fate/bloody memory   作:カイバーイーツ

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第四話 乱入

ー遡ること15分前、ちょうどアーチャーとそのマスターが手荒なノックをしていたころ…

「ったく、聖杯戦争が始まったってのになんだこの静けさは。もっとドンパチ街中でやりあうんじゃねぇのかよ。バーサーカー!お前も黙ってないで何か言えよ!なんか情報とかないのか?」

「我々の戦力では万全な状態であろう各勢力に勝ち目はない。故に今戦いを仕掛けるのは得策ではないと進言したはずだが。」

「あ?お前が血も吸えない使い物にならない雑魚サーヴァントだから戦力が足りないんだろうが!だからほかの奴らが潰しあうのを待ってるんだろ。でもその潰しあいが起きないから退屈だって言ってんだよ!」

「ほう、つまりマスターは戦闘が始まりこの膠着した盤面が動くことを望んでいるのだな。」

「まあ、そんなところかな。つってもこっちから動くわけにもいかねぇし…っておい!急に腕をつかむなって!おいおいおいおい!うわーーー!!!」

ーそして現在

轟音と共に戦場に大きな砂塵が巻き上がった。そしてそこにはなにやら言い争いをしている二つの影。

「おい!急にこんなところまで連れてきやがって!ちゃんと説明しろ、バーサーカー!くそ、ほんとに使えねー。で、ここはどこなんだよ!」

「ここでマスターとマスターが、サーヴァントとサーヴァントが戦闘をしている。膠着した盤面を動かしたかったのであろう?」

「は?お、おいちょっとまて!そんなの聞いてないぞ!」

「言えとは言われなかったのでな。」

「は?そのくらい言わなくても説明がいることくらいわかるだろ!」

「痴話喧嘩してるとこ悪いんだが。お前たちは何だ?」

アーチャーのマスターは怪訝そうに、唐突に空から表れた乱入者に問う。

「どこをどう見たら痴話喧嘩してるように見えるんだよ!馬鹿なのか!?何が悲しくて自分のサーヴァントと痴話喧嘩しなきゃならねぇんだ。」

「ほう?という事はお前がマスターでそっちの奴がサーヴァントってことでいいのかな?」

「そういうお前は何なんだよ!さっきから僕のことを馬鹿にしてきやがって!」

「自己紹介が遅れたな。私はビル・ブラックモア。ブラックモア様の忠実な僕であり今回の聖杯戦争においてアーチャーを召喚したマスター、そして今からお前たちを殺す男だ。」

その時、アーチャーのマスター、バーサーカー、そしてそのマスターの足元から血によってつくられた槍が生み出される。アーチャーのマスターは難なくその奇襲を躱したが、バーサーカーのマスターはそれに気づいていなかった。当たるかに思われた攻撃だったがバーサーカーがマスターを突き飛ばしたことにより槍は空を切った。

「バーサーカー!何してるんだお前!」

「…。」

バーサーカーはマスターの問いには答えず、敵を見据えている。

「こ、攻撃が来てたのか…危なかった。お、おい攻撃が来てたならそう言えよ!おい、なんとか言えって!」

「マスター、下がっていろ。」

「サーヴァントに心配されるとは情けないな。それにしても急に襲ってくるとは礼儀がなっていないなランサー。」

「黙れ。そしてさっさと死ね!」

彼らの頭上から血の雨、もとい槍の雨が降り注ぐ。

そしてまたしても難なく躱すアーチャーのマスターとバーサーカーに守られるバーサーカーのマスター。

「マスター、この敵は想像以上に厄介である。これ以上マスターを守りながらの戦闘は不可能だ。」

「ちっ、お前が連れてきたんだろうが。でも僕がこいつらと戦えないのも事実…。僕はこいつらのサーヴァントどもを殺しに行くからこいつらの相手は任せたぞ。せめて先頭ぐらいでは役に立てよ、バーサーカー!」

「心得た。」

「マスターが戦わずにサーヴァントに戦わせるとは。お前たちはこの聖杯戦争の基本原則を何だと思ってるんだ?既にイレギュラーが2パターンも存在するとはな。さすがに吸血鬼相手にアーチャーも近距離戦はできないか。さっさとこっちを終わらせるしかないってことだな。まぁそれはそこのランサーも同じだろうが。なんならそっちのはまともに戦えなさそうだったもんな。大丈夫か?」

「貴様に心配される筋合いはない。先に貴様らを屠れば問題はない!」

言葉とともに強く地面を踏みつけた。またしても地面から槍が、とアーチャーのマスターは考え地面に意識を向けたが、攻撃は足元からではなく正面から訪れた。その踏み付けは槍を生み出すためではなく、速さにのみ重点を置いた一撃のための踏み切りであった。しかし宝具を展開中のランサーの一撃はたとえ速さ重視であっても当たるだけで命取りになる。そして、一瞬足元に意識を向けたことにより正面からの一撃への反応が遅れた。ランサーの放った研ぎ澄まされた一撃はアーチャーのマスターを貫きそのままバーサーカーへとその牙を向ける。しかしバーサーカーは双剣を抜刀しその攻撃を受け止める。そしてその勢いのまま後方へと跳んだ。バーサーカーが着地するのとほぼ同時にランサーの移動経路の地面から槍が生成された。ランサーの踏み切りには実際に槍を生成するための意味も込められていた。が、あえて時間を遅らせる事で時間差を生み出した二段攻撃だったのだ。アーチャーのマスターはその全てを食らってしまったがバーサーカーはその追撃までも予知し回避しきってみせたのだ。

「アーチャー!血をよこせ!!!」

穴だらけになってしまった体でマスターはサーヴァントに叫ぶ。令呪が赤く光り吸血鬼に血が供給される。

「認めよう、ランサー!お前は俺よりも強い!ただし血を吸っていない俺よりも、だがな!」

ランサーに襲い掛かるアーチャーのマスター。その体は既に完全に修復されていた。ランサーは背後からの攻撃を一瞥もせずに躱したがそれを気にする様子もなくそのままバーサーカーへと攻撃を仕掛けた。三つ巴になるかと思われたが、ランサーは先にこの乱入者を倒すのが得策と考えバーサーカーへと遠距離範囲攻撃を仕掛けた。ランサーからしてみれば自分以外の二人が戦っている状況は好都合であり、横やりでどちらにあたっても問題はない。一方的に攻撃ができる圧倒的に有利な状況だった。当然アーチャーのマスターもそのことに気づいてはいたが、彼もランサーの力を認めていたためランサーとまともにやりあっても拮抗することは理解していた。ならば、毒という原理を知られていないバーサーカーを先に潰して1体1に持ち込む方が勝算が高いと判断したのだ。そしてそのバーサーカーは、いくらサーヴァントとして優れているといえども、著しくサーヴァントが弱体化したこの世界で、吸血鬼相手に攻撃対象を選り好みできるほどの余裕は持ち合わせていなかった。最初こそ拮抗していたものの不死身の化け物2体からの攻撃を防ぎ続けることは、卓越した演算能力によって未来がある程度予知できる項羽をもってしても不可能に近かった。そしてついにアーチャーのマスターの攻撃が項羽の頬を掠めた。その瞬間アーチャーのマスターは勝利を確信した。毒の原理によって即効性の毒を剣に染み込ませていたからだ。そしてその確信通り膝をついて崩れ落ちるバーサーカー。それを見てアーチャーのマスターはランサーを見据え言い放った。

「さあ、決着をつけようかランサー!」

「望むところだ。そろそろあちらが心配なのでな!」

ランサーとアーチャーのマスターの戦闘が再び始まる。幾度となくぶつかり合う剣と槍。膠着状態がしばらく続いた。しばらくと言っても彼らの動きのスピードは凄まじく、一般人が見れば30秒ほどしかたってはいないが。そんな膠着状態を崩したのはランサーだった。大きく後ろに飛び退き前方広範囲に大量の槍を生成した。その悉くをアーチャーのマスターはひょいひょいと飛んで躱したが、ランサーの本当の狙いはそこではなかった。先程の毒で倒れているはずのバーサーカーにしっかりととどめを刺しておきたかったのだ。そうしてバーサーカーの方を確認して彼は気づいた。バーサーカーが倒れている位置がちょうど、槍の森とまで言えるほど広範囲に展開された槍の隙間になっていることを。

「余所見とはいい度胸だな!ランサー!」

槍を足場にして高所へ跳躍したアーチャーのマスターからの攻撃がランサーを襲う。それを受け止めながら彼は気づいた。今の状況を少し前に見たことを。そしてこの状況で最も有利な立場にいたことを。

(くそ、初歩的な死んだふりに引っかかるとは…。)

ランサーは心の中でそうつぶやく。そして目の前で意気揚々と剣を振っている男がそれに気づいていないことを理解した。

「食らってやろう。その一撃。」

あえてランサーは一太刀浴びる。その代わりと言わんばかりにその手に握った槍を心臓めがけて突く。それアーチャーのマスターは間一髪で躱す。

「どうした!こんなものか!」

ランサーが槍の森から生やした無数の新たな槍を躱しながら男はいう。

「そんな単調な攻撃では当たらない!お前の目は節穴か!?」

「お前がな!」

ランサーの生み出した槍によってアーチャーのマスターが追い込まれた位置は、バーサーカーが倒れていた位置の真上だった。

「な、なぜお前がまだ動ける!!!」

地面と垂直に生成された槍の側面を走り、高く跳躍したバーサーカーに胸を貫かれながらアーチャーのマスターは叫ぶ。

「なぜ、私の毒が聞いていない!そしてなぜこの無数の槍に貫かれていない!」

「あいにく私は機械製なので毒は効かない。そして槍が生成される位置を予知すれば、槍に貫かれない位置であえて活動を停止したふりをすることは容易い。」

空中でアーチャーのマスターに追撃を仕掛けながら淡々とバーサーカーは言う。

「化け物が!!!」

「お前にそれを言う資格はないがな!」

と、ランサーが空中で回避行動をとれない二人に対して追撃を仕掛ける。それを両者とも避け、槍の森の上に着地する。そうして三つ巴の膠着状態が生まれた。先程とは違い、互いが互いの強さを認め合ったが故に誰も攻撃を仕掛けられなかった。先に動けばその者が狙われ、2体1の構図になってしまうからだ。そうしている間に既にランサーとアーチャーのマスターの傷は修復されていく。バーサーカーにとってせっかく付けた傷が消えるのは不利である。しかしそれ以上にこの膠着状態で不利になっていくのはランサーとアーチャーのマスターであった。なぜなら、両者とも契約相手の血を使った一時的なバフに過ぎず、時間が経てば経つほど契約相手の血が減っていくからである。一分ほど続いた膠着を破ったのはランサーであった。当然サーヴァントであるアーチャーよりも生身の人間であるナナの方が限界が近いと判断したからである。ランサーは二人に突進し攻撃を仕掛けるような素振りを見せたが、そのまま屋敷のがれきの方へと向かっていった。ここで睨み合っているよりも、直接ナナを連れて逃げた方がよいと判断したからである。

「待て!」

とアーチャーのマスターは叫び、ランサーを追いかける。そうして無防備になった後ろ姿にバーサーカーが攻撃を仕掛けようとしたとき、バーサーカーが唐突に宙に現れた魔法陣とともに姿を消した。そう、令呪による空間転移である。

「令呪をもって命ずる!帰るぞアーチャー!」

バーサーカーが令呪によって空間転移をしたのを見て、アーチャーのマスターは令呪を使いアーチャーを令呪で自分のもとに転移させた。

「危なかった!助かったぜマスター。急にあの吸血鬼がバーサーカーを呼んだんだ。ランサーはいいのか?あっちに向かってるみたいだが。」

「傷の修復に血を使いすぎた。これ以上やるとお前が死ぬがいいのか?」

「よし、今すぐ帰ろうマスター。あいつらには潰しあってもらえばいい。でも聞きたいことがあったんじゃないのか?」

「フランクリンをやったのはどちらにしろ『黒き閃光』であってあいつらじゃない。何か知ってはいるようだがこうなった以上は一度引くしかない。」

そうしてランサーの屋敷を訪れた襲撃者は姿を消した。

「バーサーカーがあっちに行ったか。待っていろナナ、今行くぞ!」

ランサーは全速力でマスターの元を目指すのであった。

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