ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話   作:APHE

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例えば宇宙世紀の場合 陸戦編⑦

 かつて陸の王者と呼ばれた連邦軍主力戦車、61式。

再びその名を手にすべく、彼らは新たな力を得て戻ってきた。

 

「あと3分で戦闘区域(粒子影響域)に突入します!」

 

 4名に増えた乗員のうちの一人、通信兵からの報告を聞いた戦車長は無言で頷く。

彼は他の乗員たちも気を引き締めているのを感じていた。

自動化による人員削減で長らく味わっていなかった感覚に戦車長は少し感傷に浸っていたが、任務の事を思い出して指揮に戻る。

 その内容はモビルスーツ部隊と合流し敵モビルスーツ部隊を叩きつつ歩兵部隊ホバートラックの支援をするというもの。

…だったのだが、急遽モビルスーツ部隊の救出へと任務がすり替わった。

合流予定だったモビルスーツ部隊を半壊させたという敵部隊。なかなかの強敵とみえる。

だがこの新型61式改、制式量産型の性能ならなんとかなるはずだ。

いや、なんとかするしかない。

こちらの部隊は新しく受領した61式改二ともいうべき車両が12両。

戦車長の作戦地域を睨む目は鋭かった。

 

「核融合炉出力安定!」

 

「武装チェック…問題なし!」

 

「カメラインコム展開!」

 

 準備はできている。

あとはこいつの力をどこまで引き出せるか。

使用感はだいぶ変わったがそれがいい方向に行っていることはこの部隊の誰もが知っている。

 確実に強くなったこいつの力を引き出せずにやられてしまったらそれは自分たちの面子が立たないしこれを開発してくれたあの研究者に会わせる顔がない。

 

 戦車長はテレビ電話で話した若い研究員の事を思い出す。

最初は彼のこともジャブローのモグラ共の一員と馬鹿にしていたがその目は本気だった。

戦車や戦闘機の再開発を熱く語る彼に思わず気押されしてしまったくらいだ。

 だが戦車長は、いや彼の部隊の皆が嬉しかった。

戦場の花形から旧時代のガラクタへとなり果てた、なり果てている過程で戦車乗りの立場は狭くなるばかり。

そんな自分たちに光を当ててくれる存在が現れたのだ。嬉しくもなる。

 

「ウォッチャー分隊本隊より離れます!」

 

「頼んだぞ!」

 

 2両が本隊から分離し敵地の側面へ向かう。

彼らは旧世代の戦法を再臨させるための切り札だ。

61式が名実ともに陸の王者であった時代の再現…再臨。

敵にはその威光が衰えぬものであると教えてやろう。

 

「粒子影響域に入りました!」

 

「来たか…!」

 

 ついに戦闘区域(粒子影響域)に入った。

通常レーダーや熱源センサー等にノイズが入り、次々と警告文が表示される。

だが粒子影響下でもそれらが完全に使えなくなるわけではない。

 戦車長はそれらをそのままにしてキューポラの光学センサーとカメラインコムから送られる映像をモニターで確認し索敵を開始する。

加えて近距離レーザー通信装置を起動させ小隊規模でのデータリンクを開始した。

 

 これは試作品にも搭載されていた機能だが、小隊の他の車両が見つけたもの、攻撃を受けた場所などを瞬時に共有できる非常に有用なシステムで…ミノフスキー粒子を加味した新しい戦闘が確立される以前から存在するものだ。

 リアルタイムの長距離通信が難しくなった今ではアドバンテージが得にくいとされていたものだが小隊規模の近距離戦ならばまだ使える。

そういうものと割り切れば未だに強力。

と、小隊車両のうち後続の4両が足を止めて分離する。

 

「ウォッチャー分隊より敵座標データ受信!射撃準備に入ります!」

 

連装主砲の仰角が上がってゆく。

本当に、長らく見ていなかった光景だ。

 

「FCS連動、角度微調整…完了!」

 

「…発射!」

 

ズガァン!

 

 連装砲から放たれたのは実弾。

それは大きな放物線を描いて敵地へと飛び、遠くで低い爆音と小さな砂煙が上がったのが見えた。

 

《こちらウォッチャー。着弾観測、敵2撃破!》

 

「よし!次弾装填!」

 

 61式改に新たに…というより、再び付与された間接射撃能力。

かつて衛星データリンクによる長距離砲撃で強烈な攻撃力を誇っていたそれはミノフスキー粒子により時代遅れとなってしまった。

 そうしていっときは不可能とされた長距離砲撃だが、それは観測射撃という形で戻ってきた。

 

 ウォッチャー分隊の61式改2両には狙撃用MS等に搭載される長距離用の優秀な画像センサーをさらに改良したものと、こちらの61式改よりもはるかに高出力のレーザー通信装置が追加装備されている。

 それで観測したデータを中継しデータリンクすることによりスポッターとスナイパーのような、観測兵と砲兵のような感覚で砲撃が行えるのだ。

観測された敵の位置はMAP上で共有され、予測地点や砲撃位置まで割り出せる。戦車長は61式改の小隊は移動する砲兵陣地だと研究員が言っていたのを思い出した。

 

 いかに高い練度を持った兵でさえ砲迫射撃の前には無力。戦術レベルの戦力は戦略的な攻撃に敗れる。陸の戦場において砲兵は神であった。

ウォッチャー分隊と砲撃分隊を分離して6両となった小隊は速度を上げて敵が潜伏し味方が救助を待つ地点へと急ぐ。

 

《敵3撃破!残敵は掩体に隠れました!》

 

 その間にも味方の砲撃が続き成果を上げるが、とうとう隠れてしまったようだ。

遠距離砲撃戦法も万能ではないし、間接射撃では狙えない場合もある。だがしかし。

 

「見えてきた、あの丘だな」

 

「主砲、実弾からビームへ換装!連装メガ粒子砲チャージ完了!」

 

こちらは強力な射撃補正機能を持つ直射兵器を有している。

おまけに視界も良好、正面きっての戦闘で負ける要素は無い。

 

「近づきすぎず、敵の出方を窺う!各種センサを注視せよ!」

 

 だが、どこまで行っても戦車は戦車。踏みつぶされたりヒートホークを突き立てられたりでもすれば一撃でやられかねない。我々がするのはあくまで射撃戦だ。

 

「救難信号はこちらから見て右方から発せられている…とすればあの岩陰が怪しいな。予め回避運動を取りつつ威嚇射撃!」

 

突撃中の6両はさらに3両ずつに分かれて射撃を開始する。

 

「てぇ!」

 

ビシュウウウウウン!

 

 6機2門、系12門の155mmメガ粒子砲が目標地点において交差するよう完璧な照準と連携のもと放たれ、寸分違わぬ精度で岩塊を貫く。高度なデータリンクにより個にして集団となった61式改の為せる技だった。

 

 岩塊は一瞬で木っ端微塵になり、背後に隠れていたらしい何かが飛び退く。と同時に崖の裏側や側面に隠れていた敵が攻撃を察知して反撃に乗り出す。

 

ズドドドドド!

 

 ザクマシンガンの制圧射撃。これまで戦車にとって死を意味したそれだが、61式改が予め回避行動を取っていたため命中弾は無くただ居場所を晒すだけの結果となり…

 

《こちらウォッチャー!敵の観測データを送信!》

 

《受け取った!間接射撃を再開する!突撃分隊に狙う敵座標を送る!》

 

「貰った!こちらは手前のエネミーを殲滅する!」

 

各種情報がレーザー通信で即座に伝達され、再び上空から砲弾が降り注ぐ。

 

《1機撃破!一発は外した!》

 

「問題ない、こちらで処理する!」

 

 ミノフスキー粒子影響下ではできるはずのなかった間接射撃。それにより数機が撃破され今も砲弾が降り注いでいる事実に恐慌を起こした敵機が隠れるのをやめてその身を晒し始めた。

 

「照準よし!」

 

「撃てっ!」

 

 それはこちらの思うつぼ。その姿を捉えたそばからメガ粒子砲が火を噴き、数を減らしていく。

 

「装甲貫通、撃破!」

 

「よし、接近するぞ!」

 

 突撃を開始してからすでにザクを7機撃破。部隊は十分に敵戦力を削ったと判断してさらなる接近と制圧を試みる。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 散会し蛇行しながら射撃を行っていた6両が一斉に速度を上げてこちらへ近づく。本格的に制圧を始めるつもりらしい。

 

 息をひそめて救援部隊の戦闘を見守っていた残存ジム小隊、その指揮を一時的に執ることになったジムコマンドのパイロットは戦車隊の鬼神のごとき活躍に息を飲んでいた。

 

「どうりで強いわけだ」

 

 士官に勧められて渋々装備した61トップ砲、その正式な持ち主がこれかと腕部に装着した砲塔と砂埃を巻き上げながら爆速で走り回る戦車を見比べて思う。確かに、この勢いで走りながら戦う兵器ならばこれぐらいの精度があって然るべきだろう。

 

「救援部隊が本格的な戦闘を開始、これより我々も参戦するぞ」

 

《彼らは接近戦では不利でしょうからね。我々が切り伏せます》

 

《このままでは戦車に手柄を全部持っていかれてしまうからな。こっちの立場がなくなる》

 

 軽く通信を入れるとジム小隊は隠れるのをやめて戦闘を再開、スラスターで飛び上がり、盾を構えながら突進し、救援部隊に夢中になっている敵の背後から奇襲をかける。

 

《んなっ!?連邦のモビルスーツ!敗残兵か!》

 

「そうなるのはお前たちだ!」

 

 敵の練度が相当に高いのは先ほどの戦いでわかっている。狙ったザクIIはこちらの射撃を回避し、マシンガンを捨ててヒートホークを抜き払うとすぐに斬りかかってきた。

 それを想定して発振させておいたビームサーベルでヒートホークを受け、ヘッドバルカンで頭部を粉砕。そのまま斬り捨てようとすると敵は即座に後退してこちらの間合いを外れる。有利な状況での奇襲攻撃でも仕留めきれないとは、ジオンのパイロットはバケモノか。

 

 だがバケモノはこちらにもいた。

出来る限り後退するため敵がスラスターで飛び上がろうとしたその時、足を止めた一瞬の隙に2条のビームがザクを貫く。

 場合によってはスプレーガンも弾くショルダーシールド、それを完全に無視するように大穴を空けて爆散させた張本人が程なくしてジム小隊の前に現れた。

 

《先行部隊の諸君!助けに来たぞ!》

 

 ドリフト急制動する61式改。友軍の筈のそれにその場にいた全員が気押され、一歩後ずさる。これが"戦車"の戦いだというのか?

モビルスーツ隊を率いて戦っていた昨日までの戦車のイメージと言えば旧世代の、忘れ去られていくべき兵器。いわば"やられ役"だった。

 

「助かっ…敵だ!」

 

 と、61式改の頭上へ飛び下りる影。

戦場を荒らしまわったそれを撃破せんと殺気立ったザクIIがヒートホークを翳している。

 

《後退!後退!》

 

61式改は急制動したのと同じように急発進し回避を試みるが間に合わない。

 

バシィン!!

 

 砲塔がカチ割られるかと思った矢先、ジムの一機がすんでのところでビームサーベルを差し込みヒートホークを受け止めたことで61式改まで刃が届くことは無かった。

 

《感謝する!》

 

 後退した61式改はというと着地したザクIIの足めがけて実弾を放ち、その機動力を完全に奪い…ヒートホークを受け止めていたジムが動けなくなった敵にとどめを刺すのに時間はかからなかった。

 

「…助かったのはこっちだ。残敵掃討に当たるぞ!」

 

《了解した!》

 

 現地で結成された61式改とジムの混成小隊。

サーベルを握り直し、砲弾を再装填し、それぞれが歩み出す。

 

もはや彼らは単なるやられ役ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───この戦いから数日後、戦線は連邦軍優位の方向で安定。

 

 陸の王者の再臨、長距離砲撃の復権とモビルスーツの本格運用開始は一見噛み合うことが無い、別方向の戦果に見えた。

 

 

《…新世代の歩戦共同…か》

 

《その戦車が小さいようだが》

 

《こっちからみりゃ歩兵がデカすぎるよ》

 

《役割はそのまんまなんだ、どっちが欠けても成り立たない》

 

 圧倒的な砲戦能力を持つ61式改、高い近接戦闘力と白兵能力を持つモビルスーツ。これらの同時運用はお互いの穴を埋めることになり、絶妙な噛み合いを見せていくことになる。

 

《陸で一番強いのは戦車、認めるぜ。だが二番手は間違いなく俺達だ》

 

《否定しない》

 

 この世界において戦車は陸上戦力から淘汰されつくすことなく、戦力の一角として残り続けることとなった───

 

 

 

 

 

 




第一章、完!
前エピソードの大規模改筆や他小説の執筆などで引くほど遅れましたが今や巻き返しの時です。ごめんなさい。
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