ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話   作:APHE

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例えば宇宙世紀の場合 陸戦編③

 

「…そうか、わかった。改良を検討しておく」

 

研究員は受話器を置き、一息ついた。

ひとまず実験は成功だ。

 

 しかしこれを実行するまでにだいぶ紆余曲折があり、それがこうして実を結んだのだから内心ではガッツポーズを決めている。

 

 まず61式戦車の改良案は簡単には受け入れられなかった。

生産ラインがモビルスーツ製造へとシフトし始めている中でほぼ戦力にならないとまで言われた旧式兵器の戦車の改良案を打診されても今更何を言っているんだとなるだろう。

 

そこで大変心苦しくはあるが頭の硬い幹部共に頼らざるを得なかった。

 

 モビルスーツが台頭した中での旧式兵器の運用法を捻りだそうとしていた幹部をマークして交渉の席を取り付け、改修案を見せ、政財界への影響までも謳って61式改を全力で売り込んだ。

すると幹部はかなり喜んだ。

 どれくらいかというと職権を乱用して61式の最終生産ロットを引き伸ばしておまけにモビルスーツ用の機関や部品を作っていた工場から直接完成品を流させるくらいには喜んでいた──

 

研究員はその時のことを思い出して少し引いた。

 

 結果的に45両ほどの試作車両が出来上がり、ユーラシア戦線へ輸送されるモビルスーツに紛れ込ませて送り込むことに成功した。

成功したはいいのだが、研究員はここでやっと重大な問題に気がついた。

兵器はパイロットがいなければ動かないのである。

 

 しかしその問題はすぐ解決した。

 向こうの戦線で戦っていた戦車兵からこれに乗っても良いのかと連絡が入り、研究員はデータの収集の約束を取り付けて二つ返事でOKした。

 彼らはモビルスーツへの乗り換えを迫られ、慣れない兵器での戦闘を危惧していた矢先に新技術を取り入れた試作戦車を見つけてすがるような思いで問い合わせたらしい。

 余談だが最初から彼に連絡が来たわけではなく、あの頭の硬い幹部に行ったそうだが、幹部が彼に繋いでこうなったようだ。

手柄を横取りしないあたり頭は硬いが義理には厚いんだなと研究員は呟く。

 

──実際のところはどちらもかなり石頭だし、同族意識かもしれないが。

 

 

 して、肝心の改良案戦車のスペックは新しい戦闘に合わせつつ既存能力を強化したものとなっている。

 

 主武装は指揮官用量産型モビルスーツに限定配備されているビームライフルを流用し、副武装は遠隔操作可能な機関砲に。

 

 装甲は背面、側面、下面が超硬スチール合金。前面と上面、そして基本フレームがルナチタニウム製だ。

 ザク・マシンガンすら弾くルナチタニウムは強力な素材であるぶんコストも高いが、装甲と車体を支える基本フレームと被弾が前提の正面装甲、対モビルスーツ戦において重要な上面装甲と使用箇所を絞ったことでそこそこ安く抑えられている。

MS用シールドを1枚作るコストで2両生産できるくらいには…

 

 重量は核融合炉とメガ粒子砲の搭載により増加しているが、MS用の強靭なサスペンションと強化された足回りに加えて後述の仕掛けがあるのでほぼ問題ない。

 

 モビルスーツ用の核融合炉を搭載したことで倍以上に跳ね上がったP/W比率は猛烈な加速能力と最高速という形で現れ、これまたモビルスーツ用の高性能サスペンションと衝撃吸収材によって制御されている。が、流石に限界で回し続けることは考慮されていない。

試作品を回した部隊には敢えてそうしてもらったが…

 

 

──そして、車体下部にスラスターを追加。

もともと軽い車体、少しの間なら飛行も可能となった。

 

 MSの圧倒的な汎用性とは何を以てのことなのか。研究員は熟考した末に戦場を選ばないことだと解釈した。巨大な手足による高い走破性と三次元機動、これらが険しい山中や洞窟内部ですら活動を可能にしているのだと。

 

 無限軌道もかなりの走破性があるが、それで乗り越えられない段差や高所への不適正は明らかに不利。であるなら少しでも活動範囲を広げ、陸を取り戻せるようにとスラスターを実装したのだ。

 

…ちなみにマゼラトップを見て思いついたのではない。

研究員はそう付け加える。

 

 粒子散布下でも見渡せるように作られた画像認識センサーは非常に高性能だったが、改良を必要とした。

 粒子影響下でレーダー波が届かない中で物理的に映像として捉えて敵をハイライトする、それが画像認識センサー。

 なのだが、粒子が濃い場所ではミノフスキー効果により使えなくなる。駄目ではないか。

研究員はこの問題に一番難儀したが、解決策は意外にも過去の資料から見つかった。

 

 ミノフスキー粒子のレーダー妨害能力は連邦軍宇宙艦艇がメガ粒子砲を装備して間もない頃にそれのせいとは分からずとも発生していた。

 それらはレーダー出力の向上や回路の電磁防御によってその場しのぎに解決していたが、当然のこと、根本的な解決を狙ったプロジェクトも並行して進められていたのだ。

 メガ粒子砲の射撃の余波、濃密な粒子が電波を遮ったのではという正解に近しい答えを導き出したプロジェクトチームはその勢いをそのままに、Iフィールドで回路を覆うという大正解にたどり着いたようなのだが……

 

「予算の関係で中止…勿体ないことをする…」

 

 きっとプロジェクトチームは噎び泣いただろう。研究員は彼らに多大な感謝と労いを送りつつ、答えを借りることにした。

…ともかく、これで自分の発射したメガ粒子砲の余波で目が見えなくなるなんてことはなくなったのだ。

 Iフィールド展開の動力はモビルスーツと比べ低燃費な戦車に核融合炉を載せた時点で有り余っているため無問題。

 

 …いやはや、最初のテストでメガ粒子砲関連の問題に気が付かなかったら不良品を送るところだった。危ない。

研究員はそう言って頭をかいた。

 

 FCSは既存のものと画像識別型センサーに対応したものをハイブリッドし、先述のミノフスキー防御と合わせて粒子影響下でも高度な偏差射撃と自動照準を行えるようになっている。その際消費するであろう電力も核融合炉で補えるため無問題。核融合炉様様だ。

 

 そして研究員が傑作と豪語する最大の目玉はカメラインコムとレーザー通信リンク装置だ。

 ジオン公国の戦車マゼラアタックは車高が高いしなんか分離する。

それらは全て彼らが撒いた種のミノフスキー効果による有視界戦闘を有利に立ち回るためのもの。

 地球での戦いを経験していない彼らにはわからなかったようだが、まず車高を伸ばす、なんて答えは彼に言わせればナンセンス。

 

わざわざ被弾面積を増やす必要はない。

高所の視界が欲しいなら視点を上げればいい。

 簡単に言えば上に伸びる棒の先に先述のセンサー群を、MSの頭部を取り付けたようなものだ。

 車体後部と砲塔後部に合計2つ搭載されたこれらは最大14mほど伸縮し、遠くまで見渡すことができる。

ハルダウンしながら相手の様子を探ることもできる。

…砲塔を飛ばす必要などないのだ。

 

 カメラインコムの先にはもう一つ、小型低出力ではあるがレーザー通信装置が設置されている。

これでお互い情報を交換し続けることによりもはや不可能とされたデータリンクが小隊規模ではあるが可能となっている。

 

 このインコム設備のせいで必要な乗員が1人増えてしまったが、それだけの価値はあると研究員は割り切った。

 

 実際これのおかげで侵攻してくるジオンを早い段階で察知し迎撃できたのだ。

 

「やはり私は間違っていなかった!」

 

61式改の上げた戦果は本部にも報告されている。

頭も体の関節も硬い幹部共がどれぐらいなびくかはわからないが、結果は帰ってくるはずだ。

研究員は今度は現実で大きくガッツポーズし、新たな計画に取り掛かる。

 

製図台の上には戦闘機の設計図があった…

 

 

 

 

 

 …それにしても、新型車両の初実戦で最高巡航速度での戦闘を行い、完全に乗りこなした彼らこそ本当のバケモノなのではないか?と研究員は思った。

 

なお、あながち間違いでもない。

あまり遠くない未来、彼は『どんな兵器も結局は乗り手なのだ』と知ることになる。

 




 61式戦車《改》 諸元
  主武装   155mm連装メガ粒子砲
  副武装   20mm機関砲
  装甲剤   超硬スチール合金、ルナチタニウム
  乗員    3名
 最高速度   180km/h
 戦闘速度   〜140km/h
  機関    核融合炉
  重量    20t
スラスター推力 30t
 センサー   宇宙用高精度センサー
 照準装置   画像認識型FCS
 索敵装置   カメラインコム
 通信装置   レーザー通信装置、短波無線

ダイ・ガード(トタン装甲)が急斜面を登れなかったのを見ると"人の形をしていること"よりも"気軽に飛び上がれる、ジャンプできる"ことの方が汎用性に寄与している気がしたんです…
メタルスラッグ?そうかも…
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