アジト
夜の屋敷、月の光だけが眩しい。
三人の年端も行かぬ若い裸の女性、それは無防備なドミニクの幼馴染とクラスメイト、いや彼のよき理解者とも言うべきか。
その中でも彼を慕い、愛し、全てを投げ出す覚悟で付き従ったものだけが許される花園、特にドミニクと親交の深い関係だったミゼットは、誘拐された二人とは違い、自らの意思で彼に身を捧げた。
ドミニクも彼女の前では無警戒であった。
普段は絶対に弱さを晒すことのない彼が唯一晒すことのできる時間だ。
しかし、その時間は長く続かない。
「ドミニク」
中年の男の声、テロリスト『夜明けの騎士団』のリーダー、ドライゼことエレン・ティーガーだ。
『夜明けの騎士団』
反欧州連合を掲げるテロ組織で、イスラム・アフリカ移民の雇用保証とレプリロイドの排斥を求める過激的な集団で、世界各地で爆破テロを引き起こすことも厭わない非道ぶりは、レプリロイドだけでなく、人間界からも疎まれている。
「新型レプリロイドを見逃したと聞いた。私はお前には寛容だが解せない」
「あのレプリロイド『ロックマンタイプ』だ。まだチャンスはいくらでもある」
ドライゼは皮肉の笑みを浮かべる。
「となれば、私が出るしかないということか」
ドミニクは鼻で笑いながらも端末を渡す。
「噂通りなら対イレギュラーコンバットプログラム『ワイリーシステム』の装備機だ。ドライゼ、この件は私も加わろう」
ドミニクの提案をドライゼは一蹴した。
「図に乗るなよ。最早、あれに用はない。となれば破壊する」
「分かった。手柄を譲ろう。ただし彼女は機関銃が効かない。対メカニロイド用ランチャーでかからなければ負けるぞ」
「ご忠告感謝するよ。『ストライカータイプ』は我々でやる」
「ドライゼ様!」
部下の一人が入ってくる。
「レオンがいませんぜ!」
「レオン?確かまともに的を狙えない臆病者のことか。放置してよい。それよりビームランチャーの準備だ!」
ドライゼの後ろ姿を見送るドミニク、不気味な笑みを浮かべる。
「ドライゼ、いやエレン、悪いが噛ませ犬になってもらおうか・・・・・・」
ミゼットは顔を浮かばながら機嫌を伺う。
「ドミニク君?何のこと?」
「いいんだ。君には。それより、夜を楽しもう」
ヘリの風切り音が部屋に響き渡る。
ドライゼの乗った輸送ヘリ3機は、レプリロイド研究所の再襲撃を見据えて、飛びだつ。
ドミニクには、彼女『ストライカー・タイプ』のレプリロイド、アイリスへの興味が尽きない。
今の彼は彼女と戦いたいという願望がある。
月の光に照らされながら、ドミニクはミゼットに甘え、身体を寄せ合う。
戦場に舞えば、きっとテロリストとしての役割も忘れるであろう。
ドミニクは興奮と熱気を感じながら、深く寝入った。