ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話   作:APHE

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例えば宇宙世紀の場合 陸戦編④

「…急造品だな」

 

 戦車長は目の前の2両の戦車を見比べて言った。

 片方は長年彼が乗り回してきた愛車とも言える存在の61式5型、もう片方は一週間ほど前にこの戦線に送られてきた61式改。

彼自身はすでに4回61式改小隊を率いての戦闘を経験している。

結果はすべて勝利、小隊メンバーへの被害なし。

彼の部隊は厄介者扱いから一転して日の目を浴びているが、その立役者はやはり61式改。

 

 正面から見た両車両はほとんど見た目が変わらないものの、唯一車体の全長が9.2mから12mへと増加している。

核融合炉搭載のために車体を伸ばしたそうだが、これで若干小回りが効かなくなった印象だ。

 その出力自体は申し分なく、通常の61式では考えられない高速走行と高速戦闘を可能にしてくれたのだが形も性能も若干アンバランス。

 

 最高速でのカーブやブレーキを行うと部品の摩耗も信じられないほど早くなるので彼の感覚ではせいぜい100km/hくらいが巡航速度。

 改修前の最高速よりはるかに速い巡航速度を手に入れたことに文句はないが、操縦士は操作がかなりピーキーになったと言っていた。最初の出撃前、通常の61式のデータを61改相当に改変して急遽行ったシミュレーションでは両手両足の指を合わせても数え切れない回数横転したのを覚えている。

 

 あとはスラロームと急旋回からのブレーキング。

 この車両を設計した研究員から『データ収集のためにとってほしい』と言われた行動のうち1つだったのだが、なかなか無茶なことを言う。

 流石にやりすぎだったらしく戦闘後に2両が足回りの故障を引き起こしていた。核融合炉からくる高トルクの動力のおかげで無理やりの走行をしてなんとか基地まで戻ることはできたが…

MS用に開発された高性能部品を使ったところで限度はあるということだろう。

 

 追加装甲のスカートは前面と上面のみ新素材に置換されて敵の標準的な実弾兵器なら弾く事ができる強度を持っているとされた。

実際、初戦ではまっすぐ入射したザクマシンガンを弾き返し、この装甲材のおかげで撃破を免れた。

 当然被弾を重ねれば強度は落ちるが、61式5型のモジュール設計を引き継ぎ部分的に換装できるようになっている。

防御力に関して言うことはあまり無いだろう。

 

 武装については概ね良好。

 機関砲は対空兵器として優秀、連装メガ粒子砲の火力は敵の追随を許さないものだった。

ザクのショルダーシールドと胸部装甲をやすやすと貫通し爆殺せしめる威力は十分、それについて戦車長は文句はなかった。

 

「しかし、直接照準のみなんだな…」

 

 メガ粒子砲は曲射できない。

 障害物や地形の向こうから砲撃を浴びせて強襲するといった戦術が使えないのは割と大きな痛手だ。…いや、そもそもミノフスキー粒子のせいでそういう戦法が取れなくなって久しいのだが、どうしても。

 高度なデータリンクにより自走砲運用されていた61式に慣れていた戦車長はその戦法に信頼を置いていた故にそう思ってしまう。

 

 自動照準装置による強引な強襲攻撃も可能だが…

 搭載されたFCSの使い心地からもそもそも間接射撃での戦いが考慮されておらず、粒子影響下では相手もそれができないために杞憂だというのはわかっている。

 それでも、彼の頭からはかつて遠距離射撃で陸の王者を名乗った61式の栄光が離れなかった。

 

 画像認識レーダーとカメラインコムシステムについては開発した者の豪語する通り戦術の幅が大いに広がるもので、今までが目隠しされて戦っていたのかと思うほどに戦場が見渡せるようになったと彼は語る。

 レーザー通信リンクシステムについてもかなり有用なものであったが、若干の使いづらさは拭えなかった。

 

 死角を無くすためカメラインコム上に取り付けられた小型レーザー通信装置は低出力でせいぜい数百mの距離でしか機能せず、障害物や地形に阻まれると通信ができなくなる問題がある。

 その特性を理解していれば正しく戦術に組み込んで大立ち回りができるかもしれないが、ただ闇雲に使っていては逆に戦略の幅が狭くなってしまう恐れがある。

 

「まだまだ荒削りだな」

 

 これは急造品、というか試作兵器だ。

 新技術を既存の枠に当てはめて最適化しようとした段階でまだ方向性が定まっていないような印象を戦車長は感じた。

 だがきっとこれらを克服した新車両をまた寄越してくるはずだと戦車長は思った。

 それは彼が戦車エースとして長年様々な車両に乗ってきた事、そして開発に携わった事もあってのカンであった。

それがいつになるのかはわからないが、それまでは。

 

「またよろしくな、相棒」

 

彼は愛車に乗り込み、新たな戦いに臨んだ。

 




ザク地上戦セットの144/1 61式戦車5型を見るとあんまり小さくないんですよね61式。
追加装甲を外したら旧作のような見た目になるらしいですが…
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