おかしいな。何か引っ越そうとしたらすんごい大所帯になっちゃった。え?なに?せっかくだから東京エリアの子供たち全員を勧誘してきたって?そりゃホントかいヒューカさんや。
ということがあって、現在俺の眼前には数万数千の、呪われた子供たちが集結していた。
なんで?
いや、なんで?(再確認)
これ俺たちで面倒見切れますか?なに?俺になら出来るって?冗談が得意だなぁヒューカさんは。
え、マジ?
マジらしいので、我々はこれより移民団として、エリア外にフロンティアを探しに行くことにしまーす。ホントは俺とその身内だけで引っ越せばエリア内で済んだけど、これだけの大人数を、エリア内で目立たずに養うなんて無理です。
「えー、集まってくれた同志諸君。私は君たちを歓迎しよう!思いの外多くの者が集まってくれたことに感謝を宣べさせて貰う。どうもありがとう。さて、我々は我々の持てる力を用い、エリア外に活路を見いだすことにした!最早エリア内の大人たちに期待するだけ無駄なのは、皆も重々承知だろう!故に!我々は我々の力で!未来を切り開くのだ!」
ともかく場を収めるために、そんなことを口走った。おいおい、ホントに俺にそんなことができんのかよ。
「同士プルファならば大丈夫です。必ずや我々の独立を勝ち取るでしょう」
え、何々?どうしたんですかヒューカさん。ちゃんづけしてくれないの?
「ここまで来てしまっては、私たちも立場を明確にせねばなりません。しかし、これからも友であることに変わりはありません」
あー、うん。わかったよ、そういう遊びだな?
「今ここに!赤眼同盟隊の決起を宣言する!ジーク!レッド!立ち上がれ同胞諸君!」
何故かそんなことを宣言したヒューカ。オイオイオイオイ、死んだわ俺。
「あ、あー、立ち上がれ!同胞諸君!」
何かもう引き返せなさそうなので、乗っかっておくことにした。
「「「「ジーク!!レッド!!ジーク!!レッド!!ジーク!!レッド!!」」」」
フロア熱狂。もう俺には止めらんね。
「なあ、何であんなことを言い出したんだ?それと何だ、あの口調は」
期せずして決起集会となってしまった集会から数刻、不安がる子供たちを宥め賺して、ようやく一息ついたとき、俺はヒューカを呼び出して尋ねた。
「隠していたのは謝るよ。けど、今回のことは常に計画していたことなの。今やる必要は無かったけど、機会さえあればいつでも実行に移すつもりだった」
「だから、何故なんだ」
「あの惨劇から4ヶ月、私はずっと考えていた……このままで、私たちに未来はあるのかって」
それは、ない、だろうな。
「あんな腐った、閉じられた世界では私たちは生きていけない。そうでしょ?だから私は考えたの。ここから抜け出したいって。外の世界に行きたいって。誰も傷つかない、殺されない、そんな世界に。だから多くの同胞を集めて、外を目指す。我慢するのはもう、止めた」
「それは理想主義すぎるぞ、ヒューカ。外にはガストレアがごまんといる。ただ倒すだけなら容易いだろうが、そのためには力を使わねばならない。わかるか?お前のせいで、みんなガストレア化するぞ」
少し睨みをきかせて、私はそう訴える。
「わかってたよ、プルファちゃんがそう言うの。だから黙って事を進めたの。責任はもう、たくさん背負ってるし、呪われる覚悟もある。同士プルファはどうです」
「……そうだな、いずれは私もお前と同じことをしていたのかもしれない。だから私はお前を咎めないでおこう。で、何なんだ?その口調は」
「決起集会の時に申したとおりです、同士。我々は組織と化しました。そのためには明確な上下関係が必要不可欠。故に私はこのように喋っております」
「頭目は私か?」
「我々を導けるのは同士プルファしかおりません」
なんだそりゃ。
「ははは、自分で考えたことのクセに、旗振り役は他人に押しつけるのか?いいだろう、やってやる。その代わりついてこい。待ち受ける先が例え地獄だろうとな」
「は、元よりその覚悟です、同士」
「「ジーク!レッド!」」
やってやろうじゃないか、チクショウ。
「へえ、そんなことに」
「ああ、そういうことになってしまった」
「じゃあ、もうお別れだね?」
「ああ、先に地獄で待っていてくれ」
「うん」
その日、東京エリアから呪われた子供たちが姿を消した。イニシエーターや養子として生きる者はその限りでは無かったが、それ以外は悉く姿を消した。そして、これと関連しているのかはわからないが、下水道でガストレアと思われる死骸が発見された。
♦♦♦
「向かうも地獄、引くも地獄。最高だな、ヒューカ」
「ふはは、同士プルファも冗談がお好きなお方だ。向かう先は希望で満ちたパライソですぞ」
「だと良いがな」
そんな冗談をヒューカと言い合いながら、俺は後ろの方に目をやる。そこには果ての見えない人間の列が出来ていた。
我々は数万と数千人を率いて、赤眼同盟隊を名乗り、エリア外を目指して前進していた。このまま行軍を続ければ、おそらくは明朝までにはエリア外に辿り着くだろう。
作戦としてはこうだ。まずは旧下水施設を通り、エリア外に向かう。単純明快だろう?実にシンプルだ。しかも万が一にも人目に付かないようにと、夜中に行動を起こす二段構え。我ながら完璧じゃないか?まあ、エリア外に行った後が大変なのだが、それはまた追々考えるとしよう。
暗い下水道の中を、我々は明かり無しで進む。だってほら、力を使えば夜目だって利くからさ、俺たちって。
ガランッ
と前方で物音。
「ガストレアか?」
呟く。
可能性はある。地下はモノリスの影響を受けにくいため、はぐれガストレアが侵入してもおかしくはない。
「私が先行しましょう」
ヒューカがそう提案し、カンテラに火を灯す。夜目が利くとはいえ、やはり明かりがあるのと無いのとでは視界が段違いだ。
「気をつけろヒューカ、相手は未知数だ」
「わかっているとも、同士」
「全隊行進止め!しばらくそのまま待機の旨、各自後方に伝えられたし!」
号令をかけ、後列を止めた俺は、ヒューカの背中を見守る。
『のわーーー!!!!刃を収めるのだ!!!!妾のことが分からぬのか!!!!妾だ妾!延珠だぞヒューカよ!生きていたのだな!』
あー、また頭痛の種が増えそうな気配。
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