
───もう既に実戦でのデータがそれを示している。
レーダーとデータリンクを奪われるのは盲目になるのと同義。
人は目隠しされた状態で戦えるか?
否。
少なくとも自分には、と研究員は心の中で付け加えた。
研究員の目の前に広げられた設計図には戦車や戦闘機とは全く異なる意匠を持ち、先述の新しい戦闘に適応した新世代兵器…モビルスーツが描かれていた。
頭の硬い上層部もいよいよ自分たちの過ちを認め、鹵獲運用したデータを元に独自にモビルスーツを作ることにしたのだ。
だが、この研究員はそれが最善とは思っていなかった。
相手と同じ方法、同じ土俵で戦う。
対抗法としては理に適っているし、この場合は最適解のようにも見える。しかし、しかしだ。それで本当にいいのだろうか?
研究員は自分の部署でこの兵器を開発するつもりはなかった。
別に大艦巨砲主義を信じる訳でもない、反モビルスーツを掲げるわけでもない。他のやり方があると考えたのだ。
モビルスーツを始めとする新兵器には新技術…エネルギーCAP、高性能画像センサ、小型核融合炉、エトセトラ…これらがふんだんに使用されている。
既存技術の延長線上にあるものから適切に使用すれば戦局を変えうる力を持ちそうなものまであるそれらを現状モビルスーツだけに使うというのが彼には理解できなかった。
既存兵器にもこれらの新技術を搭載すれば十分対抗しうる戦力となるはずだ。
軽く改修する程度ならそこまで金を食わないし、今までそれらの兵器を支持していた政財界からの注目も得られそうなものを、なぜしないのか?
「ヒト型の物が出たから同じ物をぶつける…頭が硬い」
そもそも研究員はモビルスーツの運用そのものに懐疑的だった。
有視界戦闘のために巨大化したというが本当にその必要はあるのか?
ルウム戦役での敗北はデータ収集や対策が遅れていたからではないのか?
よく言われる汎用性はそれほどのもの、それでしかできないものなのか?
既に先行量産が始まり宇宙で戦果を上げているらしいが、それは只新しい戦いの型にはまっただけの戦果だ。
これで既存兵器を全否定するのはまだ早い。
研究員は新しい設計図を丸めてどかし、戸棚からやや黄ばんだ設計図を取り出して広げる。
研究員は何かしらのやりようはあるはずだ、と呟いてペンを走らせる。
それは頭の硬い上層部への反感からくる行動であったが、彼の頭も十二分に、それはもう硬かった。
その石頭が後に一年戦争と呼ばれるこの戦争をだいぶ変えることになるのだが、まだ本人含めて誰も知らない。
まして、彼は自分が行おうとしている『改革』が『ビンソン計画』という名で別の技術者たちによって進んでいることすら知らない。
これは色々と間違えた研究員と周りの人々が織りなす奇妙な物語である。
『ロボット作る技術で戦車作ったら強くね?』を自分なりに解釈したらできた。
ヒルドルブ?なんだいそれは?