ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話   作:APHE

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例えば宇宙世紀の場合 陸戦編②

 HLVから金属の巨人、モビルスーツが降りてくる。

 その緑色の塗装と独特なモノアイ、機体の各所に伸びる動力パイプ。

ジオン公国主力モビルスーツのザクIIだ。

 宇宙で猛威を振るった緑の巨人は地球でもその能力を十二分に発揮し、地球連邦を追い詰めている。

ここユーラシア戦線でもそれは同じだった。

 

 ザクIIのパイロットはコクピットの中で計器と武装をチェックする。

 ザクおよびその周辺機器の信頼性は高いが、重力圏での運用は宇宙とは勝手が違う。なによりこのパイロットは重力戦線に投入されて日が浅く砂塵が吹き荒れる砂原での戦闘は初めてだ。

 だがその心配を補ってあまりあるほど彼はモビルスーツの性能を信じていた。連邦の腐りきった体制では対抗できる兵器を開発するのもままならないと。それはある程度当たっていたのだが…

 

問題なしと判断したパイロットはザクの足を動かして前進する。

その脇には同じくジオン公国主力戦車のマゼラ・アタックが続いた。

 

 マゼラベースとマゼラトップ、土台となる車両と飛行可能な砲塔が合体したこの戦車はトップ部分を分離して索敵を行うことができる。

単体での戦闘力は61式に劣るがモビルスーツを支援する砲戦車という役割では必要十分の性能をしている。

 

 して、肝心の部隊内訳はザク12機とマゼラアタック8両、あとは歩兵が600人20小隊ほど。通常編成の連邦部隊が出くわせば両手を上げて逃げ惑うほどの手堅い布陣。

これだけの戦力があれば61式戦車の大隊とかち合ったとしてもたやすく撃破できるとみな高をくくっていた。

 

 

───それがただの61式ならば、だが。

 

 

ズキュウウウン!

 

 進軍するジオン公国軍に突如高熱量の光線が襲いかかる。

 2本の光線は先頭を歩いていたザクIIの胸部装甲に命中、超硬スチール合金製の装甲を紙切れのように溶断し、一撃で大破に追い込んだ。

 

「なっ、何だ!?」

 

 パイロットは突然の敵襲に対応すべく陣形を整える。

僚機が先制撃破されたことに戸惑いつつも、ルウム戦役を経たベテラン軍人である彼は努めて冷静に状況を見極める。

 

 味方を貫いたあれはビーム兵器、メガ粒子砲だ。

それもかなり高威力のもの。

ザクの正面装甲を一瞬で溶断したとなると少なくとも戦艦クラスの出力、貫通力がある。

 

「連邦軍は小型ビーム兵器を実用化したと噂に聞いていたが、まさか本当だったのか!」

 

 反撃に出る前に2発目が撃ち込まれ、今度はマゼラアタックが吹き飛んだ。今度も一撃。パイロットは敵が非常に手強い相手であると判断した。

 

「撃てっ!撃てーっ!!」

 

「よせ!闇雲に撃っても場所を晒すだけ……」

 

ズキュウウウン!

 

 光線が飛来した方向へと制圧射撃を加えた僚機が光線に貫かれた。そのままバタリと倒れ込むザクを見てみな息を呑む。

 正確に胸部装甲を射抜かれ、ザクの胸には巨大な破孔が。乗っていたものは痛みを感じる暇すらなく即死だ。

パイロットは悪寒を感じながら操縦桿を握りしめる。

 

ミノフスキー粒子の散布は完了している。

連邦軍の目は封じたはずだ。

しかし一方的にやられ、こちらは敵を見つけられない。

隣にいたマゼラアタックが危機感を感じたのかマゼラトップを分離し索敵を開始する。

 

 その間に4発目が撃ち込まれ、マゼラアタックが2両消し飛んだ。

とんでもないほどに一方的だ。

 ごく短時間でザク2機とマゼラアタック3両を失うなど、今までの連邦軍のやり方を思えば考えられないことだ。もしや、ついに連邦軍もモビルスーツを……!?

 だとしたら非常にまずい。味方には動揺が広がり士気も悲惨なほどに落ち込んでいるが、なんとしても敵の正体だけでも掴まなければ。

 

「…!いました!敵は…戦車!敵戦車の小隊です!」

 

分離したマゼラトップからの索敵報告は進軍中のメンバー全員を震撼させた。

 

せ…戦車!?

 

戦車だと!?

 

モビルスーツではないのか!?

 

パイロットも同じく動揺していた。

敵が戦車ならば、なぜこんなにやられるのだ、と。

その答えはすぐに返ってきた。

 

ズキュウウウン!

 

ズキュウウウン!

 

 並列に並んだ主砲から放たれるメガ粒子の迸流。

 敵戦車はメガ粒子砲を装備していた。そう、小型ビーム砲が開発できたのなら、わざわざモビルスーツに搭載する必要もない。射撃プラットフォームとして既存の兵器を持ち出しても不思議なことではなかった。

新兵器を搭載するのなら新兵器にだと、勝手に期待してしまっていたのだ。

 

2両の戦車による同時砲撃は対応する間もなく着弾し、片方はマゼラトップを撃墜。

もう片方は歩兵を護衛していたザクIIに直撃した。

 

「まずい!」

 

撃たれたザクの装甲が赤熱し、光った。

激しい衝撃と熱でセンサーが障害を起こす。

モニタには何も映っていないが、何が起こったのかはわかる。

核融合炉の誘爆だ。

 

 不運なザクを襲ったビームの軌道は中心を少し外れて融合炉を損傷させていた。

 敵がワザと誘爆させたのか分からない。今まで努めてコクピットを狙撃していた敵があえて誘爆を狙う理由もなく、偶然起こったことなのだろう。

だがこの誘爆は結果的に壊滅的な被害をもたらした。

 宇宙空間で活動できる装甲を持つモビルスーツなら至近距離の誘爆もある程度防げるが、マゼラアタックには少々厳しい。

…生身の兵士は論外。

 

「ちくしょう!」

 

パイロットは操縦桿をぶっ叩く。

復帰したセンサーにはバラバラになったマゼラアタック数両と中破したザクII、壊滅した歩兵部隊が映っていた。

倒れていた機体を起こし、周囲の友軍を確認する。

ザクIIは自分の機体含めて9機、うち2機が損傷し行動不能。

マゼラアタックは辛うじて2両生存、歩兵部隊はほぼ壊滅。

そのマゼラアタックもうち1両はトップを分離して戦闘能力が下がっている。

 

ズキュウウウン!

 

 こんな状況でも敵は待ってくれない。

なによりその敵がこの状況を作り出している。飛び上がらなければ観測できない位置から攻撃──しかしこちらが飛び上がれば狙撃されてしまう──しているので身動きが取れない。

 

 そもそもモビルスーツはその長身による広い視認範囲を持ち、車高の低い戦車には有利に戦える筈であり……丘の向こうから一方的に攻撃を受けるなどありえないのだ。

 マゼラトップにしろ低い視界を補うためのものだが、敵方にそのようなものは視認できない。一体どうしているというのだ。

と、もはや恐慌状態に陥っている公国軍の元にやっとそれらが姿を表した。

 

「何なんだあの戦車は!?」

 

 砂煙を巻き上げながら爆速で走行する5両の戦車。

 61式に間違いない。だが資料で見たよりも若干車体が長く、装甲が追加されているようにも見える。

しかし、速い。

 パイロットはザクのFCSでは捉えきれないと判断し手動での照準を試みるが、敵戦車小隊は速度を維持したまま殺人的な機動力でカーブし照準を容易くすり抜けた。

 

「なんだその動きは!バケモノか!!」

 

ズキュウウウン!!!

 

悲痛な叫びへの返礼はスラロームの一斉射撃。

 

「ウワァ!」

 

 放たれた光線は一発を除いた全てが吸い込まれるようにザクの胸部装甲へ命中し、一瞬で4機をスクラップにしてしまった。砲塔旋回能力、照準能力ともに凄まじい性能を持っている。

 射撃が逸れたことで命拾いしたザクのパイロットは二次元的な動きではやられると判断したのかスラスターで飛び上がったが、逆にろくな回避行動を取れなくなってしまいマゼラトップと同じ運命を辿った。

 

「くそおっ!食らえぇ!!」

 

 パイロットはもはや打つ手なしとザクマシンガンをフルオートで射撃。せめて道連れにと放たれた120mm砲弾はばらけつつも61式の小隊を捉える。

 と、直撃コースに入ったその時61式が小隊ごと一斉に正面を向いた。先ほど見せた急旋回能力だ。だがその装甲はザクマシンガンに耐えることはできないと今までの戦いで立証されている。

バカめ、ここで終わりだ──

 

 

 

カンッ!シュコンッ!

 

「!?」

 

 少なくとも1両は撃破できると確信していたパイロットはあんぐりと口を開けることしかできなかった。

 高速直角機動で走り、戦艦級の高出力ビームを放ち、ミノフスキー粒子散布下でも遠距離攻撃可能で、ザクマシンガンを弾く。

何なんだこの戦車は。こんなものが…61式であってたまるか!!

冗談のような現実に硬直したパイロットは敵戦車の砲口が光ったのを見て───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ああ、61式戦車《改》の性能は上々だ』

 

『速度性能も防御力も想像以上だった。攻撃力も十分だ』

 

『あんたに渡された動作要求書に載っていた行動は全て試した。ああ、俺たちの方は……まぁ、問題ない…MS用耐Gスーツのおかけだ』

 

『車両の問題点か…砲身の冷却が少し追いついていない。あとは足回りに若干不安がある。求められたら他にもいくつか挙げられるが……そうか。では後で』

 

『…了解、これより帰投する』




連邦戦車による逆無双。
61改のスペックは次回書きますゆえ…
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