澄み渡る青空、陽の光は心地よい暖かさで降り注ぎ鳥達のさえずりが心にしみ渡る、そんな日のこと
トレセン学園から程近い河川敷に彼女はいた。
「ふわぁ〜…あ〜良い天気だね〜、こんな日を釣り日和って言うんだね〜」
「ニャー」
隣に座る友人との一方的な会話を楽しみつつ釣り糸を垂らす。
彼女の名前はセイウンスカイ、この空のように澄み渡る空色の芦毛のウマ娘だ。現在絶賛サボり中、トレーナーの目を盗み没収されていた趣味の釣り道具を持ち出して河川敷までやって来ていた。そんな気まぐれな性格をしているが、彼女のレースへ掛ける思いは本物である。
「こんな良い天気なのにトレーナーさんったらやれトレーニングだの勉強しろだのうるさいんだよ〜?」
「ミャー」
…多分、いや、きっと本物である。
「こういう日はのんびり釣りをするのに限るよ〜、何か釣れたら持っていくかい?」
「ミャーオ」
「おお!そっかそっか〜、なら頑張って釣らないとね!」
————————————
「…う〜ん、今日は調子が悪いかも?」
「ニャ~…」
しばらく猫と共に釣りに勤しんでいたが、今日は一向にアタリが来ない。
「時間的にもそろそろトレーナーさんに見つかる頃合いだしな〜…まっ、君のためにもセイちゃんは時間いっぱいまでやりますよ〜!」
「ニャーオ!」
「あ〜ぁ、いっそのこと雨でも降ってくれたらトレーニングはお休みになるのにな〜…まぁ、こんな晴れ渡ってて雨一つ降りそうにない天気じゃ——ドガッシャァァアアン!!!
「うわぁぁああ!?!?」
「ミ”ャーー!?」
そんな彼女の近くに降ってきたのは雨——ではなく、謎の物体だった。
「なになに!?一体なんなのさ?」
段々と舞い上がった土埃が晴れ、視界が鮮明になっていく。
「…え…っと……」
「シャー!」
土埃が完全に晴れると、落ちてきた
「…うん…まぁ……あー…そうだよね〜…そんな日もあるよね〜…うん」
セイウンスカイは空を仰ぐ
雲一つない青空
下を向く
かなりの高さから落ちてきたであろう
再び空を仰ぐ
夏が終わり、秋も深まっていく事を感じさせる空が続いている。
そして下を向く
通常空から降ってくるものでは無い
「…」
「ニャ~?」
セイウンスカイはどこか諦観したような、表情が抜け落ちた顔になっていた。
「に、にゃはは〜…セイちゃんも運がいいな〜、まさか空から
快晴の空からの落し物はセグウェイだった、そう、あのセグウェイだ、人が乗るやつ
普通空からセグウェイが降ってきたら….いや、普通ならばそんな事は有り得ないが、それでももし降ってきたのだとしたらもっと狼狽えるだろう、だがセイウンスカイは見てしまった、そのセグウェイに書かれていた黄金に輝く『564』の数字を…
「触らぬ神に祟りなしってね〜…セイちゃんは何も見ていませ〜ん…なので何も知りませ〜ん」
一瞬で面倒くさい事になると直感したセイウンスカイは自分に言い聞かせるようにその事実から目を逸らした。
「さ〜てと…魚釣りに勤しみますか〜」
「ニャー」
空からセグウェイが降ってきた事実などハナからなかったかのように再び釣竿を握り川に糸を垂らす。
「はぁ〜…空から降ってくるにしてももっと良いものが降ってきてくれれば良かったのにな〜…例えば〜…マグロとか——きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!
うえぇぇぇええええええええ!?!?!?
上空からの再びの落下物、その瞬間頭に強い衝撃が走り、セイウンスカイの意識はそこで途絶えた。
———————————————
「いったたた…いったい今日はどうなって…る…あ、あれ?」
あの衝撃からどれだけ時間が経ったであろうか、先に目を覚ましたのはセイウンスカイだった。
「あー あー! あ〜…あれれれ?声違くない?」
だが、真っ先に自分の声がまるで赤の他人かのようになっている事に気が付く。
「…っていうか!上から落ちてき…た…人……えぇ…」
衝撃の元凶、上から落下してきた人物はすぐ隣で伸びていた。
「…私?」
だが、セイウンスカイが目撃したのはすぐ隣に横たわる自分自身の姿だった。
「…幽体離脱ってやつですか……ってそんな事言ってる場合じゃなくて」
一瞬、本気で幽体離脱だと考えたが流石にそれは無いだろうと思い川に近付いて水面を覗く。
「…えぇ」
水面に反射する自分の顔、だがそこに写っていたのは見慣れた顔ではなかった。
透明感があり紫に見える芦毛、可愛らしさと優雅さを兼ね合わせた上品な顔立ち、右耳の元に着いている青いリボン…..もちもちしていそうなほっぺた…
「……こんな事って——
「ゴォルドシィィィイイイイイッッップウゥゥゥウウウッッッ!!!」
「ひぃッ」ビクッ
突如として背後から響き渡った雄叫びに身体を震わせる。
「今日という今日は許しませんわよ!!今まで散々遊ばれてきた恨みを今日こそは返して差し上げます!!今までは
ついさっきまで伸びていたはずの彼女…
(あー…やっぱり)
それを見たセイウンスカイはこの状況がどういったものなのかがほぼ理解できた、いや理解したくなかったし理解できるものでもなかったが、理解するしか無かった。
今の
「あ〜、もしも〜し?
「えっ?…って、ぇぇええええええ!?!?わ、わたくし!?どうして目の前にわたくしがいますの!?」
「まあまあ〜、取り敢えず今の自分を体を見てみなよ」
狼狽える
————————————
「こ、こんな事が…私がセイウンスカイさんに…?」
水面を覗くメジロマックイーンがセイウンスカイとなってしまった自分の顔をぺたぺた触りながら呟く。
「セイちゃんにも、どうしてこんな事になったのかは〜……原理はさておき、原因は分からなくはないかな〜」
困り顔のメジロマックイーンinセイウンスカイが答える。
「ぅぐッ…..申し訳ありません」
それに対してセイウンスカイinメジロマックイーンが耳を垂らしながら謝罪をする。
「まあまあ〜、まさか 《入れ替わり》 なんて事が本当に起こるとは思わなかったし、マックイーンさんの状況から考えるに多分
「…えぇ..そうではあるのですが….」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ではトレーナーさん、本日も宜しくお願いしますわ」
メジロマックイーンは名家メジロ家の御令嬢であり、そのメジロ家の悲願である天皇賞の制覇を目標に掲げ、日々トレーニングに取り組んでいる、現在はチームシリウスのエースとしてチームメイトやトレーナーと騒がしくも楽しい生活を送っているが….甘いものに目がないので最近は体重が微増中である、あと意外と単純というかチョロかったりする。
「あ、あの!マックイーンさん、お兄様、ゴールドシップさんがいないみたいだよ?」
「あら?…本当ですわ、先程までいましたのに」
チームメイトであるライスシャワーの言葉で周りを見渡すと同じくチームメイトのゴールドシップの姿が見えない事に気が付いた。
ゴールドシップはチームシリウスに所属しているマックイーンと同様の芦毛のウマ娘である、性格に難あり…というかあり過ぎる程に破天荒な人物なため、制御するのは至難の業、トレーナーはおろか長い事付き合ってきた(一方的に絡まれてきた)マックイーンでさえ完璧に彼女を理解する事は出来ないでいた。
「まったく…あの方は本当に…..はぁ、まぁそのうちふらっと帰ってくるでしょうし先に私達だけでも」
ドアガバァァァァン!!
「お?トレーナーも来てるじゃねぇか、悪い悪いゴルシちゃんとした事が忘れ物しちまって火星まで取りに帰ってたんだよ」
なんとも分かりやすい擬音でドアを蹴り開けて来た人物がゴールドシップ、黙っていれば美人である、黙っていれば。
「ゴールドシップさん!…またそんな事言って何か悪巧みでも企てているんじゃありませんこと?」
「そんなっ!…マックイーンはあたしを信じてくれないんだな….うぇーんうぇーーーん」
「なっ!?なにも泣くことないじゃないですか!」アワアワ オロオロ
どこからどう見ても嘘泣きをしているゴールドシップとそれに気付かず慌て出すメジロマックイーン….と、その二人のやり取りを生暖かい目で見つめるチームメイト&トレーナー
「で、その忘れ物とやらはなんなんだ?」
そんな二人の茶番劇を横目にそう切り出したのは同じくチームメイトのナリタブライアンだった。
「おっ、よくぞ聞いてくれたブライアンよ」
「嘘泣きでしたの!?」
ゴールドシップは嘘泣きをやめ、ケロッとした顔でそう言うと背後から《あるもの》を持ち出した。
「…セグウェイ?」
「その通りだマックウィーーーンッ!」
ビシッと指をさしながら上機嫌になるゴールドシップ
「ヒトを指さしてはいけませんわよ」
「うぉぉぉおおお!!カッコイイねこのセグウェイ!!」
「おお!チケゾーお前には分かるかこの『ゴルシちゃん号Mark.06』のカッコ良さ!イカしてるだろ?」
「Mark.06!? Mark.01~05がどんなのかは分からないけどなんかカッコイイ!」
「Mark.01~05は…っ!…マックイーンに食べられちまった…アイツら!セグウェイなのにっ!!」
「そ、そんな!?…セグウェイであるにも関わらずその本懐を理解されずにマックイーンに食べられちゃったなんてっ…う”わ”ぁぁぁぁ!!なんて可哀想な”ん”た”あ”あ”あ”あ”!!!」
「はぁ…もうどこからツッコんで良いのか分かりませんわ…」
ゴルシの話に乗っかってきたのはウイニングチケット通称チケゾー、マックイーンとは毛色は違うが彼女もまた単純(ちょろい)だったりする。
「マックイーンさん…」
「お前…」
「「大変だな(だね)」」
「そう言うのならもう少しあの方達の相手をして下さいます!?」
なんだかんだで騒がしくも楽しいチームである。
「それで…何で
「マックイーン、お前も乗ってみればその理由が分かる!」
「えぇ…嫌ですわ」
「何でだよ!お前は知りたくないのかよ!エデンのその先にある光景をよ!」
「私が知りたいのは貴女がソレを持ってきた理由ですわ」
「ちぇっ…つれねぇなぁマックちゃんは、まぁいいから乗ってみ」 ヒョイッ
痺れを切らした(一方的だが)ゴールドシップがマックイーンの脇から手を出して持ち上げ、無理やりにセグウェイへ乗せる
「きゃっ!…何するんですの!?」
「いいからいいから」
「ちっとも良くないですわよ!」
「ほら、ここの赤いボタン押してみろよ」
「絶対自爆装置ですわ!こんな怪しいボタン押せるはずないでしょう!?」
セグウェイから逃れようとするマックイーンとそんなマックイーンを逃すまいと抑えるゴールドシップ、他のメンバーはジリジリと後方へと後退る
「皆さん!?何で逃げてますの!早くゴールドシップさんを取り押さえて下さい!」
「ごめんね…マックイーンさん…でも今のゴールドシップさんを押さえ付けられるヒトは多分ここにはいないんじゃないかな」
「…右に同じだ」
「たしかに…何だか近付き難い覇気を感じるよ」
「薄情っ!!皆さん薄情ですわ!?」
『ゴールドシップ、そろそろ離してあげたら?』
それに見兼ねたトレーナーが背後からゴールドシップに近付く
「あ、お兄様…」
「ト、トレーナーさんっ!...ぅうっ.....やはり貴方は優しいですわね!流石私と一心同体の——
「おっと!足が滑ったァ!」
ドッゴォォォォオッ!!
バリーン!!
キャー!! ウワー! ナニガアッタンダー! ワケワカンナイヨー!!
「トレーナーさぁぁぁぁぁぁあんん!!!」
「お兄様ぁぁぁああ!!!」
ゴールドシップの肩に手を置いたトレーナーはそのゴールドシップの鮮やかな後ろ蹴りをくらい吹っ飛び、ついでに窓を突き抜けて外まで飛んで行った、ちなみにここは地上3階である。
「ちょっとゴールドシップ!流石にやり過ぎですわよ!トレーナーさんは人間、あんな力で蹴られたら怪我じゃすみませんわよっ!!あとここ3階!!」
「大丈夫だって、アイツ何百回もアタシの飛び蹴りを食らってるし後ろ蹴りくらいじゃあどうってことねぇ、多分この高さなら五点接地転回法で無傷だろ」
「貴方からの信頼って怖いですわ!!」
「よしっ!ならマックイーン!お前とトレーナーは一心同体、お前もアイツに負けてらんねぇな!スイッチオンッ!」ポチッ
なんだかんだ言いながらもマックイーンを離さなかったゴールドシップは、遂にセグウェイに付いている赤いボタンを押した
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!このヒトやりましたわ!遂にやりやがりましたわ!!」
セグウェイから謎の駆動音と光が発せられる
「…あぁ、もうおしまいですわ…最後に…..最期に駅前のケーキ屋さんの限定モンブランが食べたかった…..ですわ…」
既に目が据わっているマックイーンだが、皆が思っていたような爆発などは起こらなかった….ただ
「…あら?あらららら?ってぇえええええ!?このセグウェイ浮いてますわ!?!?」
セグウェイが飛んだというか浮いた
「ちょっとゴールドシップ!!浮いてますわよ!!というか、どういう原理ですのコレ!!」
「あ?知らね?」
「はぁぁぁああああ!?」
「アタシも火星で拾ってきただけだし、でもすげぇだろ!!」
「どう考えてもオーバーテクノロジーですわ!!そんな未知の道具持ってこないで下さいまし!!」
「ブルボンの勝負服の腰のアレと一緒だろ」
「確かに!!アレも!!どういう原理なのか分かりませんが!!」
「なら平気だろ」
「…はぁ、これ以上ツッコミを入れたら私の身が持ちませんわ…というか、どうやったら降りれますの?」
「え?知らね?」
「はぁぁぁああああ!?!?」
「そこらへんのボタン押しまくったら降りれるんじゃねぇか?」
「このあんぽんたん!!こんな得体の知れない道具を無闇に弄れる訳ないでしょう!?」
「でも、やってみなくちゃ分からねぇだろ」
「その前にこんな事になるって知っていたのなら貴方もコレ乗ったんでしょう!その時はどうやって降りたんですの!!」
「あぁ、それもそうか…アタシん時はなぁその青いボタン——
「コレですの!!」ポチッ
「は…押してないんだけど」
「え?」
突如セグウェイの駆動音が増し、発せられる光量も増えた
「あぁ、やってしまいましたわ…これで本当の本当に終わりのようですわ…」
「おお!すっげぇなぁマックイーン!アタシでさえ押すのを躊躇ったボタンをいとも容易く押しやがった!」
「…ふふっ…ゴールドシップ…もし私が生きて帰ってきたら覚悟しておいた方が良いですわよ…」
「あの…マックイーンさん?」
「…何ですのライスさん?トレーナーさんが吹っ飛んでからセリフが無かったからもう皆さん部屋から避難していたんだと思っていましたわ…」
「ま、マックイーンさんの目に光がない…」
セグウェイの駆動音と光量はその間も更に増大し続けていた
「離れていた方が良いですわよ…どうなるのか分かりませんし…」
「あ、あの…普通に飛び降りるんじゃダメなのかな?…って」
「え?…ってああ!たしかに!!その通りで——ヒュッ
バリーン!!
「マックイーンさぁぁぁぁああんん!!!」
その簡単すぎる事実を告げられた瞬間にマックイーンの乗ったセグウェイは溜まったエネルギーを解放するように急加速しトレーナーと同様窓を貫いて星となってしまった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…で、こうなったと」
「はい…その通りです…」
その後、上空で機能が停止したセグウェイと共に落ちてきた先にたまたまセイウンスカイが居た、という事だった
「う〜ん…にわかにも信じられないような話だけど実際に体験しちゃってるしな〜」
「…この《入れ替わり》が件のセグウェイの謎の力によるものなのか、それとも激突によるものなのかも分かりませんわ…でもとにかく、何の関係もなかったセイウンスカイさんを巻き込んでしまって申し訳ありませんでした!」
セイウンスカイとなってしまったメジロマックイーンが頭を下げる
「いや〜、マックイーンさんの謝ることじゃないよ、偶然に偶然が重なった結果だろうし…というかセイちゃんもトレーニングサボってここに居たのが悪かったしね〜」
「…この件に関してはメジロ家の持てる力を総動員してでも必ず解決してみせますわ!セイウンスカイさんと私が元の身体に戻れるよう!」
「あ〜、うん…まぁそんな気張らずよろしくね〜」
「はい!お任せ下さいですわ!」
————————————
「う〜ん、これからどうしよっか〜?」
「そうですわね….」
一通り現状の確認が出来たところでこれからの話しとなる。
「この状況を他の方々に伝えるかどうかも考えものですわ」
「本当なら伝えた方が良いんだろうけどね〜」
「そうですわね…しかしメジロ家の人物に伝えようにもこの姿だと…」
「やっぱり厳しい?」
「直ぐには厳しいかもしれません…なので明日にでも一緒にメジロ家のお屋敷に来て頂けませんか?」
「それくらいなら全然いいよ〜、戻る方法があるかもしれないしね」
「そうですわね、前例などは聞いたこともありませんが、試してみなければどうしようもありません」
「了解しましたっと…なら理事長とか生徒会にも伝えてみますか〜」
「…下手に広げると大変な事になりそうですからなるべく情報が漏洩しない方達に——
「おーーーーい!!マックイーーーーーン!!」
「「…」」ビクッ!
二人が恐る恐る振り返ると、河川敷の向こうから手を振って駆け寄ってくる人物が一人、この事件の元凶であり、二人の現状を最も知られてはいけない人物、ゴールドシップだった。
二人は顔を見合わせる
((
その共通した認識を頷き、確かめ合うとなるべく平静を保ちながら走ってくるゴールドシップへと向き合う。
「大丈夫だったかマックイーン?…と、おっ?ウンスじゃねぇか、お前もいたのか」
(大丈夫だったか?…ですってぇ!?よくもまぁそんな事言えましたわねこの方!!)
(まぁまぁ、今はまだ落ち着いて…)
「ぇぇっと…はい、大丈夫でした..わよ?」
隣のマックイーン(体はセイウンスカイ)から発せられる怒気を感じ取り、それを嗜めながらも何とかマックイーンぽい口調で答えるセイウンスカイ
「いやー、流石のアタシも瞬間移動並みの速さでマックイーンが飛んで行ったから心配になっちまってさぁ、悪かったなマックイーン!」
(そんな速さ飛び出しましたの!?私!?というかこの方本当に反省してますの!謝るノリが軽すぎますわ!!)ギュッ
(やばい…マックイーンさんの怒気が高まっていくのを感じる….っていうかめっちゃ怒ってる!)
レースの最後の直線を走っているかのように、歯を食いしばり握り拳を作っている姿に自分自身の顔でありながらも恐怖を覚えるセイウンスカイ
「そんで、お詫びにマックイーンが飛んでく前に言ってた駅前のケーキ屋の限定モンブラン、あれ買ってきてやるよ」
「本当ですの!?!?」
「ちょっ!…マッ…セイウンスカイさんも..あのケーキ好きな…んですの?」
「…ハッ!…ぇー……はい!す、すきなん…だ、よねー?」
「…ほ〜、ウンスも好きなのか」
「…は、はい」ダラダラ
「んじゃ、一緒にウンスの分も買ってきてやるよ、迷惑かけたみたいだしな」
「ありがとうございます….」
「じゃあ、アタシはモンブラン買いに行こっかな〜、戻ったらエアグルーヴに何言われるか分かんねぇし…じゃーなー!」
そう言ってゴールドシップは落ちていたセグウェイを回収し、走り去って行った。
「…はぁ〜…マックイーンさ〜ん?」
「…申し訳ありません、つい条件反射で…」
「スピード的には脊髄反射だったけどね…」
「うぅ…面目ないですわ」
「まぁ、何とか騙し通せたっぽいし結果オーライって感じかな〜」
「…こ、今度は気を付けますわ!例えスイーツの話題が出てこようとっ!」
「あはは〜…頑張ってね〜」
その後二人は軽くお互いの情報を交換し、トレセン学園へ戻ることにした。
————————————
トレセン学園、校門前
「どういたしましょう?…チームの皆さんには私の無事を伝えたいところではありますが…」ヒソヒソ
「う〜ん、中々にリスクがありそうだね〜…理事長やメジロの人達に説明しようにも、もう夕方だからねぇ」ヒソヒソ
「説明は明日にまわす事も出来ますが….生存報告は早くにしておかないと大変な事になりかねませんわ」ヒソヒソ
現在二人はトレセン学園の校門まで戻ってきたが、時間も時間なだけに寮に帰る生徒も多く端の方でヒソヒソと話し合っていた。中々見かけない組み合わせで、しかも二人とも校内でも有名なためか、意外と目立っている。
「あっ!マックイーンさーーん!」
「「ひゃいっ!」」ビクッ
だが、突然背後から声を掛けられ背筋を伸ばす二人。
「良かった〜、無事だったんだね…どこか痛いところとかない?」
振り返るとそこに居たのはライスシャワーだった。
「は、はい!特に怪我とかはありませんで..した….わよ?」
「?…そうなんだぁ、でも良かった…チームの皆でマックイーンさんを探してたんだよ?」
「…そ、そうだったんですかぁ〜…ですの?」
「マックイーンさん…本当に大丈夫?どこかぶつけたりしていない?...な、何かあったならライス、相談乗るよ?」
「ほ、ホントに大丈夫ですわよ!ちょうど近くにいたセイウンスカイさんに助けて頂いたので!」
(スカイさん!?ここでこっちに振りますの!?)
(いや〜、ごめんよ〜これ以上はボロが出そうで)
「そ、そうだったんだ...セイウンスカイさんありがとうございました!」
「ぅえ!?...っと.....ま、まぁ、たまたま近くにいただけだからー気にしないでー」
お互い普段は使わない言葉使いに四苦八苦しながらも何とか会話を繋げていく。
すると
「あー!セイちゃーん!」
「やぁっっと見つけましターー!!」
「あら、マックイーンさんとライス先輩...お疲れ様です」
「スカイさん!ヒトとの約束を放ったらかしにするとはどういう事なの!?」
学園の方から四人の人物がセイウンスカイ(中はマックイーン)の方へと向かって来た。
スペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダー、キングヘイロー、この四人とセイウンスカイ、他何名かを合わせ黄金世代と呼ばれている同期組で普段から良く一緒にいて仲が良いグループである。
(や、約束!?約束ってどういうことですの!?)
(あちゃ〜...そういえば今日だったっけ〜)
何のことか分からないマックイーンはセイウンスカイへと視線を向ける
「さぁ!早速行きましょう!寮の門限までには帰らないと」
「えっ...ちょっと....まっ.....いや力強い!」
結局、何も訳の分からないままマックイーンはスペシャルウィーク一行に引きずられて行ってしまうのだった。
————————————
〜マックイーン(体はセイウンスカイ)〜
学園からずっとスペシャルウィークに腕を引かれながら繁華街の方へと向かって歩いていくマックイーン
(ど、何処に連れて行かれますの?というかスペシャルウィークさん力強すぎですわ、全く解けない…)
「えぇっと〜…ど、どこに行くんだっけー?」
「ワーオ!ホントに忘れちゃったんデスか〜?」
「はぁ、スペシャルウィークさんが行きたいって言って、皆で今日行く事にしたんでしょう『スイーツバイキング』に」
「ス、スイーツ!?!?バイキング!?!?」
(い、一度は行ってみたいと…ゴクリ…思っていましたが….ゴクリ…今の私の身体はスカイさん…下手に食べて体重を増やさせてしまっては….ゴクリ…というか、バレてしまっては…ゴクリ)
「そうですよ、今日の放課後教室に集合って言っていたのにセイちゃん来なかったじゃないですか…皆待ってたんですよ」
「そ、それは…す、すみません」
「?…今日のセイちゃんは何だか元気がないデスか?」
「そ、そんな事ないですわよー!…ッハ..な、ないよー!」
「「「「わよ?」」」」
「ち、ちょっと間違えただけですわ!…ハッ!..だけ…です…はい」
「「「「ですわ?」」」」
(やってしまいましたわ….スイーツという甘い単語と、己との葛藤で口調が….バレてしまったら….スカイさん…申し訳ありません..)
「おーっほっほっほっほ!遂にスカイさんも私のような一流のウマ娘に憧れを抱くようになりましたのね!!口調から真似るなんてとても良い心掛けよ!」
「!?…じ、実はそんなんだよねー…ぇー、キングの一流を見習おうかなー…なんて」
「やっと貴方にもキングの素晴らしさが伝わったのね!おーっほっほっほ!」
セイウンスカイから教わっていた身近な友人達の情報や呼び方などを何とか駆使してピンチを切り抜けるマックイーン
(口から出任せで何とか乗り越えましたが…ごめんなさい…スカイさん元の体に戻る頃には色々な設定が付け加えられているかも知れませんわ…)
「あら…珍しい事もあるのですね」
「へー!セイちゃんはキングちゃんに憧れを持つようになったんだね!」
「誰かに憧れを抱くのは良いことデース!」
「っと、着いたみたいだよ」
そんなこんなで話をしているとお目当てのスイーツバイキングのお店に到着した
(ですが!ここらが私の戦い!どのようにバレないように会話を弾ませ!スイーツを欲する自分への自制心を保ち続けられるかが勝負!!メジロの名にかけて、これ以上スカイさんに迷惑を掛ける訳にはいきませんわ!どのようなスイーツを目の当たりにしても絶対にっ!!私は挫けませんわ!見ていて下さいスカイさん!この身体、元のまま完全な状態でお返しして見せますわ!!)
一人強い闘志を滾らせ、マックイーンは戦場へと足を踏み入れるのだった。
———————————————
パクパクですわーーー!!!
あ、ダメだったようです
「す…凄いでぇぇすぅぅ……ス、スペちゃんと互角以上に渡り合って…ケフッ」
「セイちゃんってあんなにも甘味が好きだったんですね、驚きです」
「....ウプッ...スカイ、さん.....貴方が...ナンバーワンよ...ウッ」
「わぁ凄い!セイちゃんもこんなにもスイーツ好きだったんだねっ」
(美味しい!美味しすぎますわ!!こんなの手を止めろという方が不可能ですわ!!スカイさん、貴方の身体を元の状態でお返しするのはもう不可能の域まで来てしまいましたわ...ならばっ!私に出来るスカイさんへの唯一の手向けはっ!!ここでスペシャルウィークさんを下し!このスイーツバイキング戦争の勝者としての名誉を送る事だけですわ!!)
〜裏方〜
「ま、まだ伸びるのかっ!おい!厨房!今日はヤバいやつが来るって予め言っておいただろう!供給が追いついてないぞ!どうなっている!?」
「で、ですがチーフ!今日のマークは一人だけだったはずです!....あんなのがもう一人いるだなんて聞いてません!!」
「ああ!もういい!!手の空いている奴は全員厨房に回れ!」
「大変ですチーフ!今日の分の材料がもう底を尽きそうです!!」
「なんだとっ!?....こんな、こんな事がぁぁぁああっ!!」
「「ご馳走様でした!!」」
———————————————
〜メジロマックイーン(体はセイウンスカイ)〜
(あちゃ〜...これはやっちゃったかな〜?)
食べる気満々のスペシャルウィークに引きずられて行った自分の体を見届ける
(....まぁ、何とかしてくれるかな)
淡い希望をマックイーンに託し、自分の現状に向き合う
「セイウンスカイさん、連れていかれちゃったね….」
「…そ、そうですわね」
セイウンスカイが連れていかれ、ここに残ったのは自分とライスシャワーだけだった。
すると
「おっ、無事だったのか」
「無事て”よ”か”った”あ”あ”あ”ーー!!」
マックイーンの捜索隊だったブライアンとチケゾーもちょうど帰ってきて合流した
「…ぇっと、ご心配お掛けしましたわ?」
「まぁ、怪我などをしなかったなら良い」
「う”わ”あ”あ”あ”あ”あ”ーー!!」
「うるさいぞ…何時まで泣いてるつもりだ」
「えっとぉ、じゃあお兄様のところに行こっか」
(本当は断りたいんだけど〜…無理そうかな..)
「そうだな」
「そ”う”し”よ”お”お”〜」ズビッ
「えぇ、そうしましょうか」
(怪しまれないようにしなくちゃね…)
なるべく怪しまれないように気を付けながらさっさと寮に戻ろうと考え、セイウンスカイも他のメンバーの後を付いて行った。
————————————
〜トレーナー室〜
「お兄様、ただいま」
「…今帰った」
「た”だ”い”ま”ー!…ズビッ……トレーナー!」
「只今戻りましたわ〜」
『おかえり、皆』
部屋に入ると奥の机にこのチームシリウスのトレーナーが座っていた。
(あれ?このヒトってこの部屋から地上まで蹴り飛ばされたんだよね?傷一つ付いていないような…)
部屋の奥を見てみると窓が二枚割れていて、新聞紙などで軽く塞がれていた
「あれ?お兄様、他の子達はどうしたの?」
『他の子達もマックイーンを探しに行っていたから今発見の連絡を入れたところ』
「そうなんだ」
『おかえり、マックイーン…どこか怪我したところとか痛めたところはない?』
(ふ〜ん…まぁ、この人がシリウスのトレーナーさんなんだ〜)
『…マックイーン?』
「えっ?..っあぁ!うん!大丈夫....ッですわ!!」
「マックイーンさん?」
(あっぶな〜....気を抜くと口調忘れそうになるなぁ)
『本当に...?』
「ええ!もちろん平気ですわ!おーっほっほっほ!」
『.....ブライアン、担架の準備を』
「ああ、任せろ」
(あれれれ?セイちゃんやっちゃいました?お嬢様系のヒトって皆高笑いするものじゃないの?....キングしかしているところ見た事ないなぁ......やったかなぁ)
「いっ、いや!本当に大丈夫ですわ!ジョークですわ!そう!メジロジョークですわ!」
『本当に、本当か?どこか悪いなら隠さずに言ってくれよ頼むから』
「えぇ!勿論ですわ!」
トレーナーはどこか訝しみながら、部屋にある冷蔵庫を開け、何かを取り出した。
『.....なら、コレをあげるよ』ヒョイッ
「っと....コレは...シュークリーム?」
トレーナーが投げて寄こしてきたのはシュークリームだった。
『そうだ、君が好きな駅前のケーキ屋さんのシュークリームだ』
(?…いきなりお菓子をくれるとは〜…シリウスのトレーナーさんも中々変わった人っぽいですな〜)
「あ、ありがとうございます…後で頂きますわね」
『!?!?!? ブライアン!担架!!』
「バッチリだ!!」
『ライス!!至急保健室に連絡!あのヤブ医者でも良い!誰でも良いから診てもらえるヒトを!』
「連絡入れてあるよ!お兄様!」
『チケゾー!メジロ家の屋敷まで!もし無理そうならメジロ家に連絡入れられる人を探してマックイーンの異常を知らせてくれ!!』
「おっけー!ひとっ走りするよぉおおお!!!」
(うえぇぇぇぇぇえええ!?!?!?)
「ちょちょちょちょ!!ちょっと待って!!どうしてこうなったの…ですの!!」
『マックイーンがお菓子を貰って「後で頂きます」なんて言うはずがない!!』
「普段ならその場で貪り食うな」
「「…」」コクコク
(マックイーンさんスイーツの事になると品の欠片も無くなるの!?)
「きょっ、今日はたまたまですわ!たまたまお腹があまり減っていないだけというか…少し疲れているというか…」
『本当か?マックイーン、無理しなくて良いんだぞ…俺でも、チームの皆でも、メジロ家の人達でも、誰でも良いから…何か異常があったなら相談するんだぞ?』
(うぅっ…そう言われると入れ替わりの事も話したくなるけど…ここはマックイーンさんとしっかり話し合ってからだよね…うん)
「えぇ、もし何か異常が出たらその時は相談しますわ」
『…よし、なら良いんだ』
何とか一大事になる最悪の事態は避けれたようだ。
『皆、今日はもう疲れただろうから帰っていいぞ、また明日からトレーニングだ…というか、明日は休みだったか…明後日からだな』
「うん!じゃあ、さようならお兄様」
「おやすみ〜トレーナー!」
「…またな」
(ほぉ、何とか凌ぎきれた〜…疲れたな〜)
「あっマックイーンさん、今日も…大丈夫?」
「えっ、あっはい…」
「わぁ!ありがとう!」
「い、いえ…」
(?…なんの事)
『っと、そうだったマックイーン』
「っえ?…はい?」
『一つだけ新しいトレーニングについて何だが良いかな?』
(おっとぉ?…セイちゃんこれはラッキーと言うやつじゃないですか〜…シリウスのトレーナーさんは色んなトレーニングをしているって有名だからね…今回はセイちゃんも巻き込まれた立場ですし、一つくらい聞いてもいいよね〜♪)
「えぇ、構いませんわよ」
『おお、助かる…コレはさっきゴルシに蹴られて窓を突破って落ちて五点接地転回法で受身をとった時にこれはトレーニングに生かせるんじゃないかと思いついたトレーニングなんだけどな…』
「…」
(やっぱりこのヒト……怖いかも…)
————————————
〜セイウンスカイの部屋〜
(あああぁぁぁぁぁああーーー!!!やってしまいましたわーーー!!!)
セイウンスカイinマックは自室のベットの上でもがいていた。
(調子に乗って食べすぎましたわぁぁぁぁああ!!!これでは、スカイさんに合わせる顔が有りませんわ!!!)
己のケーキバイキングでの過ちにどうやら気が付いたようだ。
(これは……本来なら禁術であるメジロ式ジャンピングスライディング土下座を使用する時かも知れませんわ…)
それはメジロ家に代々伝わる大技らしいが詳しい事は割愛
(…はぁ、本当にスカイさんには迷惑ばかり掛けて申し訳ないですわ…)
「…」チラッ
誰も居ない隣のベットを見る、現在セイウンスカイのルームメイトは長期間の遠征中で部屋には居ないそうだ
(…部屋で一人というのも久しぶりですわね…普段はイクノさんがいて…たまにライスさん……ライスさん!?!?)
マックイーンはガバッと立ち上がると、スイーツを食べてお腹いっぱいになり、回転が遅れている脳みそをフル回転させ思考を巡らせる。
(今日は金曜日…明日は休み……ライスさんが私の部屋に ついてくついてく するのは…金曜日…)
嫌な汗が流れる
(い、いや、大丈夫ですわ!イクノさんも居ますし、変な誤解をされる事はないはず…ない…はず…)
ライスシャワーはシリウスでのトレーニングでの一環でマックイーンに付いていきスタミナを鍛えたりするなどの事をしていたのだが、その真面目さと少しズレた感覚により、マックイーンの部屋まで付いて行き、一緒に寝る事などがあった、いつしかそれはトレーニングではなくシンプルにマックイーンの部屋へのお泊まり会へと進化していたのだ…たまにゴルシも来たりする。
(流石に今日はないはずですわ…多分…きっと…そのはず…ですわ)
〜マックイーンとイクノディクタスの部屋〜
(…どういう状況?)
「それでね、その後お兄様がゴールドシップさんに蹴られて飛んで行っちゃったの」
「ほう、それはまた…トレーナーさんは大丈夫だったのですか?」
「うん!かすり傷一つ付かなかったみたいだよ」
「それはそれは…正に鉄の体ですね」
「ねっ!マックイーンさん!」
「…はい」
(どうしてこうなったんだーーー!?!?)
〜数分前〜
(え〜っと…ここかな)
トレーナーから新しいトレーニングの話を聞いて少し帰りが遅くなったセイウンスカイ
(それにしても…あのトレーナーさんやるねぇ、まさかアレからあんなトレーニングを思い付くなんて…)
ドアノブに手を掛ける、扉の横にはメジロマックイーン•イクノディクタスという名札が掛かっている。
(まぁ、今日はさっさと眠って明日に備えましょうかね〜)
ガチャ
「只今戻りましたわ〜」
「おや、マックイーンさん少し遅かったですね、お帰りなさい」
「マックイーンさん!お疲れ様!」
「失礼しましたわ〜」
ガチャ
(ふぅ〜…え〜っと名札名札……うんうん間違いないよね….)
ガチャ
「只今戻りましたわ〜!」
「?…忘れ物ですか?」
「どうかしたの?マックイーンさん」
(こっちのセリフだよぉぉおおお!!!何でライス先輩いるの!?)
「えぇ〜っと…ライスさん?」
「?…どうしたの?」
「どうしてこちらに?」
「あれ?…さっきマックイーンさん今日も良いよって…もしかしてライスの聞き間違い!?ご、ごめんなさい!すぐ帰ります!」
(!?…もしかしてさっきのトレーナー室のやつって…これかぁ)
トレーナー室で解散する時にライスシャワーが何かの確認を取ってきたことに合点がいった。
「い、いえ!大丈夫ですわ!私も少し疲れていたみたいですわ!どうぞどうぞですわ!」
「ほ、ほんとう?」
「はい!是非!」
「よ、良かったぁ…」
〜回想終わり〜
(まさか、ライス先輩がマックイーンさんの部屋に遊びに来るだなんて…というか、そろそろ寮の門限近いけど良いのかな?ライス先輩って確か私と同じ美浦寮だったはず…)
「ふぁ〜…っふ…失礼、そろそろ寝ましょうか」
「うん、そうだね…ライスも眠くなってきちゃった」
(あっ、もう戻るのか…)
「そ、そうしましょうか…では、ライスさん」
「うんっ、お休みマックイーンさんイクノディクタスさん」
「はい、お休みなさい」
(え?…)
一緒に腰を掛けていたベッドに入っていくライスシャワー
(…う〜ん……これは…一緒のベッドで共に夜を明かす…あー…ま、まぁ、うん…マックイーンさんとライス先輩がそういう関係って…事だよね?…そう解釈して良いんだよね!?これは!!)
「マックイーンさん?電気消しますよ?」
「ひゃっ、はい!」
部屋の電気が消され真っ暗になる
(悪いこと知っちゃったかな?…でもまぁ、不可抗力ってやつですかね…)
セイウンスカイもライスの入っているベッドに潜る
(ああ…でも、暖かい…ヒトの温もりってやつかな?…ライス先輩…小さいし、暖かい…久しぶりかも……こう…い…う…の…)
そうしてセイウンスカイは深い眠りの中へと落ちていくのだった。
一方
〜セイウンスカイの部屋〜
(あーーー!!!今っ!今とんでもない勘違いをされたような気がしますわ!!メジロの勘がそう叫んでいますわ!!)
お嬢様は全く落ち着きなく過ごしていた。
(それは私だって勘違いしますわ!一緒のベッドで共に夜を明かすなんて!!これはもう絶対誤解されましたわ!!334%誤解されましたわ!!!)
ナンデヤ!ヴィクトリーズカンケイナイヤロ!
「何でですか!!ヴィクトリーズ関係ないですわ!!」
一人ツッコミのはずが、どこかの白い稲妻の雷鳴と共鳴したような気がする。
バンッ!!
「ウンス!こんな時間に騒ぐんじゃないよ!」
「ひゃいっ!すみません!」
バタンッ
「…」
寮長からの本物の雷を受けて一旦冷静になる
(はぁ、今日はもう寝ましょうか…)
部屋の電気を消してベッドに潜り込む
「暖かい…ですが、やはり一部屋だと人肌が恋しくなりますわ…」
そうしてマックイーンも深い眠りへと沈んで行った。
〜翌朝〜
「う〜ん…あぁもう朝か…ってあれ!?」
目が覚めたセイウンスカイは慌ててベッドから飛び出ると部屋にある全身鏡の前へと立つ
「私だ…」
そこに映っていたのは
「元に…戻ったの?」
自分の体が元に戻っている、もとい自分の精神が元の体に戻っている事に気が付いた。
「いや、まさか夢だった?…夢オチですか〜?」
だが、それも違うと直ぐに実感した…
「身体が…重い?」
その原因も直ぐに思い付く
「マックイーンさん…食べたな〜…」
前日の事、もし夢でなかったのならこの体の重さ、そして妙にムカムカする胃袋に合点が行くだろう。
「はぁ…まぁ戻れたならいいかな」
戻れたならまぁいいかと思い、全身鏡から向き直ると机の上になにか箱が置いてあることに気が付いた。
「?…なにこれ?」
箱を開ける
「…モンブラン」
そこに入っていたのはモンブランだった、そしてそれともう一つ寄せ書きがあった
『昨日は巻き込んで悪かった、それとマックイーンもお前に迷惑掛けたな、お詫びに二つ入れて置いたぜ』
「….はぁ……今は二つも入らないよ…」
〜マックイーンのイクノディクタスの部屋〜
「…さん…ーンさんっ」
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
「…ぅ?」
カーテンの間からの木漏れ日で目が眩んだ。
「マックイーンさん、朝だよ」
目を開けると週末になると必ず自分の部屋にいる学園の先輩の小さな顔が見えた。
「?…ライスさん?何でこの部屋…に…っ!」
「あら?…えっ?…戻ってる…戻ってますわ!」
マックイーンも自分の体が戻っている事に歓喜する
「マックイーンさん、朝からどうしたのですか?」
自分より先に起きていたルームメイトの声が聞こえた
「あ…なんでもありませんわ…おはようございます、ライスさん、イクノさん」
「?…うん、おはようマックイーンさん」
「おはようございます、マックイーンさん」
(昨日のは…夢だった…のでしょうか?)
こちらも昨日のことは夢の中の話だと考える、だが
「やっぱりマックイーンさん、昨日のでどこかぶつけたりしちゃったの?身体に何か変なところない?」
その言葉でやはり昨日の体験が夢でない事を知った。
「いえ、なんでもないですわ…大丈夫ですわよ」
どちらにせよ、元に戻れたのなら結果オーライだと思い直す
「そうだ、マックイーンさん、今朝冷蔵庫を開けたらこれが入っていたのですがマックイーンさんの入れた物ですか?」
「え?」
イクノディクタスがそう言って白い箱を差し出して来た。
「これは…」
よく知っている箱だ、行きつけの駅前のケーキ屋さん…
「…」パカッ
開けてみると限定モンブランが三つ、それと寄せ書きが一枚
『昨日は悪かったなマックイーン、お詫びにモンブラン買っておいたぞ、お前の分とイクノの分、後どうせいるだろうからライスの分だ。あと忠告しておくがスイーツの食べ過ぎには気を付けろよ。』
「…はぁ…忠告、しかと受け取りましたわ」
〜トレセン学園校門前〜
「おはよ〜マックイーンさん」
「おはようございます、セイウンスカイさん」
「どうやら…」
「えぇ、元に戻れたようですわ」
「それにしてはやけに身体が重いな〜…なんて」
「も、申し訳ありませんでしたわ!!」
「にゃはは〜、いいよいいよ〜私の場合すぐ痩せられるから〜」
「うぐぐっ…羨ましいですわ」
「まぁまぁ…あっ、そうだ…ライス先輩との事は誰にも言わないから安心して」
「いやっ!ちょっと!セイウンスカイさん!それは誤解なんですの!!」
「え〜…まっさか〜….だってぇ、同じベッドでぇ」
「いやぁ!言わないで下さいまし!」
「あっはは〜、大丈夫だって、誰にも言わないから〜」
「だから誤解なんですの〜〜〜!!」
それから二人は一緒に過ごす時間が増えた
時には一緒にスイーツを食べ、時には例の事件の際、川に流された釣竿を新しく買いに行ったり…
それと、人肌の温もりを求めて、マックイーンの部屋に泊まりに来る人数が一人増えたとかなんとか…