投擲手と鎌使い   作:自称暇人

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ガチの初投稿です。


プロローグ

――――《クローズドベータテスト 第10層 迷宮区》――――

 

 

ところどころに分かれ道のあるさほど広くないレンガ造りの通路の中を、俺とキリトはボス部屋に向かって一直線に走っていた。その後ろには――遭遇はしたものの「時間の無駄だ」といって倒さずに放置していた――3体のモンスターがついてきている。名前は《オロチ・エリートガード》というらしい。それぞれ甲冑のような防具を身にまとっており、その手には刀が握られている。まとまって行動していたようで、1体に気づかれると全員がこちらに向かって追いかけてきたのだ。

 

「チッ、雑魚の数が思ったより多いな。しかもけっこう速いし。どうするよキリト、このままだとボス部屋にたどり着く前に追いつかれるかもしれないぞ?」

 

「それはまずいな……。こいつらの相手してたら間違いなく間に合わない。あと5分くらいだろ?」

 

時刻を確認すると確かにあと数分でベータテストが終了してしまうというところまで迫っていた。今のところノンストップで走っているためモンスターたちの距離は近づいていないが、残念なことに遠ざかってもいない。もし前方にモンスターがポップして進路を妨害されたらまず間違いなく追いつかれるだろう。

 

「頼むから何も出てこないでくれよ……!」

 

「おいキリトそれはフラグってやつ……ほら言わんこっちゃない!」

 

「よりによってここでフラグ回収かよ……」

 

100メートルほど先に2体のオロチが歩いているのが目に入った。これ以上モンスターがポップしないことを祈りながら走っていたのだが、どうやらそう簡単にはさせてもらえないらしい。幸いまだ発見されていないが、このままだと間違いなく発見され戦闘になる。そうなったら後ろのやつらにも追いつかれてゲームセットだろう。ベータテストが終わる前にせめて10層のボスの顔だけでも拝もうとここまで進んできたが、二人で一緒に行けるのはここまでのようだ。

 

「仕方ない。キリト、先に行け。こいつらは俺が足止めしとく」

 

「…………いいのか?」

 

キリトが聞いてくる。全く、ただのゲームだろうに。

 

「いいんだよ、先にいくならどっちかが足止めしないと無理だろ。ほら、さっさと行かないと時間切れになるぞ」

 

そんなことを言っているうちに前方のモンスターに気づかれてしまった。こちらに寄ってきている。キリトは俺の一言とその状況から1人で先に進むことを決めたようで、少し申し訳なさそうにしながら礼を言ってきた。

 

「……わかった、恩に着る。正式サービスで会った時に成果は報告するってことで」

 

キリトは先に前へ出た。当然2体のオロチは行かせまいと攻撃の構えをとるが、俺がオロチとキリトの間に入って立ちふさがる。

 

「おう、じゃあ集合場所くらい決めとくか。最初の広場な。もしボスに無事会えたならなんか奢ってくれ」

 

「了解、じゃあまたな!ウェル!」

 

「じゃあなー、気をつけろよ」

 

振り返ってキリトとの距離が十分距離が離れたのを確認してから、俺は後ろから追ってきていたオロチたちにも目線を向ける。

 

「さて、というわけでお前らは俺の最後の獲物ってわけだ。ベータテスト最後の戦い、たっぷり楽しませてもらうぜ」

 

自らの得物を利き手に持ち、俺はオロチに斬りかかった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よし、そろそろか」

 

2020年11月6日、ソードアート・オンラインのサービス開始日。俺こと咲嶋良介はベータテストの時のことを思い出しながらナーヴギアの準備を始めた。

 

あの時はめちゃくちゃ楽しかったなぁ。オロチ5体に囲まれた状態で動き回りながら斬って倒していくあの感覚は二度と忘れられない。なんというかこう、自分が無双ゲーの主人公になったようなとてつもない高揚感だった。HPがギリギリになりながらも倒しきった時の達成感も格別だったと断言できる。

 

「まだそんなに時間は立ってないはずなのにめちゃくちゃ懐かしいな」

 

─―ソード・アート・オンライン、通称SAO。世界初のVRMMORPGとして売り出された、ヘルメット型フルダイブゲーム機"ナーヴギア"用のゲームソフトである。一人の天才・茅場晶彦によって開発されたのだが、やはりその魅力はフルダイブという特性による没入感と、自分の体を動かしてゲームができるというところだろう。発売を迎える前に1000人によるクローズド・ベータテストが行われており、俺もその参加者の1人だったのだが、"自分で体をを動かして戦う"システムはフルダイブならではでとても新鮮だった。まあ移動中は少々退屈だったりと一部デメリットもあったが、その点を打ち消してなお余りある面白さだとは思う。

 

ちなみに開発者本人である茅場晶彦は"これはゲームであっても遊びではない"と雑誌で発信していたが、残念ながらその意図はベータテストだけでは俺にはよくわからなかった。

 

ちなみにこのゲーム、初版は1万本限定であったため発売日には各地の販売店で行列ができていたそうだ。実際、サービス開始までの時間つぶしにと開いていたPCのニュースサイトにはショップにできていた行列の様子が映し出されていた。幸いなことにベータテスト当選者には優先的に購入権が与えられていたため、俺は行列に並ぶことなく無事プレイする権利を手に入れたというわけだ。

 

「ベータテスト当選しててマジでよかったわ。この行列に並んでても買えるかどうかってのはさすがにキツい」

 

このように準備をしつつ開始までの時間つぶしをしているわけだが、頭の中はこの後のことでいっぱいだ。

 

「さて、どうすっかな。とりあえず最初にあいつと合流するのは確定として、問題はどの武器をつかっていくかだよな。ベータテストでは結局片手剣しか使わなかったからなぁ……今回はいろんな武器に手を出してみたいところだけど、そうするにしてもまずは何からにするか悩むな。とりあえず両手武器は性に合わないとして…………」

 

……そういや結局アイツどうなったのかな。ボス部屋に着く前に別れてそのままベータテスト終了まで会えなかったからどうなったか知らねぇんだよなぁ。終了直前ギリギリでなんとかあいつらは倒せたけど、その時にはもう向かっても間に合わなかったし。

 

死んだか無事先に進んだかだが、もしまたオロチが湧いていたら厳しいかもしれないしな。……まあ今考えても仕方ない、会った時に聞いてみるか。

 

「……あ。そういや場所は決めたけど時間決めてねーじゃん。ログインしたタイミングが合うかどうかの運任せってことかよ……。なにやってんだ当時の俺」

 

あの時は少し焦っていたからか肝心なところを忘れたようだった。思わず過去の自分に対して恨み言を言ってしまうが、なってしまったものは仕方ないのでキリトがサービス開始と同時にログインすることに賭けるしかないようだ。

 

そんなことを思いつつも正式サービスでどの武器種を使うか頭の片隅で考えていたのだが、結局どれを使うか決まらずひとまず片手剣のままでいいやということになった。

 

 

 

 

 

その後トイレなど諸々の準備を済ませ、机に置いてある時計の針を見るといつの間にかサービス開始1分前を指していた。

 

「やっべ、ログインが遅れるところだった。まあ気づけたからセーフだな」

 

ナーヴギアを頭にかぶり、ベッドに横たわる。枕元に水分と菓子類を置いておいたのでログアウトしてすぐ休息をとれるようにもしておいた。

 

「さて、じゃあ行きますか。…………リンク・スタート!」

 

俺は久しぶりに、浮遊城アインクラッドの世界に意気揚々と足を踏み入れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――このゲームがログアウト不可のデスゲームと化すなど、この時は知る由もなく。




なにか書いたのは初めてですけどこんなに難しいんですね……。
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