ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話 作:APHE
「なぜだ…」
研究員は頭を抱えていた。
彼が自信を持って提出したセイバーフィッシュ及びフライ・マンタの改修案は石頭のクソ幹部共(研究員談)によって蹴られてしまった。
協力的だったあの幹部はそれに抗議してまた職権濫用しようとしているが…
研究員は手元の書類を見る。
サインすれば今や花形扱いのモビルスーツ開発局への移籍と幹部への昇進を約束するといった具合の事がそこには書かれていた。
61式改の功績を研究員のものと認めてとの内容だが…
ついでに今後は移籍しない限り彼へ回される研究資金が減らされ、モビルスーツ開発局へと移籍すれば今までの倍額が毎週使えるとまである。
これは脅しと囲い込みか。
優秀な技術者だと認めての事なのだろうがしかし研究員はそれに乗る気はなかった。
自分はところ構わずモビルスーツを運用する事へ疑問を感じ、ジオンとは違うやり方での開拓を望んでこの研究をしているのだ。ここでそれを諦めては本末転倒、良かれと思った勧誘も彼にとっては迷惑だったのだ。
モビルスーツは条件が揃えば確かに強い。
研究員はその強さは場所を選ばない汎用性と追加武装による拡張性、限定的場面では人形の形状にあると考えている。
戦車が苦手とするジャングルや市街地、山岳地帯や渓谷では人型ゆえの機動力、例えば岩陰に隠れたり身を乗り出してクリアリングしたりの動きや『大きな歩兵』としての行軍力でモビルスーツに軍配が上がるだろう。
しかし平地や丘では同じ技術を与えられた戦車に不利、それはユーラシア戦線の実戦データが物語っている。
昨日送られてきたデータでついに交戦回数が2桁に到達したが、未だに61改は被害ゼロ。直接照準できる状況で撃ち合って勝つのはこちらだ。
…それに、『場所を選ばない汎用性』についても手足があるからというだけの理由ではない。その大きさと優秀なアクチュエータに由来する安定性、短時間の飛行を可能にするスラスターによるところが大きい。
そこまで大きくなければ視界の確保に手間取り、スラスターが無ければ山地での行動に支障が出る。人型形状であることの完璧な優位性は柔軟な照準能力と白兵応力のみ。
ならば2つ目の強みの拡張性、その場所に合わせた武装を持てる拡張性。
まだモビルスーツ開発が始まったばかりの頃モビルスーツのマニピュレータに合わせて巨大な銃を作ると聞いたときは冗談かと思った。
規格を合わせて大量生産することでコストを下げ、とにかく普及させて標準化する…というお決まりの方法でコストカットに成功し、今や一般兵も武装を選べる。
凄いことだが、これはモビルスーツにしかできないことではない。
兵装をモジュール化して選択性や汎用性を増やすというのは戦車でもやっていたことだ。
流石にどこでも戦車を送らなければならない状況や特定の場面以外でモジュールの必要性に駆られた事はこの戦争が起こるまでなかったためにその種類は少なく、今すぐ装備できるのは市街戦キットくらいだ。
だがモビルスーツでそうしたようにこちらもそうする基盤はあり、研究員はもちろんそれを進める気でいた。
総括してモビルスーツは出撃する場所を選ばない汎用性で地の利を得られる場面もあるがすべてをそれに任せられるほどではなく、地の利が得られない場合は戦力として微妙でその地形での戦闘に特化した兵器には劣るというのが彼の考えだ。
と、色々考えているうちに彼の頭にはモビルスーツの改善案が浮かんでいた。
今更モビルスーツ開発局に行く気はないが、と呟いて彼は頭のリソースを振り直す。
とにかく今後のことを考えなければ。
まずは61式改を正式に完成させよう。
そしてその戦果で見返してやる。
この状況での開発は厳しく、使う理由となる強みを持たせなければならない。
現時点でモビルスーツに勝る点、コストと平地での戦闘力を据え置いてその上に何かを重ねる必要がある。
研究員は資料を無造作に投げ出し、設計を始める。
彼の本当の戦いは今始まった。
……なお、彼を引き抜こうとしたのは既存兵器の改良を行う『ビンソン計画』を主導するチームであり、モビルスーツ開発の名目で多額の開発リソースを回そうと便宜を図っていただけだった。
よく読み込めばそれがわかる内容であったのだが…
今一度強調するが、彼の頭は硬い。
「彼の改修した戦車は非常に優秀だ、センサー群も新しい戦争に適応できる形になっている」
「その砲塔を流用することは可能か?」
「可能だろう、ジオンはマゼラトップ砲なるものを作っているらしいじゃないか」
「興味深いな」
それでもモビルスーツ作らない。
マゼラトップ砲ってあれどうなってるの?
(素朴な疑問)