投擲手と鎌使い   作:自称暇人

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お久しぶりです。
忙しかったのと、純粋に難産でした。


ミッション:友達を連れ戻せ

「探すとは言ったものの、そもそもまだ生き残ってるかどうかもわからないんだよな……頼むから無事でいてくれよ……?」

 

崖を降りて、ひとまず辺りを見回す。残念ながら人影は見当たらなかったが、プレイヤーが死んだならば落ちているはずの武器もない。少なくともここでやられてしまったということは無さそうだ。

 

「となると、あっちかな。分かれ道があるから少し時間かかりそうだな」

 

俺は崖の正面にある道を進んだ。他にもいくつか道はあるが、ネペントから逃げ延びるとしたらこの道だろう。

 

 

 

 

 

「うーん、ここまでの道で武器は落ちてなかったから生きてるとは思うんだけどなぁ」

 

キリト達と別れてから10分、まだ《ミト》という少女は見つけられずにいた。あまり時間は経っていないはずだから、そこまで遠くには行っていないと思ったんだがな……。

 

「……あと5分探しても見つからなかったら一旦戻るか」

 

ひょっとしたらあの崖のところで別の道に進んだのかもしれない。あるいは、もう村に戻ってしまった可能性もある。

 

「…………ん?」

 

その時、岩場の陰に布地のようなものが見えた気がした。

 

一応モンスターの可能性もあるので慎重に近づいてみる。背はだいたい俺と同じくらいで、武器は……斧?いや、鎌か。髪色は…………紫。

 

どうやら探していた《ミト》本人で間違いなさそうだ。ひとまず無事だったことが確認できてホッとする。

 

「ちょっといいかな、ミトさん……で合ってるよね?」

 

「…………そうだけど、誰」

 

鋭い目つきで睨まれてしまった。そりゃそうか、初対面の人間にいきなり話しかける不審者だもんな。

 

「いきなり話しかけてすまん。俺はウェル。さっき君の知り合いのアスナさんが襲われているところに遭遇して――――」

 

俺は軽く事情を説明しつつ目の前の鎌使いを見る。さっきの《アスナ》というレイピア使いと同じく、両サイドの髪を三つ編みにして後ろで結んでいる。こういう髪型なんて言うのだろうか、詳しくないから知らないが、とりあえずよく似合っているなとは感じた。

 

「……そう、ありがとう。アスナを助けてくれて」

 

ひとまず信用はしてくれたのか、彼女の態度がわずかに柔らかくなる。よかった、不審者扱いされる危機からは脱したようだ。

 

「とりあえず俺の連れが村まで送ってる。君も戻るだろ?送っていくよ」

 

とりあえずキリトに発見の旨を伝えようとメッセージを開く。その時、

 

「……私はいい。……アスナには、もう会う資格がないから」

 

と鎌使いが答えた。

 

アスナの言っていたことからしておそらく何かはあったのだろうと思っていたが、まさか戻らないと言われるとは思わなかった。どうやら俺はまずその説得から始めなければいけないらしい。

 

困ったな、こういうとき何を言えばいいのか全く分からない……。

 

とりあえずキリトに『見つけた。今から戻るけど少し遅くなるかも』とだけメッセージを送っておく。

 

「何があったのかは知らないけど、とりあえずアスナさんは心配してたよ」

 

「……でも、絶対危ない目に遭わせないって約束したのに、私は…………!」

 

……なんとなく事情は察している。大方、ネペントに邪魔されてアスナの助けに入れなかったことを悔やんでいるのだろう。

 

「だとしても、1回は会っておいた方がいい。このあとも攻略は続けるんだろうけど、ボス戦で再会してギクシャクするのは面倒だろ」

 

「…………」

 

ミトは何も答えない。顔を俯け、どうしようか悩んでいる。

 

「なんにせよ、一旦村には戻ろう。今の君は放っておけないし、どうせ回復アイテムも残り少ないんだろ?」

 

見つけた以上は、このままここで別れるわけにもいかない。少し理由としては弱いかもしれないが、改めて村に戻ることを提案する。

 

「……わかった」

 

ひとまず納得はしてくれたようなので、俺達は村へ向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

ほぼ同時刻。正確には、ウェルがミトを見つける少し前。

 

キリトとアスナは、村へ向かって歩みを進めていた。

 

「……なるほど。それで君だけあそこで戦ってたのか」

 

ネペントとの戦闘、レアモンスターのポップ、そこからの別行動と実付き個体の出現――――。歩きながら何があったのか聞いていたキリトにアスナはコクリとうなずく。ここまでの移動で多少会話に慣れてきたのか、キリトの言葉数は少しずつ増えてきていた。ちなみにだが、ゲームの中な上にほぼ同い年だろうということで、お互い敬語はなしということにした。

 

「でも、なんでそれがパーティー解散に繋がったんだ?」

 

ふとしたキリトの疑問に、アスナは少し考えて答える。

 

「……ミトはあの時、レアモンスターを倒して強い武器をゲットしてた。ひょっとしたら、それを独り占めする気だったのかも」

 

「ないとは言い切れないけど、さすがに考えすぎじゃないか?」

 

キリトはいくらなんでもそれはないだろうと否定する。だがアスナには、そうかもしれないと言える理由があった。

 

「……昨日、買い物に出た時に聞いちゃったの。『攻略が進まないのはベータテスター達が効率のいい狩場やクエストを独占してるからだ』って」

 

昨日、アスナがポーションの買い出しに出掛けていた時、偶然ほかのプレイヤーが愚痴をこぼしていた。それを耳にしてしまったのだ。

 

もちろんミトにそのことを言えるはずはなく、帰ってから何かあったか聞かれたときは誤魔化した。実際、アスナはたくさんミトに助けられてきたので、ベータテスターだからといって必ずしも悪い人ではないと思っていた。

 

ついさっきまでは。

 

「…………」

 

「……教えて。ベータテスターっていう人達は、本当にそんな人達なの?ゲームは、人そのものを変えてしまうの……?」

 

アスナは疑心暗鬼に陥りかけていた。親友だと思っていたミトに裏切られたかもしれない悲しみと合わせて、目元に涙を浮かべながらキリトに問いかける。

 

そのアスナの問いに、キリトはどう答えたらいいか悩んだ。自身もベータテスターの一人であり効率のいい狩場を頻繁に利用していた自覚があったため、ベータテスターに対するその悪評を即座に違うと否定できなかった。自分にも悪評の原因の一端があるかもしれなかったのだ。

 

「……すまない、君がここまで追い詰められているのは、ある意味では俺の……」

 

「……?」

 

いきなり謝り始めたキリトに、アスナはただ首を傾げるだけだった。

 

「いや……何でもない。…………一つ確認してもいいか。その子が倒したレアモンスターってどんな奴だったんだ?」

 

「どんな……」

 

「なんでもいい。人型だったとか、小さかったとか、体の色とか。覚えている特徴を教えてくれ」

 

言われて、アスナはあの時のことを思い起こす。ミトが戦っていた相手は――――

 

「……灰色のフード?ローブ?を着たネズミ人間みたいなモンスター。背はこれくらいの」

 

アスナは自分の胸元あたりの高さを手で表しながら答える。その返答をもとにベータテストの記憶と照らし合わせたキリトは、ミトがなぜそのモンスターにこだわったのか気付く。

 

(なるほど、()()か。だとしたら……)

 

アスナのそれは思い違いだろう。そう判断したキリトは慎重に言葉を選んで答える。

 

「……さっきの質問の答えだけど、ゲームで人が変わったようになる人は確かにいる。それに、このデスゲームだと命の危険に瀕した時に普段とはかけ離れた行動をとる人もいると思う」

 

「…………そう。なら――」

 

「でも、そういう極限状態での行動がその人の本性を表しているわけではないと思う。むしろその逆、何気ない普段の姿こそその人の真実なんじゃないか?」

 

「普段の、姿……」

 

普段のミトを思い返す。学校にいた時も、SAOが始まってからもずっとアスナを気にかけてくれたあのミトが、本当の姿――――。

 

「それは、君が知っているはずだ」

 

「…………うん」

 

不安の色が薄らいだことがわかる程度には、アスナの様子は穏やかになった。その様子を見て、キリトはこれなら大丈夫だろうと安心する。

 

「さて、先に村に戻って待ってよう。君の相棒はウェルがきっと見つけてくれるさ」

 

二人は再び村へと歩き始める。だが、先ほどまでの重い空気はなくなっていた。




10話も使ってまだボス攻略会議まで進んでないってマジっすか……?
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