ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話   作:APHE

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例えば宇宙世紀の場合 陸戦編⑥

 連邦の量産モビルスーツ、ジムが荒野を走る。

 

 量産型とはいえその性能は高水準、ジオンの主戦力であるザクIIよりハード性能は良いとされる。そのうえ武装やモジュールの規格を統合した整備計画により拡張性や選択性、汎用性も十分。

 標準装備としてビーム兵器が支給されている点ではまちがいなくジオンを凌駕していると言えるだろう。

 

 パイロットはそんなジムの性能に全幅…とは言わずとも、それなりの信頼を寄せていた。

2週間前に受領したばかりの機体だが、彼は毎日シミュレータに通い詰めて実際に動かしてで感覚はかなり掴んだつもりでいる。

 右腕のマニピュレータにビームスプレーガン、左腕のマニピュレータにシールドという基本装備に加えてハイパーバズーカとスペアのシールドを背中に背負うカスタム装備。

最近は戦線が安定していることもあり、新任の彼にも武装選択の機会が与えられている。

 

「やはりモビルスーツだな」

 

 戦線の安定は複合的な要因からだと言われるが、モビルスーツの投入によるところが大きいのは確実だろう。もはやジオンだけの特権ではなくなったそれは連邦軍の士気を爆発的に高めている。

 

 この部隊は彼のものを含め12機ほどのジムが配備されている。

加えて指揮官型のジムコマンドが4機…1機が見慣れない武器を持っているが。

 

「あれは何だ?」

『知らん。新兵器だろう…どこかで見たような気はするがな』

 

 この何もかもが新しい戦争で、新兵器の投入など珍しいことではない。

パイロットは2本の砲身を持つソレに既視感を覚えたが、気のせいだろうと割り切った。

 

 後続にはホバートラックを伴った歩兵部隊もいるのだ。与えられた任務は彼らを守ることで、戦車砲塔をもぎ取ったような珍妙な武装について考察することではない。

 

『敵の姿がないな』

「潜伏しているのか、もしくは逃げてしまったか」

 

 この周辺はジオンのモビルスーツ部隊の目撃情報がある。

作戦地域の中心となる正面の台地に彼らは敵影を見なかった。

しかし念を入れるに越したことはない。部隊を2つに分け、挟撃する形での安全確認を敢行する。

 

「本当に居ないのか?」

『IRセンサーにも感なし。もぬけの殻だ』

『もう少し接近しよう』

 

 台地がビームスプレーガンの有効射程に入るまで接近するも、いまだ敵の姿はない。

はたして、本当に敵は居ないのか──

 

部隊の全員がそう思い始めたとき。

 

「!?」

 

 ミノフスキー粒子濃度の急上昇を表すアラートを目にしたパイロットは咄嗟に左腕の盾を構える。

その判断は正しかった。

 

ドドドドドドンッ!

 

突然降り注いだ徹甲榴弾が地面のあちこちに大穴を開ける。

 

ドカカカカンッ!

 

 その死の雨のうち盾に当たったものは軌道をそらしてどこかへ飛んでいく。超合金のハニカム複合材からなる盾は簡単に貫通されるものではない。

しかしモビルスーツ本体はそうでもない。

 パイロットは奇襲攻撃に対応しきれなかったジムが1機爆散したのをモニターの端に見た。

 

「ザクか!」

 

 彼は台地の壁をソリで滑り降りる緑のモビルスーツをセンサーに捉える。

こちらもやられるだけではない、連邦軍はこの時の為にモビルスーツを開発し運用し、そしてそれを扱う自分がいるのだとパイロットは吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ……しかし時には、うまく行かないこともある。

あの場に潜伏していたジオンの戦力は想定よりはるかに多く、奇襲攻撃を受けたことで各個撃破される形となり…

結果的に部隊は壊滅した。

 生き延びたのはパイロットのジムと彼の分隊のジム3機、それにジムコマンドが1機で合計5機のみ。

もう一方の分隊は全く動きも連絡もなく全滅したものと判定された。

 

「くそ…」

 

 パイロットは拳をコクピットのモニターに打ち付ける。

作戦は妥当なもの、装備も万全。しかし負けた。己の至らなさに悔しくなる。

彼は先程の戦闘を思い出していた。

 

 ザクマシンガンを盾で受け流し、滑走するザクにビームスプレーガンを叩き込んだ。炉を破壊されたザクが爆ぜる。

次の目標に狙いを定めてビームを撃つ。

当たらなかった。

敵は素早く軌道を変えてこちらに迫り、武器を持ち替えながら乱射してダメージを与えてくる。

ここで盾にザクバズーカが直撃し、一枚だめになった。

牽制にヘッドバルカンを放つも相手はショルダーシールドに角度をつけて受け流し、ついには肉薄してヒートホークを振りかざす。

 

明らかに練度が違う。

 

 相手はモビルスーツという兵器の戦いに慣れている。

2週間程度の付け焼き刃の実力でそこそこの性能のマシンに乗ってもその差は覆せなかったというわけだ。

 彼はその事実に納得したくなかったが、結果が物語っているので認めざるを得ない。

 

 モビルスーツは一人乗りの汎用兵器だ。射撃補助装備など充実してはいるが、それらすべてを一人で処理し、制御する必要がある。それ故に練度の差がとてつもなく大きく出るのだ。

 ビーム兵器という明らかな優位性があったために全滅は免れたものの…自分たちが同じマシン(ザクII)に乗っていたのならあっという間に殲滅されていた。

 

 本格的な生産が始まったとはいえまだこちら側にはモビルスーツの運用ノウハウが蓄積しておらず、その面ではジオンに大きく軍配が上がる。逆に戦車や戦闘機などの既存兵器の面ではこちら側が圧倒的、対戦車ミサイルを装備した装甲車がザクの小隊を翻弄したという話も聞いている。

 パイロットはジムコマンドの武装を見てそんなことを考えていた。

 

 マニピュレータではなく腕に直接装備された2本の砲身を持つソレは紛れもなく61式の砲塔。

 61式の砲塔を盾のように右腕に装着したジムコマンドの見てくれは滑稽だが、この機体、この武装は今回の遭遇戦においてザク3機という高い戦果を上げている。

 

 この砲塔には独立したセンサーと照準装置が備わっているらしく、それをモビルスーツ本体のセンサーと連動させて腕の動きと本体の照準で足りない角度や僅かなブレを補って射撃しているらしい。

二重の調整を施された攻撃、命中率がいいわけだ。

 

 そして、この砲塔が"そのため"に作られたものではなく、実際の61式…正確には61式改から取り外されたものであることを察していた。

恐らくこの砲塔を主砲として備えた戦車が、本来の持ち主がいることに。

 

『作戦本部より返答、数分後に救援部隊が来てくれる。それまでなんとしても耐えるぞ』

 

 分隊長はそう言うとジムコマンドを立ち上がらせる。

残り弾薬の少ないハイパーバズーカは放棄し、61砲とサーベルのみで戦うらしい。

 

 パイロットもエネルギーの少ないビームスプレーガンを投げ捨ててビームサーベルを装備し、左マニピュレータにはスペアのシールドを持った。

発振するビームの刃が辺りを照らす。それに感化された周囲の残存機体もサーベルを抜き始めた。

 

『なぜ皆スプレーガンを捨てるんだ?』

 

その問いに彼はさも当然というふうに返した。

 

『モビルスーツは陸では白兵戦用の兵器だ。そうでしょう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙の立ち上る台地に、かつて陸の王者と呼ばれた者たちが向かう。

窮地の友軍を救うために。

再びその名を取り戻すために。




大型兵器を載せるためにオーキスやディープストライカーみたいなユニットを作るならお兄さんは最初から固定武装にした新兵器を作ればいいと思うの
無論そういうゴテゴテMSやMAは大好物なんですが今作では出番ナシです…

初めて見たガンダムシリーズというのが0083の再放送でそれもデンドロビウムが大活躍するシーンでした
今でも一番好きなMAです
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