ロボットアニメにおけるタブー、例えば戦車にメガ粒子砲を載せるような話   作:APHE

9 / 11
空戦編
例えば宇宙世紀の場合 空戦編①


『ターゲットワン、座標B32!』

 

『B32了解!スプレーガンにて牽制する!』

 

大掛かりなセンサーを備えた戦車と、その脇でビーム火器を構える白い巨人(ジム)。閃光がひとつ、ふたつ、煙幕に吸い込まれて、赤熱した大盾を投げ捨てながら緑の巨人(ザクII)が現れた。

 

『接近警報!』

 

『白兵だ!』

 

『任せろ!』

 

ザクが得物を振り下ろす前にビームの刃がその両腕を裂いた。切り離された腕部パーツは縦回転して地を抉り、その持ち主は動揺しつつも攻撃を諦めない。

 

一歩、二歩、動力パイプが切れ鈍重になった動きでも次の太刀は受け流し、倒れ込むような体当たり。

 

『ファイア!』

 

ここで戦車が吠えた。2連装の155mm両用砲から放たれたHEAT-FSはザクの胸部装甲に突き刺さるとメタルジェットを形成、内部機構を破壊しつつ構造材に深刻なダメージを与える。

 

正面からの砲撃で跳ね上がった巨体は倒れ込むような体勢から一転、向こう側へ。

 

『効力射撃!』

 

損傷部へと撃ち込まれたビームは放った者の狙い通り、装甲材を尽く溶かし尽くして中枢部を破壊。パイロットを失ったザクは2度と立ち上がれそうになかった。

 

目標の撃破を認めたジムはスプレーガンを腰部に懸架し、後続部隊に敵の一掃を報せる。

 

こうした光景は今や大半の戦線で見られる光景。連邦は"新時代の歩戦協同"を主軸とし、侵攻軍の攻勢を次々と退けていた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「さて」

 

いつものジャブローの一室にはやはりあの研究員がいた。その手に握られるは戦闘機の図面。

陸上戦力に憂いが無くなり、戦線も安定したところで再び手を付けようというのだ。

 

「単純に強化をするというのは、()()()()()が既にやってしまったことだな」

 

核融合炉を搭載した新型戦闘機、コアファイターとその発展型のコアブースター。

後者に至ってはビーム兵器すら搭載し、ジオンの攻撃空母を撃墜したという真新しい戦果も抱えていると来た。ここにつけ込む隙はあまりなさそうだ。

 

しかし、強く可能性を感じるものもある。それらの余剰部品を使用して作られた簡易型コアブースター(コアイージー)とも呼ぶべき存在、ジェット・コア・ブースター。研究員はこれを次期主力戦闘機に仕立て上げる策を練っていた。

 

「出力は十分すぎるほど。伴ってペイロードもある。ビーム兵器の搭載も可能だ」

 

61式の時とは異なりこちらは最初から核融合炉の搭載を前提としているため技術障壁が低く、様々なことに手が伸ばせる。推進部分に手を加えれば全領域対応も容易い。

 

が、これを主力に押し上げるにはいくつかの障害が存在する。それはモビルスーツでも陸上戦艦でもなく、他の連邦製戦闘機群だ。

 

「フライ・マンタ、セイバーフィッシュ、TINコッド、トリアー・エズにマングース、デプ・ロッグ、他にもある……これらも適切な運用の元ではモビルスーツを圧倒しうる。つまり"今のままでも十分"だということになる」

 

それではいけない。モビルスーツは地上では"ただの陸戦兵器"となり、その穴を埋める存在が必要だ。これを将来的にも養っていくためにはここで進化の行き止まりを迎えてはならない。

新たな主力となる存在を、航空戦力の柱となる機体を再定義する必要があった。

 

「…うむ」

 

そのためにはまず、ジェット・コア・ブースターが高性能であること。すでにクリアしている。

次に、競合存在がいなくなること。

 

「新規の生産は既に終了していたな」

 

現状、航空機については在庫品を回している状態。これが無くなった場合の新規生産の話は件の幹部からも聞いていない。

 

「ならば使い潰してしまえばいい」

 

ジェット・コア・ブースターへの入れ替えを問題なく行える程度に、程よい速度で損失させる。そのプランも考えてある。

 

 

 

『それが、ウイングマン・システム?』

 

「そうだ」

 

壁の端末に映るのは連邦の士官服。61式改の生産を強行して研究員を大いに助けたその人だった。

 

『有人機を無人の僚機とするか。ドローン技術は旧世紀にいちど廃れたが…粒子影響下ではジャミングも効かない。考えたな』

 

「いわば外付けのパイロン、ミサイルキャリアとして親機の機能を拡張し、時にその被害を吸収する。被撃墜リスクの高い戦術を無人の僚機に任せることもできる」

 

対モビルスーツ戦術として定着している降下襲撃戦法、フライ・マンタやセイバーフィッシュによるミサイル一斉射。被害のトレードになりがちなそれをパイロットの損失を出さずに行える。

 

『君の言葉を疑う気はない。前は残念だったが…今なら問題なかろう。ビンソン計画との折り合いもついた』

 

「レビル派だの何だの、面倒くさい時代だ」

 

『技術畑で過ごした君は感じなかったことだろう。ゴタゴタに巻き込んで君の才能を殺したくはない。ところで、パイロットの経験もあったと聞いたが』

 

「選考で落ちた。結果としてこちらの方が向いていたさ」

 

そんな人間の作ったシステムがウイングマン(僚機)を務められるのか、不安を抱かれるかもしれないがと研究員は頭をかく。

 

『疑う気は無いと言った。君が自信を持って送り出すなら相応のもの、そうだろう?』

 

「何であろうと結果は出るさ。私はそれを見て改善することしかできない。また話をさせてもらおう」

 

通信を終えた彼はプログラムの最終調整に向かう。

連邦が永劫に渡って空を守り続けられるように、飛行機乗りたちが翼を広げ続けられるように。

 

───MSが地上でも陸戦兵器の枠を脱するとは夢にも思わずに。

 




MSどころか戦車までビームを飛ばしてくるようになったことでジオン側は急ピッチでビーム対策を進めています。冒頭で投げ捨てられた大盾には耐ビームコーティングが施されていました。
なお実弾も飛んでくる模様。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。